ス/ピ/ン/シ/テ/ィ 第55話より ネイト・カーター・マイク
更新日: 2014-05-22 (木) 23:44:28
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
書いたはいいけど持ってく場所がないのでこちらに投下。
元ネタ知ってる人自体少ないと思う。スマソ。
ゲイネタが普通に多いドラマなので興味ある方はぜひ観てみてください。面白いよ。
初対面に近い相手から、突然カミングアウトされることは決して珍しくない。
ニューヨーク市庁舎に勤めるようになってからは、その機会も爆発的に増えた。
無理もない。まず、私は黒人だ。そして、ゲイだ。私はマイノリティの生ける
看板であり、ウィンストン市長政権のリベラリズムの象徴だ。私をそんな心労
多き立場に祭り上げた若き市長補佐マイク・フラハティは、まったくもって有能な
策士に違いない。私は彼を恨んでいるわけでも憎んでいるわけでもない。こういう
立場になったからには、この政権の中心人物として、彼や市長や他の皆と共に、
輝かしい政治理念に邁進するまでだ。
だが、策士も、ときに自分の罪深い策に溺れることもある。……
「なあ、カーター。俺さ、」
「……何も言うな」バーの扉を押しあけながら、私は重い溜息をついた。「言い
たいことは察した。だから、何も言うな、ネイト」
ずっと緊張した面持ちだった海軍の軍人は、はじめて安堵したように表情を
ゆるめた。マイク・フラハティの旧来の親友。今朝、ミーティング中の補佐室に
飛び込んでくるなり、マイクとじゃれあい出したの彼を見た瞬間から、何となく
予感はあった。彼が、私と同じゲイであること。そして、当のマイクは、まったく
もってそれに気付いていないこと。不幸なことに、この仕事に就いてから、私の
脳内のレイダーならぬゲイダーは冴える一方だ。
「君と出会えて嬉しいよ、カーター」
「私もだ」
なるべく早足で歩こうと努める。彼に誘われて立ち寄ったこのバーから、
私のアパートまでは徒歩でも大した距離ではない。おまけに、部屋ではスチュワートと
マイクが、暇つぶしにテレビを観ているはずだ。その短い間に、彼がこれ以上何も
口走らなければ、私はただ、善良なマイノリティーの神父役として、彼の秘密を
聞き入れ、慰めを与えてやるだけだ。
しかし、むろん、事態はそう甘くない。
「……実は、マイクにもカミングアウトしたいと思っているんだ」
「…………成る程、な」
「海での仕事から戻ってきて、マイクが、君をマイノリティ担当として採用したのを
知った。あいつ、学生の頃はホモフォビアそのものだったけど、政治の世界に入って
考えを変えたんだな。嬉しかったよ。きっと今のあいつなら、俺がゲイであることも
受け入れてくれるだろう」
「そうはうまくいかないと思うぞ」
「どうして」
「彼は、君がゲイだなんて夢にも思ってないだろうし、」咳払いをする。「それに、彼が
私を採用したのは、ゲイに対して理解があるからじゃない。むしろゲイを畏怖していた
からだ。ゲイからの政治的な攻撃をね。私は彼の牛耳るウィンストン政権のスケープ
ゴートとして働かされているようなもんだ」
「そう……そうか」
ストリートの角を折れる。もう日は疾うに暮れている。四つ角の明かりの下に浮かび
上がった彼の顔は、再び、不安と緊張に満ちたものになっていた。きっと、自分も同じ
ような顔をしているだろう。ゲイでなければ、することもないし、見ることもできない顔だ。
「ネイト。聞いてもいいかな」
「いいよ」
「彼を……マイクのことを……愛しているのか?」
「何ていったらいいかな」ネイトは微かに笑った。「愛しているか分からないけど、
愛しているのかどうか、常に考えている」
「成る程な」私は頷いた。「分かるよ、それ」
「実際のあいつを見てたら、考えるのもばかばかしくなるけどな」
「分かるよ、それも」
「あいつ、相変わらず、女とっかえひっかえなのか?」
「君が知ってるより、たぶん、もっとひどくなってるぞ」私は真横を歩く彼を目で
