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別当×眼鏡高校生

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            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < 熊野別当×遙かなる時空を超えた眼鏡高校生
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < けっこう長いです。
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ~
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < つい出来心で…
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
      //:| |  /彳/   ,!           (  (  _ノ..|
.    / /_,,| |,/]:./   /            し'´し'-'´
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 |_____レ"

「生きるってなんだと思う?」
つまらない質問をする人間は嫌いだ。
得に、センチメンタルを気取って語ってくる奴。
「くだらないな。殆どの人間はそんな重いテーマを背負う必要なんかないよ」
「重い、ねえ。こんな簡単な質問のどこが重いって言うのさ」
大仰に手を広げて、ゆっくり喋る。
ああ、そうだ。こいつの仕種に覚えがあると、
どこか引っ掛かっていたのを思い出した。
シェークスピアだとかの古典的で芝居がかった大袈裟な演技にひどく似ている。
だけど、
俺には高慢で人を見下したような態度にしか見えなかった。
俺の人生がさも薄っぺらいかのように振る舞われている気分だ。
無視を決め込んだら、ヒノエは楽しそうに眉を吊り上げた。やっぱり人を馬鹿にしている。
「ただ生きるとはって俺は聞いたんだぜ?」
簡単なことだろう、と細く笑う。
かわいそうに、こんなこともわからないのかと言われているような気がした。
じゃあ、お前は何を知っているんだ。
たった一つしか違わないじゃないか。
兄さんだって、先輩だってきっとわからない。
生きるだなんて、大それたことなんか誰にもわからない。
だいたい、意味がなきゃいけないのか。ただ日々を生きるだけじゃ、お前つまらないって言うのか。
「そんなもの、なんで普通に生きる俺が見出だす必要があるんだよ。お前と俺は違うんだ」
そうだ。お前と俺は違う。生きる時代からして違う。
お前の考えていることなんかわかるもんか。
投げ捨てるように言い返したけれど、ヒノエの深い色の瞳が愉快そうに揺れるのを見て、もう諦めた。
ようするに、子どもっぽく突っ掛かる俺の反応を見たいのか。俺は確かにヒノエよりも幼い。
けれど、一緒のラインに並ばせないでくれよ。俺はこの世界に来るまで、ただの平凡な高校生だったんだ。
お世辞にも熊野の別当殿と経験値が同じだなんてことはないんだ。

「俺程わかりやすい生き方をしてる人間もそうそういないけれどね」
経験豊富な熊野の別当は、余裕たっぷりの笑顔でそう言い放った。
わかるもんか。わかりたくもない。
そう呟いた俺に「それじゃあわかるまで付き合うかい」と畳み掛けた。
まるで誘導尋問みたいにして、こいつのしたいことは何となくわかる。
俺がぐうの音も出なくなるまで説き伏せて、流されるのを待っているんだ。
自分から動くのに無理に押さずに、相手が倒れ込むのを狙ってる。
「押すだけじゃダメなんだよ。時には引かなきゃならねぇの」だなんて兄さんが言ってた。
兄さんだって恋愛の経験値は高くないだろうけれど。
俺が知らないだけかもしれないけれど。
「ようするに、自分の好きなように生きてるんだろ。そんな風に生きてるヤツが俺に人生の意味を問うのか?」
どうして俺はヒノエの誘導尋問に引っ掛かるふりをしているんだろう。けして流されてもいいとは思わないのに、そう思うならば拒めばいいのに。きっとヒノエも、拒み続ければ諦めるに違いない。去る者は追わないと、ヒノエ自身が言っていたのに。
「さあね。しいて言うなら、俺はアンタの春の嵐だからかな」
苛々する俺を尻目に、ヒノエは猫のようにしなやかな伸びをして、気持ち良さそうに目を閉じた。
「アンタの居心地のいい春を掻き乱す凄烈な嵐が俺なんだよ、譲」
そうした後で、さも真剣なんだと言いたげに俺を見るなよ。
「どうせ気まぐれのくせに」
思わず口をついて出た言葉が拗ねているようで俺は顔が赤くなった。
完全にヒノエの手の平の上だった。
「女性はみんな気まぐれが嫌いだけれど、譲まで嫌いだったなんてね」
これはこれは、と芝居掛かったように口笛を吹いて、目の前を嬉しそうにしているプレイボーイ。
古典でやったなあ。源氏物語。
こいつ、きっと光の君を知ったら「俺はもっとうまくやるね」と自信たっぷりに言うに決まってる。

「お前はいいよ。次から次へ相手を変えても、きっと同じ気持ちでいられるんだろ。それだけ相手に思い入れも愛情もないんだ。俺は…たとえ兄さんが先輩と付き合っていてもそれでいいんだ…今の俺たちの均衡が崩れて、俺の居場所がなくなるのは嫌だ。今のままがいい」
結局、俺はわがままかガキなんだ。
俺がいて兄さんがいて、先輩がいる。
そういう関係をずっと続けていたかった。
俺は二人が大事だから、たとえ俺が先輩に恋をしているとしても、何も望まない。
先輩がいてくれるだけでいいんだ。
楽しかった日々を、守りたかっただけなんだ。
「感情は生まれて消えるものなんだぜ。変わって行くことは怖いかい?」
お前はそう言うけれど、変わらなければならないなら、俺はそんな未来いらないんだ。
俺は本当に臆病で、そしてただの子どもなんだ。
だから構わないでくれよ。俺なんかより、物分かりのいいヤツなんかたくさんいるだろ。俺は面倒だろ。
「想像もできないよ。変わって、それでどうなるんだ…」
あっち行けよ。あっちに行けってば。
こっちに来ないでくれ。
俺の何をわかってるつもりなんだ。
お前になんかわかるもんか。わかってたまるか。
「さあね…けれど、望美も将臣も変わって行くよ…アンタを置いて。アンタがそうやって泣いたって無駄だぜ」

俺は泣いてなんかいない。
同情なんかまっぴらだ。
こっちに、来るなよ。
「俺が好きだって認めなよ。そうしたらアンタもきっと変わるよ」
俺は小声で、ただひたすらいやに決まってるだろ、誰がお前なんかと繰り返した。
「恩着せがましく言うな。俺が好きなら好きって言えばいいだろ。腹が立つんだ、お前」
「回りくどく言うのも口説くコツなんだよ、わからないかい」
しゃがみこんだ俺の頭をヒノエは撫で続けていた。
俺は顔を上げられなかった。
今、顔を上げてヒノエを見たら、俺は本当にこいつに流される。
「大丈夫だ、アンタ大丈夫だよ」と呟く声が優しく響いて、風が少し涼しくなって、秋が始まる気配がした。
先輩と兄さんが恋人同士だと知ってから、俺は初めて泣いた。
失恋じゃないな、喪失感なんだろうか。
けれど片隅からわき出るこの満たされた気持ちはなんだろう。
あんまりに撫で続けているので、観念して顔を上げた。
ヒノエが笑っていない。
「なんだよ、笑えよ」と言ったら、「笑えないよ、アンタが好きだ」と言われた。
確かに笑えないな、シュールなギャグにもなれないよな。
「俺の方がお前の春の嵐だったのか?」と聞いた途端、ヒノエの顔が下りて来て視界が暗くなった。俺は目を閉じた。

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