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チェリーブロッサムの悪戯

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  某スレ>>466執筆の間のお茶濁し…というか…
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  寸止めでスマソと先に言いたい…
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 | | |> PLAY..       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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「へぇへぇ、ひへひへ」
さくらんぼを頬張っていたメフィストⅡ世が、ふいに真/吾を呼んだ。
「なに?」
振り向いた先には、これでもかとばかりに舌を差し出したメフィストⅡ世。いきなりあっかんべーなど見せられた真/吾はむっとしたが、その赤い舌の上に乗っているものに気付くと肩にこめた力を抜いた。
「器用なこと、するねぇ」
「えへへー」
舌の上に張り付いたそれをつまみ上げ、Ⅱ世はひらひら手を揺らす。さくらんぼのヘタを舌で結んだそれは、真/吾の視線を一身に受けていた。
「なんかさ、アレらしいぜ」
「どれ?」
「コレが出来るヤツは、キスが上手らしいぜ」
ずるん。
唐突な話の流れに、真/吾は文字通りずっこけた。つまりこの悪魔は、そんな事をわざわざ自慢する為にこのさくらんぼのヘタを結んで見せたのだ。
「……あ、タイム」
「あん?」
一通り自慢して満足した悪魔は、ヘタをぽい、と種が捨てられている器に投げ入れる。透明なガラス鉢の中に消えたそれを目で追って、真/吾は少々意地悪な質問を投げかけた。
「ホントに口の中で結んだ?」
「結んだって」
「じゃーやって見せて」

即座に返ってきた言葉に予定通りの言葉を投げ返し、真/吾はさくらんぼを摘みあげて実を口に含む。ぷちん、と小さな音を立ててヘタを切り離し、やや不機嫌な面持ちの悪魔の前へと差し出した。
「よーしいいぜ。見てろよ」
メフィストⅡ世は真/吾の手から直接それを口に含んだ。驚いた真/吾が小さく声を上げるのに笑みを浮かべ、口をもごもごと動かす。
「……」
「……」
そして。
「ふえ」
ぺろん、と伸ばされた舌先には、やはりきっちり結ばれたヘタがちょんと乗っている。またも自慢げに笑う悪魔に、真/吾は何とも面白くない。
「むー」
さくらんぼを取り上げて、口に含む。実は美味しく頂いて、種だけを器に捨てた。
「おーおー、頑張れ頑張れ」
「むー!」
ヘタ結びに挑戦し始める真/吾を、悪魔は明らかに気の抜けた様子で応援する。これで出来なければとんでもなく笑われてしまうと、真/吾は必死に口を動かすが……思うようにいかない。
「コツ教えてやろうか?」
「む」
「あっそ」
差し伸べられた手を取る気にもなれず、ぶすっと膨れたまま口をもごもごさせ続ける。が、時間をかければ必ず出来るものでもないわけで。
「できたー?」
しかもこんな、わざわざ煽ってくる迷惑な悪魔を前に、冷静に作業を続けられるわけもなくて。
「あーもー!」
ぺ。
不恰好にしなびたヘタを吐き出し、真/吾はさくらんぼの器を悪魔の方へと押しやった。

「あら」
「ふんだ、どーせ僕はキスがへたっぴですよーだ」
結ぶどころか、ヘタをふにゃふにゃにしただけに終わってしまった真/吾はすっかりへそを曲げて、ぷいとそっぽを向いた。
「教えてやろうか?」
「いらないよっ!」
下手に出た言葉も、端々に混じる笑いが耳について素直に受け入れられない。このまま事が進めば、恐らく自分は引き下がるタイミングを完全に見失ってしまう。そうなれば、後はもう意地が砕けるまで延々と相手を突っぱねるという、何とも不毛な時間へと突入せざるを得ない。
何とかしたいのに、曲がったへそが言うことをきかない。そんな自分にさえ腹が立って、悪循環が始まりそうになった、その時。
「悪/魔くん、なあ悪/魔くん」
真/吾を呼ぶ声。嫌々ながらに目だけで振り向けば、さくらんぼを口に銜えたメフィストⅡ世が顔をずいと近付けてきている。彼が口にしているさくらんぼはヘタで2つが繋がっていて、その一方を口に含み、もう一方を揺らしてそれを指差している。
「……」
食べろ、と言っているらしい。どうやら、ご機嫌取りのつもりでもあるらしい。
真っ先に頭に浮かんだのは、膨れっ面のまま文句を言って返すことだったが、そうしてしまってはもう大喧嘩は避けられない。第一、自分が勝手に駄々をこねているだけなのだという事を思い出し、真/吾は少し肩を落とした。
「んー」
ずずいと顔を突きつけ、悪魔はゆらゆらと赤い果実を揺らす。瑞々しいそれを手で取ろうとすると、ふいと顔を背けられた。
「……」

口で、と言いたいらしい。自ら自分の口を塞いだ、この悪魔は。
「んーんー」
またも顔が寄せられる。ずずいん、と近づいてきた顔と果実に、真/吾は諦めて口を開いた。
「あー……むゆ!?」
果実を、果実だけを口に含んだはずだった。のに。
「うー!!」
ご機嫌取りに見えたそれは、よりにもよって巧妙な罠だった。さくらんぼサイズに開かれた口を、二つの果実ごとぱくんと食べてしまった悪魔は、にたにたと笑いながら真/吾の体に両手を絡みつかせる。
しまった、と思った時には既に遅く、真/吾の体は悪魔にすっかり捕まってしまっていた。
「んん!」
放して、と言おうにも口は塞がれている。二つの果実はヘタごと互いの口を行き来し、やがて固いヘタだけがポロリと取れてどちらかの口からか解らぬまま床へと落ちた。
残された果実は甘い味を振りまきながら、逃げ惑う舌と捕らえようとする舌に弄ばれ潰れ、ひしゃげて芳醇な香りと瑞々しい果汁を口内にばら撒く。
「んゅー」
突き放そうと上げた手はそのまま捕らえられ、指が絡み合って逃げられない。蹴り飛ばしてやろうかと思った足には相手のそれが絡みついて微動だに出来ない。
顔を背けて逃げようにも、執拗に追ってくる舌と唇からは逃れられず、それは真/吾が白旗を上げるまで延々と続いた。
「んぅ……」
何がどうしてそうなったのか、真/吾はいつの間にやら悪魔に組み敷かれていた。角度を変え深さを変えて繰り返され続く口付けに、次第に脳が犯され始める。積もり積もった危機感が薄れ、朝霧が晴れていくように消え果れば、もう真/吾に勝ち目はない。

「ふぁ……っ」
散々弄んだ舌を開放し、悪魔はそっと貌を離すと悪戯な笑みを浮かべる。対する真/吾は、それに対し怒りをぶつける事も、文句を言うことももう叶わない。
唇と共に開放された四肢を床に投げ出したまま、悪魔が悠然とした動きで赤い蝶ネクタイを解くのを眺めているほか無かった。
「悪/魔くんがヘタ結べるようになるまで、いっくらでも練習に付き合ってやるよ♪」
当然、サービス付きで。と付け加えて笑い、汚れひとつ無い純白の手袋をするりと外す。何が始まるのかなどイヤという程に教え込まれた真/吾は、せめてそれくらいはとばかりに開け放たれたままのドアに視線を飛ばした。
「んー?ああ、ハイハイ」
「ハイは1回でいいの……」
いそいそとドアを閉めに行く悪魔の背中を眺めて、真/吾は気付かれないように舌を突き出してみた。

真/吾が上手にヘタを結べるようになったかどうかは、また別の話。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ お邪魔様ですた。
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