穴と麦なんちて
更新日: 2011-04-26 (火) 17:11:11
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| 元ネタは懐かしのシ羊楽コンビ
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| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| でも好きに読んでちょ
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| | |> PLAY. | |  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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俺はあの夜を一生忘れない。
例えヤツが忘れても、それどころか最初から覚えてさえいなくても。
ライブツアーで訪れたとある地方都市の、最高級ホテルのペントハウススイートだ。
広々としたリビングを挟んでベッドルームが二つあり、そのどちらからも湖が見渡せた。
ガシャン、ドン、ドシン!
いい気持ちで眠りこんでいた俺は、けたたましい物音にびっくりして目を覚ました。
夢でも見たのかと、枕に片頬を押しつけてじっとしていると、またゴツン、ドスンと、重い物がぶつかるような音がした。どうやら、リビングからだ。
暗い中を手探りでドアまで行ってみると、足下からうっすらと光が漏れていた。俺は寝る前に確かに電気を消したはずだが、その明かりがついているのだ。時計を見るまでもなく、今が夜明け前の暗い時間だってことは分かっていた。
この騒ぎの原因も。
俺はドアノブを握って軽く溜息をつき、薄く開いた隙間からリビングの様子を窺った。
そこには、俺の相棒がスーツを着たまま、長い手足を床に投げだして仰向けにぶっ倒れていた。
「オイ、コラ」
スリッパを履いた足で脇腹をゴンゴン蹴ってやった。どこから持って来たのか、ヤツは右手に自転車のハンドルを握っている。それでもちゃんと服は着ていた。今夜は。
「コラ、起きろ!」
ぐんにゃり伸びた胴の上にしゃがんで大声を出すと、ほんの数ミリだけ目が開いた。うっとりとした切れ長の目。その目が俺の顔を見上げて、とろけるように笑った。
「よう。ジョン・・・・」
「このバカ野郎、またやらかしやがったな」
「バカ野郎」
「ああ、バカ野郎だ。財布はあるか? 連れはどうした」
「財布はバカ野郎」
「うるさい」
俺は手早くヤツの衣服をあらため、上着の内ポケットにも尻ポケットにも財布どころか、小銭一枚残っていないのを確かめて、首を振った。
「あーあ。お前はもうカード持つな」
「カードは・・・バカ野郎」
「そうだ、お前は信じられないバカ野郎だ。いったい何度言ったらわかるんだ? 破産しても知らないぞ」
「俺はバカ野郎」
「そのとおりだよ!」
まったく会話にならない。泥酔した相棒は、それでも上機嫌で、酒臭い息を吐きながらニコニコと俺を見ている。ピンク色に上気した頬と、細められた目の優しさは誰が見たって最高だ。どんな女の子でも恋せずにはいられない、コイツのとびきり魅力的な顔。
俺はなんだかションボリとして、ヤツの目の上に手を置いた。ヤツは気持ちよさそうに動かず、そのまま眠ってしまいそうに見えたが、どうせこんなでかい図体、ベッドまで引きずっていけそうにもない。吐かないならこのままここで明日の昼まで寝かせてやったほうがいい。
毛布を持って来てやろうと立ち上がりかけた時、急に腕を掴まれた。バランスを失ってよろけた俺は、あやうくヤツの上にまともに倒れ込む所だった。
「コラ、危ないだろ!」
「ジョン」
「何だ」
「ジョーーン・・・」
そのまま頭をきゅうっと抱きしめられ、赤ん坊をあやすように揺さぶられた。酔っぱらいのすることに意味なんかないのに、俺はちょっと慌ててしまった。
「離せよ。オイ」
「一緒に寝よう」
「絶対ごめんだ」
「ジョンはバカ野郎だ」
「お前に言われたかないぞ、このくそったれ! いいから離せ」
「冷たいこと言うなよ・・・・こんなに愛してるのに」
最後の一言を、ヤツは俺の耳元で囁くように言った。まるで薔薇の花びらみたいな、甘くて甘くて、風に吹かれるみたいな言い方だった。
俺は耳が燃えるかと思った。女好きのコイツに限ってそんなことがあるはずないと思いながらも、おそるおそる答えた。ヤツの顔を見るほどの勇気はとても湧かなかったが。
「俺も、愛してるよ」
そのまま1分ほども待ったが、返事はなかった。
首に回された腕をゆっくりとほどき、起き上がった時には、ヤツはもうぐっすりと眠りこんでしまっていた。半開きの唇から、くうくうと寝息が漏れている。
一瞬抱いただけで消えてしまった夢を惜しみながら俺は、その唇に、そっと触れるだけのキスをした。
「愛してるよ」
夢の中にいるヤツにもう一度だけ言ってやって、俺は毛布を取りに行った。
あの夜のことなんて、きっとヤツは覚えちゃいないだろう。
でも俺は忘れない。
あの声の響き、「愛してる」と言った切ない声の甘さを。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 正直スマンカタ
| | | | ピッ (・∀・ )
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