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流石兄弟 えすえむ

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  流石兄弟  えすえむ
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  弟者×兄者
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
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 自室の異変に気づいたのは家の前だった。
 いつもの灯りが点っていない。
 かといって暗いわけではない。数多くの光源から、無数の光が揺れている。
 慌てて部屋に駆け上がる。無事を確かめたいやつがいる。
 扉を開けて、腰を抜かしそうになった。

 部屋一面に白いローソクが立てられ、不気味な光を放つ。
 火をつけられて長いらしく、滴る蝋が怪奇物のようだ。

「……黒ミサか、一人百物語か」
「何を言う、失敬な」
 その真中に座り込んだ人物が憮然と答える。
「これはロマンティック、というものだ」
「はぁ?」

 数多くのローソクは、仏壇用の品らしい。
 更にローソクの台に注目する。キャンドルスタンドなどという小洒落たものではない。
ただの板切れである。

「…これは母者が意味不明に集めているかまぼこ板ではないのか」
「有効活用だ。ほれ」
 冷えたワインが、マグカップに注がれる。
「これがネット懸賞で当たったのだ。1/144スケールの百式を狙っていたのだがな。
月誕生日も近いことだし、ここは一つ疲れて帰ってくるであろう弟をロマンティックに迎えてやろうと努力してみた」
「月命日なら知っているが、月誕生日なるものは聞いたことがない」
「細かいことは気にするな」
 花まで飾ってある。庭に咲いた白萩が、はかなげな風情で佇んでいる。
ペットボトルにその身を預けて。

「気持ちは嬉しいが、危ないから片付けよう」
「せっかく飾ったのに」
 不満そうな相手をキスでなだめて、ローソクを消していく。
 全く、いつも意表をつかれる。子供のころ漠然と、こいつと将来付き合う人は苦労するだろうな、
と考えたが、まさか自分とは思わなかった。やあ、オレ。
 もちろん見返りはある。
 オレに向けられる蕩けるような笑顔とか、腕の中で見せる安心しきった表情、何かトラブルを起こしたときの頼りきった瞳、非常にくだらないことを思いついたときの得意げな面持ち。
 閨での艶姿は語るまでもない。むしろ永遠に語りたくなるので自粛。熱い想いは寝台で……。

「あちっ」
「……やはり熱いわけだな」
「何をしやがる!」
 傾けたローソクを垂直に戻し、兄者はひどくまじめに答える。
「よくマンガなどで気持ちよさそうにしている人がいるが、実際のところどうなのか、と思って」
「自分で試せ」
「熱そうだったし」
「ほう、オレが熱いのはかまわないわけですか」
「弟者痛みに強いし」

 けしてそうではない。ただアンタが痛い目をみるくらいなら、代われるもんなら代わりますよ、とは思っている。だからと言ってつまらん遊びで痛みを味わいたいわけではない。
 腹が立つよりめげてきた。こいつはオレを何だと思っているのだろう。
 保護者?恋人?おもちゃ?それとも単なる兄弟?
 暗い気分は止まらない。
 もともとこちらの異常な執着から始まった関係なわけだ。オレを好きになる義理はない。

「………」
「怒ったのか?」

 心配そうにはするけれど、怒らせて自分に害があるかが不安なんだろう。
 入れ違ったスイッチは、悪い方へと暴走していく。
 笑顔は保護に対する礼で、信頼は利用の別名で、安心は安逸の同義語で。
 こいつには、都合のいい相手でありなおかつ快楽の供給者としての誰かは必要でも、
それがオレである必要はないのではないかと。

「………」
「ゴメン。悪かった。謝る」
 その姿はしおらしくて、やはり胸はときめくわけだが、それでも心は収まらない。
 そうして沸きあがる昏い感情。
 もしオレが苦痛を与える存在になれば、オレのことは嫌いになる?
 今までのことはすっかり忘れて、アンタの憎悪の対象になる?

