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ハルシオン

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
某白犬の唄×四弦(ナマ・エロ注意)
百合脱却を図るため唄が若干S化しています。

 不測の事態にも余裕を持って対応できるのが、大人の男のあるべき姿なんだろうけど。
 ホテルの部屋が何の前触れも無く右へ左へ揺れ始めたときには、正直頭が真っ白になってしまった。
 地震と気づくと、俺は部屋の隅に小さくなり、誰かから身を隠すかのようにひたすら息を潜めた。
 壁に架けられた額や、ベッドサイドのスタンドライトがでかい音を立てて縦横無尽に傾く様子を、瞬きもせずに見つめていた。
 揺れが治まると、俺はこわごわ立ち上がった。
 天敵と出くわしてしまった小動物みたいに辺りを忙しなく見回し、部屋のドアへ小走りで向かった。
 バクバクと心臓が暴れるのを抑えられないまま、カードキーを持ってドアノブを引き、慌てて廊下に出た。
 そこで俺は、俺以上にこの状況に動揺しまくっている人間を目の当たりにした。
 全身、ずぶ濡れ。
 髪の毛の先から指の爪の先まで、無数の滴の玉が膨れ上がってはボタボタ廊下に落ちている。
 急いでつっかけてきたと思われる部屋用のスリッパは、濡れた足に踏みつけられて色が変わるほどビショビショに湿っている。
 体には、申し訳程度にバスタオルが一枚腰に巻きつけられているだけ。
 息を切らしながら、我らがリーダーは惨憺たる有り様でホテルの廊下のど真ん中に突っ立っていた。
 きょろきょろ首を左右に振っていた多村は、俺の姿を確認すると安心したように手を上げた。
「句差野」
 こわばっていた顔が綻び、無邪気に近寄ってくる。いや待て待て、まずその体を拭こうよ。すげー水滴落ちてきてるから。
「今の地震ってもう治まったんかな? 俺すっごいビビッたんだけど」
「さ、さあ」
 呆然と立ちすくむ俺に向かって、多村は自分の格好を省みることもせず話しかけてくる。俺はむしろ今のお前にビビッてるよ。
「地震なんて久しぶりだからさ、どうすりゃいいか分かんなくなって……」
 それでもその格好で廊下に飛び出す大人はあんまりいないと思うよ。曖昧に返事をする俺を上目遣いで見ながら、多村は濡れた頭を掻く。
 ただでさえ絶え間なく滴が落ちてきてるというのに、廊下に敷かれた小豆色のカーペットにはますます楕円型のシミが生まれていく。従業員泣かせだ。

「で、なんで多村は、そんなびしょ濡れになってんの?」
「え。ああ、これは」
 そこで多村は自分の状態を初めて認識したようだった。
 バスタオル一枚しか身につけていない無防備な体を他人事のように眺める。
「風呂入ってる途中だったから。拭くの忘れてた」
 こいつ本当に地震の多い県の出身なんかな。
 額に垂れた前髪をかき上げ、締まり無く笑う顔を見ていると、多少の不安を感じる。
 だけど、邪な好奇心もムクムクと湧いてくる。この機を逃すな!と肩を突ついて笑いかけるもう一人の自分がいる。
 だって、こんなカッコで人の前にのこのこ現われてくるんだもん。
 何されたって文句言えないでしょ?
「じゃあ俺の部屋来なよ。風呂入り直そう」
 多村の右腕を掴んで、強く引く。多村はうろたえ、体のバランスを崩しかけた。
「ちょ、いや、いいよ。自分の部屋でやるから」
「いいから」
 何がいいから、なんだか。
 自分でも分からんけど、とりあえず最もらしく聞こえる理屈を次々並べ立て、無理矢理多村を部屋に連れ込んだ。
 後から気づいたことだけど、多村はカードキーを持っていなかった。
 バスタオル一丁だったのだから、普段の俺ならすぐにそのことに気づき、指摘できているはずだった。
 それを見落とし、口から出任せの訳のわからない口実で必死に多村をおびき寄せたと言うことは、それほど俺は自分の悪だくみに夢中になっていたのだろう。
 最近妙に目が冴えて眠れなかったのだ。
 画期的な「遊び」を思いついた俺は、プレゼントの箱を前にした子どもみたいにワクワクしていた。

 
 やってることは、まったく子どもらしくないんだけどね。
 数分後、俺は着ていたパジャマをすべて脱ぎ捨て、多村と一緒に浴槽に浸かっていた。
「何でお前も入ってんだよ」
「いいじゃん。体洗ったげるよ」

