権助魚 ガッ10×ショタ
更新日: 2018-08-28 (火) 02:04:33
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| ナマ ラクGO家 ガッテンシショー ×ショタシショー
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| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 最後の話です。長くてスマソ
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| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
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| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
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惹かれているというのなら、その人柄だったり才であったり。
ひとつひとつ並べると、どうしても惹かれちゃう自分への言い訳に見える位だ。
出会う前から存在は知っていて、初めての出会いの瞬間こそ覚えては
いないけれど、気が付けばこの業界にいる誰よりも、ある意味で近い場所に
入り込まれていた。
趣味も嗜好も180度違う。鎹と呼べるのは、お互いのこの職業に対する真摯な気持ち。
真逆のベクトルを持つこの男を、何時から好きだったかなんて、俺は覚えちゃいないんだ。
普通ね、温泉ってやつは、癒されたくって来るもんだよねぇ。
ふやけるの上等! な勢いでお湯に浸かって、美味しくご飯頂いた挙句に
しっかり酔っ払ってる人間が言うのも失礼な台詞なんだけどさ。
癒されてはいるんだよ。身体的には。
お刺身美味しゅうございました。
地酒美味しゅうございました。
たった一つの気がかりの所為で、気持ち良くは酔っ払えないこのジレンマ。
二歩先にあるシノさんの楽しそうな背中が羨ましいよ、八つ当たりだけど。
流石温泉効果なのか、いつもよりも軽く見える足取りを眺めていると、
先日覚えた違和感が嘘みたいに思えた。本当に『嘘』なのは今の状態なんだろうけど。
そんなに切り替えの早い人じゃない。
しかし寒いったらありゃしない。コートの前を合わせても、背筋を震えが駆け上がる。
耳も痛い。酔いも何処かに行っちゃうよ。
流石温泉街と言うべきか、まだ早い時間なのにネオンなんかは殆ど消えて
しまっているし、土産物屋のシャッターもこぞって下りているから余計に寒々しい。
お互いに一泊二日分の休みのスケジュールが上手に合ったから、じゃぁ本格的に
旅に行く前に取り合えず近場で何処か行きましょうなんて話になったのは、
真昼の、あの不透明な呼び出しから十日も経たない頃だった。
この家業はタイミングが勝負。行った者勝ちだもん。兎に角忙しいシノさんですからね。
俺の方はといいますと、多忙なシノさんに合わせられる状況だったのが
ラッキーだった……のかなぁ。
会いたいけれど会いたくない。会えば気持ちがぐらぐら揺れる。楽しく呑気で
平穏に生きたいんだよ、俺は。こんな葛藤趣味じゃないんだ。
まぁでも色んな事を足したり引いたりしても、悔しい事にシノさん会わないって
選択は自分の中にはなかったってのが我ながら泣けるんだけど。
会うまではドキドキしてたけれど、待ち合わせていた駅で、俺が時間通りにしか
来ないのを知ってる癖に早目に着いたらしい、シノさんの待ちくたびれた顔を見たら
すとんと心が落ち着いた。捜し求めていた『いつも通り』ってヤツが不意に
戻ってきたんだな。だからいつもの旅行みたいに、電車の中から缶ビール開けて、
お互い結構ご機嫌な状態で現地に着いて、相変わらず遺跡関係に興味のない
シノさんに愚痴零しながら引っ張って観光して歩いて、それは楽しかったんだよ。
そのテンションのまま宿入って風呂入ってご飯食べてって流れだったから
余計な事考える暇もなかったし。
そのまんまで居られたら良かったんだよ。
なのに、どうかな、これ。
わざわざもう1回着替えて、寒風吹き荒ぶ中、わざわざ煙草ひとつ買いう為に
コンビニですよ。馬っ鹿じゃないの。
