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阿部クンと遊ぼう

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                     |  推奨年齢はファミコン世代です
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ついてこれない人ごめんなさい
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午後。満腹になったうえ、ぽかぽか陽気で幾度となく睡魔が襲ってくる。
デスクワークは諦めて、眠気覚ましに体でも動かそうと、
礼次がダンボールの山を整理していたときのこと。
どうしてもそれが気になり、棚の上のみかん箱を凝視していた。

「あのダンボールだけ、何が入ってるのか書いてないなぁ」

通常、ダンボール箱には何が入っているのかを、すぐ見える位置に書いてあるのだが、
礼次が見たところ、この「三ケ日みかん」の箱には何も書かれていないようだ。
しかも長い間放置されていたらしく、うっすらと埃が積もっている。

「過去の伝票とか…かなぁ?」

脚立に昇り、なるべく埃を立てないよう、そっと箱の取っ手を掴み手前に引き寄せた。
その手ごたえは意外なほど軽く、傾けると、中からガシャっという音が聞こえた。
どうやら礼次の想像していた物とは違っていたらしく、
箱の中身を確かめるべく棚から下ろすことにした。

「おお!」

箱の中身を確認して、礼次の目が輝いた。

「おーい飯乃ー!」
「なんすか~?センパーイ!」

子犬のように駆けてきた後輩に、礼次は嬉々として発掘したお宝を見せてやった。

「これ見ろよ!」
「わぁ~、ファミコンじゃないっすか~」
「懐かしいだろ~。でも、なんでこんな所にあったんだ?」

棚にあったときには死角になっていた側面も確認するが、何も書いてはいない。
その間に飯乃は、みかん箱の中に入っていた紙袋を取り出していた。

「この中にソフトが入ってるっす」

どうやら下ろしているときに、中でガシャガシャ音がしていたのは、これが原因だったようだ。
礼次と飯乃は仕事を忘れ、懐かしそうにソフトを一つひとつ手にとって、
共感したり、年齢差を感じたりと会話を弾ませていたが、
唐突に礼次は、しゃがんでいた状態から一気に立ち上がると、注意深く辺りを見回した。

「どうやら、部長も優ちゃんも帰ってくる気配がないみたいだし…。飯乃、やるか!」
「はいっ!」

販促用のテレビまで引っ張り出し、飯乃が配線を繋いで、
昼下がりのレトロゲーム大会が始まった。
フロアの隅に仲良く座り込んでカセットを差し込む。

「ツインビーか~。敵と鈴を掛け持ちするの苦手だったんだよなー」
「はい先輩。1コンっす。僕はウィンビーで」
「うわー、なんかドキドキしてきたぞ~」

「…………あた。もう残り一機だよ~。飯乃。お前、久しぶりって言いながらも上手いよなぁ~」
「じゃあ、僕が先輩の分もカバーしますよっ。…先輩っ、その赤のベル取ってください。
 白はいま育ててるんで」
「サンキュ!飯乃。バリヤができたから暫く頑張れるぞ」

飯乃のサポートで、協力プレイを楽しんでいたその時。
オフィスのドアが派手に開いて、乱入者が現れた。

「あ~はっはっはっはっはっ!阿~部~ク~ン!あ~そ~ぼっ!」
「うわあっ!!」
「………最後の一機だったのにー!よそ見したら死んじゃったじゃないかぁ!!
 なんでお前がここにいるんだよ仮谷ぁ!」
「まぁまぁまぁ。今はWiiの時代だっていうのに、
 これまたアナクロで懐かしいものがあるじゃないの~」

仮谷は人の仕事場にずかずかと入り込むと、礼次の隣に腰を下ろした。

「なに?ツインビーやってんの?」
「いやー、久しぶりに見たら、どうしてもやりたくなってさぁ」
「ボクチンも、阿部クンと一緒にゲームやりたい~」
「え~。俺、下手だし。仮谷って協力プレイできなさそうなタイプだもん。
 つか、お前、仕事はどうしたんだよ?帰れよ」
「ヤダヤダヤダ~!!阿部ク~ン!
 ボクともあしょんでよぉ~~、ねえぇ~、ねえぇ~~」
「あぁもうっ!鬱陶しいなぁ。分かったよー」