「別にいーよ」
 ガキじゃあるまいし、と多村はむくれて言う。俺は何度か手を振り、渋る彼に後ろを向かせた。
 浴槽の中でのろのろと多村は体の向きを変えた。しかめっ面の代わりに、少し丸まった背中が目の前に来る。
 棚から取り出したボディソープを薄いタオルの上に垂らし、手で泡立てた。
 小さくて可愛らしい泡がいくつも生まれ、ふわふわバスルームを漂った。
 タオルを背中に当て、こすり始める。背骨の辺りから少しずつ場所をずらし、体の前方へとタオルを持っていく。
 何も言わずに俯いていた多村が、胸にタオルが触れた瞬間びくりと揺れた。浴槽のお湯が少し外へこぼれた。
「どしたの?」
 俺は訊く。多村は首だけ振り返り、いぶかるような目で俺を見た。
 俺は首をかしげた。タオルを動かしながら、できるだけ平然とした顔で。
「じっとしてないと洗えないよ」
 それでも、俺の手がよからぬ動きを見せるたび、多村は何度も不審そうに振り返って抗議を続けた。
「やっぱりおかしいだろ、これ」
「そう?」
「っ、お前フツー、こんな洗い方しねえよ」
「だから?」
「もっと、ちゃんと、洗えよ」
「ヤダ」
 いちいち俺を見てくる多村が邪魔臭かったので、首を伸ばして彼の耳の根元にかじりついた。
 多村が息を呑むのが間近で聞こえた。
「……やっぱり」 細い声で、独り言のように多村がぼやいた。
「普通にやるつもりなんか、無かったんじゃんか……」
 俺は開き直り、泥のようにお湯に沈み込む彼を笑った。
「今頃気づいたの?」

「沈んでないで。洗えないから、さっさと立って」
 多村の肩を手のひらで数回叩き、強引に浴槽から立ち上がらせた。
 俺も腰を上げ、ほとんど背丈の変わらない彼の後ろに立つ。
 タオルを多村の胸の前に置き、くるくると回した。
 もうその動きは、『普通』でないことを隠しもしていない。
 明らかに人をいたぶり、なぶり、煽る為に存在する動作だ。
 多村の口からも、どう聞いたってマトモに洗ってもらってる人からは出ないような声がこぼれている。
 それなのに、「洗ってあげる」なんて大嘘を未だに言い続けてる自分が滑稽で、笑えた。
「は、く、さの……」
「何そんな声出してんの? 洗ってあげてるだけなのに」
 耳元でククッと笑ってやる。多村は壁のタイルに曲げた両腕を押しつけ、不安定な体を支えている。
 タオルはもう腹の下を降りて、変形した彼のものを包んでいる。
 水びたしのタオルがまとわりついて、それの形状をハッキリと示していたのがおかしかった。
「そんなに声出すと隣に聞こえるかもよ」
 小声で囁く。タオルを掴んだ右手の指を、蛇のようにうごめかせる。
「隣は咲ちゃんだったかな? 咲ちゃんに聞こえるかも」
 左手を前に突き出し、多村の口にねじ込んだ。人差し指から薬指までの三本の指が湿った舌の上に載った。
「それとも多村は、聞かせたい?」
 左手の指を順番に踊らせながら、右手を上下させる。
 左手にヌメヌメした唾液と、今にも噛み付かれそうな硬い歯の感触がする。右手にはタオルが吸い込んだお湯の筋が、手首まで垂れてきている。
「ふ……う、う」
 何かに耐えるようなくぐもった声が、大きく開かせた口から落ちてくる。多村は壁に置いた腕をXの字に交差させ、そこに顔を押し当てた。
 恐らく、あいつの目は縫ったように固く閉じられているんだろう。流されまいと必死に理性にしがみついてるのだ。

 俺は多村の口から指を抜き取り、蛇口をひねった。
 壁に架けられているシャワーヘッドから勢いよくお湯が出て、俺達に降り注いだ。
「大丈夫だよ。我慢しなくても」 泡が洗い流されていく多村の肩を撫でながら俺は言った。
「声なんて聞こえるわけ無いじゃん」 
 たぶんね。

 シャワーを頭から浴びながら、俺の手の動きはまだ続いた。
「く、さの」 多村の声はシャワーに紛れ、こんなに近づいてるのに聞き取りづらい。
「何?」
「タオル、外して」
 きっと今、多村の全神経が集中しているのだろう箇所には、未だにずぶ濡れのタオルが絡み付いていた。
 キュッと握り締めて強く絞ると、一気に大量のお湯が浴槽に吸い込まれていった。
 同時に多村は素っ頓狂な声をあげ、弓なりにのけぞった。
「そんなによかったの?」
 こちらに倒れかかった多村の体を抱きかかえ、声を低めて笑う。
 ひそかに覗き見た多村の横顔は真っ赤に染まっていた。
 ろくに瞬きもしないぼんやりとした目は、もう何処を見ているのか分からない。もしかすると何も見えていないのかもしれない。
 ただ僅かに開いた口で、間隔の狭い、浅い呼吸を繰り返している。
 そんな姿を見てこっちも興奮してるなんて、こいつには絶対言わない。
 死んでも言わない。
「も、はやく……」
「早く、何?」
 多村の声はうわごとみたいにフワフワしてて、まるで芯を抜かれたようだった。
 俺は、子どものわがままに飽き飽きしてしまった親のような、冷たい声で返す。
 多村が顔を向け、懇願するようにこちらを見上げてくる。

