Top/3.1-67

俺×俺←友人

失礼します、場所を借りさせていただきます。

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 | | |> PLAY.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ヤバヤバナンデ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) ヒトリデコソーリト、ネ
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
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※某スレに刺激された、俺×俺←友人 のエロアリです。
※俺以外の者が俺に指一本たりとふれるのは許せん
 という真性俺ニスト様はどうかスルーしてください、お願いいたします。

 パンッと小気味いい音を立てて布地を伸ばし、「俺」は洗い終わった布巾を厨房のラックに干した。
ちょうど床掃除を終えたばかりの「先輩」が、ロッカーにモップをしまいながら声をかけてくる。
「お疲れ。今日はちょっと売り上げが悪かったなぁ」
「お疲れさまです。これだけ暑いと、パンを買いに外に出る気にもなれないんでしょうかね」
 先輩は短く生やした顎鬚をなでながら眉を寄せた。
「うーむ、新商品開発の必要があるかもな。夏季限定・アイスパンなんかどうだ。アイスクリームを、
中を空洞に焼き上げた軽い生地のパンにつめたら……おお、いけそうじゃないか!」
「あの、それって、ただのシューアイスじゃ」
 二人の間に沈黙が降りた。
「……そろそろ帰ろうか」
「そうですね」
 俺と先輩は、まだレジの清算を続ける店長に声をかけると、店を後にした。
 裏口から外に出ると、たちまちむっとした熱気に全身を包まれる。湿度の高いねっとりした空気に、
俺は顔をしかめて空を見上げた。星はまだ出ておらず、重い色の雲が立ち込めている。
「いっそ、雨でも降りゃいいのに」とつぶやいた。
 眼鏡をかけなおすと、俺は先輩の後に続こうとした。そのとき、店の裏に面した
小さな駐車場の入口からこちらに向かって歩いてくる人影が目に入った。
重そうな紙袋を提げた背広姿の若い男は、二人を見つけて片手を上げた。
「あれ、「友人」クン?」
「今晩は先輩さん、いまあがりですか。よ、俺。ちょうどよかった」
「これから遊びに出かけるのかい」
「いや、こいつの部屋で宴会しようってだけです。ちょうど二人とも明日が休みなんで、
久々にとことん飲み明かそうってね」
 友人が紙袋をすこし持ち上げると、酒瓶の触れ合う涼しげな音がした。

 俺の部屋に行くなら車で送ろうという先輩の申し出をありがたく受けて、俺と友人は後部座席に
乗り込んだ。強い冷房が車内の温度を下げてゆく。友人は背広の上着を脱ぐと、大げさに額の汗を拭った。
「夏場はサラリーマンやってることを後悔しそうになるよ。いいよな、背広を着なくてもいい職場は」
「パン屋をなめるな。どんなに暑い日でもでっかいオーブンが稼動してるんだぞ。その点、
冷房のきいたビルで仕事してるおまえのほうが楽」
「おお、そういうなら、炎天下でネクタイ締めてスーツ着て、得意先回りしてみろってんだ。
午後三時のアスファルトの照り返しのなかを歩きながら、オレは確信したね。
日本の夏にクスリはいらない。日本国民は、暑さだけで、あっちの世界にナチュラル・ダイブできる」
「一人で行っとけ」
 先輩のがっちりした肩が笑いに揺れた。
「仲がいいな。幼馴染だったか。おれは引越しが多くて、小さい頃からの友だちはいないから、
ちょっと羨ましいよ」
 俺は肩をすくめて先輩に答えた。
「そんないいもんじゃないですよ。むしろ腐れ縁です。小学校のときこいつが転校してきて、
以来高校までなぜかおなじクラスになることが多かったってだけで。ガキのころはこいつ、
チビで強情だったんですよ。仕事で営業やってるなんて、信じられない」
「人間は成長するのさ。で、いまはおまえより背が高い、と」
「俺はいまの自分の身長が気に入ってる。だから悔しいとは思わない」
「ああ、俺はそうだろうな」
 お互いの職場の話でひとしきり盛り上がったあと、先輩は二人を俺のマンションの前で
降ろして帰っていった。

