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男と彼の話

生注意。このあと三分割で。

どこにも出せないのでこちらにお邪魔します。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 なんで結婚なんてすんの。
 枕を抱え、シーツに頬をつけて、こちらに聞かせたいんだか聞かせたくないんだか、ぎりぎりのボ
リュームで彼がつぶやく。彼が男の結婚について口を出すのは初めてだったのですこし驚いた。いつ
ものように、なにも言わずとも受け入れてくれているものだとばかり、思っていた。
「酔ってんなら部屋帰れ、このベッドにふたりは無理や」
 右の甲で彼の腕を軽く数回叩いたが効果がない。「おい、」名前を呼んで手首を掴む。ぐっと力を
込めて起き上がらせようとしたが、彼の身体はそのまま、動かない。
「今日はなんもやらんよ、ここどこかわかってる?」
 さすがにそれなりの部屋は用意されているが、当然ここはシングルルームだ。標準以上の体格を持
つふたりが十分にくつろげる広さではない。たった三つの椅子を奪い合う立場にいる以上、翌日以降
に無駄な疲労感を残す行為は致命的だった。
「なんも仕事しないで帰されたいの」
「わかってる」
 むすっとした声が返ってくる。ふてくされた態度を隠さない彼の握ったままの両腕に力が込められ
て、彼の上半身が起こされた。
 男が椅子に座っているせいで、普段見慣れた角度より十センチほど低い位置に彼の前髪が見える。
伸びた髪が目元を覆っている。(切ればいいのに)自分のことは棚に上げて右手を伸ばしたが、彼の
左手が伸びてきて羽虫を相手にするみたいにぱちんと払われた。冷ややかな視線が向けられるその瞬
間が好きだった。立場を一瞬忘れてしまいそうだ。

「答えてよ。おまえ、なんで結婚すんの。やめちゃえばいいじゃん」
「あほか、やめるもくそも、もう婚姻届出してきたわ。新聞読んでへんの」
「…読んだ」
 表情に乏しいのは仕事中だけでいいのだ。本当は社交的で上からも可愛がられる性格をしているの
に、顔で幾分か損をしている。以前なにかの折にそう言ってやったが「きみにそんな顔して言われる
と殴りたくなる」とぎゅっと眉をしかめられた。実際殴ってから言うのは反則だ。男とて自分で選ん
だ顔や身体というわけではないのだから、文句を言われる筋でもない。
「なんで結婚なんかしちゃうかなあ」
「しつこい、うざい、今更言うなや」
「ならいつ言えばよかったの。きみの口からなにも相談だってされてないし、メールだっておれがし
なきゃぜったい送ってこなかっただろ」
 淡々と言葉を並べる彼によって、男の前に事実が突きつけられる。なにもかもその通りだ、彼の言
う通り。弁明などできないし、しかしだからといって謝るのもどこか違う。どうしたらいいのだろう
、本当に。彼との付き合いはもう三年以上にもなるのに、機嫌の取りかた一つにしたって手探りだっ
た。「もういいよ」諦めたのか呆れたのか捨てたのか、投げやりな言葉を残して、男の手の中からす
るりと彼の手が逃げる。ベッドのなかに身体が沈む。また、逆戻り。ため息をつきたいのは男も同じだ。
「きっと、おまえはしあわせにはなれないよ」
「なんでや」
 しばらくしてぽつんと落ちてきた彼の言葉に反射的に返事をして、すぐに後悔する。聞いてはいけ
ないことを聞こうとしている。これは確信だ。

「だって」指で横に置かれたライトから伸びる紐をくるくるといじりながら、身構えている男の顔を
見ることなく、微笑さえ浮かべて彼はやわらかな声音で告げた。「おまえはおれのことが好きだもん」
 反論の余地が男に与えられることはなかった。とん、と静かにその事実がふたりのあいだに晒され
て、男がその意味を求めているあいだに彼はくるんと身体を反転させた。背中を向けてすべてを拒絶
している彼にかける言葉はなにもなかった。男には同意することすら許されてはいない。

「かぎ、そこの、上着のなかだから。勝手に探して」
 なにも考えられないまま、言われた通りに壁にかかった彼の服を探る。安っぽいプラスチックのタ
グに繋がれた部屋の鍵はすぐに見つかった。刻印された部屋番号を指でなぞる。男の部屋の斜め前に
ある、同じつくりの部屋。
「あったけど、だからなに」
「おれ今日ここで寝るから、もう疲れて眠くて動きたくないから、だからおまえがおれの部屋にいっ
てそこで寝て。おやすみ」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
チュウトハンパナ オワリカタニ ナッテモウタ… オチガナイヨ 正直スマンカッタ!


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