Top/20-329

スパイ対スパイ

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  スパイ対スパイで白黒白のリバ?

 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  元ネタはまるで分からんがとりあえず頑張る
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ カラミエミテ、モエタンダ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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 ヘッケノレとジャッケノレ。二人はスパイだ。互いが互いの国のため、毎日のように
ぶつかり合って機密書類だの何だのを奪い合い華麗に逃げ去っていく。
猫と鼠が毎日飽きもせずにケンカを続けているどこぞのカートゥーンのように
それは当たり前で、二人ともそれに疑問を抱いた事はない。

 ヘッケノレはいつも白づくめ。白い帽子に白いスーツ、白いコート。鞄まで真っ白だ。
ジャッケノレはいつも黒づくめ。黒い帽子に黒いスーツそして黒いコート。当然のように鞄も黒。

 見るからに対照的な二人だったが、性格は案外そうでもない。スパイという
職業上、争い事は避けて出来る限りスマートに仕事はこなさなければならない筈だが、
どういうわけか行く先々でかち合う二人の顔にはいつも不敵な笑みがあった。

 ライバル。そんな簡単な四文字で纏められるほど二人の関係は単純ではなかった。

 どちらかが謀略に成功した場合、不利な状況下にある相手を拘束して悪戯を
する事もあった。
 機密ディスクが目の前、というタイミングでクロロホルムに浸したハンカチを
押し当てるだけでは足らず、倒れた相手を剥いてこの世から消えたくなりそうな
ほど恥ずかしい格好に縛り上げて、煙草片手ににやにや笑いで覚醒を待ち構えて
いる事もあった。

 どちらも仕事が上手くいかず――スパイは彼ら二人だけではないし、機密を
狙う連中など星の数ほどいるのだ――骨折り損のくたびれもうけ、という結果に
終わった時は、極稀にではあるがどちらからともなくホテルへとしけこんだ。

 他の同業者が見れば、鼻で笑うに違いない。敵国のスパイに身体を許すとは。
 それで何か情報が得られるわけでもないのに。馬鹿げている。

 ヘッケノレとジャッケノレは、そんな嘲笑を毛ほども気にしていなかった。
スパイ同士だから頭脳戦も駆け引きもまるで意味を成さない。二人は余りにも
良く似ていて、だからこそ、お子様向けのカートゥーンから一歩進んだその
関係に留まっていた。

               **************

 必要なものは4つ。
 鞄と秘密書類、飛行機のチケット、そして金。
 何でそれらがひとところの屋敷に固まっているかは置いておいて、ヘッケノレと
ジャッケノレはその屋敷でスパイ合戦をすることになった。
 必要アイテムを集め切る事自体に問題はなかったが、互いが互いにそれを
理解しているものだから、最大の敵は相手の妨害にあると言えた。
 ヘッケノレはドアを開けるなり降ってくる硫酸を傘で防ぎ、ジャッケノレは
ちまちまと引き出しに潜むスプリングをペンチで切って回った。そんな生死の
境目をローラースケートでぶっ飛ばすような危うい罠の応酬の間に、ヘッケノレは
鞄と秘密書類を、ジャッケノレは鞄と飛行機のチケットと金を手に入れていた。

(……さて)
ジャッケノレは応接間でのんびりと煙草をふかして考えた。
今のところどちらが有利かと言えば、ヘッケノレだ。何にせよあの書類さえ
あれば、徒歩だろうが何だろうがとにかく国へと帰りつければそれでいいのだから。

 問題はそのヘッケノレが今どこにいるか分からず、時間が刻一刻と過ぎていく事にある。
 どちらかと言えば短気なジャッケノレは、長期戦というものが苦手だった。
 どう動いても状況が変わらない、気の長いかくれんぼまたは鬼ごっこ。
ジャッケノレはその無限ループをすぐさま破壊しなければならない。

 逆にヘッケノレは相手がおたおたしているのを高みから眺めて忍び笑いをするのが
好きな男なので、この無限ループをそれはそれを楽しんでいるだろう。
その控えめな笑顔がジャッケノレは大嫌いだったが、プライベートとして考えるなら
『大好き』と言って差支えがない。

