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織田一般兵×光秀

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                     |  BA/SA/RAの織田一般兵×光秀です。
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  死にネタ・えろナシ注意。
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 恐ろしいけどうつくしい方だと、そう思ったのです。

 私が光秀様にお会いしたのは、織田家に使えてちょうど三月目の朝でございました。
 いつもより半時ほど早く目覚めた私は、朝餉の準備が整うまで散歩でもするかと屋敷の外へと出たのです。
 思ったとおり、いつも感じるものより少々温度の低い空気は、寝起きで少々緩んでいる意識をさっと目覚めさせてくれました。
 もとより我が一族は代々織田家に仕えてきた家でありましたが、それでも一介の侍、それも若輩たる私に与えられる場所などそう多くはありません。けれどそれでも天下に最も近いとされる信長様の臣下ともなれば、それなりに自由もききます。
 私は信長様の住まう城を眺めながら、屋敷の周りを一周しておりました。
 そして、丁度屋敷の裏手にさしかかったところです。
 そこからは、城の庭が見えました。枝の一本、砂のひとつぶまで丁寧に整えられたそこは、朝露に濡れ、とても雅やかでありました。

 そこに、あのお方がおられたのです。

 最初、私はそこに人がいることも気づきませんでした。
 それほどに光秀様は自然にそこに溶け込んでおられました。
 最上級の銀糸のごとき髪は、朝焼けを受けてやや朱に染まり、戦場に出ていると思えないほどなめらかな頬も同様に薄く染まっておりました。
 浮かぶ表情は人形のように静かでありましたが、紅をさしたように赤い唇が命を感じさせました。
 そのお姿を拝見したのは初めてでしたが、話に聞いていた通りの――いえ、話に聞いていた以上に美しいその容貌に、すぐに光秀様であると気づきました。
 勿論、戦場でのあの方の噂はよく聞いております。
 二振りの鎌で敵味方問わず命を刈り取っていく様はまさに死神そのものであるとか、あの方の下に仕える者はいつ気まぐれにその身を裂かれるかもしれぬ、とか。
 けれど、朝の光を浴び、静かに佇むお姿を見れば。
 それはまるで深窓の美姫が気まぐれに庭を眺めに来たような。
 あるいは天上の神が、戯れに人の世に降りてきたような。
 そんな、神聖ささえ感じさせるものでありました。

 私はしばしの間、そのお姿に目を奪われておりましたが、一際高く鳴いた鶏の声に現実へと引き戻されました。
 光秀様も城に戻ってしまわれ、殆ど乱れたところの無い庭とも相まって、まるで先ほどの景色が夢幻であったように感じられました。

 その後、私は屋敷に戻り、いつものように鍛錬をこなし、普段どおりの一日を過ごしましたが。
 あの時見た、幻のようなお姿をもう一度見たくなり、翌日から、少し早起きするようになったのです。

 少し早起きし、光秀様が庭を愛でる姿を眺め、城へ戻られるのを見送り、そしてまたいつもの一日を過ごす。
 そんな日が幾日続いたでしょうか。
 それに変化が現れたのは、日差しが、すこし柔らかさを増した頃でした。

「――そこの御方」
 最初、私はそれに返事ができませんでした。
 まさか自分のことに気づいておられるとも思いませんでしたし(後から思えば、これはずいぶん失礼な話でした。
 光秀様ほどのお方が、多少の距離はあるとはいえ隠してもいない気配に気づかないはずもないのですから)、仮に気づいても、
光秀様よりも遥かに格下である自分にわざわざ声をかけることなどあるわけが無いと思っていたのです。
 けれど光秀様は、再び声をかけられました。今度ははっきりと私に目線を合わせて。
「――そこの御方、いつもそこに居られたでしょう? 景色ばかり見ておらず、たまには話のひとつもしてみませんか」
 ようやくその言葉が私に向けられたものだと気づき、あわてて答えを返しました。
 何を話したのか、ほとんど覚えておりません。それほどに私は驚き、戸惑い、そしてそれと同じくらいに高揚しておりました。
 光秀様といえば、信長様と同じく、自分にとっては天の上の御方。そのお方がこんな一回の侍に不躾ともいえる視線を向けられたことに怒るでもなく、
それどころかお声までかけていただけるなど!

