Top/31-406

00 公×炭酸

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邪魔してすみませんでした。
改めまして。

               ,-、
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            //  .||               ∧∧
.          // 生 ||             ∧(゚Д゚,,) < ガ.ン.ダ.ム.0.0より
        //_.再   ||__           (´∀`⊂|  < 旗×公、稲×炭酸が前提の
        i | |/      ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ~
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 公×炭酸です。
       .ィ| |    ./]. / |         ◇と   ∪ )!
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 |_____レ"

 何やってんだろうなー、とつくづく思う。
 ふらつく頭を少し持ち上げて俺の上に乗っかってる奴を軽く睨んでやると、そいつは
「何かね?」
 と金色の髪に縁取られた顔に余裕たっぷりの笑みを浮かべて俺を見下ろす。
 くそ、嫌味な奴め。こっちは口を開くだけでくたびれるってのに。
「何がしたかったんだよ、お前」
「何が、とは?」
「だから、これにどういう意味があったんだっての」
 まったく、どうしてこんな状況になったんだっけなあ。鈍ったままの頭を巡らせてみる。
 はじめはただ酒を飲んでいただけだったはずだ。
 そうだ。始まりはこいつの誘いに乗ったことだったっけか。
「暇なら私が取っている部屋にくるかね。酒くらいはご馳走しよう」
 こいつがいつも連れ回してる技師らしき男は今日は不在のようだった。
 向こうも暇を持て余していたようだし、俺も断る理由はなかったから、二つ返事でOKした。
 思えばこの時点ですでに間違っていたのかもしれない。
 まあ、今更言っても後の祭りだけどな。

「パトリック・コーラサワー。君の生き甲斐はなんだ?」
 グラハム・エーカーは唐突にそんなことを訊いてきた。
 なんの脈絡もなくいきなり質問されたって答えようがねえってのに。訳わからん奴だ。
 だから正直にそう返してやったら、奴はあからさまに呆れた顔をした。
「どうやら、君に論理的な説明を求めた私が愚かだったようだ」
 うわむかつく奴! 常に上から目線なのも気に入らねえ。
「テメエ喧嘩売ってんのか、ああ?」
「そんなつもりはない。正直な感想を述べたまでだ」
 ……どうやらこいつは無自覚に人の神経を逆撫でするタイプみたいだ。
 軽く小突いてやろうと拳を突き出したら、そのしなやかな手でゆるやかに絡め取られた。
 そして何をトチ狂ったか、俺の手の甲に、唇を落とす。
 一瞬、頭ん中が真っ白になった。

「何してんだァ!?」
 慌てて手を引っ込めようとしたが、強く握り込まれていて自由にならない。
 それどころか更に腕を引っ張られ、奴に顔を寄せる形になった。
「まあよかろう。君みたいなタイプには口で説明させるより身体に訊いた方が早い」
 瞳を覗き込んで、そうのたまう。
「君と私は似ていると思うのだがね」
「何言ってんだお前?」
 俺の問いには答えず、おもむろに唇を重ねてくる。
 今度は一瞬どころじゃなく硬直した。
 ああ、俺、こういう他人の話を聞かずに自分の次元で事を進める奴って大っ嫌いだ。
 ま、俺も周りから見たら大概そんな感じなのかもしれねえが。
 とにかくこの状況はなんだ。
 まさか、誘われてるんだろうか。俺は男で、奴も男なのに?
「どうかな?」
 唇を離し、挑戦するような目を向けてくる。
 ああ嫌だ嫌だ、勘違いじゃないらしい。マジだ。こいつは本当に何を考えてるんだ。
 俺の返答を待っているのか、何も言ってこない。俺はしばし考える。
 はっきり言えば、嫌悪感は当然ある。これがムサい野郎だったら悩むまでもなくお断りだ。
 しかしかなりの酒が入っていたせいか、ヤケッパチな気分も確かにあった。
 普通なら相手をぶん殴って帰るだけのものを、わざわざ逡巡しちまったのがいい証拠だ。
 この時点ですでに俺も正気の沙汰じゃなかったんだろう。
 けど、まあ、こいつは顔だけならいいし、ちょっとくらいならいいか。
 そう結論づけて、返事の代わりに奴の頭を抱え込んで今度は深く口付けた。
 ソファにもつれ込んで、奴の服を脱がせていく。
 と、途中で腕を掴まれて止められた。
「そう急くな。順序というものがある」
「は? って、うわっ」
 押し退けられて身体を起こした途端、両肩を押さえつけられて立場が逆転した。