ジャッケノレはヘッケノレについて考察を始めた。スパイだからプライベートな
情報までは流石に漏れていないが、とりあえず身体をつなげてみて分かった事も
そこそこにある。
 ――『相手の事が分からないなら、ひとまずセックスしてみるのも良いんじゃない?』
大昔に見た映画の台詞が蘇る。無事に帰る事が出来たら、レンタルビデオ屋を漁ってみよう。

 そうしてジャッケノレは身体を沈めていたソファから立ち上がった。

                 **************

 ドアの鍵は溶接し、窓には全て罠を仕掛けた。残るのはこの一階の窓だけで、
他に脱出経路は無し。
 屋敷の中心に位置する大部屋には、毒ガスが仕掛けてある。時限式の装置は
もうじき無色の牙を閃かせ、ヘッケノレを絡め取るだろう。
 もちろんヘッケノレはそんな罠に掛かるほどバカじゃない。すぐにガスに
気づいて脱出経路を探すはず。そして見つけるのはジャッケノレの目の前にあるこの窓だ。

 自分は窓を潜って出てきたヘッケノレを殴るなり眠らせるなり、好きな手順で
自由を奪って必要なものを奪取すればいい。あのヘッケノレは自分のうろたえる
顔などそうそう見せてくれはしないが、きっと脱出口を探すにあたっては
少しは焦った顔をするに違いない。直接見る事は出来ないが、ジャッケノレは
それを想像して微笑った。頭上の木立がつられた様にざわざわと風に揺られて
木の葉を落とした。

 時計を確認する。長針が12の数字を通過する。ガスが噴き出す静かに不穏な
音が聞こえてきたような錯覚を覚えた。

「……」
ガスが噴き出してから、3分が経過していた。
 ジャッケノレは言い様のない不安に襲われ、吸おうとしていたタバコを苛立ち
紛れに握り潰す。

 遅い。遅すぎる。ヘッケノレの腕ならば、2分と経たずにこの窓を発見しているはずだ。
唯一の脱出経路であるこの窓を。
 自分の包囲手順に何ら綻びはない。だからこそ、この時間経過は異常だ。

「……ヘッケノレ?」
呟いた声が、予想以上に震えていてジャッケノレは戦慄した。何に戦慄している
かも分からず、ジャッケノレは窓を見つめていた。

 窓越しに白い姿が現れたのは、5分経過した後だった。
 ヘッケノレは顔面蒼白で口をハンカチで押さえている。足取りがおかしい。
ひょこひょこと片足を擦る様に、必死に窓へと駆け寄っている。

「……何でだ、ヘッケノレ」
何らかのアクシデントがあったのか。らしくもなく、変なミスでもやって
しまったのか。そんなアクシデントはジャッケノレの予定に無い。ここまで
ヘッケノレを追い込むつもりも無かった。ヘッケノレだってジャッケノレをここまで
追い込んだ事は無い。

 何故なら、相手を追い詰めて弱らせてしまったら、もう殺すしかないからだ。

 スパイは悲しいほどに合理的だ。まだまだ元気な相手を尻目に任務を果たすのは良い。
相手をどうにかするよりも、任務の遂行が最優先だからだ。
 しかし、自分の任務遂行の障害である相手が虫の息であり、今後また対象が
自分の、ひいては自国の邪魔となるのなら。

 殺すのだ。それが後々の任務をスムーズにする。

 ジャッケノレもヘッケノレも、それを理解している。
 理解していて、戯れた。狭い狭い橋の上で、遊び回っているようなものだ。
 ほんの少し手を滑らせてしまえば、相手を死に至らしめる。スパイ同士の
駆け引きとは、そういうものだった。

 立ち尽くすジャッケノレの目の前で、ヘッケノレは力なく窓を開けた。
 駆け寄ったジャッケノレは、ヘッケノレが力なく窓枠にしなだれかかるのを見た。
「ヘッケノレ」
「……あぁ、ジャッケノレ――悪い、な。しくじった……」
ヘッケノレは口元をひくつかせて笑った。自身が着ている服のように、その顔は真っ白だ。
「何――馬鹿やってんだ! 油断するんじゃねぇよ、俺の罠になんか掛かってんじゃねぇ!!」

