>108の続き/稲妻×医者Ⅲ
更新日: 2011-04-29 (金) 16:05:08
その後に恐縮なんですが
| >108の続き/稲妻×医者Ⅲ
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| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| ようやく完結……今未知の領域
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| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ジカンカケズギダロ、オイ
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
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最終局面を迎え、状況が変わってきた。未だダンゴ状態の後続選手達にマックィーンが追い付いてきたのだ。
だが、残されたのはただ一周。
『ドック、こいつらを抜いちゃえば――』
マックィーンの声に期待がにじむ。
「無茶はするなと言っている」
密集した後続車群。誰もがそこから脱して、ライトニング・マックィーンに次ぐ第二位になりたいのだ。
焦りと睨み合いが爆発すれば、いつクラッシュの大連鎖が発生してもおかしくはない。
しかし、慎重策から先を出ないハドソンに流石のマックィーンもイラついたらしく、少しだけ声音が強くなった。
『けど、抜かなきゃ先に行けない!』
「記録より大事なものがあるだろう!」
『――ッ!勝たなきゃダメなんだよ!絶対に』
『おおーーっ!?第四ターン直後で続々とクラッシュ!マックィーン、抜けられるのかー!?』
あわや口論となりかけた二台を強引に止めたのは、ダリルの熱い絶叫とあまり聞きたくはない
機械と機械のぶつかり合う嫌な音。
『いや!クルーチーフが許さないでしょう、彼はこのままだって勝てるんですよ?』
『…………ドック』
二台の掛け合いをよそに、マックィーンがそっと切り出した。
『ごめんね。心配ばかりかけてる』
「分かっているならスピードを落とせ!」
『……ハドソン』
「!」
『そろそろキングのタイムまで猶予がありません!』
『本来ならタイムは関係ないんですが――ああっどうなるんだマックィーン!』
「……、いきなりその呼び方はやめろ!」
メーター達に聞かれまいと、思わず声のトーンを落とす。だが返ってそれが不自然だったと見えて、
グイドが訝しげに見上げてくる。
「おい、聞いてるのか若僧」
『もう二度と不安にさせないよ、ハドソン……これっきりだ』
「坊や!」
マックィーンの声が決意の色に染まったのを聞き取り、ハドソンは願うように声を荒げる。
煙と鉄屑舞い散る第四コーナーまで後100m。
『ねぇ、ハドソン!』
「何だ!?」
『勝手なお願いするよ!』
ハドソンの答える間はない。
『最高タイム出したら、キスしていい?』
「――」
『それじゃ、後で。見ててよ……サーキットの『稲妻』をさ』
「ライトニング!!」
RSの面々が一斉にハドソンを振り仰いだのは、その声の大きさと取り乱した様子のためだけか。
ハドソンの悲鳴にすら似た努声も聞かずにマックィーンはみるみる内に加速する。
そのままカーブに突っ込み強引なハンドリングで回り切るとタイヤカスがいつもの倍以上飛んで行き
黒々とタイヤ痕がコースに刻み付けられる。
もう解説者の声も観客の熱狂も、ハドソンの声すらも届かない。
稲妻とは、音すら追い付かぬ光の疾走なのだから。
ターンの半ばから視界はクラッシュによる不穏な白煙で包まれる。その中から現れる引っくり返ったレーサーを、
まさしく稲妻のごとき走りで避ける、避ける、避ける。スピードは緩むこと無く、むしろ上がっていく。
鬼神の如きその走りは全てを振るい落とす。不意に飛んで来た鉄片が派手にボンネットの左側を擦っても
それすら意識の外。白煙が晴れる。そこには、白と黒のチェッカーフラッグ。
限界までアクセルを踏み込む。天も裂けよと言わんばかりのエンジンの咆吼。加速。だがそのスピードに
今度は自身が対応仕切れずタイヤが浮いた。それを無理矢理押さえ込み、射抜くように見つめるその先。
ゴールラインを、突き抜けた。
光が閃くより短いその出来事に、誰もが何もかもを忘れていた。
最初にそれを打ち破ったのは、解説席のダレルだった。
『たっ……タイム!タイムは!?』
その一言で会場の全員がスクリーンを見上げた。
一拍の間を置き、タイムが表示される。
『とと取った!越えた、越えましたよボブ!』
その瞬間、世界が熱狂へと転じた。
もちろん、RSチームも。
「やった!マックィーンやったなーッ!」
びょんびょん跳ねまくるメーターの隣でマックは雄叫び代わりのクラクション、ルイジとグイドは
イタリア語と英語をごっちゃにしながらくるくる回る。あの速さを実戦に……と思わず呟いたサージは
フィルモアにまったりとどつかれた。シェリフはついに感涙に咽び泣いた最初の一泣きを、しっかりラモーンと
フローに目撃されてしまった。
ハドソンは、未だ唖然とその場に立ち尽くす。
『っ……信じられないあのキングのレコードを2.88秒縮めました!まごう事なき新記録!!今伝説が生まれました!!