 ソファに仰向けになる形で、俺に跨るグラハムを見上げる。
 奴は俺の服を丁寧に脱がしながら、首筋から胸へと唇を滑らせる。
 完全に肌蹴た俺の身体を掌でまさぐり、腹を通過して、ベルトまで差し掛かる。
 相変わらず唇と舌で胸を弄びながら、奴の手はベルトを外し俺の分身へ……。
 ちょっと待て。おかしくないか。
 どうにもさっきから、主導権を握られっぱなしの気がするんだが。
 まさかとは思うが、しかし。
「お、おいおい待て待て」
 人が考えている間にもどんどこ進めていく奴の額を押し返すと、興を殺がれたような顔をして、
「無粋だな。何だというんだ」
 と、不機嫌を隠そうともせず言う。
 散々躊躇ったが、意を決して訊いてみた。
「なあ、まさかとは思うが……もしかして、もしかしてだな。……俺が、抱かれる側なのか?」
「無論」
 ああ。
 なんてこった。
 なんてこった!
 俺が認めたくないことを、気のせいであって欲しいと思ったことを、さらりと肯定しやがった。
 まるで質問にさえ値しないとでも言いたげにあっさりと。
 その上、逆に訊き返してくる。
「まさか、君が私を抱く気だったのか?」
「いやあ、だって、流れ的にそうかなーと思ってたんだけど」
「生憎私は男に抱かれる趣味はない」
 俺だってねえよ。
 駄目だ、こいつとはまともな会話ができそうもない。マイペースにも程がある。
 二の句を告げずに黙ってる俺を見下ろして、奴は言った。
「で、どうする。やめるか?」
 その声音には微かに揶揄の響きが感じられて、ついカッとなって深く考えずに反論しちまった。
「だっ、誰がやめるか!」
 俺のバカーッ!
 失敗した。完全に間違えた。ここでやめとくべきだったんだ。
 臆病風に吹かれたと見られたくないという、俺の強情もこのときばかりは逆効果だったのに。

 とっさに後悔しても遅すぎた。奴は意地の悪い笑みを浮かべて、
「なら、続けるぞ」
 手の中に握り込んだ俺を再びしごき始めた。
 こうなりゃ腹を括るしかない。もう自棄だ。
「好きにしやがれ馬鹿野郎!」
 せめてもの抵抗として奴の耳元で絶叫してから、さっさと終わることを願って目を閉じた。

 俺も軍人だし、体力には相当の自信があった。
 訓練中の負傷もザラだし、痛みには慣れているつもりだった。
 けど、このザマはなんだ。
「お……ぉ、おまっ……っ、ちったァ加減しろ……」
「無理を言うな。こちらとていっぱいいっぱいだ」
 息も絶え絶えの俺の抗議も、一刀に斬り伏せられた。
 最悪だ。こいつの態度も疲弊しきった俺の身体も腰の痛みも何もかも最悪だ。
 しかも、
「おえええええええええ」
 絶え間なく襲い来るどうしようもない吐き気。正直泣きたい。
 もう嫌だ。もう絶対、もう二度と、金輪際男になんて抱かれるもんか。
「ここで吐いてくれるなよ」
 グラハムの言葉はにべもない。ちったあ労るとかできないのか。そもそもお前のせいだろうが。
「げええええ、マジ吐きそう」
「……情事の後くらいもう少し色気のあることを言えないのか君は」
 俺に何を期待しようってんだこの馬鹿。
 バカアホクソ虫。いっぺんくたばれ。
 畜生、最大限に罵ってやりたいのにこれ以上言葉が浮かばない。
 語彙の少なさを思い知らせやがって。本当にむかつく野郎だ。
 と、心中では散々毒づくも、実際文句を口にする気力もなくなる程消耗しきっていた。
 深呼吸をして息を整え、目を瞑ってしばらく身体を休めることに専念する。
 まったく、何やってんだろうなーとつくづく思う。
 こんな辛い目に遭ってまで、どうしてこんな奴の真意を知りたいと思っちまうんだか。

