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獄中兎

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  一部で大人気らしい、ウサビッチで一本。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  緑→赤でほのぼの+ちょっとネタ入り。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
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ぎし ぎし ぎし ぎし
決して、新しくはないベッドが一定のリズムで軋んだ音を立てている。
酷く寝相の悪いものが寝ているわけでも、
誰かと、誰かが。
ベッドの中でハードなコミュニケーションを取っているわけでもない。

「541」そう大きく書かれたワッペンを縫い付けられた囚人服を身につけた男が
ベッドの上で軽快に踊っているだけである。
男の名はプ/ー/チ/ン。
清く正しく生きてきた、善良なる一般市民である。
今は、「資本主義者」の烙印を押され、
3年の懲役をくらった模範囚だ。
楽しいことが大好きな彼は、狭い独房の中。
じっとすることなど殆どなく、今日もベッドの上でコサックダンスを楽しんでいた。

時折、隣のベッドに横たわるルームメイトの様子を伺いながら。

静かな人だ。
ルームメイトに対し、最初に思ったことはそれだった。
看守からは名前しか聞いていない。

キ/レ/ネ/ン/コ。
「04」と大きくかかれたワッペンを縫い付けられた、囚人服を着ている男。
日頃、熟読している雑誌がシューズマガジンであることと、
雑誌を読んでいないときは、コレクションの靴を丹念に磨いていることから
重度の靴マニアであることだけは、しばらく一緒に過ごしているうちに把握することが出来た。

それ以上のことは、何も分からない。
彼が何の罪で、この独房にいるのか。
どうして、彼の背後にかけられているカレンダーは不気味なほどに分厚いのか。
壁に取り付けられた棚の上にいるクリオネにはちゃんとエサがやれているのか。
質問したいことは山ほどあるが、
プ/ー/チ/ンにはその質問の山を切り崩す勇気は、まだ無い。
そもそも、こちらから話しかけたことすらないのだ。
今後も、勇気をふり絞って彼に話しかけることはないだろう。
そう、本人さえもが思っていた。

「風邪の時間」

その日の彼はいつにも増して、静かだった。
シューズマガジンのページをめくる音もなければ、
シューズを磨く音もしない。
ただ、静かにベッドに横たわっている。
一時間ほど、コサックダンスにふけっていたが
流石にこれは静かすぎるのではないか・・・と思い始めていた。

意を決して、彼の側に近づいてみる。
一歩、二歩。
三歩目を踏んだと同時に、
もぞり、と彼が動いた。
全く大したことのない動きだというのに、
心臓が口から飛び出るかというくらい、驚いた。
悲鳴も心臓も口から出さなかった自分を心底、褒め称えたい気持ちに浸りつつ
彼と向き合う。

彼はいつもと同じ、無表情だった。

だが、目が酷く虚ろだ。

いや、普段から虚ろな目をしていて
自分のことが視界に入っているのかどうかすら
怪しいのだが。
いつもにも増して虚ろな目をしている。
というより、これは失神している目ではないだろうか。

仮定を頭でぼんやりと組み立てながら
恐る恐る、彼の額に手を当ててみる。
瞬間、彼はカッと目を見開いて
その手を即座に振りほどく。

悲鳴を上げそうになりながら、慌ててその場を逃げるように離れる。
だが、一瞬だけ額に触れた手が熱を帯びていることに気付き
咄嗟に振り返る。
自分の手を振り払ったあとの彼はぐったりとしてしまっている。
これは一大事だ。
すぐに鉄のドアを何度もノックし、看守を呼ぶ。

看守は何事かと言う代わりに、少しだけ不機嫌そうな目をこちらに見せる。
事情をすぐに伝えるが、看守にはその言葉がまったく真実に聞こえないらしく
鼻で笑いながら、軽くあしらおうとしている。
そのやり取りは
かろうじて、話の中心にいる彼にも聞こえていたようで
ヨロヨロと起き上がり始める。

だが、思うように動かない体でどうにか起き上がった彼が向かった先は
すぐ隣にある便座だった。
すがるようにそこの前に座りこんだかと思うと―
少しだけ、体を震わせて。
吐いた。

その動きをしばし呆然と眺めてから、
慌てて、側にかけよって背中をさすってやる。
言葉にはしなかったものの、
何度も、「だいじょうぶ?」と目で訴えながら顔を覗きこむ。
その様子を見ていた看守も、これは一大事と思ったのか。
鉄の扉ごと己を横にスライドさせながら消えていった。
しばらくして、看守はマジックハンドいっぱいに物を抱えて戻ってきた。