我々は確かに伝説を』
興奮のるつぼにある解説すらもハドソンの思考回路を通過する。
様々な思いが、じわじわと突き上げてくる。
「……あの、馬鹿が」
ぽつりと呟いた直後、タイヤが発する悲鳴が辺りの音という音を切り裂いた。
マックィーンが、よたよたと入場ゲート辺りで止まりかけていた。
それを見た瞬間、ハドソンはインカムをかなぐり捨てた。
「持ってろ!」
放り投げた先に誰がいるかも確かめず、スタンドから飛び降りる。豪快に着地すれば、かつて『弾丸』と
謳われた最盛期を彷彿とさせる走りで力尽き掛けたルーキーの元へ突っ走る。そしてその目の前で、
思い切りブレーキをかけた。
赤とネイビーブルーが正面からぶつかり合って互いのタイヤがギャギャギャ、と摩擦音を掻き立てる。
ハドソンの勢いに押され、二台はぐるりと一回転して止まった。
『ハドソン・ホーネットが飛び出した?一体――――ギャアアアアア!』
『カメラ!カメラどうしたの!?映像早くして何やってんだぁぁぁぁ!!』
唐突に真っ黒に染まったモニターに解説席が阿鼻叫喚の様に転ずる。
――ハドソンにいきなり投げられたインカムを追い掛け上手く捕まえたはいいもののうっかり受信用鉄骨から
伸びるコードを轢いてしまったメーターと、ついつられて追い掛けてその巨体のブレーキングを間違え、
引っ掛かけたついでに鉄骨を傾けてしまったマックは暫し無言で見つめ合い、徐にタイヤを差し出して
固く握手を交わした――――
観客が身を乗り出しても良くは見えないゲート前で、マックィーンとハドソンは、コースの中で長い事
そのままの態勢だった。
ボンネット同士をぶつけて眼を閉じて。もう少し長ければ、事故を疑われてしまう事うけあいの長い時間。
先に音を上げたのは、ハドソンだった。
ぷはっ、と吐息を零してマックィーンを突き放す。押されたマックィーンは涼しい顔でバックしてやる。
ハドソンは、げっそりと言葉を押し出した。
「…………息が続かん」
「おじいちゃんに無理はさせられないって事だね……覚えとく」
悪戯っぽく笑ってから、マックィーンの表情がゆっくりと驚きに塗り変わる。
「あれ――何で、ドック?」
急におたおたし始めたルーキーを、ハドソンは大仰な溜め息で制した。
「……勝手に訊いておいて勝手に通信を切られちゃあいい迷惑だ。――聞いていなかったのか」
何が?と尋ね掛けて黙る。記憶の引き出しを怒涛の勢いで開けていく。
通信を切る直前、確かにハドソンの声はした。それはきっと制止を意味する手合いの言葉だろうと――聞き流していた。
「…………」
「……本当にお前は勝手な奴だな、若僧」
ハドソンの責めるようなじっとりした視線にマックィーンは身体を縮こまらせる。
その様子にハドソンはそっと笑って、続けた。
「――――好きにしろ、と言ったんだ」
「…………!」
すぐさま顔を上げて、ハドソンを見つめ返すが――ハドソンはそっぽを向いていて叶わない。
「~~~~~~っ、ハドソンー!やった、僕はやったんだ!」
マックィーンが飛び付いてくる。目一杯擦り寄せられる赤いボンネットにハドソンは呆れたような顔を向けるも、
払い除けはしなかった。
「ハドソン、ね、聞いて」
「何だ」
あまりぐいぐいと擦り寄せられるのは勘弁とタイヤで微妙に牽制しながらハドソン。
「キングさんが結婚したのって、いつか知ってる?」
知らない。そう答えると、マックィーンは歴代のタイム保有車であり名レーサー……つまり、ジンクスの
体現車を次々と挙げていく。最後に、先と同じ質問をくっつけて。
それらにもかぶりを振ると、マックィーンはそれはそれは幸せそうに笑った。
「みんな、ここで走ってから――なんだよ」
「……――!」
あれだけ、こだわっていた。
くだらぬジンクスだと笑い流していた。
まさか……そんな『副賞』が存在するとは露も知らなかった。
「……」
見開かれたハドソンの眼が、一気に眇められる。
「そのために、あの中をぶち抜いたのか」
「うん」
腹の立つ事に、即答だ。
「まったく、お前ときたら――――」
きたら、何なのだろう。
何度言っても無駄なパフォーマンスをやめないし。
何度拒んでも果敢にアタックを繰り返してくるし。
何度暗に告げても(分かっていないだけか?)レース前にささやかな約束を取りつけるのを、やめない。
彼なりの気遣いだ、すべて。
例えメーター達と流行りの映画は全て観てしまっていたとしても、フローのオイルなんて毎日浴びる程飲めるとしても、ダートのドライブにちょっと飽き気味だったとしても。
『自分はクラッシュなんかしない。
必ず帰ってくるから、ささやかな約束に付き合って』
「……きたら、何?」
「――――。そら、そろそろ行け。ウイニングランだ」
「えぇっ!?じ、じゃあちょっと待ってハドソン」
急に態度がいつも通りに戻ったハドソンに、マックィーンは眼を白黒させた。
「さっきの通信!残り10周ぐらいの……何て言い掛けたの?」
ハドソンはすぐには答えず、マックィーンを押し出した。
「そうでなきゃ、俺がクルーチーフをやる意味がない!」
「………………」
ラモーンは生来の飽き性であるので、歓喜と熱狂も比較的早く去っていっていた。なので、時間潰しに見るのはコースだ。
コースの中でマックィーンとドック・ハドソンが何か喋っている。笑っている。おまけに過剰なスキンシップも少々。
ハドソンが押し出し間際にバックをばん、と叩くとマックィーンが悲鳴を上げた。その顔は笑っている。
「……ポリマー加工、サビ系のチェック、あー後デントリペアだろ……ついでにガラス関係もやっとくか
……うん?ちょい待て、シャフトが歪んじまったら誰が直すんだ?」
眼を細めた職人の顔で、何やらぶつぶつ考えている彼に近寄って行くのは、愛妻フローだ。
「あら、ラモーン?どうしたの、難しい顔して」
「んー……――フロー」
「なぁに?」
「――俺、整形外科の勉強するわ」
「……えぇ!?」
驚くフローとは対照的に、ラモーンは至極真顔でこう言った。
「これから何かと、役に立つんだよ」
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ あああ伏せ忘れたああアアア
| | | | ピッ (TAT )
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|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _)_|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__) || |
これぞ生き恥orz
読んでくださってありがとう、コメントくださってありがとう。
お付き合いありがとうございました!
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