Top/20-227

ふたりの夜は

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  またギイタク。読み返して萌えた2年生バージョン。
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  ギイ視点のHっす。興味ない方はスルーよろ
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ カリフラワーの後ラシイ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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人間、いったん馴染んだ習慣というものはそう簡単には変わらないらしい。

点呼までの数時間を305号室以外の場所ですごすという発想などまったくなさそうな託生を見るにつけ、それが、一年生時の自己防衛を兼ねた託生なりの処世術の名残りなのはわかっていても、オレは嬉しかった。
夕食のあと、宿題も終えた託生はさっさと風呂に入り、パジャマに着替えてベッドの上にいる。
一通りの用事が済んだら即就寝準備にとりかかるなんて、本当に真剣にかわいいのでぜったい茶化したりできない。からかったりしたら、託生のことだ、意地になってその習慣を変えてしまうのは明白だ。
子どもっぽいところを指摘するたび頬を赤らめて反論してくる託生も捨て難いが、夜毎の眼福とはさすがに引き換えにできないしな。
かといって託生も眠たいわけではないようで、壁にぴったり背中を合わせ、三角座り状態の膝に文庫本を置いて熱心にページをめくっている。
ふたりきりの部屋なんだ。そんなにコンパクトに折りたたまらなくたっていいのに。
ごく自然にそういう姿勢をとっている託生を見つめるとき、愛しいだけでなく、いつだってもれなく切なさが湧きあがる。
そういう姿勢でないと託生は落ち着けないんだってことも、わかってはいるんだが。
『――寛げよ』
一学期、まだ託生に手を出しかねていたある晩のことだった。
不意打ちのキスを避けるかのように膝をかかえてうつむいたままの託生に耐えかね、オレはそう声をかけた。
すると託生はきょとんと顔を上げた。
『……寛いでるよ?』
微笑みながら、きゅっと膝を抱きなおした。
そんなふうに安心してないで、その腕をほどいて、オレのところへ来いよ。
オレを、抱きしめろよ。
――とは、喉まで出かかったのだが、そこでつかえたきり。
未だに言えずじまいでいる。
オレは目を通していた資料を閉じて託生のベッドへ移動した。
「ギイ?」
夜の海みたいに真っ黒な瞳がまっすぐにオレに向けられる。オレは託生と並んでベッドへ腰かけるなり、華奢な背中へ腕を回した。手の平で肩をつつんで引き寄せる。
壁ではなくオレにもたれかかるようにさせて。右手は小さな顎へ沿え、くっと仰向かせた。
ふと既視感をおぼえる。
ああ。あのときと同じ体勢じゃんか。
……一年の、三学期。

高熱でぐったりとした託生に、口移しで白湯を与えた。
罪深いあの口づけを思い出したオレは、敬虔な気持ちで託生へ唇を寄せた。
やさしく、ふれあうだけのキスを柔らかい唇に落とす。
――何回も。
応えてわずかに舌を覗かせた託生に、眩暈がした。
あの凍てついた午後に独り抑え込むしかなかった衝動がそのままに甦る。
託生を、抱きたい。
いや、いつだって抱きたいんだが。今夜のこれは――去年のオレの胸の奥にとぐろを巻いていた欲望だ。
託生にふれるのはおろか、視線すら合わせてもらえなかったオレの胸の裡に凝り固まっていた募る想いを髣髴としてしまった。
「……っ」
呼気を乱し、膝を崩してすがりついてきた託生の顎から指を外して、薄い太腿の内側をなぞる。ぴくんと跳ねた背筋をいっそうきつく取り込む。
辿り着いた付け根の中央では愛しくてたまらないものが勃ちあがりかけていた。
そう。キスに応える術を、オレが、教えた。
――今夜はどうやら手加減できそうにない。
ごめんな、託生。
やさしく舌を舐めながら、オレは心の中で先に謝っておいた。
口に出しては。
「託生――なあ…、しようか?」
「――え、ええっ?」
いきなりの口づけに酔わされていた託生は、ぱちっと目をあいた。
耳元で囁いたオレの胸板を押して、オレの唇から少しでも離れようとする。
無駄だよ。
オレは託生のものをいとおしみをこめてゆっくりと撫でさすった。
気持ちいいだろ? 託生、セックスのときオレが気持ちのイイことしかしないって、もうしっかりわかってるんだろう?
ちゃんと、その気にさせてやるから。
二学期初日、再会を祝ったキスのときこそ、本気で嫌がってた託生の心をほぐすために軽いスキンシップでうやむやにしたが、今夜ばかりは無理だ。
自分をごまかす余裕がない。
「ギイ――ギイ、今晩は、用事ないの?」
さっきオレが施錠したのを見ていたくせに、そんなことを言ってくださる。
まあいいか。真っ赤になった耳朶がかじりつきたいくらいにかわいいし。
「ないって」

