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千昭×功介

>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )時かけより。どちらかというと千昭→功介。
              千昭が若干猟奇的なので苦手な方はすんません

信頼とか友情とか愛とか思いやりとか、俺の世界にはなかった。
あったのかもしれないけど、少なくとも俺はそんなのとは無関係だった。

両親は遺伝子提供者でしかなく、無機質な試験管の中で生を受け、
管理者の義務と責任によって育てられた。だから、その手の温もりを俺は知らない。

それに、表現や思想や言論の自由が大きく規制された世の中では、
誰が本音を言っているのかも、誰に本音を言っていいのかもわからなかった。
表面ではよろしくやっといても、誰がいつ自分を裏切り、誰がいつ自分を欺くのかと、
互いに警戒し合っている。だから、誰にも心を開かなかった。

でも別にそれを、不憫だ、とか、悲しい、と思ったことはない。
周りの誰もがそうだったし、それが普通だったからだ。
暴虐と欺瞞に満ちた世界ではごく当然のことだった。

そうだ。俺は誰も信頼したことがないし、誰からも信頼されたことがない。
誰かに期待をかけたこともないし、かけられたこともない。
誰かを好きだとか、守りたいとか、愛してると感じたこともなければ、当然、
愛したいとも愛されたいとも思わなかった。

功介、お前と会うまではさ。

知り合ってから仲良くなるまでそう時間はかからなかった。
愛想のなさと他人への無関心が関係してるかはわかんねぇけど、とにかく
誰も容易に近づいてこなかった中、

『おーい、間宮!』

功介だけが、こっちの顔色を伺うようなことを一つもせずに、無遠慮に俺のテリトリーに入ってきた。

『家こっちなんだろ?途中まで一緒に帰ろうぜ。』

それから、帰る時、帰る前の寄り道、昼休み、10分休み、移動教室も、と一緒にいる時間が長くなり、
何をきっかけにってこともなく、いつからか互いに名前で呼ぶようになって、
やがて休日も一緒に過ごすようになった。

功介といるのは居心地がいい。
まず、大多数がやる好奇心のみの詮索や干渉は絶対にしねぇし、
頭がいいからと言って勉強一辺倒の堅物ってわけじゃなく、冗談も通じる。
それから、同じ空間にいてお互いに全然違うことをしていても、全く会話がなくても、何の気を遣う必要もない。
俺はあいつの隣りで腹を向けて寝ることも、背を向けて寝ることも可能なわけだ。

そして、こんなこと功介には絶対に言わねぇけど、
何より側にいてほしい理由は、あいつが俺のことを叱ってくれるからだ。

俺が何か、人間的にできてねぇことをしたり言ったりした時には、真剣に怒ってくれて、
しかもその後は絶対に許してくれる。

ただ頭ごなしに怒りを向ける奴は大勢いたけど、俺のことを思って怒ってくれるような奴は、
今まで俺の周りには一人もいなかった。

なぁ功介。これが友情ってやつだろ?これが信頼ってやつなんだよな?
一緒にいるのが楽しくて、冗談言い合って、笑って、
間違ってることは間違ってるってちゃんと言ってくれて、だから何でも話せて、
でも時々何も話さなくてもわかってくれて。

なぁ、功介。

俺はこんなに崇高なもんを今まで手にしたことがなかったんだ。
こんなにも誰かに愛情を注いでもらったことは、お前の前にはただの一度だってない。
そんな奴が、愛されることの喜びを知ってしまったら、どうなると思う?
愛したいなんて望んじまったら、どうなると思う?

お利口さんで博愛主義なお前には、全く理解できないんだろうな。

「もしもし、功介。」
『おぅ。』
「あのさ、超ーーひまなんだけど。」
『ぶっ、なんだよそれ。』
「いいだろ。お前だって暇してたくせに・・・・・。なぁ、今から遊ばねぇ?」
『いいよ。家来るか?』
「あぁ。じゃあまた後でな。」

7月になったばかりの土曜日、午後7時。
夕日が沈み始めた川沿いの道に自転車を走らせた。

学校のない日はだいたい昼過ぎまで寝て、夕方から功介や真琴に連絡を取る。
でも真琴を呼ぶと、「女の子は遅くならない内に帰すのがマナーだ」とか功介がうるせぇし、
それに、真琴が帰るのと同時にその流れで解散ってことにしょっちゅうなるから、
申しわけねぇけど、最近は、夜遅くまで遊びたい時には真琴は誘わねぇことにしてる。

ごめんな、真琴。悪いのは功介だからな。

「なぁ、功介。」
『ん~・・・?』
「ちょ・・・そろそろ暇してきた。」
『あぁ・・・・・。』
「ぉいっ、なんかしようぜ!」
『ちょっと待って・・・今いいとこなんだ・・・。』

功介の家にお邪魔してから早一時間。雑誌を読んだり音楽を聴いたりするのに飽きてきて、
ベッドの上に仰向けに寝転がって難しそうな小説を読みふける功介の足を揺らしても、まるで構ってもらえない。

「つまんねぇって!」

・・・ったく、一つのことに集中すると他のことには目もくれねぇんだから・・・・・。

「!」

そうだ、いいこと思いつーいたっ。

功介の方にちらりと視線だけをやると、相変わらず同じ姿勢で熟読している。
気づかれないようにゆっくりと、音を立てないようにそーーっと、ベッドのすぐ横のサイドテーブルを引き寄せた。

おぉ、色んなもん入ってるな。

まずテーブルの上にはボックスティッシュとMP3プレイヤー、そしていくつかの単語帳。
一番上の引き出しはごちゃごちゃとしていて、二番目、三番目は大して物は入っていない。
下の二つをそっと戻して、一番目を中心に物色させてもらう。

まず、シャープペンにボールペンに、セロテープ、カッターナイフ、ハサミ・・・。
なんだこりゃ、文房具入れか?

さらに中を調べる。

ばんそうこうに綿棒、ピンセット、包帯、ネット、ガーゼ・・・。

「・・・・・・・・・。」

なんか、ベッドのすぐ横にこれ置いてるのって、ちょっとやらしくね?
それとも、そう考える俺がやらしいのか?

もっと奥を調べると、

「あーーーーーっっ!」

功介が、視界を遮っていた本を少し上にずらして、こっちを見る。

「これなーーんだ?」
『あっ・・・!お前何やってんだよ!』
「功介もこんなん持ってんだな。」
『ったく、静かになったと思ったらこれだ・・・!』

お、一応気にはしてくれてたんだな。

「なぁ、これ開けていい?」

返事を聞く前に未開封だった箱を開ける。

『お前なぁ・・・・・。開けてもいいから、その辺に出したもんしまってくれよ。』

功介の文句は軽く聞き流して、箱の中からさらに密封されているものを取り出す。

「へぇーーーっ、初めて見た。」
『お前本気で言ってるのか?』

呆れ顔で言う。

「あぁ、マジ。」

ゴムは貴重な資源だからな、庶民のもとには回ってこないんだ。
なんて言ったところで、笑われるか、さらに呆れさせるかのどっちかなんだろうけど。

『男のマナーだ、持っとけよ。』
「相手もいねぇのに?」
『いつ入り用になるかわかんねぇだろ?』
「用意周到なわけだ。お利口なんだな、功介君は。」

にやにやと笑って、功介の目前で半透明のそれをヒラヒラとさせると、

『備えあれば憂いなしだ。』

と、笑った。

「な、これってどのくらい耐久性あるんだろうな?」
『さぁな。ま、簡単には破れないだろうけどな。あ、でも、銅には弱いらしいぜ。』
「なぁ、ちょっと試してみようぜ。」

それから功介の部屋にある色んなもんを突っ込んでみた。
携帯に、メガネケースに、ペン立て・・・。一番おっきぃもんで500ミリのペットボトル。

「だめだ、破れねぇなぁ。」
『鋭利なもんを入れりゃすぐだ。』
「バカ、それじゃ意味ねぇだろ。できる限り似せねぇと。」

と言って、右手で何かを握って擦るような真似をすれば、察しのいい功介はすぐにわかる。

『だったら、さっきのペットボトルの時点で既にアウトだろ。』

困ったように笑いながら言う。

「あのさぁ、功介。」

その表情が好きなんだ、って言ったら、お前笑う?

「・・・・・・・・・・・お前の大きさどれくらい?」

このくらいかと拳を突っ立ててゴムを被せれば、功介が悪乗りする。

『いや、俺のはもっと硬度があって、角度はもっとこう・・・。』

と、手を伸ばす。

「くっ、ははっ!!まじかよ!ちょっと見せてみろ!!」

ゴムをその辺に放り捨ててベッドに飛び乗り、功介に馬乗りになって、両手を上にして押さえつける。

『くくっ、やめろよっ。それを見れるのは俺と寝ることができるラッキーな女だけだ!』
「もったいぶってんじゃねぇよ!!」

いつものことだったんだ。くだらねぇことぎゃあぎゃあ言い合って、笑って、気がすむまで笑って、
なんか力が抜けて、一瞬静かになって、それがおかしくてまた笑い出す。
今日もそうなるはずだったんだ。だけど、

目が合っちまったから・・・。鼻先が触れ合うほどの至近距離で、目を合わせちまったから・・・。

『千昭・・・?』

俺の意図を確認するかのように、目を丸くして、右、左と視線を泳がせた功介に、

『っ・・・。』

キスをした。

あーー、何やってんだ、俺のバカ。やっちまった、ついにやっちまったぞ。

そっと唇を離すと、功介は、目を皿にして、2度、3度と瞬きさせて、俺の目を捉えている。

さぁ、なんて言い訳する?

どうにもまとまんねぇ思考を死にもの狂いでコントロールしようとしていると、

「!」
『!』

功介の携帯が、フローリングの床の上で、ブブブ、と鳴った。
それを機に、功介が全力で俺を押し退ける。

『何やってんだよっ、気持ち悪ぃっ・・・!』

甲でごしごしと唇を拭って、携帯を開いた。

あぁ・・・・・助かった・・・・・・・。

時を戻そうと思えばできる。でも、そうしたくはなかった。

功介は画面を一目すると、何度かボタンを押して折りたたみ、ベッドの上に放ってから言った。

『真琴、家の用事で来れねぇんだって。』
「えっ、お前あいつに連絡したの?」
『あぁ。』
「なんで?」
『なんでって・・・・・、真琴に内緒で二人だけで遊んだりしたら、あいつが可哀相だろ?』
「・・・・・・・・・・・そんなもん?」
『そんなもんだ。もし俺と真琴がお前に内緒で二人だけで遊んだら、お前だって嫌だろ?』

ん?今なんか、ちょっとっていうか・・・・・すげぇイラッとした。
なんだ?どっちが嫌なんだ?

功介が真琴を独り占めするのが気に入らねぇのか?それとも、
真琴が功介を独り占めするのが気に入らねぇのか?

よく考えろ。自分の心を探るんだ。

例えば、真琴が俺に内緒で早川さんと遊ぶとする・・・・・・・・・別にどうってことはない。
じゃあ早川さんじゃなくて、別の男と遊ぶとする・・・・・・・・・ちょっとムカつくけど、さっき感じたほどじゃない。

じゃあ・・・・・・じゃあ、功介が俺に内緒で他の男や女と遊んだら?

>STOP ピッ ◇⊂(・∀・ ) しかも続きます。申し訳ない。


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