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平安Ⅱ

144,146 すまない。野良犬に噛まれたと思ってあきらめてくれ。

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  流石兄弟。リバ。平安。前編。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  後で残りを張りにきます。
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ソノカンカマワズトウカスイショウ!
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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 八葉の車がゆったりと車宿りに着いた。
 随身の者が手を貸そうとするのを断り、慣れきった様子でそこから下りる。
 回廊を渡って東の対の母屋につくと、いく人もの侍女がかしずき仕える。
 気の張る衣装を脱がされて、練り絹の白い単に着替えると、
その上にふわり、と紋の入った袿を掛けられた。

 多分、ヤツは焦れなが待っている。
 どう扱おうかとてぐすね引いている。
 兄者は苦笑しつつ東北の対の自室に向かった。
 いつものことだった。正室のもとを訪れた後、弟者がむきになることは。
 すでに夜は明けつつある。
 鶏の声も重なって聞こえる。
 やきもきしながら待っているだろう。
 有明の月はかすんでいる。

 踏み込んだ部屋にその姿はなく、首をかしげた瞬間、押し倒された。
 どうやら、妻戸の影にいたらしい。
「―――時に待て、モチつけ」
「待てない」
 着替えたばかりの衣が剥がされる。
 噛み付くように唇づけられる。
「出仕に差し支えるぞ」
「たった今からオレは物忌みだ」
 どうやらさぼるつもりらしい。
「代わりに行こうか」
「当分無理だな。足腰立たなくしてやる」
「せめて文(メール)をしたためるまで待て」
「うるさい。黙って抱かれてろ」
 どうやら、後朝の文は限りなく遅くなりそうだ。

 その時代、双つ子は忌むべき者として遇された。
 大納言家に生まれた彼らは、一つの名のみを表に現す。
裏に隠された弟も、その兄とともに育っていった。
 元服を迎えたころから、名は兄のままで、同じ面影を持つ二人はたびたびその身を入れ替え始める。
暴き立てる者のいないことを盾に、互いの役割を演じることが多くなる。
 5日に1度、兄者は自分に戻って参内する。
 それを勧める弟は、月に2度ほどほぞを噛む。
 出世を続ける意思のある父者は、更なる飛躍の礎として、左大臣の妹君を息子に娶わせた。
 その甲斐あってこの秋、内大臣の宣旨を受けた。
 兄者はその邸へ通わねばならなかった。

「だから、オレが行くって行ってるのに」
 両の肩を押さえつけ、相手を逃がさない。臍から下は重ねているので、少しの動きで息が乱れる。
 けれどまだ、与えてはいない。
「そういうわけにはいかないのだ」
 弱々しく否定する声。それが弟者に火を点ける。
「何故だ。言えよ」
 兄者は答えない。わざとゆっくりなぞるような腰の動きに、声をあげそうになりながら、
それに耐えている。
 格子は一つだけ上げてある。そこから、朝の光が御簾ごしに射し込み、
淡く色付く二人を照らし出す。
「姫とはそういった関係ではない」
「んなわけないだろう。正室だぞ」
 むしろ、奨励されてしかるべき関係。筋金入りの禁忌である自分たちとは逆に。
 
 相手の膚に唇を当て、強く吸って痕をつける。少しずらして牙を立てる。
痛がっても止めずに傷を残す。それをいくつも繰り返す。
 誰かに見せつけるための所有の証。
 こいつはオレのモノでオレの下で喘ぐんだ、と仮想の敵に叫んでいる。
 それがわかるから逆らわない。意味のないことだと知っているが、弟者の好きにさせている。

 痛みは嫌いだ。血を見ることも苦手だ。争うことも性に合わない。
 それなのに、この嫉妬深い恋人の下で、手酷い扱いを受けるのは何故だかあまり嫌ではない。
 大分俺も被虐の趣味に目覚めてきたもんだ、と彼は密かに自嘲する。

 傷よりも強い刻印が、そのに躯に刻まれる。
 流石に余裕がなくなり、夜具として使う大袿をつかんで、切れ切れの声を漏らす。
相手は手荒く彼を苛む。
 泣きそうな、辛そうな弟者の目。
 それを見ながら宿るのは、明らかに加虐の喜び。
 その身はいたぶられて快楽にむせび、その心は相手の傷を貪っている。
 ―――つくづく俺は欲深い。
 にやり、と口許に微笑いが浮かんだ。
 その途端、大きな波が押し寄せてきて、全てが白く弾けて消えた。

 目が覚めると、陽が高い。
 青くなって硯箱に飛びつくと、奥の部屋から不機嫌な弟者が現れた。
「文なら送っておいた。あんたが寝坊したい朝に口ずさむやつ」
「忠岑か。あれは過去バナに使うものだろう」
「たった今のことでもつれなくされたわけでなくとも同じ想いがします。ですからわざとあかつきを避け、
遅れた時に送ります、と書き添えて置いた」
「さすが」
 口笛を一つ吹く。
 嬉しくもなさそうに一度引っ込み、膳と高杯を取ってきてくれた。
自分は先に済ませたらしい。
 熱々の白粥に鴨のあつもの、ゆでて醤をまぶした青菜などが用意されている。
粥を口に運ぼうとして、その手を取られた。

