First Step
更新日: 2011-05-03 (火) 14:56:10
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) ひっくり返る裁判 赤ヒラヒラ×青ツンツンです。
「好きだ、成.歩.堂」
そう言ったのは、ボク目の前に立っている十数年来の親友。
いつものように裁判所で法廷劇を繰り広げたボクは、その帰りにその日の敵、御.剣.怜.侍に突然声をかけられたのだ。
神に微笑まれたような美しい顔立ちのその男は、背筋を真っ直ぐに伸ばして端正な口元からその一言だけをボクに投げかけてきた。ボクは映画のスクリーンに映し出された俳優を眺めるような気分で呆然と彼を見上げる。
「好きって……ええと、親友として?」
自分でも阿呆な解答だとは思ったが、思考が真っ白に停止した頭では、そう返すのが精一杯だった。それ以上に何があると言うんだ。
男同士だぞ。
だったら、親友として以外の「好き」なんて存在するわけ無いじゃないか。
「残念ながら、それ以上の好きだ。あえて言うなら、キミを私の物にしたいと言う独占欲から来る「好き」だな」
ニヒルに口元を引き上げ、法廷でボクを焦らせる時のような尊大な態度でそう返された。
「……独占欲?」
今のボクは、ポカンと呆けた顔をしているに違いない。実際、頭の中には数え切れないほどの疑問符が漂っている。
「そうだ。キミと今以上の関係を築きたい。ただの友人同士ではなく、もっとプライベートに立ち入った付き合いがしたいんだ」
熱弁を振るう御.剣のに、ボクは更に疑問符を増殖させながら恐る恐る彼を見上げた。
「ちょっと待ってよ、プライベートに立ち入った付き合いなら、今でも充分出来るだろ? そんな事、特に宣言は要らないんじゃないか?」
ボクの問いかけに、もはやトレードマークと化している御.剣の眉間のヒビが大きく動いた。
「違う、そうではない。キミは……その、解らないのか。私がキミに何を言わんとしているか、が」
右手の人差し指をボクに向かって突きつけ、ユラユラと動かしながら歯切れの悪いテンポでそう呟く。心なしか、若干焦りを感じているようだ。
「……わかんない」
あっけらかんと答えると、明らかに心証が悪くなった顔で睨まれた。
「キミと恋人関係になりたいという事だ」
御.剣が力一杯端正な顔を歪めてそう言いはなった言葉に、ボクは法廷であり得ない証拠を突きつけられて崖っぷちに追いやられたような感覚に陥った。冷や汗がだらだらと滝のように体をつたう。
「え、いま、なんて」
まるで音声を読み上げる機械のような不自然な音調でなんとかそう絞り出すと、御.剣はムッとした表情のまま
「だから、キミと、恋人同士になりたいと、言っている」
一語一句噛んで含めるように、そう返してきた。
「えええええええええええええ?!」
裁判所の中で絶叫してしまった事はけしからない事だが、ボクの絶叫は正当だと思う。だって、御.剣の言葉は余りにも衝撃が大きすぎる。
爆弾発言をしたにも関わらず目の前に平然と立つ銀髪の完璧超人は、ぴくりと片眉を上げて涼やかな目線をボクに投げかける。きっと、ボクの答えを待っているのだろう。
「こ、恋人同士は、イキナリすぎると思うんだ」
ショックの余り飛びまくった意識をなんとか寄せ集め、ボクは必死で答えを考えた。
考えて考えて、考えまくったあげくにボクの口をついた答えはそれだった。
凡庸極まりないが、これ以上に的確な答えが一体どこにあるというのか。ボクは御.剣が嫌いではない。むしろ好きだ。だけど恋人同士になりたいと言われたって、性別の壁は余りにも大きい。ベルリンの壁よろしくコレを突然打ち壊すなんて、ボクにはどう考えても無理だった。
「なら、友達からなら付きあってくれるという事だな」
いつも通りのポーカーフェイスなのに、そう言った御.剣の表情は何処か高揚して見える。
「う、うん。友達なら……って言うか、今までと同じ事だよな、それって」
御.剣の勢いに気圧されながらおどおどとそう返すと、御.剣はにやりと口の端を引き上げてチチチ、と指を振った。
「同じではない。キミはもう私のペースに流されている。この勝負は、もはや私が勝ったようなものだ」
尊大な態度で繰り出された御.剣の言葉に、ボクは口をパクパクとさせた。
「なら、食事をして帰ろう。キミを是非エスコートしたい店があるんだ」
あたかも姫に挨拶する騎士のように右手を胸の前に寄せ、うやうやしくボクに頭を下げる。エスコートって……一体どんな店に連れて行くつもりなんだ、この男は。
すっかり御.剣のペースに流されているのを感じながら、ボクは中空を見上げ、ふう、とため息を零した。
「キミのおごりで頼むよ」
イタズラっぽくそう声をかけると、御.剣がにやりと微笑んだ。
「元来そのつもりだ」
ホントにもう、この完璧超人ときたら。
「で、この場合、手を繋いだりとかしたほうが良いのかな?」
何気なくそう呟くと、御.剣の顔にほんの少しだけ朱が走った。
「キミがそう望むなら」
ボクとは明後日の方向を見ながら、ぽつりと答える。
「じゃ、人の居ない時だけ、繋ごうよ」
そう答えながら手を取ると、御.剣の手は、ほんの少ししっとりと汗ばんでいた。思わず御.剣を見上げると、さっきより頬が赤くなっている。
「緊張、してたんだ」
ボクの言葉に、御.剣がしかめっ面を返す。
「当たり前だ。告白をする時に、緊張しないはずが無いだろう」
辿々しく返された言葉に、今度はボクのほうが真っ赤になる番だった。そうだ、ボクはさっき御.剣に盛大に告白されたんだった。
「御.剣」
突然名前を呼ばれ、御.剣がいぶかしげにボクに視線を向ける。
「これからも、ヨロシクな」
笑顔で告げた言葉に、御.剣も満面の笑顔を返してくれた。そんな些細な事がなんだか嬉しくて、ボクは繋いでいた手をギュッと握った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
初めての投下なので緊張しました。ありがとうございました!
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