「……弟者?」
「………許さねぇ」
 どん、と床へ突き飛ばす。驚いて目が丸くなっているのを可愛い、と思ってはいけない。
非情な目つきで睨みつける。
「いつもいつもいいように扱ってくれるよな、アアン?」
 襟首つかんで引き上げる。そのままベッドに押し倒す。
 思いきり乱暴に服を剥ぐ。
 胸の先端に噛みついて、苦痛の声をあげさせる。
 うなじにきつく、痕をつける。

「下りろ」
 再び下に蹴りおとし、その前に座る。
「そこへ、ひざまづけ」
 低く唸るような俺の声に、ヤツは素直に従おうとする。
「……正座じゃないっ」
 慌てて体勢を変える。
「体育座りでもねぇっ!」
 かっとなったオレは思わず床に下りた。
「こうだ、こう!」
「……なるほど」
「ひざまづく、くらいわからんのか!」
「文章ではよく見るが、イラスト・写真等でキャプション付きで説明してあるのは見たことがない。
膝をつけ、ならすぐわかるが、どうして『ま』なのだろう」
「オレが知るかーーーっ」
 脳天に血が昇る。落ち着け、落ち着くんだオレ。こいつのペースにのってはいけない。

「……とにかく、ひざまづけ」
「わかった」
 再び座りなおしたオレの前で兄者が膝を折る。普段させてない格好に、別の意味で血が昇る。
それを理性で抑えて足を突き出す。

「指を舐めろ」
「足の?」
「そうだ」
 断ったら、頬の一つもはたいてやる。そんなつもりで目で脅す。
 相手は動かない。さぞかしプライドと闘っているんだろう。
「弟者」
「なんだ」
「おまえさっき、帰るやいなやすごい勢いで上がってきただろう」
「ああ」
 アンタのことが心配だったのですよ、とはもちろん言わない。
「……風呂入ってないんじゃないか?」
 顔が赤くなる。
「15分待っとけ!」
 階段を駆け下りる。半分寝ぼけた母者の文句を聞き流し、光速で入浴する。
上がってくれば案の定、ヤシはFMVの前にいる、全裸で。

「お帰りぃ、弟者、早かったな」
 少し呂律が回らない。見るとカップが空になっている。こいつは酒に強くない。
「大丈夫か?」
「大丈夫。ダイジョーブ。ひざまづいてらめるんらったけ」
 オレを元の位置に座らせると、よろめきながら膝をつく。
 そしてそのまま半開きの唇をそっと、寄せる。
 そこは濡れていて、ひどくやわらかい。
 指先から腰に、甘い電気が伝わる。
 くすぐったい。くすぐったくて、気持ちいい。
 舌がゆっくりと親指をなぞる。まるでそこがオレの中心であるかのように、体がうづく。
 目は伏せられている。頬は少し上気している。
 めったに見ない真剣な表情で、アイツは俺を咥えている。
 本体に対する奉仕でもないのに、声が出そうになった。
 慌ててそれを飲み込む。目的を忘れてはいけない。

 快感を払い、アイツを押しのけ、立ち上がってベルトを探す。
 きょとん、としている間に後ろ手で縛る。
 泣かせてやる。心底脅えさせてやる。
 惚れた相手をとことん傷つけたい嗜虐心。男なら誰しも持ち合わせがあるはずだ。
「……いい格好だな」
 嘲笑いながら言ってやる。
「……新たなプレイか?」
「いや、本気。本気でオマエを嬲りたい」
「悪趣味らな」
 アルコールのせいですでに膚は薄く色づいている。そこに2本目のベルトを走らせる。
「うひゃあ」

 桜色の膚に濃紅の線(ライン)が通る。理不尽な行為に瞳を潤ませる相手は、とてつもなく色っぽい。
 だがオレの本能は、この視覚的な萌えに寄り添うべきか、聴覚的な萎えに従うべきか戸惑っている。
「……痛いじゃないか」
「痛くしてるんだよっ。それと、そんな間抜けな声で叫ぶな」
「って、ろんな声ならいいのら」
「希望としてはあ行系のかすれ声な」
「アッーーー」
「ざけんじゃねぇ」
 思わず背中にもう一発走らせると、今度は声も出ぬほど痛かったらしく、身を固くして唇を噛んでいる。
 好都合だ。そのままでいろ。
 握ったベルトを捨て、体を抑え、肩に牙を立てる。
 薄く、血が滲んでくる。それを執拗に這わせた舌で舐めとっていく。指は、相手の芯を弄ぶ。
「…好き者だな、これだけ痛い目にあわされても、すぐに勃ちやがる」
 耳もとで囁くと、線がわからなくなるほど膚が染まる。
「すぐにやるよ、いやってほどな」
 今回に限って快楽など与えるつもりはない。奪うだけ奪って、ぼろ屑のようにしてやる。
 予備動作もなく侵入すると、ひどくきつくて、招かれざる客は奥へ進めない。