 部屋に入りドアを閉めたとたん、友人が俺を背後から抱きしめて、さらさらの黒髪に頬をすりよせる。
「なにをする」
 俺の声が、おそろしく低く不機嫌になる。
「ん? シャワーを浴びて匂いを落とすまえに、堪能しておこうかと」
「俺の匂いは俺だけのものだ。おまえに嗅がせる気はない」
「俺の匂いじゃなくて、パンの匂いが嗅ぎたいだけだよ。焼きたてのパンの香り、おまえも好きだろ?」
「それなら店でパンを買え」
「もう閉店してた。だからおまえで我慢してるの」
「俺はパンではないし、おまえに匂いを提供する気はない」
 スニーカーの底で革靴を思いきり踏みにじられて、友人はしぶしぶ手を解いた。
 俺の飼い犬が二人の足元にじゃれついてくる。靴を脱いだ友人は、足でチワワをころんと転がして
腹をなでさすった。
「おーら、ぐりぐりぐり」
「こらっ。吉宗をいじめるな!」
「かわいがってるんだって。こいつも喜んでるだろ」
 吉宗は床の上で仰向けになったまま、尻尾をしきりに振っている。けれど俺は友人を押しのけた。
「吉宗を乱暴にあつかうな」
 俺は吉宗をうながして部屋の隅の寝床に連れて行く。吉宗は冷え冷えマットの上にぺたんと座り込んで、
大きな黒い目で俺を見上げた。俺は吉宗の頭をなでてやり、水を換え、トイレの様子を確かめる。
 友人はしばらくそんな俺をながめていたが、やがて持参の酒を冷蔵庫に入れ、ネクタイをはずした。
「スーツじゃくつろげないし、シャワーを浴びてもいいか」
「ああ。好きにしろ」
 勝手知ったる他人の家と、友人はタオルと着替えを適当に箪笥から取り出すと、脱衣所のドアを開けた。

 少し癖のある茶色の髪をタオルで拭きながら友人が部屋に戻ると、俺は携帯電話を手に壁にもたれていた。
「……そんなの好きにすりゃいいんじゃないのか? ……ふうん。……そうか」
 友人は一瞬動作を止めて会話に聞き入ったが、相手の検討がついたのかすぐに興味をなくして
台所に足を運んだ。上半身裸のままタオルを首にかけて、缶ビールで喉を潤す。
 俺の電話はまだ続いている。気にするふうでもなく、友人はビールを片手に自分の作業を始めることにした。
 作業がほぼ終わりかけたころ、俺がすこし疲れた顔で寝室に入ってきた。
「あいつか?」
 俺はうなずいた。ときおり酔っては電話をかけてくる共通の友だち。俺に依存していると言ったことが
ある男。
「悪いやつじゃないんだけどなぁ。あいつは根本的なところで自分に自信がもてないから、
おまえみたいに「俺は俺」なタイプに執着してしまうんだろうな。いや、おまえの場合、
ほんとうは「俺と俺」か」
「……おまえ、なにをしてる?」
「ん? 下準備」
「なんの」
「俺と俺のオナニーの」
 ベッドの脇にビニールシートが敷かれ、大きな姿見とそれより一回り小さな鏡が向い合せに置かれている。
ビニールシートの横にはローションとウェットティッシュ、そして畳んだシーツが用意されていた。
「たしかに俺は俺に萌えてオナニーをするが、露出趣味はない。どうしておまえがいるところで
そんなことしなきゃならないんだ。そもそも、俺はベッドの上が好きだ」
「そこだと狭いからな。まあまあ、ちょっと待って」
 寝室を出て行こうとする俺の肩をつかむと、友人は彼を合わせ鏡の間に座らせた。
吉宗が入ってこないように部屋のドアを閉じるのも忘れていない。
「おまえさ、自分の顔のどこがいちばん好きだ?」
「優劣をつけられるか。俺は俺のすべての部分をわけへだてなく愛している」
「じゃ、眉は?」
「当然だ。男らしくて惚れ惚れする」
「二重まぶたは?」
「これは奥二重というらしいぞ。もちろん気に入っている」

