Top/32-260

幼なじみ

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
吟玉幼なじみ組で、微妙に鬘・吟←鷹
矛盾・捏造しまくり、予想以上に長くなってしまいましたorz

墨を重く吸い込んだ筆を脇に置き、短く息をつく。
自ら率いる鬼兵隊が拠点とする船に設けられた自室で、高杉は書状を認めていた。
相手は以前から交渉を試みている反幕府組織だ。取引先との交渉には電子メールを用いるよりも、
こちらのほうが信用を得やすく、確実な為である。する事もなくただぼんやりと和紙に走る黒い染みを見つめる。
まだ乾き切っていない墨は、物書きを覚えたばかりの頃を思い出させた。
あの頃は考えもなしに筆を走らせていたから、字というよりも絵といったほうが正しいかもしれない。
あれから両親や師に学問を教わるようになり、多少は見れるものになったものだ。
(…師……か)
懐かしい響きだ。彼の存在も、彼の教えも、片時たりとも忘れる事はなかった。
常に懐に入れている教科書は、生涯大切にしようと誓った遺品となった。

「明日江戸へ行く」
突然桂の自室に乗り込んで来た高杉は開口一番に言い放った。
桂はそれまで目を落としていた書物から顔を上げ来訪者を一瞥するが、またすぐに戻す。
窓から差し込む夕日のせいで、普段は黒い長髪が幾分茶色く透けて見える。
隅には見慣れた白髪が横たわっていたが、胸が規則的に上下しているのを確認すると、高杉は桂に向き直る。
「聞けよヅラ、お前はどうする」
座布団が見当たらない為、刀を横に添え無造作に腰を降ろす。元来そういった事には無頓着な性格だ。
「ヅラじゃない桂だ。貴様こそ江戸へ出るなど、遠足にでも行くつもりか?貴様が思っている程甘い所ではないぞ」
「てめぇこそ田舎者の癖に、何をわかったように」
呆気なく切り返される。頭の切れる男ではあるが、これは普段の反骨精神から思わずついて出た言葉だろう。
まだまだ子供だなと思いつつ、話を聞くつもり等毛頭なさそうな態度の高杉に、桂は内心舌打ちをする。
栞を挟みそっと本を閉じる。

「………それで、何をやらかすつもりだ?」
「聞かなくてもわかってんだろ、高尚なお侍様にはよ」
「………戦、か」
高杉自身は口を歪めるだけで肯定も否定もしなかったが、彼特有の少し下卑た笑いが、図星である事を物語っていた。
いつからこの男はこんな生意気な笑みを浮かべるようになったのだろうと桂は思う。
「ご両親は知っておられるのか」
「知ってると思うか?」
「馬鹿な真似はよせ、高杉。貴様の気持ちは俺とてよくわかっているつもりだ。
だがここで問題を起こす事は浅はかというものだ。風を読め、時期を見ろ」
黙って聞いていた高杉だが、諭すような桂の口調に苛立ち、抑えていた声を思わず張り上げる。
「風って何だ?時期って何時だ?あれからもう半月経った。この国全体が天人の廃除を、
討幕を願っている事はお前もよくわかってるだろ。俺はもう我慢ならねぇ。お前は違うのか?」
高杉の言う"あれ"が恩師である松陽の刑死である事は聞くまでもなかった。

一息にまくし立てる様子に圧倒されそうになるが、応じるように桂も怒声を上げる。
「馬鹿者!そのような事を松陽先生が望んでいる筈がなかろう!自己中心すぎるぞ、高杉!よく考え直せ」
「ふざけんな、んなこたわかってんだよ!わかった上で行くって言ってんだ!」
「だから貴様は馬鹿だというのだ…!そんな事俺だって同じだ、この国が天人に侵されていくのを黙って見てなどいられるものか!
しかし今は我慢するしかないだろう、今歯向かった所ですぐに殺されるのがオチだ!
大体貴様は実戦の経験もない…」
「もういい!」
高杉は桂の言葉を遮り、脇に置いた刀を乱暴に掴み荒々しく立ち上がる。桂もつられて立ち上がろうとする。
「待て、何処へ行く!」
「うるせぇ!お前に話した俺が悪かった、もう話す事なんざねぇ!
そんな事をぬかしてる時点で、お前は俺の気持ちなんぞわかっちゃいねぇんだよ」