「はやく、いかせて」
 顎にかかる息が熱い。狭いバスルームの中に、立ちこめる湯気の中にあっと言う間に溶けていく。
 俺は多村を見下ろしながら薄く笑った。
「ダメだよ」
 多村は目を見開いた。唇を歪め、歯をむき出しにして顔をしかめ、俺を睨みつけた。
「最悪……」
 俺は口元に笑みを浮かべながら、ゆるゆると右手を動かした。
 刺激にはなるけど、決して昇り詰める程までは行かない、絶妙にじれったい速度で。
 多村は小刻みに膝を震わせ、だらしなく開いた口で何度も俺に助けを求めた。そのたび俺は彼を無視した。
 簡単にイカせてなどやらない。
 だって俺、優しくなんかないもん。

「ね、多村。気持ちいい?」 多村が肯く。
「我慢できないくらい気持ちいい?」 何度も肯く。
「もうイキたい?」 首が千切れそうに肯く。確かライブのときもこんな感じに首振ってたよな、と思い出す。
「仕方無いなあ」 冗談めかして言い、抱きとめた彼の肩に頭を載せる。
「じゃあさ、俺のこと下の名前で呼んで。そしたらイカせてあげる」
 この申し出は多村にとって意外だったらしい。目をぱちくりさせ、掠れた声で「何で?」と言う。
「何でって。いつも多村、俺のこと名字で呼ぶじゃん。たまには名前で呼んでよ」
 ただでさえ赤かった多村の顔に更に赤みが差したような気がした。
 初めて出会ったころの呼び方のまま何十年もやってきているのだ。今になって呼び方を変えるのは恥ずかしいとでも言うのだろうか。

「何で、いまさら……」
「いいじゃん、呼んでよ」
「バ、バカ言うなよ」
「呼んでよ。哲矢や咲ちゃんが言ってるみたいに、政宗、って。できるでしょ?」 そう言いながら、耳の後ろに唇を当てる。右手を動かす。
「言わなきゃイカせてあげないよ」
 耳元で囁いた。
 脅迫めいた俺の声は、彼の耳を通り、体内を巡り、肩をわななかせた。
「……」
「ん?」
「……ね」
「聞こえない。もっと、おっきな声で」 2人とも激しいシャワーに全身を包まれている。多村の濡れた口元に耳を寄せた。
「……っとにサイアクだね、お前の性格」 
「何年一緒にやってきてると思ってんの、多村君?」 俺が笑うと、多村も付き合うように軽く笑った。
 彼は真っ赤な顔をおもむろに近づけてきて、俺の耳にぴったり口をつけた。
 そして、シャワーの音にかき消されそうなくらい小さな声で、ぼそりと何かを言った。
 早口で呟いたその言葉は、間違いなく俺の名前だった。
 体の真ん中が震えた。
 俺は右手のタオルを投げ捨て、彼のものを直に擦りあげた。
 多村の眉間にぎゅっとしわが寄った。彼は縋りつくように俺の体に強くつかまった。
 ネジがキリキリ巻き上げられていくかのように、声を段々と昂ぶらせながら、多村は目を閉じ、薄く開け、また強く閉じた。
 苦しげに喘ぐ声や、口から覗く舌の動きがぴたりと止まった次の瞬間、俺の手のひらの中にどっと熱いものが溢れた。
 荒い息をしながら、俺にもたれかかってズルズルと浴槽に屑折れてゆく多村はくたびれた人形のようだった。

 その後も色々あって、何もかも終わった頃には浴槽のお湯はすっかり生ぬるくなってしまっていた。
 ふらつく足取りでバスルームを抜け出した多村は、勝手に俺の部屋のバスローブを羽織り、俺のベッドで寝息を立て始めた。
 パジャマに着替え、後からバスルームを出た俺は、多村の呑気な寝顔を呆れながら眺めた。
(こいつ、一晩中ここにいる気なんだろうな)
 まあ、別に、いいけど。
 幸せそうにいびきをかく多村のほっぺたを軽く指で突っつき、俺は彼の隣に潜り込んだ。
 布団を手で寄せ、1人分のベッドを分け合う。ちょっと狭いけど、居心地が悪いわけじゃない。
 再び地震が起きても、今度はもう怖くないと思った。
 俺はゆっくりと瞼を閉じた。
 もう随分久しぶりな気がする、安らかな眠りの予感が、柔らかい膜のように俺を包みこんだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
唄は意地悪攻め、四弦は天然受けだと勝手に思ってます。
毎度のことですが、本スレからネタを拝借しまくってます……皆さんすみません、そしてありがとう。


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