託生。オレがおまえを追いつめるのは本当は簡単なんだよ。
「でも、でもっ。ギイにはなくても、誰かが訪ねてくるかもしれないしっ」
「誰も来ない。もちろん章三も来ないよ」
無粋な邪魔をされないために。そのために、305号室をオレと託生のスイートホームだと吹聴してるんじゃんか。
「でも――まだ、消灯じゃないし……」
でも、を繰り返す託生の声がだんだん小さくなる。
「……ギイ、……手」
「――ん?」
やんわりもみしだき続けているオレの右手を退けてほしくて、けど恥ずかしくてそれすら口ごもっている。
いつまでたっても初々しい託生に、オレはふたたび唇を寄せた。
――不思議だ。
どうしてオレ、こんなに穏やかに唇をついばんでるんだろう。
皮膚という薄皮一枚の下で託生を欲しがる血が荒れ狂っているのに。
ジーンズの前も疾うに痛いくらいきつく張り詰めている。
ひとしきりのキスのあと、オレはレインボー・ヴォイスを駆使して甘く囁いた。
「……いいよな?」
託生は睫を伏せたまま答えない。
桃色に染まった頬も紅く色づいた唇もふれなば落ちんという最高に色っぽい風情なのに、参っちまうぐらい強情なんだよな、オレの恋人は。
オレは溜め息を噛み殺して口説き続けた。
「消灯までに終わらせるから。そしたら、早々とぐっすり眠れるだろ?」
いや、今夜は寝かせるつもりなどさらさらないんだが。ま、方便ということで。
と。潤みきった瞳がオレを見上げた。
オレはまたくらりとした。お預けなんか食らったらマジで襲っちまいそうだ。
「今夜のギイ、いつもと違う」
「そうか?」
「だって、ギイ、いつもならもっと強引じゃないか。いっつもぼくのこと、お、押し、倒して……そそそそのままっ――じゃないかっ」
「そうだっけ? うん、いっぺん託生に押し倒されてみたいもんだけどなぁ」
「もうっ、ギイってば!」
とぼけながら、しかしオレも気づいていた。
今夜のオレはいつになく弱気だ。というか、弱気を託生に悟られるくらい表に出してしまっている。
気持ちだけでなく、託生に対する態度まで、一年生仕様になっちまってるらしい。

もう大丈夫なのにな。
多少強引にコトを進めても託生がこの腕の中に留まっていてくれることは何遍も何回も確認した。
他愛ないじゃれ合いや些細なちょっかいをきっかけにコトに及ぶのの多いことといったら。
いくら愛ゆえとはいえ託生に愛想を尽かされないのが我ながら不思議なくらいだ。
そう。オレ、飢えているんだよ。
幾ら貪ったって足りないんだ。むしろ指向性は強まるばかりで。
曰く託生にふれなければ一日が終わらない。
そう思ってそれが実行できる日々に、どっぷりと溺れている。
「じゃあ、いいんだな?」
鼻の頭にチュッとキスすると、託生はこくりと頷いた。
「……電気、消して」
わかってるよ。オレはくすりと微笑っていったん託生から腕をほどいた。
ベッドサイドのライトを点けて、皓々と室内を照らす蛍光灯のスイッチは切る。
ふりかえると託生はこちらに背を向けて正座していた。
隣りで思い切りよくシャツを脱いだオレにちらっと艶っぽい流し目をくれて。
うつむくと、パジャマのボタンをひとつずつゆっくり外していく。
控えめに、けれど確実にオレの求愛に応えてくれる託生――
ジーンズの中がいっそうきつくなり、オレは速やかにジッパーを下ろした。
全裸になるのももどかしく背後から託生を抱きしめる。
少し腰を浮かせてズボンを脱ぎかけていた託生は、下着の中へ滑りこんできたオレの手を慌てて押さえた。
「ギイっ、ちょっと…! 自分でするからっ」
「そんなの待てない」
さらさらで淡い茂みに指を絡ませると、託生の肩がぴくっと跳ねた。
うなじに吸いつきながら押し倒す。邪魔な下着をパジャマごとはがしてオレのベッドへ投げる。
放物線を描くそれがオレの抜け殻に重なるように落下していくのはちょっとした計算の結果。
明日の朝、乱れて重なり合ったそれを見つけた託生が今夜のふたりを思い出して頬を染めるように。
覆い被さったオレの下で託生は、枕元の光源へ腕を伸ばしていた。オレが先回りして明かりを消す。
スイッチのありかを求めて宙にあった託生の指に、指を絡めた。そしてオレの下へ取り戻す。
「愛してるよ、託生…」
今夜は、髪の毛一筋たりとも逃さない。