 だいぶ落ち着いたところで、ふらつく頭を少し持ち上げて奴を軽く睨んでやると、
「何かね?」
 と金色の髪に縁取られた顔に余裕たっぷりの笑みを浮かべて俺を見下ろす。
「何がしたかったんだよ、お前」
「何が、とは?」
「だから、これにどういう意味があったんだっての」
 さっきのたまっていた、生き甲斐だの俺と自分が似ているだのという話。
 わざわざ俺を抱いた理由。
 これがどういう意味を持つのか、どういう繋がりがあるのかがよくわからなかった。
 グラハムは少し考えるそぶりを見せてから、ゆっくりと口を開く。
「イナクトに乗って自分はエースだと豪語する君がね、酷く楽しげだったからさ」
「はあ、わけわかんねえ。それと抱くのとどんな繋がりが」
「だからそう急くな。君はまず人の話を最後まで聞くということを覚えたまえ」
 こいつにだけは言われたくない台詞だったが、言い分は確かなので口を噤む。
「MSを操縦している時の君は実に生き生きとしていた。
 ところが地上にいる今の君はどうだ。
 常にどこか不機嫌そうで、地に足が着いていない印象を受ける。
 だから思った。きっと君は、魂の半分は今でもコックピットの上に残したままなのだろうと。
 そしてそれは、私も同じことだ」
 奴の指摘は……事実だった。
 俺の心は、いつだってコックピットの中にある。
 モニタ越しに見下ろす地上の風景。
 俺自身が機体と一体になったような、操縦しているときのほぼ陶酔と言っていい程の高揚感。
 あの感覚は何物にも代え難い。
 地上にいるときには焦燥感にさえ似た孤独を覚えるのだ。そして改めて痛感する。
 俺の居場所は、俺の愛する世界は、コックピットの中にしか存在し得ない事を。
「確かにその通りだ。あの席こそ俺の為だけに用意された場所だ。
 何があろうと、あの場所だけは誰にも絶対渡さねえ……!」
 無意識のうちに空を掴むように伸ばしていた俺の手をグラハムが取り、自分の頬へと寄せた。
「ああ、やはりMSの話をするときの君は良い顔をするね」
 そう言って笑う奴の表情も、遠くの恋人に想いを馳せるかのように幸せそうだった。

 ようやくこいつの意図が見えた気がする。俺もこいつも、同じ穴の狢ってわけだ。
 ま、MSに乗っている時が最大の喜びなんて、こんな変態はそうはいないだろう。
 で、ここからは俺の予想。
 きっとこいつは似た者同士の俺を抱くことで、空虚なもう半分の魂を埋めようとしたんだろう。
 クサいとは思ったが、試しに訊いてみる。
「で、心のスキマは埋められたかよ?」
「……いや、駄目だな。虚しさが一層増しただけのようだ」
 俺の予想は間違ってなかったらしい。
「だろうな。俺ももう、何かの代わりに抱かれるなんて御免だ」
「そうだな、悪かった」
 と、それまでの余裕ぶった態度はどこへやら、急に疲れた顔になって俺の胸に倒れ込んできた。
 突然の出来事にびっくりした。
 こいつがこんな弱々しい顔を見せるなんて初めてだ。
 俺はどんな態度を取ればいいのか、なんて言葉をかければいいのかわからず戸惑う。
 もしかして、これが奴の素なのだろうか。
 普段の凛として自信に満ちた、余裕ありげな振る舞いが実は演技だとしたら。
 本当はただ見栄っ張りなだけで、実際は生きていくだけでいっぱいいっぱいなのだろうか。
 人の話を聞かないのは、聞いている余裕がないだけなのかもしれない。
 この予想が正しいかどうかは知らない。
 だが何となく奴が哀れに思えてきたから、頭を撫でてやった。
 俺たちはお互いの足りない部分を補い合える存在にはなれない。
 けど、こいつにはいずれ、欠けた心を埋めてくれる何かに出会える日がくればいいと思った。

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.          // 止 ||             ∧(゚Д゚,,) < 本番は冗長になりすぎるためカットしました。
        //, 停   ||__           (´∀`⊂|  < どうやら私は炭酸に夢を見すぎているようです。
        i | |,!     ||/ |           (⊃ ⊂ |ノ~
         | |      /  , |           (・∀・; )、 < 8話には出番あるかしら……。
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