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風鈴 若←古米

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )風鈴 若←古米ネタ。

 今日も春伸様は評定への参加を許されなかった。
 春伸様は気にとめていないそぶりだが、先ほどから書をめくる手が止まったまま、
心ここにあらずといった風情だ。もうじき春。雪解けを待って、また戦が始まる。
だが、おそらく次の戦でも、春伸様の初陣は、無い。
 寝そべって無作為な様子を見せていた春伸様が、ふいに庭先へと顔を上げ、
午後の日差しに解けはじめた雪に目を細められた。
「春、か」
「は。ずいぶん暖かかくなりました」
 相槌を返しながら、春伸様の様子を伺う。こんなとき、春伸様は決して底意を
見せられない。近侍となって久しいが、いまだに春伸様のお心を読むのが難しい。
「雅丈」
「は」
 ぎくり、とする。名を呼ばれるとろくなことがない。
「今宵、寝所に参れ」
「……は?」
「夜伽を命ずる」
「……お戯れを」
 返事に窮していると、春伸様は体を起こし向き直った。目にはいたずらな光が
宿っている。
「嫌か」
「いえ、そのような」

 すでに幾夜か過ごしている。そのいずれも、あくまでも伽の域を出ない、契りに
は程遠い夜だった。
「若殿さまの無聊を慰める相手は、それがしでは不足かと」
「わしはそなたに命じておる」
「……は」
 困らせて楽しんでいるのだろうか。ちらりと目線をあげ、春伸様を盗み見るが、
先ほどのいたずらな光はすでに無く、いつもの読み取れない表情だけがそこに
あった。こうなると、どうしようもない。
「かしこまってござる。若殿が、楽しめずとも良いと仰せであれば、つつしんでお
勤めいたしましょう」
「バカを申すな。雅丈ほどわしを楽しませてくれる相手は、そうそう居らぬぞ」
「ご冗談を」
「……わしが触れると、その頬に色が上るのが面白い。抱けば声に艶が増すの
が面白い。気をやるときの顔が――」
「――もう結構!」
 耳が紅く染まっているのが、自分でもわかった。声が上ずらないのがせめても
の救いだ。
「どうした、雅丈」
「いえ、何も」
 やはりからかっておいでなのだろう。

 それで春伸様の気がまぎれるなら、いくらでもからかえば良い。たとえそれが、一
時の慰めに過ぎないとしても。
「今宵はそなたの望むようにしてやろう。抱くのがよいか、抱かれるのがよいか」
 答えあぐねていると、春伸様の顔に一瞬、見慣れない表情がよぎった。苛立ち
とも、諦めともつかないその表情はひどく幼い。ああ、このお方はまだ、元服を済ま
されたばかりなのに、こんなにも多くの荷を背負われている――。
 慰みになるなら、それで良いではないか。それ以上のものを求めているなど、決
して知られてはならない。
「――若殿の、お望みのままに」
 感情はいつも通りに押し隠し、顔を伏せた。こんな返事など望んではおらぬで
あろう春伸様が、どんなお顔をされたのか、知ることはない。
 もう幾夜も待たずに、春が来る。いずれは初陣の日も来よう。無骨物が無聊
を慰める夜など不要な日が来る――。
 

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・;)感情すれ違い系萌え


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