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魔法

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
いまさら前スレ>>505-508の続きです。
某葡萄バンドの元四弦×唄です。ナマモノ注意。
元四弦が脱退後、二人が連絡をとっていないという設定です。

 相反した感情がめぐり続けているのを、眺めることしか出来ない。諦めることも縋ることも出来ずに、どこにも辿りつけないまま、胸の中を回っている。それはもう日常だった。
 会いたかった。けれど会えないだろうことは分かっていた。だからこのままで、よかった。
 日常の中で彼を思う。そのくだらなさも愛しさも、大分前から気付いていた。

 吸い殻を携帯用灰皿にねじこんで、立ち上がる。最近はどこもかしこも禁煙なので、こういう人気のないような道で吸うのが常だった。誰もいない道で煙草を吸うことが単純に好きなのかもしれない。
 軽く伸びをして歩き出そうとしたとき、背後からかけられた声に固まった。

「田i中くん!」

 ばく、と心臓が大きく一度跳ねる。ちがう、違う、そんなはずはない。頭が真っ白になってうまく考えられない。中途半端に虚空を見つめたまま、動けなかった。
 こんなところで会うはずはない。ああけれど、このなつかしい声は。

 ぎこちない動きで振り返ると、とても懐かしい顔があった。

 ガードレールに腰かけて、ぼんやりと街灯の光を見つめる。となりでは彼が煙草を吸っていた。火を点ける動作、煙を吐き出すときの遠い目、全てが懐かしかった。

「みんな元気?」
「…まあぼちぼち」
「はは、そうか」

 何がおかしいのか、目を細めて笑う。締め上げられるように胸が痛んだ。
 彼の見た目は、年月の流れを物語っている。昔と同じ姿ではない。けれど雰囲気が、声が、しぐさが、あの頃のままなのだ。昔と同じように話しかけて笑う、それはおれが夢見た姿だ。
 だめだ。甘えて縋りついてしまいそうになる。許してくれ と言ってしまいそうだ。

「……田i中くん」

 おれは、変わってしまった。縛られたままでいたかったのに、そうはなれなかった。閉ざされていた部分が開かれていく。その変化を、心の底から喜ぶことは出来ない。どこかに罪悪感があった。
 彼がそれを望まないであろうことは分かっている。けれど置き去りにしてしまうようで、恐ろしいのだ。

 いっそ恨んでほしい。全てお前のせいだと罵って、刻み込んで逃れられないようにしてほしい。それは永遠になる。

「おれは、田i中くんを恨んだことなんか一度もないよ」

 その言葉に弾かれるように振り返ると、彼は優しく笑っていた。やめてくれ。そんな笑顔を向けられる権利なんて、ない。

「……嘘や」
「嘘やない」

 あんまりにも静かに彼が言うので、おれは泣きそうになった。おれはあんたから逃げた。そしていつか、あんたを忘れていく。鮮明に思い出せることが少なくなって、引きつれるような胸の痛みを忘れて、なんでもない顔で歩いていく。

「あれは仕方のないことやった。誰のせいでもない。それにおれは田i中くんが、」

 ああ、だめだ。泣いてしまう。

「好きや」

 身体を折って膝に頭をこすり付ける。肩がみっともなく震えているのが自分でも分かった。けれど止まらない。
 こんな単純な言葉で救われてしまう。何が変わったわけでもないのに、これを望んでいたのだ、と思えた。

「ゆるして、くれるんか」

 声もひどいものだった。掠れてくぐもって、彼に届いたかどうかも怪しい。けれどちゃんと伝わったらしかった。

「許すよ」

 涙が止まらなかったせいで顔は上げられなかったけれど、恐らく彼は笑っているのだろう。柔らかく笑っておれの背中を見つめながら、煙草を吸いながら、あの頃のようにおれに罵られるのを待っているのだ。
 だからおれは涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げて、アホ、と言って笑った。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イロイロ スイマセンデシタ!カンサイベン ワカラン!

  • 泣ける…こうなるまでに十円はげできた棚可はほんとにいいこだとおもいます -- 2012-10-13 (土) 01:01:47

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