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(゚д゚)ウマー ビデオ棚にも上陸! その一

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  某スレからインスパイヤン
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  情景のみだが
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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この町では毎年夏、神社の祭りに合わせて、「スイーツフェスティバル」が開かれる。
と言っても、田舎町の町興しだから、イベントもスイーツも伝統的で素朴だ。
そんなノリだからこそ孝太でも参加できると言うものだ。
「すごいね、孝ちゃん、今年は一人で参加だって?」
隣のブースの史彦が声をかけてきた。孝太の両親が実行委員会に頼みこんで、
マルボーロを売る史彦のブースの隣りにしてもらったのだ。
史彦本人も孝太の両親から「たまにでいいから様子を見てやってくれ」と
頼まれているし、頼まれるまでもなく目を離せないと思っている。
史彦にほめられて孝太は得意そうに鯛焼き機を指差した。
「うん、だって俺、鯛焼きは人に教えるくらい上手いもの!
父ちゃんは自分も出るって言ったんだけど、鯛焼きなら俺一人でいいからね」
「おじさん、腰の具合はどうなの?」
「大丈夫だよ。ギックリ腰って、ゆっくり治したら大丈夫なんだって」
「そう。だったらそれまで孝ちゃんが頑張らないとね」
「うん、大丈夫だよ。俺、鯛焼きはちゃんとできるから!」
史彦はつい、同い年とはとても思えない孝太の頭を撫でたくなった。
でも、それはしない。孝太は子供扱いされると傷つくし、
それよりも、そうする権利は自分にはないと史彦はよく知っているからだ。
「ふみ、もう客が来るぜ! 用意これでいいのか?」
背後に居並ぶ売り子から声をかけられて、史彦は自分のブースに戻る前に、
一言だけ孝太に言い聞かせた。
「孝ちゃん、トイレに行きたくなったらうちが店番するからね。ちゃんと言ってね」
史彦のブースは人口過密状態だ。本当は史彦も親と出るはずだったが、
今年から史彦が通い始めた大学のサークル仲間が手伝うと言い出したのだ。
一人で充分だと言ったのに希望者は二十名を超え、結局はくじ引きで
選ばれた六人が狭いスペースにひしめくことになった。実演販売はしないので、
史彦の両親は、売り物さえ作っておけば当日は会場を遊び回れると大喜びだ。
『一人、孝ちゃんに貸してあげたい……』
むさ苦しい男どもに囲まれた史彦はしみじみと思っているが、
史彦を手伝いたくてここに来ている連中が聞き入れるわけもない。

開場して客が来始めると、どちらのブースもそれなりに忙しくなる。
史彦の店のマルボーロはネットを通して通信販売もされていて、
全国にファンがいるほどの評判の品だ。そんなマルボーロを、紅顔の美少年
史彦がふんわりとろけそうな笑顔で売るのだから、忙しくならないはずがない。
大学の連中だの雑誌で知った連中だのまで集まってくる。
陰で史彦は密かに「マルボーロ姫」と呼ばれているのだ。
本人が知れば「せめてマルボーロ王子と呼べ」と怒るところだろうが。
一方で孝太の客は、昔馴染みたちだ。この神社のお祭りに来たからには、
あの鯛焼きを食べて帰らなきゃね……という。成績がひどすぎて大学進学など
思いもよらなかった孝太ではあるが、幼い頃から手伝っていて、鯛焼きだけは
上手に焼ける。店の他の品、蒸し饅頭やどら焼きはまだまだ練習中だが、
鯛焼きだけは「お父ちゃんより上手だ」と近所の爺ちゃん婆ちゃんたちに好評だ。
だから孝太も鯛焼きを作るのが大好きだし、それを皆に食べてもらうのが大好きだ。
「ありがとうございましたっ!」
いっぺんに十五個も買ってくれた客に孝太は深々と頭を下げ、さっそく次の
種を作り始めた。その孝太に客が苦笑しながら五千円札を差し出す。
「お金、まだ払ってませんよ」
「あっ!」
孝太は慌ててボウルを台に置き、札を受けとって前掛けの中に入れ、
釣り銭の勘定を始めた。
「孝ちゃん、手伝おうか? 大丈夫?」
「ううん、大丈夫。一個百円だから、十五個で千五百円。ね?」
心配そうに声をかける史彦に、孝太はにっこりと笑いかけた。
将来値上がりして一個百二十円になったら孝ちゃんどうするんだろう、
史彦は他人事ながら不安でならないが、孝太は今のことしか考えない。
丁寧に両手で釣りを渡した孝太に、すぐまた次の客が注文する。
大急ぎで鯛焼きを袋に詰め始めた孝太の肘が、ボウルに当たった。
「おっと!」
客が手を伸ばして落ちかけたボウルを押さえ、笑い出した。
「そんなに急がなくてもいいよ。落ち着いて」

照れ笑いする孝太に、史彦はちらちらと目をやった。
「おい、ふみ。隣ばっかり気にしてないで、マルボーロ売れマルボーロ」
親衛隊から不満の声が上がっている。彼らにしてみれば、肝心のお姫様が
自分たちの献身に目もくれず他人の世話で気もそぞろでは、浮かばれない。
史彦とて、彼らはもちろん自分の店に来てくれる客をないがしろにもできない。
「うん、ごめん、……孝ちゃん、お金お金!」
幸太はまたしても客から金を受けとるのを忘れ、客が財布を手にして困惑している。
「すみませーん」
照れながら代金を受け取る孝太から目を離すのが、史彦には苦痛だ。
ここら辺の人間ならまずそんなことはしないが、遠方から来る客の中には、
黙っていなくなる奴がいないとも限らない。意を決して、史彦は親衛隊に向き直った。
「しばらくだけ、俺あっちの店手伝っていい? こっち任せたら駄目かな?」
メチャクチャを言っているとは承知の上だ。案の定、親衛隊からはブーイング。
史彦のいないブースを手伝って何が面白いのだ。孝太も驚いている。
「駄目だよ史ちゃん! 自分の店は自分でやんなきゃ! 俺なら大丈夫なんだから」
「でもね孝ちゃん…」
孝太を振り返った史彦の視界が、何かに遮られた。はっとして見れば、
見慣れた男の顔が肩越しに史彦を見下ろしていた。
「てめえは自分のケツ拭いてろ」
史彦と孝太の間に出現した山脈から低い声が降ってくる。
「淳平! いつ帰ってたの、夏休み? あっちでバイトするんじゃなかったの?」
孝太の嬉しそうな声が山の向こうから聞こえた。
「客が来てるぞ」
既に史彦に興味を失った淳平は孝太に顔を向け、ぶっきらぼうな声をかけている。
「なんだあいつ…感じ悪いな」
親衛隊の一人が、自分たちの姫君に対しての暴言に腹を立てて言った。
と、淳平がまた肩越しにじろりと一瞥をくれる。親衛隊全員が慌てて目を逸らした。
史彦だけがにこりと淳平に笑顔を向ける。これで安心だ。実は史彦は、
こうなるのではないかとは思っていたのだ。孝太の父がギックリ腰になったとは
知らなくても、淳平が、年に一度の孝太の晴れ舞台を見に来ないはずがない。

孝太は孝太で、四ヶ月ぶりに会う幼馴染みに夢中で、
あっさりと史彦の事は忘れてしまっている。
「ねえねえ淳平、難しい大学だから勉強もやっぱり難しい?」
「普通だよ」
「一人暮らしって大変? ご飯も自分で作るんだよね?」
「どってことない」
「俺、今年は一人で鯛焼き焼くんだよ。鯛焼きなら大丈夫だから」
「えらいな」
淳平のグローブのような大きな手が、孝太の髪を優しくかき混ぜた。
淳平は手伝うというわけでもなく、孝太が手際良く鯛焼きを焼き、
楽しそうに鯛焼きを売るのを、ただ斜め後ろに立って眺めている。
孝太が性懲りもなく金をもらい忘れそうになると、「三百円になります」と
さりげなく口を出して、孝太に気付かせている。
昔からそうだったと、横目で見ながら史彦は口の中で笑った。
都会でいくらでも就職できるだろうに、淳平はこの町に戻って職に就き、
いずれは会計事務所を開きたいのだという。その柄にもない将来設計が
鯛焼きに因るものだということは、今のところ本人の他には史彦だけが知っている。
「淳平、お腹空いてない? 鯛焼き、食べてもいいよ」
「―――美味い。前より上手くなったな」
「ほんと? じゃあ来年はもっと美味しく焼けるようになるね!」
親衛隊の連中は、何事かという顔つきで隣のブースを盗み見ている。
笑いそうになるのをこらえて史彦は、「マルボーロ、いかがですか?」と声を張り上げた。

終わり


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