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ある司祭の日記より、抜粋

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                     |  オブリビオン。殿下と主人公だよ
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  捏造いっぱいだよ。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ホノボノッポイヨ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
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あの悪夢のような日から、何もかもがすっかりひっくり返ってしまった。
炎、雨、黒煙、悲鳴、魔物・・・。忘却界より門を開きやってきた悪しき魔物どもは私の命が目的だった。
幸い、「彼」の活躍によりこれ以上の被害が出ることもなく魔物たちは打ち滅ぼされたが、
最後の希望である私を護るために、この堅牢な寺院へと私は身を隠すこととなった。
なんということだ。私はあの日、「彼」によって教会で告げられた出生の秘密に愕然とした。
皇帝の庶子・・・こうして日記をつけている今でさえ、実感が湧かない。

私を取り巻く環境が変わりすぎて、一体何をすべきなのか不安に押しつぶされそうになる。
私がもう少し若かったともかく・・・いや、自分のやれることを少しずつするべきだろうか。

何もかも信じられないという気持ちが強いが、不思議と「彼」のことは信じる事が出来る。
このままでは助けてくれた「彼」にも申し訳ない。
気持ちをまとめるために、この日記をつけることにする。

* * *

一日経って読み返してみると、私は大分混乱していたらしい。
逆に言えば、少しは心が静まったことになるだろうか。そうならいいのだが。

少しばかりこの寺院を歩いてみた。
堅牢な門と石垣の上に建てられたこの寺院は、いっそ砦といっても差し支えないほど防備に優れている。
それに街に近く、いざとなれば救援を要請することもできるだろう。
また、この寺院には資料が多く保存されており、これからのこと、敵のことについて学ぶにはうってつけだった。
僧の・・・いや。僧だった私は元々読書は好きであるから、特に苦はない。

少し気がかりなのは周囲の雰囲気だろうか。
周りが警護の者たちばかりなので物々しい。私の立場を考えれば、仕方のないことだ。
皇帝になればこれ以上に警備の者もつくのだろう。少しずつ慣れていきたい。
しかし、神に仕えるということはあっても人に仕えられるという経験はない。
彼らからの尊敬と期待の眼差しに、少しだけ居心地の悪さと困惑を感じているのは認めなければならない。

そういえば、「彼」はこれまでの功績により、ここを守護するブレードの隊員になったようだ。
早速支給された鎧と刀を身につけて私に挨拶をしにきてくれた。
この装備は遥か東方の国より伝来した形式のもので、特に刀は巷でも人気が高いという。
鎧と刀を纏った彼の姿は凛々しく見えた。素直に賞賛すると、「彼」はすっかり照れてしまったようだ。
ただ、話によるとこの姿で任務を遂行するというわけではないようだ。
何でも帝都に潜伏中の隊員に連絡を取りに行くそうで、要するに隠密任務というわけだ。
敵は魔物だけではなく、秘密教団の人間たちをも相手にしなければならない。
恐らく帝都にも教団の人間はいるのだろう。私は「彼」の無事を祈った。

* * *

「彼」が帰ってきた!
何日かぶりの再開だが、まるで何週間も経ったかのように感じられる。
「彼」の任務は上手くいったようだ。神に感謝したい。
報告を聞くと、教団のアジトを突き止めることに成功したようだ。

すぐに出立すつのかと思いきや、「彼」は私の顔を見て「少し根を詰めすぎてはいやしないか」と呟いた。
「彼」は私の手を引っ張って立たせると、あれよあれよという間に外に連れ出された。
一応私は警護対象なのだから問題ではないだろうかと言ってみたが、ジョフレに許可は取ったし自分は強いから大丈夫だと反論された。
確かに、「彼」は強い。街に降りる途中に出会った巨大な魔物をあっさり打ち倒してしまうほどに。
(本人は自作の魔法剣のおかげだと言っていたが、ならばそういう強力な剣を作れる彼の感覚を賞賛したい)

一息ついて周囲を見回すと、美しい光景が広がっていることに気がついた。
一年中雪に覆われているという美しい山並み。日の光を受けて眩しく輝いている様子は筆舌に尽くしがたい。
私のいたクヴァッチでは雪こそ降ることもあるが、ここまで美しく降り積もった記憶は数えるほどだ。
このところ毎日見ていたはずなのに見落としているとは・・・私は思った以上に塞ぎこんでいたようだ。
外出に許可が降りたのも、私の精神状態を見るに見かねてのことだったかもしれない。
「彼」や、周りの者たちの気付きに感謝したい。

街に行ってからといえば、服を見繕われてあれこれ着せ替えられたりした。
いつもの修道服と違う装いに多少辟易したが、これも気分転換だと思えば心が弾む。
しかし、いくら彼にそこそこの財があるとはいえ大量に買ってしまうのは・・・。
その点を指摘すると、「彼」は恥ずかしそうに「いや、人と買い物なんて初めてだから」と言った。
意外な「彼」の表情に私は「彼」に抱いていた聖騎士的なイメージが崩れる心地がしたが、
「彼」も、街を救った英雄だのなんだのと持ち上げられて、かなり困惑しているらしい。
「彼」は、自分は本当は散策が好きな普通の冒険者なのだと苦そうに言い切った。
私は「彼」の抱いた苦味を理解する事が出来た。私もまた人々から持ち上げられているのだから。
その共感が切欠だったのだろう。英雄ではなく、一人の人間としての彼に親近感を持った。