思わずジャッケノレは喚き散らしていた。ガスの毒は、予め飲んでいた中和剤の
おかげで無い。しかし、ガスの脅威に晒され続けながら、それでもヘッケノレは笑っていた。
「いや……俺が悪いんだよ、ジャッケノレ。――お前の罠、たまには引っ掛かって
油断させてやるか…………って、な。そうしたら、このザマさ――俺も堕ちたなあ」
ヘッケノレの口からは、ジャッケノレを責める言葉は何一つ出てこない。
つらつらと空ろな眼で独白に似た口調で語りかけ続けるヘッケノレが、
血を吐いたのはその直後だった。
「!! ヘッケノレ! 待ってろ、中和剤を――!」
ジャッケノレの国でしか製造していないガスだった。当然中和剤もジャッケノレ
しか持っていない。そして中和剤は、鞄の中だ。
 何故鞄を木の下に置いたのかと、数分前の自分を呪いながらジャッケノレは
走り出そうとした。

 その黒い袖を、ヘッケノレの白い腕が掴んだ。

「何、ヘッケ――」

 どこにそんな力が残っていたのか。やんわりと、しかし力強くジャッケノレを
自分の元へと引き寄せたヘッケノレは、最後の力を振り絞り窓枠から上半身を
乗り出した。
「愛してる、ジャッケノレ」
か細い声で名を呼んで、ヘッケノレは自らの血でまみれた口をジャッケノレの
それへと押し付けた。

 驚く間も振り払う暇も与える事なく、ヘッケノレの舌がすぐさまジャッケノレの
口内をむさぼる。戸惑ったのはほんの数秒で、ジャッケノレはヘッケノレの頭を
両手で挟み込み、その求めに応じた。
 ちゅく、と互いの舌と唾液が絡み合う。じんわりと感じた違和感は、
ヘッケノレの血の味だ。どこかカルキ臭い、さらりとした――――。

「!?」

気づいたときには、もう遅い。
 ヘッケノレはうっとりと眼を閉じて、ジャッケノレの唇をむさぼっている。
右手はいつしかジャッケノレの胸倉を掴んで引き寄せ続けている。しかしその
左手は、まるで別の意志に支配されているかのように迅速に、ジャッケノレの
足元に何かを放り落とした。
 ヘッケノレを突き飛ばす。ヘッケノレは眼を閉じたまま舌なめずりをして、笑う。

 眼球が焼ける幻聴すら聞こえるような、強烈な光がジャッケノレの視界を支配した。

「……色仕掛けなんざ反則だ」
「スパイに反則もへったくれもないさ、ジャッケノレ。俺は罠を仕掛け、
お前はそれに引っ掛かった。いつもの事だろ?」

 ジャッケノレは未だ凄まじいプリズムの乱舞に覆われている視界を閉じた。
開けても閉じても一緒だった。
「にしても、あのフェイクの不味さと言ったら! あの吐血の演技、凄かったろ?
あれは半分本気だったね」
がちゃん、と冷たい音が響く。ジャッケノレの両足が、一番低い樹の一番低い枝を
挟んで手錠で繋がれてしまった音だ。

 逆さ釣りにされ、頭の奥底で響きだす耳鳴りに顔を顰めながら、ジャッケノレは
空になった自分の鞄と秘密書類を片手に悠々と歩き出すヘッケノレを想像した。
もちろん足にはかすり傷一つも無い。
何とまあ、スマートなことだ。あの映画女優もこんなキャラだった気がする。
「それじゃあ、俺は行くよ。眼、お大事に」
「よく言うぜ、この色キチが」

 ジャッケノレの声のあまりにも憮然とした響きにヘッケノレが微笑した気配がした。
 ジャッケノレとしては、ベッドの上での淫らなヘッケノレを揶揄したつもり
だったのだが、今では負け犬の遠吠えでしかないのだろう。

 ヘッケノレの足音が近づいた。
 ちゅ、とジャッケノレの額に触れるだけの軽いキスを残し、ヘッケノレは
歩き去っていく。

「アディオス、ジャッケノレ。またいつか」
「アディオスヘッケノレ、もう会わない事を願って」

敗者の台詞だ。いつしか二人の間だけで決められた、勝者と敗者の別れの挨拶。
 今度こそ余裕の足取りで遠ざかっていく白づくめの演技派スパイの足音を、
ジャッケノレは聴覚でもって見送った。

 そして、一度だけ、ヘッケノレと別れの挨拶を交わせた事を神に感謝した。

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 無茶な話だ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
個人的な妄想だらけでスマソ


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