握り合った手ごと右手を託生の下腹部へ忍びこませる。
「……あっ、やだ、ギィ」
託生の指を使って託生を気持ちよくさせようというオレの意図に気づいたらしく、逃れるように腰を持ち上げた。
ところがそこにはちょうど威勢のいいオレがいて。
柔らかな双丘にこすられたそれはますます硬度と張りを増した。
闇の中、ふたつの息遣いがひそかに乱れる。
託生のうなじから背筋へ熱いキスをまんべんなく散りばめながら、左手では敏感な脇腹をしっとりと愛撫する。
右手は託生の前へ回したまま、けど逃げたものを追うことはとくにせずに掌中にある指、手の平、手の甲を丹念になぞった。
託生にふれている部分すべてが甘くじんじんと痺れている。
指先だけでこんなに感じるなんて、託生とセックスするまでオレは知らなかった。
「っ……、ギイ、やっ――ん」
肌をしゃぶるオレの口が腰まで下りてくると、託生は小さくさえずってずり上がった。
シーツを這う膝が皺の波を作る。絡み合わせている右手もひっぱって抜こうとする。
オレは片手でぐっと細い腰をつかみとめた。
逃れることしか頭にないようだが、託生、おまえ、オレの鼻先で四つん這いになってるぞ。
それともこの暗さだからオレには視えてないと思ってるのか?
これ以上、煽ってくれるなよ。
オレは躊躇うことなくふっくらした双丘へ唇を落とした。
「だめっ、やめ――て、ギィ…っ」
弾む呼吸に晒されただけでぴくぴくと震える入り口。オレだけがひらくのを許されている扉。
ちろりとひと舐めしただけで妖しい収縮を繰り返す。この奥に続く襞の動きはもっと複雑なんだ。
それを知っている股間から熱い雫が滴り落ちた。
託生も。またしてもふれあったオレの手から、もう逃げようとはしなかった。
指よりずっと熱くて確かなそれに愛撫を移す。
「……んっ……っ」
託生はさっきからずっと枕に顔を埋めて声を殺している。ときどき喘ぎまじりという悩殺ものの抗議を小さく発しつつ、体は素直な反応を返してくる。
託生の零した透明な滴で濡れた指を、息づく入り口へそっと差し込んだ。
待ちわびていたかのようにきゅっと締めつけられる。それだけで背筋に快感という名の電流が走った。
それは腰でスパークして、昂ぶりをいっそう固く、熱くする。

オレは指を二本に増やしながら、託生の背に密着するように被さった。
「託生――たくみ……愛してるよ――」
掠れた声で耳朶を、頬を愛撫する。
左手は胸につんと勃ち上がった小さな突起の感触をぞんぶんに愉しみつつ。
託生がとくに感じる場所を狙って右手の抜き差しを繰り返すうちに、細い腰が応えて揺れ始めた。
託生、欲しい?
オレが、欲しいか?
オレは、欲しいよ――託生。
「愛してる……」
すんなりした太腿にすっかり反り返ったものを押し当てる。
すると託生はわずかに腰を落とし――猫が尻尾だけを飼い主の足に絡ませるみたいな、微妙なタッチで。
オレのそれに双丘をふれあわせた。
瞬間、心臓のポンプが破裂しそうに膨らむ。
「たくみ……タクミ――」
指を抜くのももどかしく、オレは託生の腰をつかまえて入り口にそれをあてがった。
いつにない大きさと固さに驚いたのか、そこはきゅっと締まった。
オレは託生を抱きしめた。
すべらかな肌をあますところなく肌で撫で、中へ入れさせて欲しいと全身を使ってねだる。
何度もノックしていると、託生はあえかな吐息をもらし。
その扉が少しずつオレを呑みこんでいった。
――ああ。
たまんねえな。
託生の啜り泣きとオレの喘ぎが暗い室内に満ちる。
この至福のひとときをずっと味わっていたいのに、突き上げる腰の動きを止められない。
それどころか次第に激しくなっていき――
散々託生を突き上げて、挙句の果てにオレの体は絶頂を極めていた。
大量の迸りを止めることができない。
「……っ」
甘くて苦い快楽の余韻に引きずり込まれるまま、オレは託生の上に突っ伏した。
首筋に荒い呼気を埋め込まれた託生がびくんと身をすくめる。
まだ抜いていないオレを絞り上げる。