 そして、その日から朝の散歩のたび、光秀様と私はほんの少しばかりですがお話をするようになったのです。

 話す内容はいつも、とりとめのないことでした。
 隣の山は紅葉が美しいらしいとか。
 池に新しい鯉が入るらしいとか。
 枯れかけていた椿が、久々に花をつけただとか。
 常より聞く噂からは想像も付かない、風流な話ばかりでありました。

 けれど、あるとき私は、一度だけ光秀様に自分のことについてお願い申し上げたことがありました。

「光秀様――私は、あなたの傍で働きとうございます」
 光秀様をまっすぐ見ることができず、頭を下げたままそう言った私に、光秀様は珍しいことに――本当に珍しいことに、一瞬驚かれたようでした。
 けれどすぐにいつもの静かな笑顔に戻って、光秀様はおかしそうに言いました。
「おかしな方ですね……私の噂は聞いているでしょう? 死神だの、悪鬼だの……どれも良い噂では無かった筈ですが」
「判っております。けれど、それでも私は光秀様の下で働きたいのです!」
 言い募る私に、それでも笑みは崩さず、光秀様は静かに私を諌めました。
「――織田に仕える者が、あまり無茶を言うものではありませんよ。魔王に縊り殺されても知りませんよ?」
「ですが、光秀様――」
「……あぁ、そろそろ時間ですね。家人の仕事の邪魔になる前に戻りましょうか」
 光秀様は、ゆっくりと踵を返すと城に戻って行かれました。
 最後に、「貴方には、まだ死んで欲しくありませんから」と言葉を残して。

 そして、それ以来、私は朝の散歩を止めました。
 光秀様に会わせる顔が無かった、というのもありますし、何より――光秀様に会ったら、またあの話を蒸し返しそうな自分が恐ろしかったからでもあります。
 そこでもう一度拒絶されたら、きっと私は侍として生きていけなくなっていたでしょう。

 だから、私はただひたすら織田家のために働くと決めたのです。
 光秀様もまた、織田家に仕える方。信長様が天下をお取りになれば、それは光秀様の栄光ともなる。
 私はあの方のために、信長様を天下人にすると誓ったのです。

 なのに。

 ごうごうと燃え盛る炎。あちこちからあがる悲鳴。
 圧倒的な戦力で、抵抗もできないままに蹂躙されていく――それは正に、地獄絵図でありました。
 しかし、それより何より、最も恐ろしかったのは!
 攻め入る者共が掲げる旗――桔梗の紋でございました!
 私が信長様に仕えながら、心にはずっと掲げてきた、桔梗の紋です!

 嘘だと、これは何かの間違いだと。
 きっと光秀様に見せかけた、卑劣な罠だと思おうとしておりました。
 けれど、本能寺の守護に当たっていた私の前に現れたのは――あの庭で何度もお会いした――光秀様、そのお人でした。

「俺は最初からあんたのことを信じてなかった!」
 そう吐き捨てた隣の男が、一刀のもとに地に沈みました。
「光秀様……なぜ裏切ったのですかーっ!」
 血を吐くような思いで問いかけても、光秀様は薄く笑うだけで、その問いには答えてくださりませんでした。
 ただ、幾人もの血と命を吸ったその鎌を私の首筋にぴたりと当て、
「貴方には、まだ死んで欲しくなかったのですがね」
 そう呟いて――

転がった首が、ごとりと音を立てた。
 これで、織田方の兵士は信長本人を除いて全て失われたことになる。
 よく見知った顔だった――珍しいことだ。普段は切に殺したいと思う相手のことくらいしかちゃんと覚えなどしないのに。
 いや、逆だろうか?
 自分の性質を理解してからはほとんど初めてかもしれない、殺したくないと思った人間だから、印象に残ったのだろうか。
 転がっていた首を拾い上げて、眺めてみる。
 まだ血が抜けきっていないのか、頬には赤みが残っている。
 そこに浮かんでいるのは自分の好きな苦悶や恐怖の表情ではなく、ただ悲しみだけが満ちていた。
「おそらく、私はあなたを気に入っていたのでしょうね、珍しいことですが」
 じわじわと流れ出る血液が、腕を伝って衣に染み込んでゆく。
 自分の好きな色だ。けれど、それを眺めてもいつもほどの高揚感は無い。
 答えぬ首に、問いかけてみる。
「――黄泉とやらで会えたならば、こんどは私に仕えていただけますか?」
 それとも、自分を殺した相手にはさすがにもう仕えたいとは思わないか。

 首の前髪をかきあげ、額に口付ける。
 そして、すっかり色を失った首を倒れこんだ体の傍に立て、本能寺で待つ信長の元へと向かう。
 心が、じわじわと愉悦に満ちていった。

 勝てば、信長を刻む極上の快楽を味わえる。
 負ければ――また、あの青年と黄泉で見えるかも知れない。

 どちらも、悪くない。

「さぁ、黄泉への扉を開きに行きましょうか」

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 何故裏切った~のセリフでうっかり妄想。
 孤独に耐えかねての自給自足でした。


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