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変わらないもの 中編

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

188の続きです。引き続きナマ注意
エロ有、どころかほぼ全てエロです(ぬるいけど)
苦手な人はスルーを強く推奨。

 薄暗い部屋に、水音が響く。
 離れてはくっつき、また離れる唇。
 犬みたいに垂らした舌が、ひんやりとした空気と温かい口内を交互に求める。
 彼はキスをしながら、俺の体を撫でる。
 楽器を演奏するときのように、指を巧みにくねらせながら。 
「……ん、やっ」 喉ぼとけを指先がかすめ、声が漏れた。
「やじゃないくせに」
 わざわざ耳元に口を寄せてきて、彼は楽しげに言う。
 おまけとばかりにフッと息を吹き込まれ、こぼれかかった声を慌てて押し留める。
 2人の転がるベッドは広い。シーツはふかふかしていて、体の下に敷いているだけで心地いい。
 あの頃とは、違う。
「ね、多村ってさ」 首に鼻先をうずめる彼の頭に手をやる。柔らかい髪の感触。彼が顔を上げた。
「上手くなったよね。昔と比べて」
 多村は俺を撫でながら、器用に右手だけでパジャマのボタンを外していた。
「おかげさまで」 彼ははにかんだように笑う。
 ぷちりぷちりとボタンを外す音は規則的に響き、気づくと俺のパジャマは肩からするりと脱げていた。
 パジャマを床に下ろし、彼は再び俺の鎖骨の辺りに喰らいつく。
 まぬけな声を出さないように、彼の背中にがっちり巻きついて、目を固く閉じる。
「お前も、昔より……よな」
「え?」 薄目を開けた。
「いや、敏感になったよな、って」
 次の瞬間、胸を強く吸われた。思いがけず、甲高い声をあげてしまった。
「ね」
 多村は微笑んだ。その笑顔がどことなく得意げで、悔しくなる。
「おかげさまで」 俺はオウム返しに言った。
「でもさ、昔は酷かったよ。多村、すげー不器用だったもん」
「そうだったっけ」 とぼける。
「そうだよ。おかげでイクものもイケなかった」
「ふーん……」
 多村は初めて聞いた、というような顔をしている。
 そりゃそうだろう。あの頃はお前ばっかりイってたんだから。

 畳の上に押し倒されて、なんだか落ち着かない。
 汗を吸い込んだシャツが背中にまとわりついて気持ち悪い。
 どうせすぐに、脱ぐことになるんだけれど。
 ぼんやり天井を見ていると、多村の顔が視界に入ってきた。
 よくよく見ると、彼の唇はかすかに震えていた。
 なに緊張してんの?
 そう軽口を叩きたかった。 
 なのに、声が出てこなかった。どうやら、思った以上に俺も余裕が無いらしい。
「……句差野」
 低い声だった。こんな声で俺の名を呼ぶ多村を、俺は見たことが無かった。 
 ゆっくりと、唇が触れた。
 口先を合わせるだけの、キスとも呼べない拙いしろものだったのに、胸が苦しくなった。
 畳に投げ出した両の拳を、知らず強く握り締めていた。
「いいの?」
 唇を離し、彼が言った。心配そうな顔だった。よほど俺が怖がっているように見えたのだろうか。
 冗談じゃない。これは、俺から始めたことなんだ。
 俺は大きくうなずき、自分から彼の体にしがみついた。
 早く事を進めてしまいたかった。
 そうしなければ、心の何処かからこみ上げてくる不安に負けてしまいそうだった。

 唇を合わせながら、少しずつ位置をずらしたり、舌先をつつき合ったりする。
 彼はおずおずとキスをしながら、俺のシャツをまくりあげる。そして、汗でべとついた腹に手を這わす。
 その触り方は、暗闇で探し物をするようにでたらめで、悪気は無いんだろうが乱暴だった。
「……痛い」
 そう言って軽く睨むと、彼は驚いて謝った。その後は、手の動きはいくらか穏やかになった。
 彼の手は、俺の首や胸、腹、腰をたどった。
 どこをどう触ればいいのかを、経験的に知っているわけではない。
 ただ本やビデオで学んだことを思い出し、実践しているだけだ。
 あいつの頭の中で、これまで集めてきた知識や情報がフルスピードで回転しているのが手に取るように感じられた。