 睫毛、鼻筋、唇、歯……言葉で順になぞられて、鏡の中でそれらを確認していくうちに、
答える俺の声がしだいに熱を帯びてくる。
 鏡に映る自分の頬に手をのばした。他人に触れたときのようなぬくもりも柔らかさもない、
硬質のガラスに指先を弾かれる。それでも、指と指が鏡の表面で触れ合ったとき、ぞくりとした感覚が
俺の背筋を走った。
 ゆっくりと顔のラインをなぞる。誰もさわっていないのに、その軌跡から肌が粟立つような快感が
生まれてゆく。指で鏡の中の唇をゆっくりとなぶった。その淫靡な動きに耐えかねて、口がすこし開く。
きれいに並んだ歯が見える。暗い口腔からのぞく白さに魅せられて、もう片方の手で歯に触れてみる。
唇の温かさと指にかかる自分の吐息に、欲望が芽生える。
キスをねだるようにもっと口を開き、舌で指をねぶった。鏡にのばされた手が、口に含まれている
指の動きをたどる。鏡に映る俺の口を犯す俺の指と、実際の俺の口を犯す俺の指。
俺が俺を犯し、俺が俺に犯される。
 たまらなくなって、シャツとズボンを脱ぎ捨てる。上気した俺の肌に、俺はさらに欲情を募らせる。
 鏡の中の鏡に、なめらかな背中が映し出される。その奥にさらに潜む俺は、扇情的な眼差しを
こちらに向けて、顎から喉もとへと唾液をなすりつけるように手を這わせてゆく。のけぞる背に
緊張した肩甲骨の線が浮き出る。俺の引き締まった美しい背中のラインに煽られた俺は、
熱い息を吐きながら窮屈になったブリーフに手をかけ……鏡の端に映るよけいなものに気がついた。
「どけよ。おまえが映ると気が散る」
 俺の一人劇を息を詰めて見守っていた友人は、我に返って大きく呼吸をした。
「以前は、身体にふれさせてくれたのに」
「それで、人の顔が映ると邪魔だと分かったんだ」
 友人は天井を仰いでため息をつく。

「ひどいな、と言いたいところだが、無理強いしてもムダなのは分かってるからな」
 そこで、と友人は右手の人差し指を立てた。
「秘密兵器の登場です」
 ジャジャーン、と自分の口で効果音をつけてシーツを広げる。友人は俺の背後にまわると、
頭からすっぽりシーツを被った。
「これでオレの顔は見えないから、おまえはばっちり自分の身体に専念できる。オレはおまえの
邪魔にならないように、おまえの身体に専念できる。んー、グッドアイディア!」
 俺は鏡に目を向けた。
 正面に映る俺。中断された欲望をもてあます肢体が悩ましく俺を誘う。
 その後ろに控える、もこもこした白い物体。できるかぎり縮こまっているらしいが、
目障りなことこのうえない。
「おまえ、それは、ギャグか? ギャグのつもりか? だったら寒いからやめろ。
俺は俺とだけ……あぅっ」
 シーツの裾から顔だけを出し、友人が俺の背骨に沿って舌を這わせた。
予期していなかった俺の口から、声がもれた。
「舐めるな。さわるな。俺は」
「俺は俺の身体を他人の好きにさせるつもりはない、だろ。耳のタコでたこ焼きが
百人前作れるくらい聞かされてるって」
「じゃあ、やめろ」
「でもさ。こう考えたらどうだろう。オレはべつにおまえの身体を好きにしてるわけじゃない。
ただ、おまえに足りない部分を補ってるだけだって」
「俺は。俺の手があれば。それで充分」
 腰の辺りを執拗に唇でなぞられて、俺の言葉が途切れがちになる。
「俺の手は二本しかないだろ。それに、届かない部分もある。こことか」
 友人は襟足のの俺の敏感な部分に吸いつくようなキスをする。
「こことか」
 耳の裏を舐めとられる。反論する俺の声がうわずる。