激しい口論に互いに息が切れる。荒い呼吸も上下する肩も全てが煩わしく思う。
一旦間が開き、聞こえるのは二人分の息遣いと微かな鼾だけになる。
橙色に染まった白髪が動く気配はない。先に沈黙を破ったのは桂だった。
「俺に……自ら死に行こうとする仲間を、止めるなと言うのか…?」
悲哀を湛えた瞳を直視出来ない。悲しげな声で初めて気付かされる桂の思いに、高杉は沈痛な面持ちになる。
「………お前は何時になったらそのガチガチの箱から出ようとするんだ」
ただ一言不満を告げると身体を翻し、そのまま出ていこうと襖に手をかける。

「おい、待てよ」
高杉の背に、落ち着いた低い声がかけられる。高杉は顔だけを背後に向ける。
声の主は片肘をついて横になっている銀時だった。背中を向けていた筈が、いつの間にかこちらに向き直っている。
きっと先程の重なる怒声で起きたに違いない。
それまで傍観者ですらなかった人間が話だけは聞いていたのかと思うと、自分達が原因であるにも関わらず、高杉も桂も目の前の男が急に憎らしくなる。
「俺も行くわ、江戸」
「銀時…!?貴様まで何を言って…」
銀時はわざとらしく聞こえるように長い溜息を吐く。体を起こし立ち上がろうとする動作すら怠そうだ。
「俺もいい加減うんざりしてんだ。もう、充分待っただろ」
頭を掻きながら桂に向き直り正視する。唖然とする桂がまるで金魚のようだと思う。
「お前はどうすんだ、ヅラ。……同じなんだろ」
迫るでもなく咎めるでもない視線を投げかける。いつも通りの呼び名に対する否定の言葉は出てこなかった。

ようやく振り絞られた声は、先程の口論のせいか少し掠れていた。
「………俺は……」
室内の空気が自然と張り詰めるのが分かる。二人の注意が桂に集中する。
「……………いや、一晩考えさせてくれ」
「……もし来るつもりがあるなら…どこにする、高杉」
「境内だ。来るなら明日正午、支度をして境内へ来い。」
「だってよ」
高杉はそれきりさっさと部屋を出ていく。続いて銀時も出ようとする。
襖を閉めようと振り返った銀時の目に頭を抱える桂の姿が映る。俺にどうしろというのだ、という台詞は聞こえないふりをした。

「来ると思うか」
「どうだろうな」
互いに顔は合わせず、速めの歩調で帰路を歩む。並んだ二つの影は癖毛のほうが僅かに長い。
「江戸へ行ったら」
「まず俺らと同じような奴らが集まってる所を探す。基本的に何処でもいいが、敗戦一色の所は避けたい」
銀時の言葉を遮るように繋げる。更にその後の計画も事細かに説明した。
冷めた所があると思えば、一方では感情に素直すぎる所もある高杉だ。
事実、今回の件もそういった性格に原因があるだろう。てっきり突発的な計画だとばかり思っていたので、銀時は舌を巻く。
「……明日か」
「ああ」
「随分急だな」
「上京自体は前々から考えてた。お前らには黙ってただけだ。」
そこで銀時はようやく合点が行く。長い付き合いとはいえ掴みにくい男ではあったが、計画性がある所だけは昔から変わらないようだ。
「数日後には戦の中、ね。実感ねぇな」
「そりゃそうだろ。俺らまだ実戦経験ないんだぜ」
「それでお前もよくその気になったな」
「同じ事言い返してやるよ」
高杉から笑みが漏れる。先程の雰囲気とは違った柔らかさに銀時は安堵する。幾らか緊張は解けたのだろうか。
「俺らなら何とかなるさ」

「俺はよ」
ふと高杉が口を開き、誰に聞かせるでもなくぽつりと呟く。
ただ溜まっていた思いを吐き出したいのだろうと思い、銀時は黙って聞こうとする。
「仇討ちが何の得にもならねぇ事くらいわかってるんだよ。身勝手に他人を巻き込むなんて出来ない事もわかってる。
……でも心の何処かで"あいつらなら"と思ってた。もしあいつがやらないって言ったら、一人ででもやってやろうと思ってた。
仇を討ちたいと思っているのは俺だけなんじゃないか、不安もあった」
先程の激昂した桂が銀時の脳裏を掠める。声を張り上げる桂を見るのは実に久しぶりだった。
「結局は独りよがりだ」
自嘲的な響きを含んだ口調に、銀時は初めて高杉のほうを見る。
自分よりも少しだけ低い位置にある高杉の頭を眺め、少し固めの髪をぐしゃぐしゃと乱暴に掻き乱す。
「なっ」
「やっぱ馬鹿だなぁてめぇはよ。ヅラの気持ちも何となくわかるぜ」
どういう意味だと聞きたそうな高杉を無視し、前に向き直り先を続ける。
「確かに独りよがりだよ、おめぇは。何かしら報いたいと思ってんのはお前だけじゃねぇんだ。
それだけは覚えておけこのタコ」