その後は楽しく彼と過ごす事が出来た。
宿で軽く食事をして、教会など、ガードに教えられた名所を見て回った。
名所の一つである教会に行くことは、「彼」は、私の辛い記憶を思い出させはしないだろうかと心配していたのだが
実際に行って見るとそのようなことはなく、かつての日々が懐かしく思い出された。
・・・あの悪夢からまだ一月も経っていないのにもう懐かしく感じられるとは、何というべきか・・・。

そうして一日を潰したが、正直に言うと、少しだけ帰りたくないという気持ちがあった。
環境の激変に対する反発だろうか。受け入れて生きていくしかないというのに。
子供っぽいものだと正直に自嘲すると、「彼」は「そんなこともあるよ」と肩を叩いてくれた。
「彼」の言葉は本当に私の心を安らかにさせてくれる。

初めて出会ったときは私が皇帝の庶子だなどととんでもないことを言い出すので狂神に祝福された
危ない人間ではないかと思ったものだが、今こうして笑いながら手を取ってくれる「彼」は積年の友のようだ。
そういえば、警護の者たちは私にかしこまった言葉遣いで接するが、「彼」は隔てのある態度では接しない。
恐らく、そういうところに私は安らぎを見るのだろう。
その後、「彼」はたまたま買出しに来ていた隊員を捕まえて何か言っていたが、
「今夜はもう朝まで飲みましょう!」という言葉に、「彼」が何をぼそぼそ言っていたのか見当がついた。
言い訳ではないが、このところ色々あったせいでストレスが溜まっていた。
だから、「彼」の申し出はとても嬉しかった。
「彼」と一緒にワインの早飲みやらエールの一気飲みやら、色々馬鹿騒ぎをしたのは覚えている。

・・・。
覚えているのはそこまでだ。

* * *

翌朝、ひどい頭の痛みで目を覚ました。
日は既に高く、おぼろげな乱痴気騒ぎの記憶に年甲斐もないことをしてしまったと反省した。
若い頃は色々と無茶をしたものだが・・・と、周囲を見るとどうやら誰かの一軒家であった。
「彼」は寺院に近いと言う関係上、この街に居を構えたと聞いていたが、ここがそうなのかと思っていると
「彼」が寝室にやってきた。
解毒のポーションを勧められたので、それを煽ったところ、痛む頭が爽快になった。

テーブルについて朝食を食べながら部屋を観察したが、最近住み着いたというのは本当らしく、
家具類は備え付けと思われるもの以外は新しいし、散らかっている気配が無い。
ここに住み着くのかと問いかけたら、「放浪癖があるかわわからない」と「彼」は笑った。
そう言った「彼」の表情が少し寂しそうだったので、家族は居ないのかと今更なことを尋ねてみたら
「記憶を失って覚えていないし、色んな都市を回ったけれど自分を知っている人に会った事がない」と苦そうに呟いた。

まずいことを聞いてしまったものだ。
私は養父も養母も、ジョフレのように見守ってくれていた人たちもおり、更には(会った事は無いし、全員暗殺されてしまったが)
実の父も、腹違いとはいえ兄もおり、つまるところ彼のように天涯孤独ではないのだ。

「では、私は君の寄る辺だということだろうか」
今にして思えば、何故そんな言葉が口をついたのか自分でも不思議に思う。
「彼」は、眼を大きく見開いて、驚いていたようだった。

「無いのなら、これから作れるだろう。実際、君は私に出会って縁を得た。隊員となることで地位も築いている。
 過去が無いことは苦痛だろうが、未来の出会いによって人生に少しずつ過去を書き込んでいくことは出来る」
もしかしたら教会で説教をしていたのが役に立ったかもしれない。少し耳たぶが熱くなったが。
「彼」は、眼をしばたかせて感謝の言葉を言った。ゴミが眼に、と言って彼は目元を抑えた。

真昼に近い時刻に街を出た。太陽は今日も眩しく雪を照らしている。
凍った道を踏みながら、「彼」は東を指した。あっちにはこの国で一番高い場所があると笑って。
登山はしたことがないから無理だと笑うと、なら北のほうに珍しい形をした岩があるからいつか見に行こうと言った。
また時間があったら連れ出しておくれ、と頼むと、皇帝になる前に連れて行かなくてはね、
偉くなってしまったら忙しくて来ることなんか出来そうに無いからと、
大仰なそぶりをしておどけて見せた。

寺院につく頃に、「また任務に行く」と、「彼」は白い息を吐きながら私に言った。
今頃「彼」はどこにいるだろうか。無事で居るのだろうか。
たった一人で敵の本拠地に潜入することは容易ではあるまい。ただ待つしか出来ないとは、なんと歯がゆいことか。
かつて街が魔物の襲撃を受けた際に教会で立てこもっていた時の焦燥感を思い出す。
しかし、あの時と違うのは、「彼」という希望があることだ。
世界が滅びる瀬戸際だというのに、彼の笑顔や言葉には、絶対にやり遂げてくれると信じさせる力があった。
これも運命というものだろうか。

「彼」が戻ってきたら、私は「彼」のことを、友と呼ぼうと思う。
そう呼ぶことを「彼」が許してくれるか不安だが、私は「彼」のことを誰よりも親しく思っている。

早く帰ってきて欲しい。

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