旅館でも売ってるじゃん。そんな珍しい銘柄吸ってる訳じゃないんだし。
それが、繰り返すけど、『わざわざ』、どうして、コンビニなんだろう。理解に苦しむわ。
頑なに主張しやがったオヤジはやけに楽しげな姿勢を崩さないから、文句を口に
出す気にはなれない。その分腹の中で繰り返してみたけど、これでラク太郎兄さん位
腹黒になったらどうしようかと考えてやめた。黒くなったおなかの中を元に戻す方法、
ガッテンする程のものがあるとは思えない。本当に煙草だけを買ってコンビニを後にした
帰り道、シノさんは道の途中で足を止めて夜空を仰いだ。
「ショウちゃん、ほら」
「ん?」
「星が良ぉく見えるよ」
右手の人差し指で天上を指して、シノさんは囁く様に言った。
導かれるまま目線を真上にすると、確かにそこには街灯の光に負けない沢山の星が
瞬いていた。シノさんの歩く足元ばっかり見ていたから、全然気付かなかったよ。
「すごいねぇ」
思わず素直に返してしまう。吐く息の白さと、頬を撫でる風の凛とした冷たさ。
その上でキラキラと静かな光を降らせる星というのはずるいシュチエーションだった。
悔しいかな見惚れていると、シノさんが言った。
「今まで色んな場所で満天の星ってヤツ見てきたけど」
「え、ガッテン?」
「うるせぇ。ま・ん・て・ん。お前、そういう混ぜっ返し好きだねぇ」
脊髄反射みたくボケてみたら、シノさんは目尻の皺を深くして呆れて肩を竦めた。
シノさんに『お前』って言われるのは嫌いじゃない。比率では『あんた』の方が
多いから、ふとした拍子に出る『お前』を聞くと、なんだか得した気分にもなった。
トーンの柔らかさが、そのまま親しさに繋がるからだろう。
「すいませんねぇ。それで、色んな所で見て来たけど?」
「あぁ、沖縄で見たのが、銀色の砂を空一面にぶちまけたみたいな星空で、
一番奇麗だったけど、今日のも妙に奇麗に見えるなぁ」
「酔っ払ってるからじゃない?」
「それもあるけど、お前と見てるからかねぇ」
……駄目だ、このオヤジ。うっかり俺の事殺しちゃう気じゃないの?
殺されかけてる俺が悪いんだろうけど、他意なく言うなよ、そういう台詞。
「あんた、口上手いね」
素っ気無く言い返すと、何がツボに入ったのかシノさんは大口を開けて短く笑うと、
そのまま目を細めて俺に視線を移した。
「噺家だからね」
「そりゃそうだ」
オチとしては正しい着地。ツッコミを入れる隙はないし、これ以上此処に突っ立って
いるのも寒いだけだからと歩き出す。今度はシノさんが俺の後ろを着いて来る形だ。
俺ははぐらかしたのかな、とぼんやり思った。
酔っ払いの戯言といえばそれまでなのに、やけにきつい態度を取った。多分シノさんは
俺の後ろ頭を見てるんだろう。
振り返れなかった。
宿に戻って、シノさんが美味そうに一服をするのを肴に酒宴を再開させる。
飲んじゃうに限るんだ、こういう時は。
話はまだまだ山の様にあったし、シノさんは先刻のやり取りを気にした風もない。
だらだら飲みながらチャンネル数の少ないテレビを観賞している内に、潰れたのは
シノさんの方だった。
床に転がったシノさんに、布団かけてあげるべきかなぁなんて考えつつ、手元の
リモコンでテレビの電源をオフにする。
すぐには動く気にはなれなかった。この所の、はっきりしない自分の気持ちを
確かめるには良い静寂だ。何より目の前に張本人がいる。
しばらくの間、テーブルに頬杖をついて静かに上下するシノさんの胸の辺りをぼんやりと
眺めながら、出会ってからの色んな事を思い出していると、自然と『もう駄目だ』って
覚悟が固まった。
動物園のベンチで青空を見上げながら、うちの師匠を想ったあの瞬間が頭を過ぎる。
時間がさぁ、サラサラサラサラ流れてって、ついでに色んなものを押し流して
行っちゃって、奇麗なものだけが残るじゃない?
辛かった事や哀しかった事は流れてって、最期は晴れた日に太陽に透かしたビー玉を
覗いたみたいな記憶が残される。
まだうちの師匠に対してはそんな美しいレベルに達していないけど、でもいつかは
そうなっちゃう。風化が怖いとか、そういう理由じゃないよ。
残酷だけど美しい世の中の理ってヤツ?
あの時ね、めちゃめちゃ日常な癖に、時間の流れから取り残されたみたいに、
100年後でも呑気に長い鼻をブラブラさせてそうな象なんか見てたからさぁ、
気付かされちゃったんだよ。
シノさんとこうやってんのも、いつか記憶の中だけの事になっちゃうんでしょ?
でも、それでいいってやっと思えた。今離れる理由になんてなりはしない。
ましてや、育った気持ちを打ち消す理由にもならない。
何かもう、全部をひっくるめてこの人がいとおしいよ。お手上げだ。
魚をね、生まれてこの方見た事ない人間は、魚を魚って認識出来ないじゃない。
権助魚と一緒だよ。
今まで知ってたのと心の動き方が全然違ったから、上手に分類出来なかった。
でも、これはこういうものだ。魚屋にあるからって、カマボコがそのまんま川を
泳いでたって信じる様な間違いはしてない自信はある。
完全に白旗を掲げたらもやもやしていたのがすっきりしたから、安心してシノさんを
起こそうって気になって、寝てる傍まで近寄ると床に正座して肩を揺さぶった。
「シノさーん、風邪ひくよー」
……起きねぇなぁ。
そういや、この前と立場逆なんじゃない?
前回は俺が寝ちゃってて、シノさんが起こそうとしてた。まぁ、俺は途中から
狸だった訳ですが。
「シノっち~」
もう一度呼びかけて強めに肩を揺すったけれど、瞼が一瞬ピクっとした位で起きる気配は
皆無だ。疲れてるんだなぁ。
仕方がないので、歪んだら不味いからとシノさんがかけてる細っこいフレームの眼鏡を
そっと引き抜こうと手を伸ばした。フレームの冷たい感触が指先に伝わった刹那、
シノさんの左手が俺の手首を掴んだから驚いた。無防備になっちゃってた所に、
ぐっと腕を引っ張られちゃったから、勢いそのまま倒れこむ形になってしまう。
シノさんとの距離が、ひどく近い。
狸寝入りだった証拠にシノさんはぱちりと瞼を上げると、ふぅっと一つ息を吐いて
最近よく目にする苦い笑みを浮かべながら、低く問いかけてきた。
「ショウちゃん、あん時起きてたろ」
『あん時』が『どん時』なのかは瞬時に理解出来た。ついでに冷や汗が滲む。
あの晩の雪の名残みたく本当に冷たいよ。悪戯がバレたって、そんな可愛い気持ちには
ならなかった。どちらかというと、人の日記を盗み読みしたみたいな感覚だ。
覗き込んでくるシノさんの中に確信めいたものがあるのを知り、これ以上誤魔化せないと
悟って頷いた。
「……起きてました」
「やっぱり」
「いつから気付いてたの?」
「気付いてた訳じゃないよ。……あのさぁ、なんであの時、目、開けなかったの?
起きてたなら、俺が何をしようとしてたのか気付いたろ」
怒ってるのでもなく、ただ単に質問をされて、それがとても答えにくいもんだから、
俺としては黙るしか手がない。
一番シンプルな回答は『されても良かった』だけど、もうちょっと正確には
『して欲しかった』になるのかも知れない。どっちにしろ言い難いんだよ。
察しているのかいないのか、シノさんは目を逸らしてくれない。
まだ腕は掴まれていたけれど、力なんてこれっぽっちも篭ってなくて、逃げようと
思えば逃げられた筈だった。俺がシノさんの上に覆いかぶさっている体勢と、
心の現状は正反対だ。
「気ぃ使って、起きられなかった?」
「違う」
間髪入れずに答えてしまう。起きようと思えば何時だって出来たんだってば。
心の整理はついたけれど、まだそれを口に出すのは躊躇われた。簡単に出して
いい言葉じゃない。
逡巡をどう取ったのか、シノさんは腕を引っ張った時と同じ唐突さで肩を掴むと、
くるっと体勢を入れ替えた。今まで畳を見ていたのに、今度は天井。
余りに早業でびっくりしたよ。
「じゃぁ、やり直し」
「やり直しってっ」
淡々と言ったシノさんの指がひょいっと伸びて眼鏡のブリッジにかかる。反射的に
目を瞑りかけたら、簡単に眼鏡を引き抜かれた。途端にぼんやりする視界。組み敷かれる
体勢の、上から降ってくるシノさんの掠れ声。
「裸眼でどの程度見えるの?」
「ほとんど見えないよ」
「これは?」
顔の間にある距離を、どうやら半分くらいに詰めてくる。目を眇めた所で視界の悪さは
変わらない。
「0.01の視界を舐めなさんな。本当に見えないんだって」
「じゃぁ、こんなもん?」
さらに半分。プレッシャーがじわじわかかるって。
心理戦に勝てる自信なんてこれっぽっちもないよ。反撃なんて逆ギレ程度。
「自分だけ眼鏡かけてずるいんだよっ。見えるわきゃねぇだろ、そんなの」
威勢が良いのは口先だけ。頭の中の冷静な部分で、後に引けないのは俺かシノさんか、
どっちの方かなって考えた。ちょっとづつを距離を縮めるシノさんと、まだ見えないと
