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イハラ・ナガセ×ヨシオカ

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                     | イハラ・ナガセ×ヨシオカ
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| ナマモノチュウトハンパスイマセン
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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久しぶりにその名前を聞いて、忘れていた胸の痛みを思い出した。
「え、」
「だからぁ。ヨシオカ君!」
イハラさんは聞き返した俺にイラついたようにもういちどその名前を小声ながらも叫ぶ。
「彼、良いよね」
「はぁ・・・」
知ってる。彼が良いのなんて、俺は何年も前からとっくに知ってるさ。
「声とか独特でね・・・今やってる、なんだっけ。NHKの。あれとか俺最近はまっちゃって。」
ポルタ。うん、あれ良いよね。ヨシオカ君の声がすごくはまってると思う。
優しく子供にといかけるような声で・・・砂糖みたいな甘い声で・・・
「あの声俺震えちゃったよ。たまんねえよな~」
うんうん・・・っておい。
「体もさ、細くってさ~。俺、前共演したとき大勢で一緒に風呂に入ったことあるんだけどな、
めっちゃくちゃ体細くって白くって、なんか皆変な気持ちになっちゃって気まずくってさぁ。
俺も皆も全然そっちの気なんかなかったのになー」
ガハハハハハ
恰幅よく笑う彼に「そうですか」ととりあえず薄く愛想笑いをする俺。
だけど心中は穏やかではない。
(闇雲に誰かと一緒に風呂入ったりするなって忠告したのにあいつは・・・!!)
この様子だと全く俺の忠告の意味なんかわかっちゃいないんだろうな、と怒りと共に呆れる。
「それでさ、風呂から出た後の浴衣姿がまたなんともいえなくってねえ。
正直、そこらの女優の濡れ場見てるより興奮させられたね。いやーそこはかとない色気が彼には漂ってるよなぁ・

・・」
「・・・・・・」
今度はそうですか、との愛想笑いさえ出来ない。

なにやってるんだばか、と話題の彼の人に対しての悪態を心の中でつけるだけつくが
頭では懐かしい彼の人の浴衣姿なんぞを勝手に想像してしまってパニック状態になってきてしまっている。
「それでね、ナガセ君」
怒りやら呆れやら猥雑やらでグルグルとしている俺の耳にイハラさんはさらに近づいてきた。
「君、彼と仲良いらしいね」
「え、」
台風状態だった俺の思考回路がピタッと止まった。
なかいい?
仲良いって、友達として?それとも。
どこまでのことを言ってるんだろうか。まさか、何か知ってるのだろうか。
あのときの俺と彼のことを。
それとも俺が知らないだけで、とっくに俺と彼のことはいわゆる芸能界裏まめ知識として出回っているのだろうか。
どう答えたら良いのか分からず黙ったままの俺をイハラさんはとくに気にした様子も無く続ける。
「それでね、ものは相談なんだけど、」
ゴクリ
「彼と連絡取りたいんだけど、取り次いでくれない?」
・・・・・・は?
予想していた内容と全く違ったことに安堵し、そして疑問符。
「えっと・・・ヨシオカ君に、ですか?」
「プッ。今の流れでそれ以外になにがあるんだよ」
話聞いてなかったのかよ~と彼はケラケラ笑うが、俺は全く笑えない。
「・・・なんで・・・」
「いやー俺前に共演したときにはお互い役になりきってて満足に話せなかったんだよ。だから、な?」
「・・・・・・・」
嫌です、と思わず出そうになった口をつぐむ。
仮にも先輩だ。それに男同士だし、ここで断ったら「怪しい」となって本当に恐れていた事態になるかもしれない。
けど・・・
「いいだろ?別に女紹介しろって言ってるわけじゃねーし。ただ彼ともっと話してみたいんだよ。」

・・・・・・・そんなの、俺が話したいよ。
ぽつり、と呟くがイハラさんは「怪しいことしないからさ~ハハハ」なんて言ってて気づいていない。
怪しいことなんて考えるだけでも許せねえ・・・!
なんて自分のことは棚に上げて怒りつつも、OKしないとこの話を切り上げることはできないな、と思い
俺はヨシオカ君の携帯番号をイハラさんに教えた。

それからしばらくして、現場で一緒になった井原さんがまた俺に話し掛けてきた。
「やあナガセ君!この間はありがとうな。」
「ヨシオカ君と連絡とれました?」
「ああもうバッチリ!」
ニマニマと不気味なくらい機嫌の良いイハラさんに、反比例して俺の機嫌は悪くなってくる。
(・・・一体ヨシオカ君とどんな話したんだろう)
ヨシオカ君は基本的に人見知りだ。よっぽど仲良くなってからじゃないと彼と満足に話すのは無理だと思うのだけれど
イハラさんの様子を見てると、まさか共演してるっていうのもあるだろうが一回連絡とっただけでそこまで親密になれたのか、と勘繰ってしまう。
「・・・たくさん話せました?」
「ああ!有意義な話がたくさんできたよ~」
ほんと、ありがとうな!
そう言って彼はポンッと俺の肩を叩いて脚本家へなにやら話し掛けに行った。
・・・おかしい。
この間のイハラさんの様子からすると、彼の今の様子に疑問を感じずにいられなかった。
ベラベラとヨシオカ君のここが良かっただのたまらないだの語られることを覚悟してたんだが、拍子抜けするほどあっさり話を終わらせた。
それも不気味なほどの上機嫌で。
一体何なんだ。何を喋ったんだヨシオカ君と。
気になってしょうがない。
その日の現場はなんとか乗り切ったものの、俺の心は不安定すぎて自己嫌悪に陥るくらいひどい状態だった。
イハラさんにそれとなく聞いてみても、「いや~」なんてにやけた笑いしか見せてくれない。
そして俺は覚悟を決めた。正直、良い機会だとも思った。
今更何連絡してきてるんだと罵倒されても良い、と
俺は思わずヨシオカ君に連絡を取って今から会う約束を無理やりとりつけてしまった。

「・・・なんですか・・・?」
都内の某公園に、彼は黒い上着とジーンズといういつものラフな格好で現れた。
久しぶりの彼の姿を認めた瞬間、俺は涙が出そうになった。
まるで闇の中に溶け込んでしまいそうな細い体。月に一人だけ照らされているかのような白い肌。
そして少し迷惑気な声すら甘い睦言に聞こえてしまうからたちが悪い。
「その・・・イハラさんと最近会った?」
「・・・会いました」
「どういった・・・話をしたの?」
自分って言っておいてこれじゃあまるで嫉妬深い彼氏みたいだと恥ずかしくなった。
「い、いやその。ほら、俺が番号教えたから・・・聞いた?」
「聞きました。」
自分をフォローするかのような情けない言葉を発した俺に、ヨシオカ君は来て初めて目を合わせた。
「・・・まさか、ナガセさんがツツモタセのようなことするなんて、思いませんでした。」
ツツモタセ?
しばしその意味を頭の中で考え、えええ!?と驚愕する。
「う、うそ」
「・・・」
「・・・うそだろ・・・」
俺はどっと力が抜けてしまってまともに立ってなんていられなくて、頭を抱えてしゃがみこんでしまった。
「俺は・・・イハラさんが話がしたいっていうから・・・」
「・・・」
「なんで・・・」
あのとき少し考えればこういう結果は分かってただろうに、俺は彼との関係を怪しまれることを恐れるばかりだったんだ。
だからこんなことに・・・
「・・・ほんと・・・ほんとに・・・ごめんな・・・」
自分を責めることしか出来ない。ただただ頭を抱え込み、どうしてあのとき軽々しく教えてしまったのかと後悔して仕方ない。
断じて。絶対に。彼をそんな目にあわせるつもりはなかった。だって俺は今でも・・・
だけどこれは俺の勝手な言い分でしかない。彼は一体どういう気持ちで抱かれたのだろうか。
それを思うと苦しくてたまらない。
彼は今、俺をどういう目で見ているんだろうか-----

「でも別に構いませんよ。イハラさん良い人でしたし」
「-----え、」
しゃがみこんだまま自責の念に駆られっぱなしの俺の頭上に彼がそんな言葉をかけた。
思わず目を見開いて彼を見上げると、彼は感情が読めない表情で遠くを見ている。
「共演したときから良い人だと思ってたんですけど、たくさんお話できて嬉しかったです」
「・・・で、でもその・・・無理やり・・・・」
「僕男の人に抱かれるの、慣れてますから。平気ですそんなの」
「・・・っなに言ってんだよ・・・!」
ガンッ
投げやりにそう言った彼に、思わず彼の肩を掴んで近くにあった木に押し付けた。
「・・・どうしたんだよ・・・」
「・・・・・・・ナガセさんこそ、いきなりなんですか・・・・・・」
「ヨシオカ君・・・」
「・・・ナガセさんに教わったんですよ。そういう遊び。」
彼の透き通った目が俺を見つめる。
「イハラさんすごく優しくしてくれましたし、全然平気です。」
ひんやりとした手が肩を掴んでる俺の手を掴む。
「良いこと教えてくれて、ありがとうございました」
そして俺の手を肩から外して、彼は去っていった。

俺はそんな彼に何も声をかけることも出来ず、しばらく寒空の中呆然と突っ立っていた。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ サンチョメ、ナルコトノリハビリデシタ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )ドウモジブンハカレヲイタブリタイヨウダ・・・
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