まず、タオルを渡して口の周りを拭くようにうながし
すぐさま水の入ったコップを差し出す。

その両方を半ばひったくるような形で受け取り、
どちらも使い終えたが、それが彼の限界だったらしく
すぐ側にいた自分にもたれかかってくる、
咄嗟にそれを支えていると看守がサポートに回り始めた。
恐る恐る、彼の足を持ち上げ
「ベッドに移そう」と促してくる。
看守と声を合わせながら、彼の体をベッドまで運び上げる。

いつもなら、蹴り飛ばされていてもおかしくない

看守がそんな独り言を漏らしながら
そそくさと、次の準備に入る。

ボールにお湯を張り、新しいタオルをお湯に浸す。
何度かしぼってから、二人は意を決して
彼の側に立った。

まずは大きく深呼吸をしてから
恐る恐る、彼の服に手をかける。
そして、目にも止まらぬ早さで囚人服を一気に脱がし、丸裸にした。
それに続くように看守が
大きく深呼吸をしてから、汗だくとなっている彼の体をタオルで拭き始めた。
そうすることで初めて目にすることになった
彼の体に刻まれた、惨たらしい傷跡の数々。

顔にも見られた、明らかにつぎはぎされたかのような
手術の痕跡は、身体にも多く刻まれていた。
一体、どんな生活をしたらこんな体になるのだろう。
ふいに、看守の手が止まる。
どうやら、同じことを思っていたようだった。
彼の過去にあった壮絶な何か、を端的に感じ取りつつ
二人は黙々と作業を続けた。

普段着用している囚人服は、一度看守が引き取ることになった。
前もって用意されていた寝巻きに着替えさせてから
彼をベッドに腰掛けさせる。
相変わらず、彼の目の焦点は合っていない。
熱いお湯を張ったタライを足元に置き、
そこに足を入れるように促してみる。

彼がそこに足を入れたことを確認してから
いつの間にか看守が淹れてくれていた紅茶を手渡す。
どうやら、看守と自分が思い描いていた風邪の治療方法は全く同じだったようである。
妙な親近感を看守に抱きつつ、静かに彼の背に毛布をかけ、
手の届く位置にシューズマガジンとレモンを置いてから、その場を離れた。
自分のベッドに腰を下ろし、ほっと一息つく。

他に自分に出来ることと言ったら、彼の状態が良くなるまで
見守ってやることくらいだった。

彼はおぼつかない手つきでシューズマガジンを膝の上に置くと
両手でレモンを持ち、ちびちびと齧っている。
どちらか片方しか、今の彼には出来ないのだろうか。
いや、彼は案外潔癖症なところがあるから
何かを食べながら本を読むという発想がないのかもしれない。

余計なことだとは分かりつつも、
つい、体は彼のところへ向かってしまう。

いらない世話だと分かりつつも、
隣に座って、ページをめくってしまう。

一瞬だけ、彼は怪訝そうな顔をしたけれども
彼は気にすることなく、シューズマガジンを読み始める。
彼がどのくらいの速度でそれを読むのか、何となく覚えていたのが幸いしたのか。
自分のめくる早さに、彼は全く文句を言わない。
本を読むのに夢中なのか、レモンを齧るのに夢中なのか。
良く分からないけれど、
ほんの少しだけ、体を前に傾けて
何かに没頭している彼が、ちょっとだけ。
本当にちょっとだけ、可愛く見えて。

つい、ページをめくっていた手は
彼の後頭部に回って。

ぽん ぽん ぽん

きょとんとした顔で彼がこっちを見ている。
彼の目に映っている自分は、きっと情けないくらいに鼻の下が伸びているのだろう。
彼は二、三回瞬きをすると
おもむろにレモンの皮を引きちぎり
指で摘みながらこちらにそれを向けて。
こう、ぎゅっと。

「ぬおぉぉぉぉぅう!!」

今、自分の目には何も映らない。
両目に入った強い刺激にもがき苦しんでいる自分を
彼はどんな顔で見ているのだろうか。
看守に見せる、あの恐ろしい顔なのか。
いつもと同じ、どこを見ているのか分からないあの顔なのか。

それとも。

自分の両目がしっかりと見えるようになる頃には
彼はすっぽりと毛布を体に被って眠ってしまっていた。
あの様子だと、きっと翌朝には元気になっていることだろう。
大きく深呼吸をしてから、自分のベッドに戻り
ゆっくりと目を閉じた。

ぎし ぎし ぎし ぎし
決して、新しくはないベッドが一定のリズムで軋んだ音を立てている。
そこに紛れ込むように、男のいびきが聞こえてくる。

男の名はプ/ー/チ/ン
清く正しく生きてきた、善良なる一般市民。

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ オシマイ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
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勢いに任せてつい
カッとなってやっちゃったんだ・・・二人とも可愛すぎる。


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