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入院中

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  某古本屋×小説家モナ‥‥。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  鬱度高・ネタバレ注意?
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 古本屋出ないぞゴルァ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
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 うつらうつらとしていたものか、気が付くと視界の隅で、妻が新聞紙にくるんだ
紫陽花を手にしていた。買い出しに出た時に、道沿いのお宅で、頂いたの、と言
い含めるように囁いて、見慣れぬ花瓶に指を這わせる。これ、ね、お隣で空きが
あるからいいですよ、って言って下すったの、お花の一つも有ると、屹度気分も
幾らか違います。ね。お花、活けて来ますから。病室を出る間際の老けた笑顔
が瞼に張り付いて、その晩は煩い程夢を見た。

 昨日もその前も、その前の前からもうずっと、緩やかな波を見せて雨が降り続
いていた。明日は止むだろう、と煙るような雨空を眺める薄い記憶が、いつまでも、
どこまでも続いている。雨は、嫌いでは無かった。好みはせずとも、理由も無く厭
うものではなかったと思う。けれど、今は。只、降る。雨が、ここそこに、降る。それ
だけの事が、私を酷く参らせていた。穏やかに降り続く分だけ、温い液体の中で押
さえ付けられ、もがく人のように、私は無力だった。
 妻は一日置きに紫陽花を抱えて来た。青みがかった紫は日毎、私の枕元で色濃
く濡れてゆくようだった。

 最初はね、私がつい、見惚れていたんです。あんまり見事に咲いてるんだもの、
通りに面したところは全部紫陽花なのよ、それが全部こういう、ね、大振りの綺麗な
花なの。色って土で決まるのでしたっけ? でも、ええ、そうね、一色じゃあないわ。
色を吸い切れないのもある、斑に混じり合ったのも、色の濃く凝り過ぎたのも。同じ
色を付けて、移り変わって干涸らびてゆくだけなのに。どうして、皆違うのでしょうね。
皆、同じ雨を浴びているのに。
 わからない、とだけ、私は呟いた。
 妻が当て所のない会話を始めると、それを私が理屈をこねてやり込めるのが、
二人のやり方だった。彼女は「夫」を求めているのだった。長過ぎた夫の不在に、
とうとう疲れ果てたのかもしれない、と私は思った。頼む、今は求めるな、あと少し、
見逃してくれ、と、縋るように色付いた切り花を見やると、口をつぐんだ妻は、窓外に
呆けたような視線を投げていた。
 妻が帰った後、「干涸らびる」の言葉が頭を離れず、何度もくちびるを湿した。

 夜の闇の中で、私はよく紫陽花を見つめていた。白い壁からは疎外され、
周りの闇を吸い取るかのような濃色の花の集合体が、夜には無性に懐かしく
慕わしかった。しかし日の光の中では感じることのない黒い欲望をも誘発する
ような、その姿に惹きつけられる理由も、愚かな私にはわからなかった。雨音の
中で思い出せそうなことは、全て片端から紫陽花に溶けてしまうのであった。

 存外に経過は良好で、退院が決まると、後は早かった。最後に挿していた花は
持ち帰る、と妻が言い張ったが、隣の部屋に所望され、花瓶ごと譲り渡した。
 病院近くから車に乗り込むと、安心したのか、粘りつくような眠気に襲われる。
駅舎はそう遠くない。うたた寝できる程の時間はない、とわかってはいても、緩い
振動に身を委ねるのは心地良かった。
 ここ、ここのお宅よ、と妻が肩を叩いた、そう思いながら半眼で首を回すと、目の
端にちらと植え込みが映った。その一瞬、しなびた青に殴られたような気がして、
それでもう、私は眠って良いのだ、と知った。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ ユキチャンゴメンネ
 | |                | |     ピッ   (・∀・; )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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