その翌日、境内には腰に刀を差ししっかりと旅仕度をした桂の姿があった。
銀時と顔を見合わせ、罰の悪そうな表情の桂を道中からかった事を覚えている。
今思えば江戸へ向かうあの旅路こそが、三人で過ごした最後の綺麗な思い出のように思える。
死地に赴くというにも関わらず、"この三人なら大丈夫だろう"という無意識下の絆が互いにあった。
その後出会った坂本という奇っ怪な男も交え、戦場でそれぞれが名を上げていった。
出陣したての頃は生傷も絶えなかったし、時には命に繋がる程の大怪我をする事もあった。高杉も例に漏れず片方の光を奪われた。
戦場での記憶は決して明るいものではなかったが、気兼ねない仲間と過ごしたひと時はとても居心地が良かった。
くだらない言い争いや殴り合いの喧嘩をしたのも、生涯彼らだけだろうと高杉は思う。
それぞれが抱える目的は違っても、共に過ごしたあの時間だけは確かなものだった。

終戦から何年も時が経った。
天人がはびこるようになり、戦時の跡形もない程変わり果てた町並みも見慣れてしまった。
銀時には銀時なりの、自分には自分なりの道がある。互いに不干渉である事が一番なのだ。
そう悟るには充分な年月だった。
鬼神と恐れられた男が姿を消した当時、激しい憤りを感じたのは事実であった。
数年ぶりに見た姿に戦時の覇気は無く、更に幻滅した事も事実であったが、喧騒のさなか自分を殴った拳は殴り合いをしたあの頃と何一つ変わっていなかった。
押し込めていた怒りをぶつけた所でわだかまりが消える事はなかったが、その事実が高杉にとっては意外な事で、ほんの少し嬉しかった。

二度目に見た男は白夜叉そのものだった。祭で殴られた時とは違う、異質な高揚感を覚えた。
歩む道は違えど、かつての狂気は未だあの男の中に眠っているのだ。そう思うと、それがどれほど奥底にあろうと構いはしなかった。

懐からおもむろに書物を取り出す。大した重さはないが、自分にとっての価値を思うと急に重みを増してくるようだった。
古びてはいるが、すぐに手に馴染む感覚がとても懐かしく思える。先日桂に切られた断面を指で軽くなぞる。
あの一件以来これを見る度、師そのものを斬られたようで複雑な気分に陥る。

以前桂に言われた事を思い出す。
"お前はただの獣だ"
あまりに的を射た表現にあの時高杉は自嘲するしかなかった。
しかし、本懐を遂げるまではただひたすら走り続けるしかないのだ。
自分にしか出来ないから自分がやる。今更後悔などするものか。本を持つ手に力が入る。
昔を懐かしんでいる暇など無い事はわかっている。
今更過去を振り返った所で、何かが変わるわけでもない事も、十分すぎる程に理解している。
それでも時に心がひかれてしまうのは未だ過去に捕われているという事なのか、高杉にはわからなかった。

俺が本当に過去を振り返っていいのは人生に幕を引く時だ。
そう言い聞かせながら、身体を倒しそのまま仰向けになり片方しかない目を腕で覆う。

なぁ、銀時。ヅラ。坂本。
俺はお前らと袂を分かった今でも、あの頃の思い出だけは捨て切れないでいる。
けれど俺という人間が終わるその時まで、二度と振り返る事は無いだろう。きっとこれが最後になる。
互いに口に出した事はないけれど、もう声が届く事はないけれど、
復讐に生きる俺が一人の人間として持っていたい最後の思い出だ。
「やっぱり俺は独りよがりだな、銀時」
天井の染みを見つめながら呟いた言葉は響く事無く虚しく消える。腕の隙間から漏れる光の眩しさに目が眩みそうだった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
携帯からなので改行おかしくてすみませんでした


このページを共有:
  • このページをはてなブックマークに追加 このページを含むはてなブックマーク
  • このページをlivedoor クリップに追加 このページを含むlivedoor クリップ
  • このページをYahoo!ブックマークに追加
  • このページを@niftyクリップに追加
  • このページをdel.icio.usに追加
  • このページをGoogleブックマークに追加

このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP