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数字国物語

菖蒲三年、年号は薔薇に改まった。
スウジータ王国に新たな王が誕生したのである。

ここには何もない。捕虜か何かを一時的に入れておくような、
周りは石の壁、目の前には鉄格子が嵌められ、
足下には小川のような排水路が流れている、それ以外に何もない牢だ。
こんな場所がこの城にあった事は――利用する物騒な機会は一度も無かったので――知らなかった。
蛍光灯の明滅する薄ぼんやりとした光が瞼を刺激する。
牢の中の男は顔を上げた。足には鉄の重り、
両腕は横に上げた状態で枷を嵌められており、
膝も付けない半端な長さの鎖のせいで下肢は痺れて感覚が鈍い。
どれだけ時が流れたかは時計も陽もないこの地下牢では分からないが、
湿っていた筈の服は乾いており、前に起きた時からだいぶ経ったのだと気付く。
この蛍光灯と似て 、ぼんやりとしていた五感は金属の軽快な音と、
ひたひたと湿った石畳を歩む二人分の音を聞き取った。
「てめーか、ルーク」
男が心当たりのある名を呼ぶと、城兵だけが輪に繋がれた鍵を指で弄びながら現れた。
「ルーク、か。その名はもう必要ないがなぁ。御機嫌よう、アルジ」
城兵――ルークは恭しく頭を下げる。嘲笑の意味を込めて。
いつもなら彼は髪を一つに纏めたオールバックだが、それを解いているという事は、
今は兵達が職務を終えた夜という事だろう。
「城下じゃ俺の民達が泣いてるぜ?今すぐ死んだのはドッキリでしたと言ってやれ」
溜め息混じりでアルジが顎をしゃくった。
アルジは、ほんの数日前まではこの国の王だった。だが、今は牢に囚われている。
「この期に及んでタミタミ煩ぇな民マニアが。
そんなに民が好きならさっさと玉座から退けば良かったんだ」
「るせぇ、デコ助が。俺の見えない所で飢えて死ぬ奴がいるんだぜ?金も食料も有り余ってるってのにさ」
彼が執った政治というものはこの国にとって斬新な物ばかりだった。
城の余りある食糧を民に分け与えよというものであり、
彼の政治について家臣は賛否両論であったが、
民からはかなりの支持があったのである。

ルークはシンカへ顎で牢の中へ入るよう示すと、
シンカは何か言いたげにルークを見てから、ゆっくりと牢の中へ歩む。
ルークに背を向けた瞬間、ルークがシンカの背を思いきり蹴り飛ばした。
床にしたたかに体を打ち、シンカは呻き声を上げてルークを睨み付ける。
やけに息が荒く、それは普通ではないと理解出来た。
「シンカ!シンカ!?お前…ルーク、てめぇシンカに何をした!」
「俺は何も。なぁ?シンカちゃん」
くっく、と喉を鳴らす笑い声を上げて、肩を竦めて牢の鍵を掛ける。
拘束が弱まって、牢の中に味方が一人増えただけだ。現状は変わっていない。
アルジは舌打ちし、倒れ込んだままのシンカを覗き込んだ。
「シンカ、大丈夫か」
覗き込んで、アルジは驚愕した。
アルジの知るシンカという男は、少なくともこんな表情をしない。
何かに怯えるような表情など見た事がないのだ。いつでも余裕に満ちた、
アルジを支えてくれている男は体を細かく震わせていた。
「シンカちゃん、アルジに跨がれよ」シンカは言われるがまま裾を腿まで絡げてアルジの足を跨ぎ、両膝をつく。
それだけで苦しげな顔をする。
申し訳ありません、とうわ言のように繰り返す言葉が杭のように胸に突き刺さる。
異様に膨れた腹と、そこから響く雷鳴のような音。流石のアルジもシンカに起きた事を想像出来た。
アルジを見、ルークは額に手を当てて笑う。
「この際教えるが。シンカちゃんは自分で浣腸してきたんだぜ!
裾をたくしあげてな、てめぇのケツに浣腸器をブッ刺して――」
「それ以上口を開くな」
「知ってるか?知ってる筈が無いよな。
シンカちゃんはな、お前を助ける為だけに俺達に体売ってんだ。
こいつのケツにはな、--糞と野郎どもの精液が詰まってるんだよ」
「黙れ、黙れ黙れッ!ルーク!俺はお前を許さねぇ!
シンカも何やってんだよ!何で…何でそんな奴の言いなりになってんだ…」
「わたしの…大切なアルジ様の為に」
無理に笑ってみせるのが痛々しかった。
「馬鹿野郎…」