「あぁ…っ、ギ、や…っん」
かすかに鳴いて、託生は切なげに身をくねらせた。
貫いているオレの、熱さも嵩も固さも。ちっとも萎えていないからだ。
オレの貪欲さはこんなところでも頭をもたげている。
「ギイ……ギイっ」
託生は上半身をねじって、投げだしていたオレの腕にしがみついた。
「わかってるよ……託生」
さらさらの黒髪にキスを落とし、託生の膝裏に手を回した。
折り曲げさせてオレの体の下をくぐらせる。楔は埋めこんだままで託生を仰向けさせた。
託生はすぐにオレの背中へ腕を伸ばした。
セックスしている最中にオレにすがりつくこと――まぁ体位にもよるのだが――
これもオレが託生に教えた。
けどな――
オレも託生の背中に腕を交差させてきつく抱きしめた。
託生はふだんあれほど憎まれ口や減らず口をたたいているくせに、閨の中ではとても従順だ。
イくときだってたいていは声もあげずにただぽろぽろと涙をこぼす。
その落差は、痛々しかった。
男に組み敷かれている間は体を固くベッドへ縛りつけて息も殺すものなのだと、何年もかけて、実の兄に骨の髄まで叩きこまれたに違いない。
感じやすい――感度のいい体なのに。
それからもうひとつ、オレがひそかにその昔の男に対して憤っている、託生の閨での習慣があった。
「……あっ、ん、んん」
腹筋でもってこすりあげた託生のものはまだイっていない。
手や口でじかに愛撫してやると素直に達するが、挿入された後ろからの刺激ではいくらよがっていてもなかなかイこうとしない。
これもおそらくは『調教』の名残。
年の離れた兄の、ただでさえ大きなもので貫かれて、さんざんかき回されて、幼かった託生は我慢しきれず強制された快感でその兄の腹を濡らしたこともあったはずだ。
その度にどんなにひどく理不尽に苛まれたのかなんて
――想像したくもないが、オレには容易くできてしまう。

「タクミ……たくみ」
「ん……ギイ……ギィ…っ」
ゆっくり、ゆったりと大きく腰を回すオレに物足りなくなってきたのか、託生は両足をオレの腰へ絡めてきた。
両手も、さらに深くオレの背中をかき寄せる。
その指の繊細で官能的な動きに、託生がオレのバイオリンなのに、オレが託生に鳴らされそうになった。
たまらず、竿を何度もきつく託生の中へ突き刺す。
「……っ」
「は…、あっ……ギ…ッ」
オレの与える快感に溺れる託生は、無防備で、無垢で、絞め殺してしまいたいくらいだ。
危ういほど、凶暴なくらいにかわいらしい。
やつ――葉山尚人がどうしてこの非常に魅力的な託生に気づかず、むしろ固く封印してしまったのか――
そんなことはべつに知りたくもないが、謎なことはたしかだ。
ともあれオレが託生をやさしさでとろとろに溶かす最初(で最後)の男になれたのは幸運だった。
オレの浅ましい独占欲は託生の過去にすら嫉妬しかねない。
「託生――タクミ、オレのこと、汚せよ」
汚してくれよ。
オレが与える快感に耽って。
オレに愛されてることだけを全身全霊で感じて。
「オレを……汚せよな」
ぐっ、ぐいっと何回も突き上げながら、託生が言葉の意味を理解するまで。
ずっとそう繰り返し囁きつづけた。
やがて泣き声まじりに託生が応える。
「……や、ダメ、っ…よ……ギイ…ッ」
「いいから……いいんだよ」
頼む、託生、早く、オレのこの愛撫だけでイってくれ。
オレの方がそろそろ限界だ。おまえの中があんまり熱くて、きつくて、気持ちヨクて。
「はぁっ……あ、ああっ」
「愛してるよ――愛してるんだよ」

ベッドのきしみを遠くにぼんやり感じながらがむしゃらに腰を使う。
止められない。
絶頂と紙一重の快感が重く続く。
気が狂いそうだ――
いや、もう狂ってる。
オレをこんなに虜にして、どうするつもりだ……どうしたいんだよ、託生。
教えてくれ、託生――
「愛してる……託生、タクミ……」
ああ。託生――アイシテイル。
「――ギィ――!」
感極まった甘い悲鳴を上げると、託生はオレにひときわきつくしがみついた。
びくびくと全身を震わせる。オレの腹に、噴き上がった熱い液体が飛び散った。
その、何もかもが白く焼き切れる瞬間――
ようやく満足感を得て、オレは託生に二度目の放出を最後の一滴まで絞り取られた。
「……託生、愛してるよ」
「ぼくも、ギイ。ぼくも……だよ」
徐々にゆるやかに弛緩していく託生の体を抱いて、慈しむ口づけを繰り返す。
昔の男が植えつけた閨の習慣など、上書きして全てきれいさっぱり消してやる。
そして託生――オレを愛しているというのなら。
もっと深く、オレに溺れてくれ。
オレがおまえにそうであるように。

いったん体を離して託生にインターバルを与え、さてそろそろ三回戦に臨もうかと思った矢先。
チャイムが鳴って、点呼を告げる館内放送がかかった。
やれやれ。
オレは託生にしていた腕枕を抜くとベッドサイドの照明を点け、上半身を起こした。
ティッシュで手早く腹に散らばった情愛の残滓をぬぐっていると、背後で託生の寝返りを打つ気配がした。
「ごめんね、ギイ」
「かまわないよ。託生は横になってろ。もう寝てるって言っておくから」
「そうじゃなくて……」
オレはベッドに腰かけたまま託生をふりかえった。

我に返った託生の、どことなく不安げな――怯えたような表情。
オレはふわりと、可能な限りやさしく微笑みかけた。
「何?」
「あの――それ…」
「……これ?」
ゴミ箱へ放り投げようとしていたティッシュを示すと、託生はこくんと頷いた。
そんな託生の前髪を、空いている手でくしゃりと撫でる。
「ばーか。汚せって言ったの、オレじゃんか」
「ん…。でも――」
愛しい柔らかい頬に指を滑らせて、オレはくすりと笑った。
「汚れたって、穢くなんかないんだよ、こういうのは」
「ギイ…!」
「どしゃ降りの中、真剣にフットボールの試合やってたら泥まみれになるだろ?
そういう汚れを、おまえ、穢いと思うか?」
「ううん」
「それと同じだよ。愛し合ったら、こうなるのは当然の結果なんだからさ」
「ギイ――」
「だからもっと、オレのこと、どろどろにしてくれよ。な?」
「――ギイは、どうして、そんなにぼくのこと……ぼくの気持ち……」
わかってくれるの?
潤んだ双眸がそう訴えている。
どくりと、性懲りのない欲情が波打った。
――この状況下でそんなかわいい顔、するなって。
ジーンズを履いて前を押さえとかないといけないじゃんか。
オレはしかしポーカーフェイスで微笑んで、身をよじったまま託生の上へかがんだ。
その額へとやさしいキスを落とす。
……それはきっと。
それはただ。
オレの愛し方とおまえの愛され方がぴったり重なったからだ。
ふたりともが、求めていた究極の相手だったという――ただ、それだけ。
「ほんと、オレたちって奇跡の恋人同士だよな」
ウインクすると、託生は濃く頬を染めた。

     ◆ ◆ ◆ ◆

点呼を済ませて戻ってきたオレじはふたたび素っ裸になって託生のベッドへ潜りこんだ。
猿臂を伸ばすと、託生は驚いたようにその手を押しとどめた。
「もう寝るんだろ?」
「何で」
「だって、今夜は早く寝るんだってギイが――」
オレは託生の唇を言葉ごと奪った。
舌を絡める、濃厚な口づけ。
右腕を薄い背中へ回して抱き寄せ、左手で探った託生への入り口は水音をたてた。
「ん――やだ、ギイ」
託生は両腕でオレを突っ撥ねる。
けど暗闇の中、その声が甘く潤んでいるのがわかる。
体だって嫌がってなどいない。
ちゅくちゅくと絶え間なく音をたてながらオレの指を二本とも呑みこんでいる。
オレは強引に託生を懐へ取り戻し、妖しく微笑った。耳朶に熱い吐息を吹きこむ。
「消灯まで、まだ半時間ある」
「ギイ……あ」
とっくに開発済みのポイントを二本の指でこね回すと、託生はぴくんと震えて、おずおずながらしがみついてきた。
その息は早くも浅く弾んでいる。
「しょ、消灯、まで、だよ」
「わかってる」
大丈夫。その頃にはオレしか感じられなくしてやるから。
「ん…」
一方託生は言葉を文字通りに受け取って安心したらしく、無防備に身を任せてきた。
その何気ない仕草がオレを煽ってるってこと、託生には理解できないんだろうな。
それに。
――オレ、メッチャクチャ執念深いんだぞ。
託生。
そろそろ口先だけの相槌に騙されてくれていないで、このオレの性癖に、慣れてくれよな。

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