叫ぶ俺と。最後までいったらどうなるのかなんて、明白過ぎんのに。
シノさんの思惑が読めない。表情が見えないから、余計にだ。
しばらくの間シノさんは黙っていたけれど、ふと感心した様に言った。
「そっかぁ」
「なんだよ」
「ショウちゃんがツリ目気味なのに可愛く見えんのは、目の上っ側の方が丸っこいから
なんだな」
「観察してんじゃねぇよっ」
余裕のある態度に、ぷっつりと忍耐の糸が切れた。
顔の横に突かれているシノさんの腕分の距離を、浴衣の襟をぐいっと引っ張って
数センチまで縮めてやる。
「あんた散々確認してるけど、これでもまだ見えないからね。」
本当はもう結構シノさんの驚いた顔が見えていた。でもここまでくると完全にチキン
レースだもん。虚勢を張ってなるべく挑戦的に見える様に睨みつけてはみたけれど、
訪れた沈黙に迷いが頭をもたげる。一旦固まった気持ちがまたぐらぐらしそうになった。
逃げると思ったのかな。
それとも逃げて欲しかったのかな。
シノさんの気持ちは分からない。
動かないシノさんにその揺れが伝わったのか、浮かんでいた困惑がすぅっと引っ込んで
真顔になって、ぽつりと零した。
「俺の負けだわ、ショウちゃん」
勝ったっと変な達成感を持ったのも束の間、シノさんの唇が額に触れる。
予期せぬ行動は、俺を硬直させるのに十分だった。
次に、瞼。思わずぎゅっと目を閉じると、耳元で囁かれる。
「いいの? 目、閉じられると、先に進んじゃいたくなるんだけど」
この後に及んでまだ探り入れますか、このオッサン。
瞼を上げると、至近距離でまともに目が合う。
小さい頃砂場でやった、砂で作った山を両端から片手で掘っていってトンネルを作る
作業みたいだった。今、大きな砂山の真ん中で、やっと指先が触れた気がした。
俺一人が勝手にあたふたしてたんじゃなくって、この人もそうなんだ。
随分前に流行ったビビビって感じる恋じゃない。二人でゆっくりとここまで積み上げた。
俺が目を開けたのを拒否と取ったのか、シノさんが身体を引きかけるのを、
掴んだままだった襟に慌てて力を込めるので防ぐ。
「ショウちゃん……」
頼りない声に、表情が緩んじゃう。
額と瞼って微妙さだけどキスして貰っちゃったから、次は俺の番でしょう。
一つ大きく息を吸うと、伝わります様にと念じながら口を開いた。
「例えばさぁ、シノさんちの流派には、前座から二ツ目に上がる際のラインが
あるでしょ。鳴り物、歌舞音曲の一通りをマスターする。最低でも50席は噺を
覚えて合格を貰う、だっけ? あんたが2年弱でやっちゃった事だよ。当たり前だけれど、
人の気持ちにこんな明確な基準はないじゃない。だから迷ってたんだけど、
なら別にこれはこれでいいんじゃないの?」
「これって?」
「俺がシノさんを好きだってこと」
初めて声に出して、あぁやっと言えたなぁって実感が湧いた。嬉しくて泣きそうになった。
「前座の頃に出逢ってるから、初めて会った時からもう20年位経ってるよ。
仲良くなってからは10年以上かぁ、……時間かかったよねぇ。古酒の発酵見学してた
みたいだよ。呑気が信条の俺にこんだけシリアスさせてんだから、あんた凄いわ。」
シノさんは目をまん丸にして俺の言葉を聞いていたけれど、読み込み速度の遅い
昔のパソコン並の時間をかけてやっと理解してくれたのか、ふにゃっと解けた笑いを
浮かべた。
「ショウちゃんは、落語だけじゃなくって俺を喜ばせる天才だね」
「まかせといて」
別に狙って言った訳じゃないけどね。
シノさんがこつっと額をぶつけてくる。握っていた襟を離して、その手を背中に
回しながら、今度はちゃんと自分の意思で目を閉じた。
明け方に、目が覚めた。
障子の向こうは薄ぼんやりとしていて、夜が明けているのがわかった。ぐるっと
首を回すと、酒の残った頭が痛む。
あぁ、今日は二日酔いスタートか。
あの後、気持ちが通じ合ったからといって勢いでそのまま最後までって訳にもいかず、
妙に気恥ずかしいテンションのまま酒盛りを再開させて、反動で二人ともべろべろに
酔っ払って眠った。
最後の方の記憶がないからどっちの責任かは知らないけど、腕枕ってどうよ。
道理で寝苦しいと思った。……暖かかったけどさ。
ちらっと見上げるとシノさんの幸せそうな寝顔があって、恥ずかしさの余り慌てて
目を逸らしてしまう。いや、恥ずかしいだろ、どう考えても!