「どう?」
 俺の胸をいじりながら、多村が訊く。俺は唇を歪めて、あいまいな表情をつくる。
 どうも何も、猫じゃらしで体中くすぐられてるみたいで、ムズムズしてたまらねえんだよ。
 彼の触り方は、気持ちよさと言うよりくすぐったさばかりを俺の体から引き出してくるものだった。
 これでビデオで見るような、なまめかしい声を期待されても困る。
 何もせずにいるとむず痒くてたまらないので、俺は多村の首に吸いついてみた。想像通り、しょっぱい汗の味が口の中に広がった。
 多村は金縛りにあったように固まっていた。固まらざるを得なかったのだろう。
 口を離し「どう?」と訊くと、彼は赤い顔をして「ゾクゾクした」と言った。
 まったく、幸せな奴だ。
 彼の手は胸からヘソへ行き、やがてその下のズボンに触れた。
 カチャカチャと金属音を立ててベルトを外し、ファスナーを下ろすと、その中に手を侵入させた。
 これまで『内』にあったものが、『外』に引きずり出される。
 それを認識したとき、俺の体に無意識の内に力がこもった。
 布がこすれる音をやたらと響かせながら、彼の手は俺のものに触れた。
 その瞬間、俺の口から声が出た。
 多村は目を見開いた。
 俺は慌てて、両手で口を覆った。
 今まで聞いたこともないような声だった。こんな声が自分の中に存在したことを、俺は初めて知った。
 そして俺は、自分の顔がたちまち真っ赤になっていくのを感じた。
 止められない。この両手で、口のみならず顔も隠してしまいたかった。
 なのに、多村ときたら、俺が初めて反応らしい反応を示したことに味をしめた。
 

彼は俺のものを『外』に引っ張り出し、オモチャを扱うみたいにむちゃくちゃに触った。
「あ、あっ……!」
 穴の空いた風船が、しぼみ切るまで空気を吐き出し続けるのと同じように、一度開いた俺の口はもう簡単に閉じてはくれなかった。
 彼の手でもてあそばれるごとに、声は、弾丸みたいに飛び出し続けた。
「あ、も、もう……ばかっ、や、やめっ!」
「すげえな」
 多村は宝箱でも覗くようなキラキラした目で、のたうつ俺を見下ろす。
「句差野ってそういう声出せるんだ」
 もう勘弁してください。
 そう言う気力すら湧いてこず、俺は畳の上にべったりと広がった。
 甘ったるい自分の声をこれ以上聞いていたら、羞恥心で溶けてしまいそうだった。

********

 ホテルの部屋は空調が効いていて、暑くも寒くもない。
 昔のように扇風機も無い部屋で寝泊りすることは、今ではもう無い。
 それでも、どんなに周りの温度が整っていても、ヒトの体は勝手に熱くなってしまうんだ。
 ちょっと前までさっぱりとしていた白いシーツも、この部屋にいる人間の息が荒くなるごとに、湿り気を帯びていく。
 汗とか唾液とか、その他いろいろなものを吸い込んで。
 後ろから貫かれながら、それを少し惜しいな、と思う。
 両手でシーツにしがみつき、声を出すまいと右の手首に強く噛みつく。
 すると左の首筋が無防備になるから、そこに多村が攻め込んでくる。
 舐め上げたり、根元を吸ったり、軽くかじりついたり。
 耳元で何度も、切なげに名前を呼んできたり。
 体の底が、うずく。もっともっと満たしてほしい。
「気持ちいい?」
 問いかける彼の息は、熱く、激しい。
 黙っていると顎に手をあてがわれ、無理矢理顔を向けさせられる。
 目が合ったのは、ケダモノみたいに一つの行為に夢中になってる、汗だくの酷い顔。
 でも、きっと、向こうの目にも同じ顔が映っている。

