魔法の呪文
更新日: 2011-05-03 (火) 13:39:39
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お疲れ様です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ナマモノ注意。
宵/子の蟻葉間です。
スレの流れに禿げ萌えて勢いで書きました。
「葉間口くん、最近様子おかしいけど……何かあったん?」
両親が外出中やという蟻乃ん家に来て、部屋に入った時のこと。
開口一番、蟻乃が喋った言葉はコレやった。
身に覚えのある俺は、その一言に動揺し慌てる。
部屋の中央で棒立ちになりながら、普段全然使わへん脳をフル活用して言葉を探した。
結果、今この場で使うに相応しいとされた台詞はこれやった。
「べ、別に何もないよ」
アカン、噛まんかったら上手く行ったのに。
いや、上手いこと言えたとしても今の台詞じゃ更に追及されてただけか。
自分のカツゼツと頭の悪さを恨みつつ、俺は用意された座布団の上に腰を下ろした。
視線は床に固定したまま、出されたお茶を啜る。
「葉間口くん」
「なに?」
「僕の目見ながら、何もないって言って」
お茶に映る俺の顔が、ゆらゆら揺れた。
鼻の奥が痛くなって、目頭が熱くなる。
何か言わなと思て言葉を探したけど、頭ん中ぐちゃぐちゃで何も思い浮かばんかった。
「嘘吐くん下手やなぁ、葉間口くんは」
ぼろぼろぼろぼろ。まるで決壊したダムみたいに、涙が溢れて止まらんくなる。
「……蟻乃ぉー!」
俺は蟻乃に勢い良く抱きついた。
勢い余って机に足引っ掛けた所為かお茶が零れた音がしたけど、今はそんなん気にしてられへん。
蟻乃の優しい温もりに包まれながら、詰まりつつも“あの事件”について話していった。
全てを話し終えると、蟻乃は何も言わんと俺の頭を撫でてくれた。
暫くの間、部屋に静寂が訪れる。
それを先に破ったのは蟻乃の方やった。
「ほんまに無事でよかったわ」
頷いて顔を上げる。
そこには“あの事件”以降まともに見ることが出来んかった蟻乃の顔。
なんかめっちゃ久しぶりに見た気がする。
やっぱ男前やなぁ、とか思とったら、ちょっと予想外の言葉が飛んできた。
「最近寝付き悪いんちゃう?目の下くま出来てんで。変な夢とか見てへん?」
確かに最近寝る度にあの日のことが鮮明に蘇ってきて、寝るに寝れん状態が続いとったけど……。
なんでわかったんやろ。
そんな疑問を抱きつつ視線を少し上にやると、全てを理解した様子の蟻乃が瞳に映った。
より強い力で抱きしめられて、どうしたらいいんかわからんくなる。
一人戸惑っとると、蟻乃は俺の耳元に唇を寄せてこう囁いた。
「僕が全部忘れさせたるから」
その言葉が何を意味するか、直ぐに理解する。
俺は迷うことなく頷きを返した。
それを合図に、蟻乃は俺を腕ん中から解放し、軽く触れるだけのキスをしてくる。
唇は勿論、額とか瞼とか鎖骨とか。
擽ったくて思わず身を捩った。
「っ、」
暫くそれを続けた後、ゆっくりとした動作で布団の上に押し倒される。
「……葉間口くん」
優しい声色で名を呼んだ蟻乃が、俺の服に手をかけた瞬間。
先生が俺にしたことの全てが鮮明に蘇ってきて、頭ん中が真っ白になった。
負の感情が全身を襲い、俺は無意識の内に蟻乃を突き飛ばす。
何かから逃げるように部屋の隅に行き、身体を丸めた。
止まったばかりの涙が溢れて頬を濡らす。
「ごめ、」
呼吸も上手く出来とるかわからん状態で絞り出した声は、鳴咽混じりで聞き取りにくい声やった。
発言しとる俺が思うくらいなんやから、相当なんやろう。
それでも俺は言葉を続ける。
「ごめん、ごめん蟻乃、ごめん」
何度も何度も謝罪を繰り返す俺を、蟻乃は優しく抱きしめてくれた。
背中を撫でられて、少し落ち着きを取り戻す。
そのタイミングを見計らって、蟻乃は言葉を紡いだ。
「うん。怖かったやんなぁ。大丈夫、大丈夫やから、な?」
蟻乃の言葉は魔法の呪文や。
親が怪我した子供に使う「痛いの痛いの飛んでいけ」と同じように、全ての痛みや辛さを緩和してくれる。
「僕は葉間口くんの嫌がること、絶対にせぇへんから」
「蟻乃……蟻乃ぉ」
蟻乃の手の温もりが、全てを癒してくれる。
俺は久方振りの眠気に襲われつつ、ゆっくりと瞳を閉じた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
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