Top/3.1-280

100-1

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    | 祭りに便乗、100-1だモナ。
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 無駄に長いよ!
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ナマヌルスギダ ゴルァ!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) 
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
設定に少々無理がありますが見逃してください・・・。

「丘村さん」
控え室に入るなりほとんど崩れ落ちるようにして畳の上に座った丘村は、相方の呼び掛けにやや間を置いて答える。
「・・・・・・・・・ん」
返事はしたものの、視線は部屋の一辺に広がる鏡に向けられたまま、顔を動かすのも億劫なのか、谷部を見ようともしない。
その姿は誰が見ても判るくらい憔悴しきっており、見ているこちらが辛くなるくらいだ。
谷部は彼に気付かれない程度に小さく溜め息を吐いた。
例え気付かれたとしても、今この状態ではどうにもならないと思うけども。

もう20時間以上睡眠を取っていないのは谷部も同じだが、丘村の負担は彼以上に大きかった。
司会として懸命に喋りつづけた彼の声は、食事や休憩を満足に取ってないことも手伝って、既に発することが難しいくらい枯れていた。
その声は聞くたびに谷部の心を痛めさせ、また助けてやれない自分への苛立ちを感じさせた。
しかし、例え自分が丘村の代わりを申し出ても、きっと彼は許さないだろう。
自分がやる、俺がやる、って。言い出したら聞かないヒトだから。
そんな変に頑固なところがある丘村を十数年隣で見続けてきた谷部は思わず苦笑した。

でも、自分もそう思う。これは丘村さんじゃないと意味がない―――。

彼は元々、この二七時間テレヒ"にすごく出たがっていた。
それはもちろん谷部も同じだが、丘村の執着心は自分のとどこか違う気がした。
そんな彼が簡単に役を譲るはずがない。
それをわかっていたから、谷部はあえて丘村をフォローする役回りに徹した。

相変わらず虚ろな目で鏡を見つめている丘村に、谷部は痺れを切らして問い掛ける。
「・・・大丈夫か?」
「・・・何が?」

何がって・・・。
体調は大丈夫かとか、この後の・・・不安、とか・・・。
頭にいろいろな言葉が過ぎったが、咄嗟に
「此処」
自分の首を指差しながら答えていた。
「喉」
「あぁ」
納得したような声もやはり掠れていて、それだけで全然大丈夫じゃないことはわかった。
「のど飴あるけど、食うか?」
「・・・いや、ええわ。今から胃に何か入れんのも何やし」
確かにこれから運動しようというのに、何か食べるというのはあまり良くない。

「どうせやるなら、勝ちたいやん」

この後あるだろう、30分にも満たない時間。
その僅かな時間の為だけに、この一年、頑張ってきた。

もう体力も残ってない。ボロボロにされるとわかっている。それでも最後にやるだけのことはやる。

思わず黙ってしまった谷部に、丘村はやっと鏡越しに目線を向けると
「・・・何気ぃ使ってんねん。まだ大丈夫よ?俺」
ニッと笑う顔に谷部はますます何も言えなくなり、ただ鏡の中の丘村を見つめた。

先輩で相方でもある丘村をお笑いの道に引き込んだのは紛れもない、自分だ。
相方に心配させまいと無理して笑う彼を見て、谷部は心にじわじわ広がるものを感じ、微かに顔を歪めた。
心に広がるもの。それは、後悔。
丘村の心身に何か変化があるとき、谷部はいつもそれに見舞われた。
そして、やがて一つの疑問へと形を成す。

もし、自分がこの道に誘わなかったら、34歳の丘村孝史はどうなっていただろう?

「さてと、そろそろ着がえなあかんな」
言ってゆっくりと立ち上がった丘村を鏡越しに見ながら、谷部の中でその姿が"芸人ではない34歳の丘村孝史"と重なる。
大学もちゃんと卒業して、公務員になって、30歳には結婚して、男女一人ずつ子供も居て。
普通の、至って普通の人生。
不眠不休で、声が枯れるまで喋り続けなくても良い。
負けるとわかっているボクシングの試合もすることも無い。
もちろん誰かに心配させまいと無理して笑うこともない、そんな人生。

「・・・何見てんねん、照れるやろ!」
かけられた言葉の意味を理解した途端、鏡の中の"芸人ではない34歳の丘村孝史"は掻き消され、"芸人である34歳の丘村孝史"が写った。
脱いだズボンを握り締めながら「やぁだ、もう。ダーのえっちぃ」と妙にクネクネした動きをしている。
ちなみに、ダーというのは谷部の愛称だ。
それはともかく。
鏡越しに見た丘村の行動に脱力した谷部は、先程の幻像を頭から振り払うように、多少大袈裟に振り向いてみせた。
「何言うて・・・」
目に映ったのは見慣れた相方の姿、ではなく、七色の虹。
赤、橙、黄、緑、青、藍、紫。見事な七色レインボー。
「ぅ・・・あ」
言いかけた言葉の代わりに口から出たのは情けない呻き声で、思わず体を後ろに引くと色が一つの形を成した。
それでも、それが丘村の下着、ちなみにトランクス、だということを理解するのに数秒かかった。
文句を言おうと口を開いた瞬間、頭を捕まれ、強引に上を向かされる。
先程とは打って変わり無表情で見下ろす丘村に、谷部は自分の顔が強張っていくのを感じた。
しかし、口から出たのはいつもの調子で。
「・・・何すんねん。つーかソレ、どんな趣味しとんねや」
「コレか?コレは気合い入れるためや」
「何やそれ」
だっさーと呟きながら今だ頭をがっちりと掴んでいる手を払い除けようとするが、その忌ま忌ましい手はますます食い付いて離れようとしない。
この小っこい手のどこにそんな力があるんだか。
思った途端、ますます頭に添えられている手に力が籠り、次の瞬間丘村の顔が目の前にあった。
「・・・・・・っ」
思わず身動ぎしたせいでお互いの鼻が微かに触れ合う。
「お前・・・」
すぅと丘村が空気を吸い込んだ音を間近に聞いて、谷部はほぼ反射的に目を閉じた。

「どーっせ、下らんこととか考えてたんやろ!?」

「・・・・・・・・・はぁ」
「やっぱりな」
谷部の呆けた返事が肯定だと思ったらしい、丘村は得意そうに踏ん反りかえりながら続けた。
「お前の考えることなんかお見通しやで。自分のせいとかなんとか思っとったんやろ?」
「・・・・・・・・・・・・」
アナタはエスパー丘村ですか?
んなわけあらへんやろ!
未だパンツ一枚で偉そうに威張っている丘村も、思わず心の中でノリツッコミした自分も、何だかおかしくて、気が付けば谷部は一人でクスクス笑っていた。
「?・・・何やねん」
丘村が訝しげな顔で谷部を見ても、当分笑い声は止みそうになかった。

「俺な、前に言ったやん。35歳まではコンビ続ける、て」
Tシャツを頭から被っている小さな後ろ姿から突然聞こえた声に、谷部は多少動揺しながらも答えた。
「・・・言うてたな」
「だからそん時まで俺らは運命共同体やぞ」
大袈裟過ぎる丘村の言葉に、谷部は思わず声に出して笑う。
しかし、嫌な気分ではなかった。
「運命共同体、か」
「離れたくても離れられん、てことや」
まぁ後一年もないけどな。
微かに聞こえた丘村の言葉をわざと無視して、

「・・・んなこと言うてると、本当に離れんで?」

思わず振り向いた丘村に、谷部はにやりと挑戦的に微笑んでみせる。
言葉の甘さが少しくすぐったかったが、丘村も負けじと言い返した。

「・・・おう、どんとこい!」

 ____________
 | __________  |   キマツ~ボクシングの間の話でした。
 | |                | |    ちゃんと伏字になってるか不安でつ・・・。
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
本当はこの直後の話もあるんですけど、いきなり丘サイドなのでカットしますた。
見たいという姐さん、もし居ましたら流します・・・。


このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP