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鰈なるその後・叔父×遺児3

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                     |  鰈スレから引っ越してきますた。
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  続きを書けたとこまで。
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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神戸での二週間は瞬く間に過ぎた。
会社での彼は無論のこと歓待された。今は現場の長となっている古株の社員達はこぞって彼を
連れ歩き、熱心に語っては、問いかけられる彼の質問に顔をほころばせた。
学ぶ歓びと鉄への情熱に上気する彼の横顔は、まるであの人がそこに居るようで、
僕の心に喜びと同時に痛みをもたらす。
そして明日は帰京する最後の日、父の邸で夕食を共にした後。
庭に立ち、湾の向こうを見おろす彼の背中を見つけた。

絶えることなく煙を吐き続ける高炉。
じっとそれに目を注ぎ、振り返らぬまま、彼は言った。
「あの煙が上った時のことは、よく覚えて居るんです。
煙が立ち、降り続けていた小雨が止んで、陽が射してきた」
言うまでもない。あの人の葬儀の日だ。
「正直、父さんの思い出は、そう多くありません。僕も小さかったし、いつも忙しい人で。
でも、家にいる時はよく構ってくれました。僕を膝に乗せて遊んでくれたり、工場の熱さや
流れ出す鉄のすごさについて語ってくれたり。…僕は、父さんが、大好きでした」

暫しの静寂と早春の風が吹き抜ける。
「だけど。父さんは、ひとりで逝ってしまった」
その風に紛れてしまいそうな小さな声で彼は言うと、僕に向き直った。
「教えて下さい。なにがあったのかを。強くて優しくて、いつも希望と情熱に満ちていた父さんが、
何故、自分の命を絶ってしまったのかを」
僕は目を伏せることも出来ない。遂に、その時は来たのだ。
「あなたになら…あなたにしか、訊けないんです。」

どうして僕に、などと陳腐な科白は吐けない。
しかしその思いを知るかのように彼は続けた。
「母さんには訊けません。だって、僕は母さんを悲しませない、強い男になると、
父さんと約束しましたから。それに」
ひゅっと鋭く息を吸い込み、続く言葉を静かに吐き出す。
「僕を見るあなたの目は、時々、ひどく悲しくて、せつないんです。多分それは―――
いえ、きっと。僕ではなく、僕の中に父さんを見ている時じゃないかって、そう思うんです」

その邸に足を踏み入れるのは、僕も彼も12年ぶりだった。
兄が愛した、兄が暮らした、ル・コルビジェ風の家。
母が命じて週に2回は掃除させ、今でもそのままに保たれているが、かえってそれは哀しさを
冴えた空気の中に閉じこめているようだ。そこには思い出が残像のように彷徨っている。
掛けられた白布をはぐり、僕らはリビングのソファに腰を下ろした。煌々と照らす月明かりだけが
僕らを見守っている。僕は全てを話し始めた。長い、ながい話を。
祖父のこと、父のこと、ひとつの疑惑と誤審から生まれた確執と悲劇の物語を。
ただ、僕の抱えていたあの人への歪んだ思慕だけを除いて。

「兄さんを殺したのは、僕と、お祖父様だ」
語り終えた時、僕の身体は空気が抜けてぺしゃんこになってしまったような気がした。
抱えていたものや張り詰めていたものが全て抜け出てしまったような。
彼にだけは、話したくなかった。けれども、彼にこそは、話さなくてはならなかった。

どれくらいの長さだったのか分からない。無音の時が流れた後、彼は、言った。
「あなたもつらかったでしょう」そう言って、潤む目で僕をしっかりと見詰め、微笑んだのだ。
「話して下さって有難うございます。悲しい思いをさせてしまって、申し訳ありません。
でも、本当に…有難うございます。そして、父さんを愛して下さって、有難うございます」
遂にこらえられず僕の目頭は熱くなり、唇を噛む。
「もう、自由になって下さい。そして」
いつのまに彼の背はこんなに延びていたのだろう。亡き兄を越し。
「自分を許し、愛してあげて下さい」
「………そんなことは出来ない」僕はようやく枯れた声で言葉を絞り出した。
「僕の罪は、許されない。消えない。一生」
「何故です!あなたは父さんの代わりに僕を育ててくれたようなものじゃないですか。
会社だって、自主再建できるまでにあなたがどれほどの尽力をなさったか僕は知っています。
もう、充分です。もう…」
彼の言葉が心底澄み切って優しいものであればあるほど、それは僕の心をえぐる。
どうしてもそれを僕の口から告げろと言うのですか、兄さん。

「僕の本当の罪は―――兄さんを、好きになり過ぎてしまったことだ」
血の繋がった実の兄を、僕は、犯したのだから。

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  • おお…ドラマ未見(原作読者)ですが、遺児を通しての弟→兄ぶりが非常に萌えました。ありがとうございます! -- 2014-05-26 (月) 22:32:51

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