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オリジナル バトルもの的な妄想

バトルもの的な妄想。最初に謝っておくが格闘技に関しては素人だ。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 もう終わりだ。ねぐらへ帰れば捕まる。捕まれば死ぬ。死なないとしたらよけいに危ない。堅気の中で
生きるような手段もなし、失踪しようにも伝手がない。業界には海千山千の強者も多いが、そんな連中が
一山いくらのショーダンサーに金と手間をかける理由などありはしない。同僚が揃って沈黙する中、声を
かけてきたのはダリアだった。衣装に似合わぬオネエ言葉と痙攣的な明るさで人気の彼は、常に片足を
頭の中の楽園に突っ込んでいる――ここの従業員なら誰でも知っていることだが。
 ねえあんた、アタシがなじみの売人に聞いといてあげる、人間が一人要らないかって。だいじょうぶ、
死ぬような仕事はごめんよってちゃんと言っとくから。ひどいことはしないわ、あのひとは優しいのよ――
 どうやらあの日の彼は楽園に踏み込むのを足首程度に留めておいてくれたらしい。もしくは相手が
よほど売人に向かない奴だったのか。結果として、彼は死ぬことも無理矢理生かされつづけることもなく、
厚待遇と言ってさしつかえのない生活手段を手に入れた。

 初戦の負傷が打撲と腹の刺し傷なら、まあ上出来のほうだろう。
 瞳孔反射の動画は本部に送った。確認ししだい賞金が出るはずだ。とりあえずは根城に帰ることだ。歩けるの
だから今すぐ死ぬということもないだろうが、刺された傷口はなんとかしないといけない。医者か、その真似事
のできる人間を探さなければ。“電話帳”の知り合いに闇医者はいるだろうか。
 しかし違法ファイトの会場のくせに昇降機が動かないとは非常識にもほどがある。壁にすがって階段を下りる
彼は舌打ちをする。廃ビルだから当然なのかもしれないが、足を折られたりしたらどうするのだろう。頭から
這って降りろとでも言うのだろうか?
 うんざりと溜息をつき、壁にもたれて立ち止まる。自分の足音が消えて、彼は足下の衝撃音に気づいた。

 ファイトの会場は4階だけではなかったらしい。踊り場から中を覗くと格闘が見えた。端末を確認すると、
試合が決まったのは彼の後のようだ。なかなかの好カードだと書いてある。殺傷ありのダーティーマッチ、
一方は最近人気のヒール、他方は格闘に定評のある実力派。どちらも組み技の経験者らしく、実際体勢は
派手に入れ替わっている。観客はさぞ喜ぶだろう。
 突きを繰り出した側の腕が取られ、そのまま投げ倒された。投げた側はすかさず相手に乗りかかり、
首に手をかける。これで終了かと思った彼は、下になった男が膝蹴りを繰り出すのを見て取った。
 膝蹴りではない。胸板を逆袈裟に滑った右脚は相手の右肩を乗り越えた。

 そこからは一瞬だった。彼の目には回し蹴りのように見えた。首を引っ掛けた足が右に振られ、引かれた
頭が地面に向かって落ちてゆき、同時に起き上がった男が姿勢を入れ替えたところまではわかった。
気がつけば地に這うのは相手の方、首を締められていたはずの男は仰向けになって腹に相手の膝を抱えている。
股で相手の脚の付け根を絞り下肢を背中に乗り上げて固定。背中側に引かれた足は股関節を動かせなくなり、
残った膝は上体を反らして関節を伸ばす。いわゆる膝十字固めのスタイルだ。
 どうやら形勢は決まったようだ。あとはあのまま足を折り、戦闘不能にすればいい。普通のファイトなら
それで決着、そこから先は彼の趣味ではない。再び階段を下りようと視線を外したところで、声が聞こえた。
 試合のときにつけさせられるイヤホンは骨伝導マイクでもある。カメラ越しに見守る観客のための設備だ。
それがマイクの電波を拾っている。耳元で声が聞こえる。
「…いい脚だ」
 思わず振り返った。苦痛にうめき暴れる相手の脚を抱え込みがっちりと極めた男が、笑っている。
「この膝を壊さないといけないなんて残念だな。個人的には血抜きを済ませてからのほうが捌き易くて
いいんだが、その辺はリクエストによりけりだ。生きたままやる羽目になるかもしれん」
 脚の持ち主が悲鳴を上げた。暴れ方が激しくなるが、男はぐいと背を反らす。破砕音と再びの悲鳴。
「ダーティー志願者のくせに大げさだな。俺についてどんな噂を聞いた? 医者崩れの変態か? 人体を
切り分けるのが大好きな気狂いか? …まあ、おおむね正しいが」
 そこで息をついた男は顔を上げ、踊り場に立ち尽くす彼を認める。いまだ恍惚の名残をのこした男は、
強張った顔と目が合った。

 まずいところを見られた、と言わんばかりのあの男の苦笑は、きっと夢に出てくるに違いない。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
分量ミスった。すまん。


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