 どちらからともなく顔を近づけ、唇を重ねた。
 お互いあまりキレイじゃないものを銜えた後なのに、そんなのお構いなしで貪りあう。
 唾液がこぼれてシーツにぼたりと落ち、小さなしみをつくる。
 ああ、また汚しちゃった。濁った頭でぼんやりと思う。
 多村は顔を傾け、唾液の跡をたどるように俺の顎を舐めた。
「んっ……」 不意を衝かれて、思わず声が出た。
 多村の顔がほんのり赤くなった。どうしたのと訊くと、彼は答えるのを少し躊躇した。
「お前って、……あの時と同じような声とか、顔するよな」
 一瞬何を言っているのか分からなかった。
 しかし、やがて彼の言う『あの時』が、歌っている時なのだと悟った。
「……サイテーだな、お前」
「なんで」
「俺が歌ってるの見るたび、そーゆーこと考えてんじゃねえの」
「違うよ!」 彼は憤慨した。「お前の歌う声で、そんな事考えられる訳ねえだろ!」
 眉は吊り上がり、語気は荒かった。彼はれっきと怒っていた。――ただし、目が泳いでいた。
 たぶん、どちらの気持ちも嘘ではないのだろう。
 そんな事を考えていると、彼の演奏の指使いに不埒な想像を抱いていた自分を思い出した。
 結局似たもの同士なのだと、笑った。

*****

 あの頃の俺達は若かった。良く言えば活力に満ちていて、悪く言えば見境が無かった。
 欲望と好奇心なら余るほどにあったけど、経験とテクニックはまだまだ乏しかった。
 それでも、勢いさえあればどうにかなると当時の俺達は本気で信じていたのだ。
 その考えの甘さを知るのは、いつだって身をもって痛みを味わわされたとき。
「つっ……う、あ、あ」
 反射的に出てきた声は、さっきの甘さなどかけらも含んでいなかった。
 その瞬間、あらゆる欲望も快感も、シャボン玉のようにパチンと弾けた。

 俺に残されたのは、押しつぶされそうな圧迫感と、想像を超えた痛み。
「痛い?」 多村がおろおろ戸惑いながら言う。
 痛いなんてもんじゃねえよ。お前が代わってみるか?
 文句を言うのは心の中だけになってしまった。苦しくて、喋るどころか息をするのもままならない。
 暑さと苦痛のせいか、視界に映る多村の像が二重に揺れる。
「なあ、もうやめようぜ。お前すごく辛そうだし」
 そう言って彼は俺の顔に手をやり、額に張りついた前髪を指で分ける。
 顔中、汗でびっしょりだった。
「お前のこんな顔見るために、やってるんじゃねえんだから」
 優しい声だった。彼は、俺を気遣ってくれていた。
「今すぐやめたら、全部無かったことにできるから」
 彼はそう言い、さらに「今日のことも、全部忘れられるから」と付け加えた。
 でも、俺は上の空だった。
 全部無かったことにできるから。
 その言葉が、俺を縛りつけたような気がした。
 俺は、これをすべて無かったことにしたいのか?
 いくつもの思考が頭の中を飛び交った。
 気づいたときには、俺は「やだ」と叫んでいた。

「やだ。やめちゃやだ」
「でも」
「やだ。多村じゃないとやだ」
 多村は困惑している。急にわめき出した俺を前にして、呆気にとられている。
 俺は何度も首を横に振り、ひたすら同じ言葉を繰り返した。いつの間にか、目から涙が溢れていた。
 聞き分けの無い子どもみたいで、自分でも本当にカッコ悪いと思った。
 それでも、俺は今日のことを白紙になんかしたくなかった。
 それはただ、とても単純な事実に気がついたから。
 俺はこいつが好きだから、こんな事をしようと思ったんだ。
 暑さや酔いのせいなんかじゃない。
 本気の、素の心から、俺はこいつが欲しかったんだ。
 こいつの言葉でようやく目が覚めた。
 多村の両手が、そっと俺の顔を包んだ。彼の目はまっすぐ俺を見据えていた。
「句差野。これ以上やると、痛いよ?」
「うん」
「我慢できないくらい、痛いかもよ?」
「うん」
「それでもいいの?」
 仰向けのまま、俺は腕を伸ばした。多村と同じように、俺も彼の顔を両手で包んだ。
「多村が、いい」
 蛍光灯を背に浴びた彼の顔は、なぜか泣きだす寸前のように歪んでいた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリングミスったorz
内容が内容だから恥ずくて深夜投稿なんだぜ
エロい感じがちゃんと出ているのか甚だ疑問。次で最後です


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