「猫舌のくせにあせるな」
 腕ごとつかんだ漆塗りのさじに口を近づけて、しばらく冷ましてくれる。
「もういいだろう」
 粥はほどよく冷めている。そのままだったら舌を灼いていたはずだ。
 口に入れてまたすくうと、そのたびに冷ましてくれる。
 有能で皮肉な弟の情人としての顔。他の女をどう扱うかは自分は知らない。

 ―――あの姫も、恋人の前では違う面を見せるのだろうか。
 秋の風に揺れる撫子のような彼女は、兄者の目から見ても充分に魅力的だ。
だからこそ、打ち明けられたときは驚愕した。 

 雛遊びのように据えられて、扇の影でうつむく姫はなかなかに可憐だった。
 ラッキーだ、と彼は思った。
 少々色気には欠けるが、兄の大臣(おとど)が逼塞していたおりに育った和泉の国のなまりも可愛らしい。
 人払いがされたとき、胸が高鳴るのを感じた。
 ところが姫はしとねから下りると、いきなりその横に土下座する。
 しまった、こんな作法は聞いてなかった、と内心あせりながら自分も下りて土下座してみる。
 姫はそのままさめざめと泣き出した。
 俺も泣かなくてはならないのだろうか、と困っていると、彼女はしきりに謝っている。
 どうも様子がおかしい。
 顔を上げさせて事情を聞くと、わけを話してくれた。

 身分違いの恋人がいると。
 一応妻としての義務を果たし、こっそりとその男に会うつもりだったがどうしても無理だ、
兄者サン勘弁な、と言って泣き崩れた。
 大層残念である。
 しかし秘めた恋人を持つ気持ちは誰よりもわかるので、慰める。
しきりにすまながるからほんの少し打ち明けた。
 自分にも、公にできぬ情人がいると。
 なにせ秘密の恋なので、お互い他者に話したことがない。
微妙にぼかしながらものろけることが楽しくて、御帳台にも入らず語り明かした。

 三日夜の宴の後、赤い目をして帰宅したので、秘密の恋人はひどく荒れた。
 絶対次は自分が行く、と主張するので、そんなことをしたらおまえとの関係を絶つ、と脅した。
 たとえ相手が弟者でも、あえかな女人の名誉は守らねばならない。
 それ以来、誤解されたままである。

 湯殿から戻ってみると、弟者は漢籍を紐解いている。
 もちろん自分と違って真面目なものである。
 真剣な横顔を邪魔したくなって、隣に座って頬をつつく。
 顔をあげてこちらを見て、書を閉じる。何かを思い出したように口を開いた。

「先日オレは勘違いをしていた」
「何を?」
「雑仕だと思っていたイノキだが、そうではなかった」
「ああ、あの雀を逃した大男か。ではなんだったのだ」
「女の子だ」
 兄者が師走の池のように固まる。
「な、なんだってーーー!(AA略」
「いや、汗衫(かざみ。童女の服)を着て簀子(すのこ)に座っているから
何事かと問い詰めたらそうだった。特注の衣が間に合わずに水干を着ていたらしい。
妹者の遊び相手兼侍女だ」
「俺の勘違いでなかったら、そのイノキとやらは顎のしゃくれてやたらと体の大きい、
どう見ても俺より大分年上に見える男のことだよな」
「大体合っているが、男ではない。本当に女の子なのだ」

 

 二人で顔を見合わせる。弟者はどうにか言葉を継ぐ。
「落ち着いて考えろ。うちには母者がいるじゃないか。
あの母者を一目見て、高貴な女人と思うやつがいるか?」
「剛毅な巨人、と思うやつの方がほとんどだろうな」
「まあ、妹者の気持ちはわかる。母者が皇太后の院に詰めているから、
淋しくて少しでも似た者を置いておきたいのだ」
「にしたって……その上、不器用なのだろう」
「ああ。昨日もドールハウスを壊したらしく、せっせと妹者が修理していた」
「そそっかしいヤツだなぁ」
「なんにしろ、彼女が少しでも和んでくれればありがたい。飼って置く価値はある」
「楽そうでいい立場だな」
 弟者が少し目を光らせた。尖ったものがその底に沈んでいる。
けれどそれを素直には出さずに、いつものような軽口に変えた。

「ほう、あなたは拉致・監禁・調教プレイがお好みか。それは気づかず悪いことをした」
 ふいに腕をつかまれる。
「いや、あの、もう充分に堪能いたしました。どうぞお気遣いなく」
「いえいえ昨日一日無為に過ごしたので、こちらの体力は有り余っておりますから。
……誰かさんと違ってな」
「おまえ、少しセルフコントロールというものを覚えたほうがよくないか。
届いたばかりの『篁(たかむら)霊界ぶらり旅』を貸してやろう」
「なんだ、それは」
「小野篁が現世と霊界を行ったりきたりしながらスーパーえろえろを楽しむ話だ。
前半部の実妹との悲恋がテラモエス」
「生憎オレはリアルにしか興味ねぇ」
 ニヤリ、と口もとを歪めた。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)ゼンヘンココマデ。


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