おっさん二人で腕枕ですよ。絶対に他人に見られたくない。
見られたら口封じだよ。洒落になんねぇって。
なんだろう、こう、じたばたしたくなる感覚。
シノさんだよな、これやったの。俺からねだったとか思いたくもない。
でも万が一ってのがあるから、この件については問わないでおこう。うん。
起こさない様にそっと腕を外して、枕元に置いた眼鏡をかけながら布団を抜け出す。
暖房の切れた室内はひんやりとしていて、二の腕を手で擦りながら背中を丸めて
冷蔵庫からお茶を取り出した。
暖かいのが飲みたかったけれど、わざわざ煎れるの面倒だし。
冷えたお茶が咽喉を滑っていく感触に、乾きが癒されて人心地つく。
ふとビールの空き缶やなんかが転がっているテーブルの上に置き去られていた、
キャビン・マイルドの赤い箱が目に入った。
何となく取り上げると、中にはまだ数本が残っていたからその内の一本を抜き出してみる。
俺が煙草を常習的に嗜む機会は、きっと一生ないんだろうけど。
戯れみたく火をつけて、煙を吐き出しながら眉を顰めた。
ずっと匂いだけはよく知っていたその煙草は苦い筈なのに、昨夜のシノさんの唇と
同じ味がして、甘かった。
惹かれているというのなら、その人柄だったり才であったり、人の煙草隠れて吸ってる
可愛らしさだったり。
ひとつひとつ並べると、どうしても惹かれちゃう自分への言い訳に見える位だ。
……いや、もういいよ。言い訳で。どうしたって好きなんだ。
言葉を操る商売をしていても、上手く伝えられない心ごと全部。
明るくて軽い、他人を気遣える人柄も。
しなやかでありながらしたたかに不思議な空間を作り出す才能も。
ちっちゃい癖にやたらとアグレッシブな所も。
素は意外なまでにシャイで孤独を持て余している不器用さも。
並べてみると、やっぱり言い訳だ。
浮かびかけた苦笑いを、バレない様に噛み殺す。寝ているフリがばれるのは、お互い
1回あれば十分だろう。
認めればとてもシンプルな、たった一つの気持ちが心の中に灯りを燈す。
それはショウちゃんが吸ってる、俺の煙草の先で赤く燃えている蛍みたいな小さな
明かりだったけれど、暗闇の中確実に存在を示した。
そう、存在。存在だよ。
ぴったりハマる言葉を、やっと見つけられた。
ショウちゃんに惹かれるとか、まどろっこしい言い方じゃないものを。
早くショウちゃん戻ってこねぇかな。そしたら昨夜言いそびれた言葉を言えるのに。
俺はね、多分、全部ひっくるめて、ショウちゃんの存在ってやつを愛してる、ってさ。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 長らくのお付き合い
| | | | ピッ (・∀・ ) ありがとうございました。
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| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
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これだけ書いたらすっきりするかと思ってたが
熱がさめてくれないので、諦めてサイト作る努力します
ネットの海の何処かで見かけたら、その時はよろしくお願いします
- ガッ10さんのシワくちゃな笑顔が頭の中に広がり、二人にすごい萌えました。このカプにハマりました。いつか姉さんのサイトを見つけだしたいと思います。 -- 2010-04-02 (金) 22:19:14
- このお話の空気が好きです。私もサイト探してますが、なかなか見つかりません…!がんばります!もっと読みたい…! -- 2011-06-15 (水) 06:10:04
- 上の人は過去ログ読むといいことがあるかも。まだ生きてるかはわからないんだけど。 -- 2011-08-28 (日) 14:05:27
- もだえました…!姉さんの書く話が大好きです。サイト見つからないのが悔しい! -- 2012-02-22 (水) 21:28:03
- ヒント置いてる人いるけど、過去ログにのってるアドが生きてるみたいだよ -- 2012-02-25 (土) 16:00:02
- 素敵です。たまに無性に読みたくなります。 -- 2013-07-20 (土) 07:03:58
- その過去ログの名前を教えてください -- 2016-02-14 (日) 21:01:55
- 過去ログ教えてください!! -- 2018-08-28 (火) 02:04:23
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