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小鹿 給×副

・『小鹿!』より給仕長×副料理長です。ドラマ版に準拠しています。
・スピンオフ後の話なので、ご覧になっていないと意味不明です。すみません。
・副料理長が百合を通り越して乙女です。さらにすみません。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

都心の一等地に君臨するトラットリア・バ/ッ/カ/ナ/ー/レの戦場のごとき厨房を統べる
副料理長・桑/原/敦はその怜悧な相貌に似合う冷静な判断力と確固たる統率力において、
若きスタッフの信頼を集め……、
……ながらも、その完璧主義の反動か些細な事柄で落ち込むこともしばしばだ。
もっとも、それが尾を引くようなこともなく他人に弱音を吐くこともない。
そしてそんな顔を誰かにみせることもない。幾人かを除いて。

立場がそうさせ、また自ら育て上げた彼の能力と矜持を、
同じくホールを統べる与/那/嶺はいとおしく思い、
そしてそれ以上に矜持が綻ぶ瞬間の彼を抱きしめることを何よりも好んだ。
それを──「あっちゃん」のそんな姿を知っているのはおそらく自分だけ。
優越感を呼び起こすこの一事の甘さを、与/那/嶺は思い出すのだ。

──たとえそれが独り言の漏れ聞こえるトイレのドア越しであったとしても。

ドアが開き目が合うと、めずらしく眼鏡をはずしたままの彼は
すべての動きと呼吸を止め目を見張り、一気に顔を赤くする。
微笑み片手をひらひらと振ると、
あぁ、と言葉にならぬ呻きとともに両手で顔を覆った。

******

いまだこみあげる笑いを抑えながら、与/那/嶺はやっと口を開いた。
「やっぱりさ、交差点でバカヤロー!って叫んでくればいいんじゃないの?」
「だから、そんな若気の至りなんて知りません」
ふい、と視線をそらし桑/原は答える。そして伏し目がちなまま薄いくちびるを噛んだ。

与/那/嶺に事の次第をぽつりぽつりと打ち明けていた間も、
彼は鼓動の高鳴りも聞こえそうなほど頬の緋を濃くするばかりで、
あまりに「副料理長」に似つかわしくないその姿に
与/那/嶺は何かいとおしさのようなものと笑いをおさえきれなかったのだった。
だが桑/原には彼の笑いもまた自分の話に対する単なる返答としか
映らなかったのかも知れず、
誰もいない厨房にまでよく響く与/那/嶺の笑い声を聞きながら眉間に皺をよせた。
しかし、給仕長として完璧な微笑を浮かべているのが常でこそあれ、
これほどまで楽しげにこの男が笑うのは珍しい。
屈託ないその笑いに少しづつ心が軽くなっていくのを桑/原は覚えたが、
やはりぐるぐると複雑な思いがめぐりその頬を染め、ため息を漏らした。

ごめん、ごめん、悪かった」
与/那/嶺は長い睫毛の目元を指先で拭った。
「……ひどいな、ほんとに。泣くほどおかしかったですか?」
いまだその白く薄い頬は微かに赤らんでいて動揺の名残を残し、
目を逸らしたまま、指先は所在無げに
件の眼鏡がはいったままのポケットをなぞっている。
しかし言葉とは裏腹に、自分もまた微笑が浮かんでくるのを桑/原はおさえきれなかった。
ふふ、と口元が綻ぶ。与/那/嶺もつられて、今度は静かに微笑した。
「でも、副料理長さんは慕われてますから。ホールの子にももちろん厨房の皆にも。」
その微笑のまま与/那/嶺は相手の目をまっすぐにみつめる。
「与/那さんこそ」
桑/原はまたも視線を逸らす。
大所を見通しみつめることは経験と立場上長けてきたが、
ただ一人にみつめられることには、慣れていない。いまだに慣れない。
さらにこの男にいたっては、いつまでたっても慣れることがない、だろう。
またも頬が染まるのを覚える。
だが今度は、前とは違うもどかしい温もりがじわじわとからだを包むのを感じた。
「まぁね、俺はね、寂し過ぎると死んじゃうの」
だから慰めてあげる、そう言いながら与/那/嶺は桑/原のからだを引き寄せた。
一瞬、桑/原は身をひく素振りをしつつも温もりには抗えぬまま、
与/那/嶺の抱擁にからだをゆだね、目を閉じる。
しばらくの間、慈しむような背中越しの腕の熱を、ただ静かに感じていた。
互いの呼吸が耳元で響く。いつもよりも体が熱い気がする。
溶けてしまう。このままではこの男の優しさに無言のまま溶けてしまう。

──桑/原は肩にうずめていた顔をふとあげる。
「慰めて、くれますか?」
逸らし続けた目線をようやっとあわせ、消え入りそうな声で囁く。
かの副料理長としてはとても似つかわしくない、
けれども与/那/嶺だけが知っているであろう「あっちゃん」の言葉は
ぎこちないまま、くぐもって消えた。
返事の代わりに柔らかくちびるをおしあてる。
息の熱をそのまま伝えるように耳元で言葉を紡いだ。
──好きだから。
「どんな眼鏡のあっちゃんでも、好きだから」
「フォローになってません」
軽口を交わすくちびるに、微笑を浮かべたまま与/那/嶺はもう一度、くちづけた。
溶けそうな舌を絡め、水音だけをきく。あたたかな熱がまたもからだを包む。

「最高のサービスをもってお答えしますよ。」
息をつくためようやく離した濡れたくちびるで、与/那/嶺はやはり、微笑んだ。
もはや隠すまでもない緋に染まった頬を、
同じく笑いのかたちに変え、桑/原は目の前の男をみつめた。
「それではもっと……ください。」
今度は逸らすことなく。決して逸らすことなく。
視界が多少にじんでいるのは、やはり、はずしたままの眼鏡のせいなのだ。
そう思いながら桑/原は、熱い瞼を静かに伏せ
下肢へと触れていく男の指先と吐息だけに溶けていった。

終.

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )「アッチャンを甘やかしまくりたい!!1!」ガ裏テーマラシイヨ
ありがとうございました。


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