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ロングキス・グッド・ナイト

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                     |  派遣最終回後 名古屋編捏造です
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| 神ドラマよ永遠に
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・; )(゚Д゚ )
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「ちょっと散らかってるけど、上がって」
「うん、お邪魔します」
ショウジさんの部屋に入るのは久しぶりだった。いや、正確に言うなら、この部屋には初めて。
ショウジさんが名古屋の支社に行ってしまってから、会う機会に恵まれずに一年も経ってしまっていたのだ。
「やっべ、やっぱちょっと待って。その辺片すから」
「あ、いいよ、気にしないで!」
一足先に部屋へ駆け込んだショウジさんは、大きなビニールを広げてあたりのゴミを放り込んでいく。
俺も洗濯物を畳もうと手を伸ばしたけれど、ケンちゃんそれはいいから!とものすごい勢いで止められた。
なんで?と訊くと、どうやら下着を畳まれるのが恥ずかしいらしい。ショウジさんはそんなとこ、妙に可愛い。
「来るって言っといてくれたら片付けたんだけどさ…相変わらず汚いだろ」
「そんなことないよ。ショウジさんの部屋っぽくて懐かしい」
笑いながらも、胸の内で「なんだかさびしい部屋だな」と思った。
カップラーメンの容器が無造作に置いてあったり、引越しのダンボールがまだそのままだったり。
もしかすると、そういうことに気を配る心の余裕がなくなっているのかもしれない。
帰ってきて、寝るだけ。そういう味気ない生活ぶりが感じられて、胸が痛んだ。
久しぶりに会って顔を見た途端、ショウジさんの変化に気がついた。
向けてくれる笑顔の種類は以前と変わらなかったけれど、なんだか弱々しくて、別人みたいで。
現にショウジさんは随分痩せた。久しぶりに抱きとめたときに、驚いて思わず手を引いたくらい。

「悪いなケンちゃん、いきなり掃除手伝わせちゃって。好きにくつろいででよ、とりあえずビールでいい?」
「あ、うん」
はっと我に返って頷く。いい加減コートを脱ごうとハンガーラックに近づいた時、その端に山積みにされた本や資料が目に入った。
トラック関係の資料や、勤労管理、簿記からマネジメントの本まで。明らかに本社にいたときには縁の無かった知識だ。
ふと振り返ったショウジさんが、僕の視線に気づいて苦く笑った。
「ああ…うん、それね。一応勉強しようとは思ってるんだけど…仕事終わると疲れちゃってて、なかなかな」
とっくりはすげぇわ、いつ勉強してんだろーな。ショウジさんの声に、疲れた溜息が滲んでいた。
ああ、この人、泥臭い努力の人なんだよな。昔からそうだった。
同期の中でも一番早く会社来て、一番遅くまで仕事して、その踏ん張りを派手な振舞いで誤魔化している。
俺はそんなショウジさんに憧れて、ショウジさんみたいになりたくて、いつも同じ時間まで会社に残ってた。
ショウジさんの頑張ってる姿が好きだった。ショウジさんが、好きだった。
強気な態度は弱さの裏返しだってこと、俺は知ってる。
こんなにも会社が好きで、人と関わることが好きな人を、俺は他に見たことない。
だからあんなふうに、会社の中で爪弾きにされることは、どんなに辛いことだろう。

「なんか…ごめんねケンちゃん、嘘ついて」
冷蔵庫の前でしゃがんだままのショウジさんが、ポツリと呟いた。
小さく丸まったその背中に胸が締め付けられる。衝動的にその背中を抱き締めていた。
「違うよ、俺の方こそごめん。ショウジさん、そういう人だってわかってたのに…」
この人は肝心なとこで人に頼らない。
淋しかったり辛かったり、そういうときほど強がって、元気でバリバリやってるよ!なんて言って見せて。
わかりやすそうで、全然本心を見せてくれなくて。
やっぱりオオマエさんとショウジさんは似てるんだ。不器用な淋しがり屋。
だから俺が、俺だけはショウジさんのことわかってなきゃいけなかったのに。
「もっと早く気づいてたら、こんな風にショウジさんのこと一人にさせなかった…」
抱く腕に力を込め、くるくると巻かれた髪に鼻先を押し付ける。懐かしい、ショウジさんの煙草の匂いがした。
「なんだよケンちゃん、俺、一人だと思ったことないぞ?」
ゆっくりと、ショウジさんが体を預けてくる。
「一緒に働くことは一緒に生きること、だろ? ケンちゃんがそう言ってくれたから、俺こっちで頑張ってこれたんだからな。
この会社に関わってればどっかでケンちゃんと繋がってられると思って、だけど…」
だんだん、その声が潤んできていることに、俺は気づいていた。
「…ごめんな、俺、こんなんで」
力ない溜息がショウジさんの唇から零れる。抱き締めたその体は、ぼんやりと輪郭のないかなしみに満ちていた。
圧倒的な疎外感の中で、ショウジさんは何度あの会社を辞めたいと思っただろう。
でもその度に俺のことを想って耐えていてくれた。二人繋がっていたい、その一心で。
どうしよう。愛しくて、愛しくて、たまらない。

「ショウジさん」
振り向かせて、唇を覆った。
疲れ切ったこの人の心を優しく撫でるようなキス。ぱたり、とやわらかな水の音をすぐ傍で聴いた。
「ショウジさん、好きだよ。どんなショウジさんでも、情けなくっても泣き虫でも、俺は好きなんだ」
目を合わせて、一つ一つ刻み付けるように囁く。
濡れた睫をぱちりと瞬かせるショウジさんの頬に触れ、涙の跡をそっと拭った。
「俺が、守るから」
多分、そのとき見たショウジさんの顔を俺は一生忘れないと思う。
呆けたように目を見開いて、その顔が見る見るうちにくしゃくしゃな泣き顔になって、
最後に、何か眩しそうなものを眺めるように目を細めた。ちいさな子供のような表情だった。
「男前になったなぁ、ケンちゃん」
「……やっぱり、似合わないかな」
大きなことを言ったけど、俺はまだまだ分相応じゃない?
「いや」
ショウジさんの腕が、首に絡む。
「惚れる」
いたずらっぽく微笑むショウジさんの顔が近づいて、ぶつかるように唇が重なった。

これまでずっと俺は守られる側だったけど、今度は俺がこの人のことを守ろう。
そのために俺は俺のやり方で強くなったんだから。
それにこれからは、ショージさんの傍にあの人がいる。スーパー派遣の彼女が。
だから大丈夫。ショージさんとまた一緒に働ける日は、きっと遠くない
一緒に働くことは、一緒に生きること。だよね、ショウジさん。
胸を満たす明るい予感が、繰り返すキスの味を甘くさせた。

  • END-

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