「力、抜けよ。今さらだろ」
 いつもは違う。さんざんこいつを蕩かして、甘やかして、羞恥より逸楽のほうに不等号を開かせてやる。
 そうすると、どこか青い固さを残したまま熟れてきて、熱をもって、食べごろのアボカドのように
ねっとりとオレを包み込む。
 ところが今夜のこいつは鏡割り当日まで気合でもたせたモチのように固まってしまって、身動きが取れない。

 再び相手の中心に刺激を加える。耳にわざと荒い息と淫らな言葉を注ぎ込む。
 体が、緩んだ。隙を逃さず最奥まで差し入れる。
 欲望のままの暴走。気遣いのかけらもない行為。
 俺は恋人ではなく捕食者で、アイツは哀れな生贄(ヴィクティム)。喰らいつくされるかわいそうなうさぎ。
跳ねてもどこへも逃げられない。

 滴りを平気で内部にぶちまけて、オレは顔色も変えない。
 そのまま裏返して第二戦。縛られた腕に重みがかかり、ヤシは苦痛を訴えている。
「……知るかよ」
 冷淡に答えて体躯を進める。位置が変わると泣き顔が見える。加虐とそれに興奮して、あえなく果てる刻の短さ。
 さすがにベルトだけは外してやり、へたれた体を膝の上にのせる。そしてまさかの第三戦。
これが若さってものなのかと、クワトロ大尉に言われそう。

 ベッドの軋みに合わせて、雪のような何かが降る。
 ああ、兄者の飾った萩の花だ、と気づいた瞬間血の気が引いた。

 ---オレはコイツに何してる?
 極めて悪趣味な飾り付けをして、楽しそうに待っていた。
 たとえ少々のいたずらはあっても、これほど酷い目にあわせていいわけがない。
 慌てて抜いて、抱きしめる。ぐったりとして声もない。

 些細なきっかけで覗き込んだ深淵。
 それはオレの顔で、オレの目で、こちらを見返す。
 恐怖に駆られて、オレに似て、オレではない人にしがみつく。
 腕の中の人は力なく左腕をあげ、オレの背中をちょっと叩いた。
「………無茶しやがる」
 しゃべりにくそうに、かすれた声でつぶやく。酔いはすっかり覚めたらしい。
「どーすんだ、これ」
 腕に、うなじに、身体に痕。
 シーツと敷布が大損害。
 こっちはしゅんとして声も出ない。

「落とし前はつけてもらう」
 たとえ同じ目にあわされても、オレの罪は消えないだろう。

 兄者はしばらく何か考えていたが、ふいにひどく得意そうな顔になった。
「そうだ。妹者に頼んでオナモミを集めてもらおう」
「?」
「あの棘だらけのチクチクした実をおまえの服の中に入れて、上から一つ一つつぶしていく」
「ひ」
「それから姉者の友達の飼っているウミウシを貸してもらう。
それを裸にしたおまえにのせてうにょうにょ、と」
「ひぃ」
「こんにゃくをゆでて熱いやつをどんどんのっけていって、落としたらお仕置き、ってのもいいな」
「…それ自体がすでにお仕置きなのでは」
「なんにしろ恐ろしかろう」
「……確かに」
 どうして咄嗟にこんなにくだらないことを思いつくのだろう。

 兄者はくて、と枕に頭を落とした。
「………疲れた」
 言葉と同時にすでに眠っている。その寝顔にキスをする。

 傷の手当てをして、清潔にしてやって、部屋を片付けて。
 上手い言い訳を考えて、シーツと敷布を取り替えて。

 しなければならないことは山ほどあるが、5分、5分だけこのままでいさせてくれ。
 オレがこの人の横から身体を離す決意が付くまで。
                                   (了)

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 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ オシマイ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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  • ・・・ご馳走様でした。(ゲプッ -- 2013-06-02 (日) 21:30:59
  • もっ萌えました!! -- 2013-06-24 (月) 17:41:08
  • 良い。凄く良い。 -- 2014-05-11 (日) 04:33:53
  • 、、、素晴らしい。 -- 2014-12-08 (月) 07:39:48

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