「だから、なんだ、よ」
「だから。おまえ、オナニーするときにも道具を使うだろう。鏡とかローションとか。それとおなじだと思えば
いいんだよ。オレは、おまえが自分では気持ちよくしにくい部分に奉仕する道具。黒子といいたいところだが
これだとシロコだな。道具を使っても、俺が俺を気持ちよくさせられるなら、それでいいだろう?」
 二言、三言、俺はまだ抗議を続けた。しかし、背中にしつこく与えられる友人の愛撫と、
鏡の中で身悶える俺の像を目にして、俺は押し寄せる昂ぶりに抗しきれなくなる。
そして、ついに腰を浮かせて下着を取り去った。
 ペパーミントの香りが広がる。ぬるりとしたローションの感覚に鳥肌が立つ。
 全体をローションで包むように、自分のモノを握った手をゆっくりと上下させる。
目をおとすと、屹立したそれの先端からすでに透明な液体が染み出ているのが見える。
顔を上げると、ぬめぬめした自身にからむ指が、興奮に色づく乳首が、これからの快感を待ち焦がれる
濡れた眼差しが、俺のすべてがあますところなく鏡に映し出されている。
 俺は唾を飲み込んだ。
 先端から少し下、感じやすい部分を指の腹でくすぐった。
 悦楽の声をあげる俺。声を受け取る耳。俺の声にさらに欲情をかきたてられる俺。
 指が激しく刺激を加える。全身ががくがくと震える。
 そのまま登りつめてしまいそうになって、手の動きをすこし弱めた。鏡の中から、
焦らされた俺が懇願するように俺を見つめる。額にはりついた髪、こわばった肩、汗に濡れた腹筋、
なめらかな内腿、そり返る足指。そのすべてが、俺を求めて、俺に求められている。
 俺の全身がかっと熱くなった。
 知り尽くした快感のポイントを攻める。無意識のうちに腰を動かしていた。
背後で友人がシーツをかなぐり捨て、肩に首筋にキスの雨を降らし、胸をまさぐっていた。
でも、それももう気にならない。俺の欲しいままに俺は俺に快楽を与え、髪を振り乱し、叫ぶ。
「俺、きれいだ俺、たまらない。俺、俺、おお、俺ぇ!」
 俺の頭の中に閃光が散る。手の中で、どくん、と衝撃が走った。
 その瞬間、俺と俺とは溶け合い、そこには感じている俺も感じられている俺もいなくなる。
 なにも考えられなくなる極致。
 ただ深い満足感だけが、俺の心と身体を満たしていた。

 ウェットティッシュで処理をすませたあと、俺は鏡の中の虚脱した瞳の俺に見惚れていた。
 だから気づくのにすこし間があった。
 奇妙な感覚を右手に感じて嫌々ながら目を向けると、いつのまにか全裸になった友人が、
俺の手をとって自分の股間を刺激していた。
「……おい。俺は俺以外の人間に奉仕する気はない」
 気だるい声を耳にして、友人はさらに強く俺の手を自分に押しつける。
「あのさ、俺」
 欲望にかすれてる友人の声。
「俺は、いいやつだよな。道端に倒れてるご老人をみつけたら、救急車を呼んでやるよな」
「人間として当然のことだ」
「困ってる人がいたら助けてやるよな」
「出来る範囲のことならな。俺はそんないい人の俺も好きだ」
「じゃあさ。オレのことも助けてくれないかな。このままだと、オレ、気が狂うかも」
 友人は早口にまくしたてた。
「オレの気がヘンになって、このまま「俺―! 好きだー!」って言いながら往来に駆け出したら、
オレの一生台無しだろ。下手したら警察に捕まって新聞の記事になって、全国に顔と名前が知れ渡る
かもしれない。そうなったら、オレの親は泣くだろうし、親戚には顔向けできなくなるし、
友だちのおまえだってちょっとくらいは悲しいんじゃないか」
 俺は友人の言葉を吟味した。
「たしかに俺は友だちの未来をつぶすようなことはしたくない。おまえん家のおばさんには
いつもお世話になってるし、おじさんにも昔からよく遊びに連れて行ってもらって、感謝してる。
だから、おまえのご両親が悲しむ姿も見たくない」
「だったらさ。奉仕じゃなくて、人助けだと思って、ちょっとだけ手を貸してくれないか」
「人助けか」
「そうだよ。おまえ、他人にキスするのが嫌だからって、死にかけてる人間への
人工呼吸を拒んだりしないだろ? それとおんなじだよ。いまここにはおまえとオレしかいなくて、
オレを助けられるのはおまえだけなんだ」
 必死に言い募りながら、友人はますます手の動きを早めた。

「なんだかおかしな気もするが、分かった。今回に限って、俺の手で
おまえの人生を救ってやることにしよう」
「サンキュ。あっ。うん。それ、いい」
 俺は友人の動きに合わせて、積極的に彼をこすり始めた。俺の指が自分を刺激している
ということが友人をさらに興奮させる。息づかいが、荒く、激しくなってゆく。
「いいよ、俺。すごく、気持ちいい」
「こら。俺とか言うな。イクときにそう言っていいのは俺だけだ」
「そ、そうか。でも。あ。ああ。おまえを呼びたい。名前を呼んで、抱きしめたいよ……あっ……」
 それまでの俺の痴態で充分過ぎるほどに張り詰めていた友人のモノは、刺激を与えられると
すぐに反応した。一刻も早く吐き出したいと、びくびくと震える。けれども友人は、
それを可能な限りもたせようとした。俺に触れられている時間をすこしでも長く感じていたくて、
自分の手の動きを止めた。けれど俺は、反対に、さらに激しく友人を攻め立てた。
 まだ情欲のあとが残る、熱っぽい俺の目。ふと面を上げ、それを見てしまったのがとどめだった。
 小さく呻いて、友人は俺の手の中で果てた。白い液体が何度も何度も吐き出される。
痺れるような快感に、友人は全身を大きく震わせた。

「やっぱ、木があるとすこしは涼しいな」
「そうだな」
 俺は相槌を打って、古くなったテニスボールを放り投げた。吉宗が喜んで駆けて行く。
 あの後シャワーを浴びた二人は、吉宗の散歩を兼ねた夕食の買出しに出ていた。
近所のスーパーで食材を買い込むと、帰り道はすこし遠回りをして、吉宗の好きな公園に立ち寄った。
夜で人気がなく、柵に囲まれた場所だから大丈夫だろうと紐をはずされた吉宗は、
嬉しそうに公園中を走り回っている。
 テニスボールをくわえて戻ってきた吉宗の頭を、俺はポンポンと叩いてやる。
友人はベンチに座ってそんな一人と一匹をぼんやり見ていたが、やがておもむろに口を開いた。
「俺、ものは相談だが。今夜こそ、入れてみないか」
 友人の問いかけに、振り向きもせず俺は答える。
「あんなところ、指を入れるのが精一杯だ。セックスなんかとうていできん」
「いや、それはやり方次第、慣れ次第だっていうし」
「却下。俺は俺のためなら努力は惜しまないが、
俺がおまえのためにそんなことに慣れる必要はない」
「新しい快楽の世界が待ってるかもしれないぞ」
「そうだとしても、俺は俺とその世界に行く。おまえにやられる気はまったくない」
 友人はため息をついて、「やっぱ、別の説得を考えないとダメか」と一人つぶやいた。
 俺は公園の真ん中で吉宗と追いかけっこを始めた。水銀灯に照らされて走る俺を、
友人はモノクロ映画の登場人物のようだと思った。すぐそばにいるのに、なぜか遠く感じられる、
不可思議な存在。
 俺は俺にしか萌えない。友人は親しい友だちとして好きだがタイプではない。
俺には俺以外の好みは存在しない。友人は俺から、繰り返しそう聞かされてきた。
それが俺の偽りのない言葉だと友人は承知している。ほかの人間に比べれば友人は俺にとって
重要な存在だろう自負はあるが、俺にとって俺が比較の余地のない絶対的な位置を占めていることも
分かっている。
 俺が愛するのは俺だけ。そう知ってていても、俺に萌え続ける俺から目を離せない。
損な役割だよな、と友人は自分に苦笑した。

