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愛某鑑札上司部下

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   ∧∧                     「夕/方/メ/ー/ル」を見ずに
   (  ,,゚) ピッ   ∧_∧   ∧_∧    「夕/方メール」ネタに挑戦
   /  つ◇   ( ・∀・)ミ  (`   )
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
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  └──────│Kissどころか、会ってさえいないよ(笑)
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部下サイド

 家へ帰ると、妻にただいまを言うのもそこそこに、すぐ書斎のPCを立ち上げる。
 そして、あの人からのメールが来ていないかとウィンドウを開く。彼だか彼女だかも判らないあの人からの。

 その人のことを、みんなは「ゼロ先生」と呼んでいる。
 本来のハンドルネームはO。俺が最近出入りしている推理パズルサイトに於いて、秀逸な着眼点と卓越した
推理能力でゲームを引っ張る、古参常連の一人だ。
 このサイトはパスワード請求制で、管理人さんがセクシャルマイノリティと判断した奴しかパスをもらえない。
だから、ゼロ先生も、ゲイかビアンか、あるいはバイなのだろうと思う。
 何かの拍子に、先生も職場のストレートに恋をしている最中だと知った。
 それ以来、時々メールのやりとりをしている。

『新着メッセージ1通』

 うれしい表示が、ツールボックスにひとつ。
 クリックしてみたら、やはり先生からの返信だった。

From: <zero-coach@goo.ne.jp>
To: <halte2@infoseek.co.jp>
Sent: January 14, 2003 11:53 PM
Subject:0です: まだまだ曖昧ですね
本文:

 「仕事で海外へ行きますか」という質問文は、私の立場から見ると少々曖昧ですね。
 仕事で「海外出張をするか」という意味でなら「Yes、ただし極稀」、
 仕事で「海外に転勤するか」という意味でなら「No」になります。
 まだまだ道のりは遠いですよ。

 ハルさんのほうは進展があったのですね。羨ましいです。
 相手と恋仲にはなれない以上、私たちが望み得る最上の立場は「親友」か「愛某」しかありません。貴方の
上司が大仕事を任せてくれたというのは、大いに喜ぶべきことだと思います。きっとハルさんのことを頼りに
していますよ。
 こちらは相変わらずというか何と言うか。一度でいい、あいつと仕事以外の会話をしてみたい。願うのはただ
それのみです。悪化しないだけまだマシ、とでも思わないとやっていられません。今度のオフ会で愚痴を言う
かもしれませんが、年寄りの繰言につきあってくださいますか?

では私からの質問です。
「幕張町ですか?」

 …驚いた。
 何で判ったんだ!?

 ゲームに不慣れな俺を先生が見かねたのか、メールのついでに二人だけで練習をしてくれることになった。
俺が先生の職業を、先生が俺の出身地を、それぞれ質問を重ねて推理する。質問は必ずYesかNoの一言で
答えられるような明快なものでなくてはならない。回答者は決して嘘をついてはいけないし、ミスリードもしては
いけない。
 たったこれだけのルールなのだが、実際やってみると案外難しい。まだ3回しかやり取りをしていないが、
すでに何度も先生のチェックを食らってしまっている。
 そう、まだたった3回しか質問に答えていない。
 なのに、どうして俺の出身地が判ったんだ!? それも県や市じゃなくて、町! ピンポイント過ぎるだろ!?
 この人は凄い、と、改めて思う。

 大高知主任とプライベートな会話をしたことは一度も無い。無いけど、でもあの人も、こういう知的ゲームの類
だったら乗ってくれるような気がする。現に、「幕張メッセの所在地は幕張ではない」というトリビアを自虐がてら
に披露したら、かなり関心を示してくれたことがあった。
 あの時の好奇心に輝いた瞳と一瞬の微笑は、今でも俺の宝物だ。
 ゼロ先生じゃないけど、いつか、あの人と仕事抜きで語り合える日が来たら。笑い合える日が来てくれたら…
そう思いながら、俺はメーラーの返信ボタンを押した。

上司サイド

 自宅に戻ると、コートを脱ぐ時間ももどかしく、すぐ自室の私用PCを立ち上げる。
 そして、例の彼からのメールが来ていないかとウィンドウを開く。私と同じ苦悩を抱えた彼からの。

 彼のハンドルネームはHAL。私がよく訪れる推理ゲームサイトに最近現れた参加者だ。
 身元がばれることが即破滅に繋がるこの世界で、彼はあまりにも無用心なところがある。例えば男か女か、
既婚か未婚か、そういったことを容易に連想できるような情報を簡単に他人に公開してしまう。おそらく性指向
の自覚が遅くて、まだ警戒心が薄いのだろう。危なっかしくて見ていられず、つい余計なお節介を焼いてしまい、
以来、すっかり懐かれている。
 だが悪い気はしない。久々に、利害関係抜きの友人が出来るかもしれないのだ。

『新着メッセージ1通』

 うれしい表示が、ツールボックスにひとつ。
 クリックしてみたら、やはりハルからの返信だった。

From: <halte2@infoseek.co.jp>
To: <zero-coach@goo.ne.jp>
Sent: January 16, 2003 11:53 PM
Subject:HALです: YES!! 正解!
本文:

 「幕張ですか?」 YES!! 何で判ったんですか!?
 こんな凄い人と同じ職場にいられるなんて、ゼロ先生の想い人さんが羨ましいですよ。でも、お相手さんは
そのことに気付いていないんですよね。もったいないなぁ。俺だったらご自宅まで押しかけますが。
 先生も、思い切って話しかけてみては? きっかけは必ずあるはずです。先生は話題豊富なんだし、お相手
さんだって、身近に素晴らしい知恵袋がいると判ったら、きっと頼りにしてくれると思いますよ。
 俺も頑張ります。一緒に頑張りませんか?

 初参加のオフ会、ゼロ先生やご老公にお会いするのが楽しみです。リアルであのやりとりが見られるのかと
思うと、今からワクワクします。

 では、俺からの質問です。
「地方採用ですか?」

********

by HAL(halte2@infoseek.co.jp)

********

 …驚いた。
 まさか本当に幕張だったとは。

 私の質問に対して、彼はこう答えた。
・関東? →「Yes」
・誰でも知っている地名? →「Yes  …たぶん。」
・都会? →「本当はNoだけれど、そう答えたらおそらくミスリードになる」

 この条件で真っ先に思い出したのが、皆戸の故郷のことだった。
 何故そんな話になったのかはもう忘れた。皆戸本人に教えてもらったという事実だけが、心に焼きついている。
曰く、『自分が生まれ育った幕張町は、世間が知っている幕張新都心とは違う町だ』。

 ただ一度だけ交わした、仕事以外の会話。
 鑑札付きの皆戸調査員ではない、皆戸哲郎個人の側面を知ることが出来て、どんなに嬉しかったか。ほんの
ひと欠片の、だがとても大切な、私の生きる支え。誰にも、ハルにさえ内緒にしておきたい程の。

 そのハルが、幕張の出身だという。
 言葉の端々から、どうも皆戸とハルは同世代のような気がする。もしかしたら同級生かもしれない。
 いや、直接面識が無くてもいい。愛する人が生まれ育った町をよく知っている、それだけでも充分だ。彼に
関わることならどんな些細な事でもいい、知りたい。彼が見ていた景色、彼を育んだもの、それを教えてくれる
可能性のある人物と、偶然とはいえ、明日会う約束になっている。
 こんな幸運があっていいのか?

 ああ、早く明日になればいいのに!

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                 ピッ ∧_∧
                ◇,,(∀・  ) 翌日どうなったかは、
.  (⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒) お好きに想像してください 。
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