飯乃のウィンビーがゲームオーバーになったところで、
昼下がりのレトロゲーム大会に、仮谷が加わった。

「……えっと~、ふたりでできるもの…。あ、これやってみるかな」
「マリオブラザーズっすね。これ、よく友達とやりましたよ。協力したり、妨害したりして」
「はい。お前2コンな」
「ドラミちゃーん!!」※1
「いきなりマイクに向かって叫ぶなっ!ついでに、ソフトもそれじゃないからっ!」
「ち゜も゛」※2
「それも違うから。てか、あのゲーム難しすぎてクリアできないだろ…」

開始早々、礼次。いや、マリオは仮谷の操るルイージに振り回されていた。

「そんなところでPOW使うなよ!つか、俺を殺す気だろっ」
「ふふふふふ…」

マリオは下から突かれたり、敵を蹴る寸前で復活させられたりと、
ルイージによって何度も危険な目に遭わされていた。

「先輩と仮谷さんはテニスとか、
 分かりやすく対戦プレイできるゲームのほうが向いてると思うっす…」

そんな飯乃の声も、ゲームに本気になっている35歳×2人に届くことはなかった。

ゲームの中では、すでにマリオにとって、真の敵はルイージになっており、
テレビ画面を見る礼次の目は、仕事モードのときよりも真剣だった。
飯乃はふたりのプレイを眺めながら、
ルイージの魔の手から必死に逃げるマリオと、
高笑いしながらマリオを追いかけているルイージが、現実のふたりの様だな。と思った。

「あっ!!ちょっ…ピンクになったカニ戻すなよっ
 ……ほらぁ~。お前のせいで追いつかれちゃったじゃないかぁ~」

マリオもかなり善戦してはいたが、やはりルイージの手によって葬られた。

「あー楽しかったぁ~!阿部クンもう一回やろ?ね?」
「え~、今度は僕が先輩と遊ぶ番っすよー」
「じゃあさ、ふたりでやれば?俺、ちょっと休憩」

コンビニでコーヒーでも買ってこようと、礼次が席を外した瞬間、
仮谷と飯乃の間に火花が散った。

「阿部クンと遊ぶ権利を賭けて、勝負するかい?飯乃君」
「受けて立つっす!」

礼次が3人分のコーヒーを抱えて帰ってくると、そこには、
体操座りで沈んでいる飯乃と、鼻歌まじりで浮かれている仮谷の姿があった。

「あれ?Drマリオやってたんだ」
「あ~はっはっはっはっはっ!ぎょめんねぇ。面白味のない対戦で~。
 ハンデをつけておいたほうがよかったかなぁ~?
 飯乃君がこ~んなに弱いなんて思わなかったからさぁ~。
 こんな時でも勝ち組で、ほんとにぎょめんねぇ~」
「せんぱ~い!悔しいっす~」
「元気出せ飯乃。たかがゲームじゃないか。
 仮谷。お前はそろそろ会社に帰れよ。
 飯乃。もう一回ツインビーやろうぜ。さっき協力してくれたから、だいぶ慣れてきたし」

礼次の言葉で、ふたりの表情が逆転した。

「はいっ!今度はファイヤーや、星出したりしましょう!!」
「阿部きゅんと手を繋いだり、つつき合ったり…?
 なーんか、試合に勝って勝負に負けた気分だ~!ちっくしょお~!!」

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※1 ファミコンソフト『ド●えもん』海底編の裏技。
※2 ファミコンソフト『た●しの挑戦状』で登場する『ひんたぼ語』文字を一つずらすと出来る。
   ちなみに仮谷は「だめ?」と礼次に聞いている。


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