 俺はベンチのそばに戻ってくると、転がっていたテニスボールを手に取った。
「よし、これが最後だぞ。吉宗、とってこーい」
 俺はこれまでよりも遠くへテニスボールを投げた。小型ロケットのように吉宗が落下地点
目がけて突撃してゆく。
 友人はベンチから腰を上げた。
「なあ、俺」
「なんだ?」
 振り向いた俺を唐突に抱きすくめて、友人は素早く唇を合わせた。
なにもかも吸い取ろうとするかのように深く舌を挿しいれ、強く激しく俺の口をむさぼる。
 俺が抵抗してもがいても、固く巻きついた腕は緩むことがない。
 そのうちに、俺の身体から力が抜けた。わずかに動く肘から下を友人の腰に回し、
しがみつくようにシャツを握り締めてくる。
 驚いた友人の身体が緊張し、さらに腕に力を込めようとしたとき――。
「うわはははは」
 友人は抱擁を解いてとびずさった。そこへ俺の蹴りが飛ぶ。
直撃はなんとか避けたものの横腹に一撃をくらって、友人は身を二つに折った。
 俺は指の屈伸を繰り返しながら、そんな友人を冷たい目で見下ろした。
「バカめ。おまえが、どこがくすぐられたらいちばん弱いかくらい、よく知ってるぞ。
長いつき合いだからな」
「いま、マジで蹴り入れただろ。まともにくらってたら、シャレにならなかったぞ」
「そりゃ、本気だったからな」
 まだ殺気を滲ませている俺から、腹をかばいながら友人は後退って逃げた。
「いや、だからさ。ええと、オレにキスされる俺に、俺は嫉妬して、
それがいい刺激になるかなーと」
「俺の舌は俺のためだけにある。俺は俺の唾液を俺以外の誰にも飲ません。
俺は俺の唇を奪われて、嫉妬するより激怒している」

「でも、もう十年近く俺は俺に萌えてるだろ。いい加減、新しい刺激があっても
いいかもって、まえに言ってたじゃないか」
「その問題は解決した。ネット萌えという新たな境地を発見したからな」
「はあ? なんだ、それ?」
「おまえに説明する必要はない。罰として、今夜は夕飯抜きだ」
 友人は情けない声を上げた。タイミングよく、腹の虫が鳴る。
「オレもう、腹ペコで死にそうなんですけど。そんな無茶いうなって」
 俺は知らん顔でスーパーの袋を持ち上げた。友人が駆け戻ってきた吉宗から
ボールを受け取ると、吉宗は短い尾をちぎれそうなほど振って友人の膝に鼻をすり寄せる。
「よしよし。吉宗は素直でかわいーな。オレ、泣けてきた」
 友人は吉宗の首輪に紐をつけ直すと、先を歩く俺に大股で追いついた。
俺は荷物と吉宗の紐とを交換する。
「吉宗、今晩は二人でいいもん食おうな」
「……ふうん。そんなこと言うか」
 俺と肩を並べて歩きながら、友人がぼそぼそと抗議をする。
「おまえ、冷蔵庫まだ見てないだろ。あーあ、取引先からもらった、とっておきの酒が
あるのにな。八海○に○羽桜に喜○長だぜ。じゃ、俺も、吉宗と二人で飲むとするか」
 俺は黙った。友人も黙った。二人はそのまま黙々と歩き続けた。
 マンションのエントランスの明かりが見えるころ、ようやく俺が口を開いた。
「このところ暑くてたいへんだよな」
「そうだな」
「だから、夕飯は、暑気払いになるようなメニューを考えてるんだが」
「日本酒に合うか?」
「もちろん」
「じゃ、期待してます」
 友人はにやっと笑い、俺はフンと鼻を鳴らした。
 俺と友人は二人一緒にマンションの扉をくぐった。一歩遅れて吉宗が、
嬉しそうに二人の後を追っていった。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ショウジキ、スマンカッタ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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長々と失礼いたしました。


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