追った。「雑誌で"ニューヨークで最もセクシーな男"なんかに選ばれたのが運のつきだ。
あのとき同棲していた恋人とはとっくに別れて、今は自分より10センチも背の高い女を
やすやすとひっかけている。ところが、相手が結婚を匂わせはじめると即座にヒイて、
結局長く続かない」
「そのくせ、とんでもなく寂しがり屋」
「そう。普段は軽口ばかりのくせに、セラピーを受けなきゃならないほど根深い
孤独癖の持ち主。都合のいいときだけちょこまかひっつき回って、無防備に甘えて
きたり、抱きついたり。冷たい態度を見せると、膝をかかえて、あのブルーの子供っぽい
目をうるませて、こっちを見上げてくる」
「ゲイの敵だ」
「ホントホント。まったくもって、ゲイの敵だな」
「……な」
彼の横顔にすべりおちた小さな一粒の涙を、私は決して見逃さなかった。早足を続け
すぎたせいで、胸の鼓動がきつくなって、息があがった。だが、もしひとたび足をゆる
めたら、自分も彼も二度とそこから動けなくなってしまいそうな気がした。
キスしたい、とふと思ったら、向こうからキスしてきた。しばらくは、ろくに何も
考える余裕はなかった。ムードのかけらもない、ただ互いに唇の震えを抑えるため
だけの、強引で身も蓋もないキスだった。場所は、アパートの玄関ドアのまさに
真ん前だ。舌の絡まりの音のはざまに、マイクとスチュワートの談笑の声がドア
づたいに聞こえてくる。ネイトがキスしたままノブに手をかけていることに気付いて、
私は慌てて彼から身を引き離した。
「私にも、似たような経験がないわけじゃないが」声をひそめて、ささやく。
「こんな形でマイクに復讐するのは、やめた方がいい」
「ごめん」彼はささやき返した。「でも、そういうわけじゃない。カーター、
俺は君のことが……」
「よせ。傷つくのは君だぞ」
彼は顔を伏せた。黒髪の下で、形のきれいな目が真っ赤に染まっている。だが、
顔立ちは端整そのもので、私の腕を握り締めるその手は、軍人らしくとても逞しい。
いい男だ。本当に、いい男だ。
「まったく、……マイクが羨ましいな」
「俺には、君が羨ましいよ」
「似たようなことだ」私は嘆息した。「私たちゲイは、いつもこうやって、ヘテロの
馬鹿のために貧乏クジを引く」
玄関ドアの向こうから聞こえる声が、徐々に大きくなる。スチュアートがいつもの
ごとくマイクをからかい、マイクはかなり苛立っているらしい。三年ぶりに自分に
会いにきてくれた親友が、一緒に最初の夜を飲み明かしてくれないからだ。大方、
昔の女とよろしく過ごしているとでも誤解しているのだろう。まったく、どうして
ああも無知で傲慢な男なんだ。ネイトも同じことを考えていたのか、そこで再び
目が合った。
「なあ」彼は言った。「あいつがショックを受ける顔、見たくないか?」
「あれは策士だ。何度でも仕返しする男だぞ。君は絶交を言い渡されるかもしれないし、
二週間の大事な休暇をホゴにされて、海に強制送還されるかもしれない」
「でも、彼は、本気でショックを受けてくれるんだぞ?」
彼の表情はいつしか不気味な光輝を宿していた。その両手が、私の頬を包み込む。
もう、決然と近づいてくるその唇を止めることはできなかった。ただ、互いのそれが
触れ合う直前に、そっとささやきを洩らした。
「君は最高だよ。……ネイト」
「あいつが三年ぶりの僕より、女を選ぶわけがない!」
声の極まりと共に、玄関扉がいきおいよく開かれる。ニューヨーク一の策士
マイク・フラハティが、自分のおかした罪の重さに気づくまでは、まだ数刻の猶予が
あるはずだった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ちなみにマイクの中の人は
バックトゥザ未来のマーティの中の人です。
- まさかと思っていたら発見! -- 2014-05-20 (火) 01:05:12
- まさかの回転都市!萌えました~この続き読みたいです♡ -- 2014-05-22 (木) 23:44:28
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