のどのいたみ
更新日: 2011-04-26 (火) 17:31:41
トランスするフォーマー、前日譚コミックより司令官×蜂。
タイガーパックス戦直後です。バンブルが喉潰された後の、うじうじ司令官。
捏造だらけな上になんかオチもないです。先に謝りますすみません(´・ω・`)
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ラチェットの必死の治療の果てにようやく意識を取り戻したバンブルビーが、最初に起こした
反応を、オプティマスは決して忘れない。
オールスパーク放出作戦の成功の代償に、バンブルビーがメガトロンに奪われたものはあまり
にも大きかった。拷問で右腕と発声モジュールを引きちぎられ、完全破壊寸前まで嬲られた彼は、
恐らくほんの一瞬でも援軍が遅れていたならば、命の源、スパークそのものをも無残に散らされ
ていたはずだ。
昏睡から目覚め、声が出ないと気づくまでの――どれほど絞り出そうとも、彼の喉から漏れる
のは声ですらない、ただの雑音だけだと悟るまでの、バンブルビーの混乱、苛立ちと恐怖、そし
て絶望を、オプティマスはただ見守ることしかできなかった。
あれほどに感情豊かでおしゃべりな、誰からも愛されている年若いオートボット。
常に人懐こくまとわりつき、年嵩の戦士たちに何とか肩を並べようと奮戦していた彼の、屈託
ない笑い声を聴かぬ日などなかったのに。
オプティマスが愛したあの声があれほどに酷い手段で奪われるなどと、いったい誰に想像でき
ただろう。
バンブルビーがオプティマスに縋り付き、震えながら他のあらゆる伝達手段を必死に探す。恐
慌のはてに、ようやく電子通信のチャンネルを開くところに辿り着いた。堰を切ったように、デ
ータ通信が一気にオプティマスへ流れ込んでくる。だが、痙攣じみた勢いで伝わってくるバンブ
ルからのデータは、混乱のあまりまともなかたちを成していなかった。通信機器そのものの故障
かと思えるほど乱れに乱れたはてに、彼からの送信はわずかな空白を挟み、ようやくたったひと
つの単語を紡いで停まった。
"OPTIMUS"
送られてきた我が名を、オプティマスは声もなくただ受け止めた。
雨が零れ落ちるように、ぽつりぽつりと単語が続く。
"OPTIMUS"
"OPTIMUS"
"OPTIMUS"
"OPTIMUS"
バンブルビーが振り絞るように、呼び続けている。出せぬ声の代わりに、データが叫んでいる。
オプティマスの名を。
「バンブルビー」
オプティマスは呻いた。
責められてもしかたのないことだ。危険な作戦を彼に命じたのは、他ならぬオプティマス自身
なのだから。
強く大きい仲間の戦士たちにははるか力及ばぬことを知りながら、この小柄なオートボットも
また、彼ら以上の勇気で危機へと自ら飛び込んでいこうとする一人だ。バンブルビーのそんな気
性も、彼がどれほどに自分を敬愛し、忠を尽くしてくれるかも、オプティマスは知っていた。た
とえ我が身に生命の危機が迫ろうと、彼の心が揺らがぬことも。
そんな彼を自分が作戦の遂行者に選んだのは、誤りだったのだろうか。
オールスパーク放出のために、時間がどうしても必要だった。もしバンブルビーがあのまま踏
みとどまらねば作戦はおそらく失敗し、ディセプティコンはオールスパークとともにすべての生
命を蹂躙し尽くしていたことだろう。
痙攣のようにオプティマスの名ばかりを呼び続けていたバンブルビーからのデータが、初めて
それ以外の文章を綴った。
"OPTIMUS I DID MY DUTY"
オプティマスは彼を見つめた。
うなだれたバンブルビーはオプティマスの腕に額を押し当てたまま、視線を合わせようとはし
ない。残された左腕だけがわずかに動き、のろのろとオプティマスへと弱々しく縋った。
"I DID"
絞り出すように、ゆっくりとバンブルビーがその言葉を伝えた。
「わかっている」
オプティマスは繰り返すしかない。若きオートボットの傷つきはてた身を、包み込むように抱
きしめる。「わかっている」
バンブルビーは純粋な戦士ではない。その彼が踏みとどまってメガトロンを引き止めるのに、
いったいどれほどの勇気を要したか。どれほどの恐怖に耐えたのか。
「わかっている、バンブルビー。よく……やってくれた」
オプティマスの声が震えた。
キューブは護られたが、そのためにバンブルビーに癒えぬ傷を刻ませてしまった。彼を救えず、
あまりにも酷い傷を与えてしまった原因は自分だ。
なのに、おまえは私を責めぬのか、とオプティマスは心の中で呟く。これほどまでに深く傷つ
けられ、声を喪ったことよりも、私への忠節などが勝るとでも。
バンブルビーが、掠れた雑音を苦しげに絞り出した。オプティマスはただ、その肩を支えてや
ることしか出来なかった。
「心配するな、バンブルビー」
オプティマスは震え続けているオートボットに囁きかけた。「必ずやおまえの声を取り戻して
みせると……その手段を見つけ出すと、私は誓うぞ。バンブルビー」
手は尽くすが、バンブルビーの声を再び聴くことは恐らく難しいだろう、と軍医が苦渋の診断
を下していることを、オプティマスはいまだバンブルビー本人には伝えていない。
バンブルビー。
当たり前のように、幾度となく呼び続けてきたその名を、オプティマスは胸の内で噛みしめる。
バンブルビーが、たとえ二度とオプティマスの名を呼べなくとも。
たとえこのままさらに何千年の時を過ごそうとも、オプティマスはバンブルビーの声を忘れま
い。彼が自分を呼ぶときのあの懐かしい声は、蓄積されたデータだけではない、もっと深いとこ
ろに――オプティマスの心に今もしっかりと刻まれている。絶対に、忘れない。
「……大丈夫だ」
オプティマスはバンブルビーに囁いた。
私にはおまえの声が聴こえている、バンブルビー。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!
そして遁走。
このページのURL: