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愛某鑑札官上司部下

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 新入りの失態と上層部の横槍が、立て続けにやって来た。かなり苛ついていたことは確かだ。
 そこへ皆戸が、任務の進行が思わしくない、と馬鹿正直に申告してきたものだから …いや、言い訳はよそう。
つまり私は今日の昼間、何の罪も無い部下に、八つ当たりをしてしまったのだ。

 この世でただ一人の、己の心を委ねることの出来る相手。だからつい、気安くなる。正直言って甘えすぎた。
反省している。

「私が悪かった。 …頼むから、眼鏡を返してくれないか?」

 裸眼でもある程度は見えている。物があるかないかの区別ぐらいはつくし、漫画のように壁に激突したりは
しない。せいぜい、離れたところにある文字や人の顔が解らなくなる位だ。
 そう、顔が、その表情が、全く判らない。
 今は、それがとても困る。

『キスする時、邪魔なんですよ。』

 逢瀬のたびに皆戸がそう言っていたのを思い出して、今夜は、彼に触れる前に眼鏡を外した。
 預かってくれるというから、手渡した。
 そのまま、返してもらえない。

 その状態が気に入ったから、という理由ならば構わないのだが。
 わからないから。
 舌先でころがすと震える胸が、指先で弄るとヒクリと跳ねるその体が、悦楽に反応しているのか、それとも
嫌悪に身じろいでいるのか。
 昼間の仕打ちをまだ怒っているのか、いないのか。
 相手の表情が見えないと、その判断がつかない。
 …困った。

 情を交わすからには、相手に悦んでもらえなければ意味が無い。
 想い人が嫌がっていることにも気付かないまま無理矢理強いた行為に、何の喜びが見出せようか?

 自分は口の達者な人間だと、ずっと思っていた。
 だがそれは、仕事の上では、という限定条件が付くことに、彼と付き合うようになってから気がついた。

 あなたの機嫌を損ねたままでは悲しい。
 大事にしたい。喜ぶ顔を見たい。
 あなたを愛しているから。

 要約すればたったこれだけのことを、伝えられないでいる。
 今に限ったことではなく、いつもそうだ。心を伝える術を、私は知らない。心を隠し通す方法ならば、いくらでも
知っているけれど。

「よく見えないんだ。」

 ようやっと、それだけを言う。
 不十分なのは解っているのだが、ならば一体何を付け加えればいいのか、わからない。
 
 皆戸。
 お前は今、何を考えている?

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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