そうしている間にも、嬲られた粘膜の痛みと、
腸内に注いだ精液による腹痛とが綯い交ぜになり、シンカの額には玉の汗が浮かんでいた。
腹痛よりも溜まったものを外に出そうとする排泄欲を堪える事の方が苦しい。
後孔は嬲られて力を入れ辛く、生理的な排泄という力は内側で暴れ回り、吐き気さえ催すほどだ。
「アルジ…様…」
瞼は目の前に映る現実、何よりも貴い主に跨がるという事実を映してしまわぬよう固く閉ざし、
拳はやり所の無い自身への怒りを溜めて装束の裾を握り締め震えている。
「シンカ…俺を汚すのを気にしてるってんなら…」
「わたしは…!」
ここで自ら命を絶てば、守る者のいなくなった王を危険に晒す事になる。
しかし王の前での排泄など不浄に他ならない事であるし、
ましてやそのせいで王を汚してしまうなど以ての外だ。王を救う為に王を汚す。
シンカの胸には矛盾した螺旋が広がって苛む。
「もういい。いいんだ、シンカ」
それはアルジの優しさであって、シンカの矛盾を解く鍵では無い。
アルジの許しに、それでも彼は首を振る。
アルジは漸く感覚の戻ってきた手で――シンカの下腹部を押した。

「う…、あぁッ…!」
腹が獣の唸り声に似た音で鳴いた。
限界まで来ていた便意はいとも簡単に決壊する。
床に手をつき、裾を捲り尻を高く突き出す。
堪えられないのであれば、せめて王を汚さないようにと。
ルークに見られるくらいどうという事はない。
そのルークがヒュウと口笛を鳴らし、アルジはシンカの頭を撫でる。
細かな破裂音を立てて、茶色く濁った精液が腿を伝う。
「く…ぅ…!」
咄嗟に取ったこの体勢も相俟って、一度許した流れを止める術など無く、
シンカはかぶりを振り、微かな悲鳴を上げた。
ドロリとした精液と排泄物の混ざったものの本流が幾度も噴き出して、
生暖かなものが足を伝い、そうでないものは床を汚していく。
後孔が便を押し出そうと徐々に口を開き、
潤滑油代わりの精液によって塊が粘膜をゆるゆると擦って降りてくる。
「…嫌だ、嫌だ!」
湿った音を立てて、後孔を押し拡げていくそこは、
男のものを何度も咥え込んで敏感になっていた。
アルジは前で俯いたままのシンカを胸に押しつけて、床で握り締められていた拳に手を重ねる。
「全部、出しちまえ。俺が許す」
アルジに出来る事といえば、許しの言葉を掛けてやる事しか無いのだ。

「…絶景」
ルークが鉄格子に齧り付くようにしゃがみ込み一点を見つめている。
シンカの後孔から、便塊が姿を現わしつつあるのを。
それは巨大な塊となって表皮を擦る。
シンカに理性というものが残っていたならば、
まだ排泄を堪えようとしていただろう。
「ふッ…んん…ッ!」
排泄を制御され、朝から溜め込まれたままのものは内側からシンカを圧迫する。
臓腑が下るような感覚。この痛みと苦しみ、そして羞恥から逃れたかった。
「ふ、ぅ…!」
腰骨に力を込めると、漸く塊の先端が外気に触れる。
外からでは無く内から後孔が限界まで広がって、
太く固いものが少しずつではあるが降りてきて嬲られたそこを更に痛める。
膝がガクガクと震え、アルジの胸に額を押しつけたまま、シンカは排泄を続けた。
「ぁ…」
重く、そして固く長い便が尻の間から垂れ下がり、音も無く抜け落ちた。
吐息混じりのその声に悦が含まれたのを聞き逃さなかった、
傍観者の笑い声が地下牢に響き渡る。後孔を塞いでいた塊が排出された事、
それが後孔を緩ませた事で、収縮を繰り返すそこから柔らかな便が次々と吐き出されていく。

粘着質な熱い便が石の床を叩き、足の間に山のように積もる。
手は、アルジの手を握り締めていた。否、アルジがシンカの手を取ったのだ。
指を絡ませ、シンカの思うようにさせていたアルジの甲にはシンカの爪が食い込んで血を滲ませていたが、
声一つ上げなかった。ルークは手を叩き、大いに嘲笑するとその光景を吟味するように眺める。
「滑稽!滑稽だな!こりゃ皆に自慢しねぇとなぁ。
…シンカちゃんがケツからぶっとい糞垂れ流してアンアン鳴いてたってな」
「ルーク、きさ、ま…」
シンカがその声の方を向こうと顔を上げたが、言い終わる前に、
ふらりと力を無くしてアルジの胸に沈む。
「シンカ!?」
「シンカちゃんに免じて今日は勘弁してやるよ。
今日はな。じゃあな、今は亡きアルジ・スウジータ」
唇を歪めて、あっさりと踵を返し、来た時のように鍵の軽快な音に鼻歌交じりで
ルークは地下牢と繋がる戸から出て行き、戸はやけに重い音を響かせ閉ざされる。
胸の中で意識を失っているシンカはどうしてだろう、どこか安堵したような、
安らかな顔をしていた。アルジはシンカを抱き、静かに泣いた。
涙が溢れ、止まらなかったのだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・;)
とにかく主従で監禁スカが書きたかった。
予想より長くなってしまって申し訳ないです。


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