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ホスト部森羽仁弟s

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                     |  ホヌト部森羽仁弟sです
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  本スレの>>337からの流れに萌えました
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「覚悟!」
 蜜国と手合わせする時に最も警戒せねばならないのは、奴との間合いの取り方だ。
自分よりも小柄な蜜国はその分重心が低い。バネも強いしあれで力も怪人の域に達して
いるから、隙あらば投げを狙われる。奴のしなやかな重心移動は、演武の時に観客から
溜め息が漏れる程だ。かと言って離れて若干勝っている手足の長さで攻撃を試みようと
しても、擦り抜けられて空中戦、又は獲物を使ったスピード勝負に持ち込まれる。
ちょこまかした動きは、今の自分がどう頑張ってもあいつには敵わない。
「うん」
 気の抜けた返事だが、見開いた目の光は一瞬で戦闘用のそれに変わっている。
蜜国は俺の放った突きを避けて、大きく後ろに跳んだ。跳躍した先で再び膝のバネを使い、
高く飛びながら手裏剣を打ってくる。……一連の動きには全く無駄がなく、
それが俺の気分を一層不愉快にする。俺はダダダッと道場の床に突き刺さる凶器を避け、
受け身を取りながら、頭上へ更に追い打ちをかけようとする打擲用の棒を蹴り飛ばした。
「破っ!」
 くるくると飛んでいく棒には目もくれず、蜜国は俺を跳び越えた先で着地し、
素早く身を返した。重心を落とし、蹴りの体勢に切り替えている。
俺も体を起こしながら破壊力の計り知れない奴の連続キックをかわすが、
いつの間にか目の前に大嫌いな奴の顔があった。
「……くっ」
 早い。スピードも勿論だが、奴が瞬時に攻撃と防御の流れを組み立てる勘が
天才的だと人は言う。武道の神に愛されている、なんて寒気がする感想を述べた
空手協会の役員もいたらしいが、そういう要素は奴の強さの一面でしかない。
……それは俺が誰よりも知っている。
 組み手を嫌って蜜国の腕から逃れ、後ろに退きつつ足払いを掛けた後のほんの一瞬。
 自分でも「ヤバい」と思った。
「チカちゃん、甘いっ!」
 痛みよりも衝撃に脳が揺れた。重い回し蹴りが脇腹に入り、俺は吹っ飛ばされた。

「……そこまで」
 高志さんの低い声で、終了が告げられる。
 蜜国は胴着の襟を直しながら、倒れた俺の横にしゃがみ込んだ。
「チカちゃん、今日動きは良かったけど……らしくなかったねえ」
「……そんな事ない」
「何か考え事してた?」
「そんな事ないって……言ってるだろ!」
 図星を突かれてつい繰り出した拳は、蜜国の掌で止められた。俺よりも小さい癖に、
その力は酷く強くて振り払えない。
 ――俺が絶対に逃げられない壁が、ここにある。
「……そっか」
 蜜国は少し寂しそうに笑って、立ち上がった。
「何かあったらお兄ちゃんに言うんだよー?……僕、先にあがるねえ」
「うっす! お疲れ様っす!」
 バカ聡志は敬礼でもしそうな勢いで蜜国を見送っている。ばいばーいなんて暢気に
手を振ってる蜜国の後について、高志さんも道場を後にした。

 日課になっている夜稽古に、今日は森野塚兄弟も加わっていた。ぼーっと蜜国と
(恐らく主に)奴の兄貴を眺めていた聡志は、起き直って胡座をかいた俺の前に立った。
「どうした、泰親。今日は守り一方だったな」
 言われなくてもわかってる。俺は吹っ飛ばされた眼鏡を聡志の手からひったくるように
受け取って、いつもの視界を取り戻す。
「……うるさい。ほっとけバカ聡志」
「人が心配してやれば、そんな事言うのはこの口かー!」
「い、いひゃい! いひゃいしゃひょひ」
 ……いかん、バカと話しているとバカのペースに乗せられてしまう。
 超のつく鈍感バカで兄の高志さんを崇拝しまくっている聡志には、俺の複雑な気持ち
なんてわかる訳がない。兄・蜜国は間違いなく羽仁野塚流当代一の使い手で、
俺の年には既に今の実力を完成させていた。今の兄は周囲の雑音など一切気にしていない
様子だが、その分俺の耳には嫌と言うほど入ってくる。今日だって……。
「部活に取材に来てた雑誌記者のせいか?」
「ふぇ?」

「蜜国さんの強さは半端じゃないから、兄弟しか知らない秘密とか聞きたがるのも
わかるけどなあ。まーあんまり気にすんなよ!」
 のー天気な聡志は俺の頭をばんばん叩いて豪快に笑った。ヤメロ。脳が揺れる。
「俺が……あいつの事聞かれるのがどんだけキツイかお前には一生わからんだろうな」

 ――お兄さんの強さの秘密って何だと思います?
『さあ……(死ぬほど甘い菓子と頭が沸きそうな可愛いものですね)』
 ――昨年空手部を突然引退されたとか。家で何か特別なメニューでも?
『いえ、特には(夕食後のホールケーキ3個が日課です)』
 ――いやあ、しかし練習を拝見していたら、矢張りお兄さんと型が似ていらっしゃる。
目標が身近にあるというのはいい刺激になるんじゃないんですか?
『はあ……』

「……だーれがあんな宇宙人を目標にしてるって?! 俺にもあの甘ったるい生活しろと?
 うさちゃんと通信して宇宙パワーをもらえと? 俺はあいつを越える!
 あいつの真似じゃなく、正攻法で絶対あいつよりも強くなってみせる!」
「まあいいけどさー。お前が何でそこまでこだわるのかぜんっぜんわかんね」
 わからんでいい。むしろわかってくれるな。お前にそういう気遣いを求めるのは
幼等部の頃に諦めた。
「……俺もあがる。シャワー浴びてくる」
「あ、俺も後で借りるな。お前の部屋行ってから行くわ」
 聡志は俺の部屋に鞄を置いて来ているから、一度戻るのだろう。聡志の後ろ姿を眺めて、
俺も溜め息をつきながら立ち上がった。

 我が家の武道場には門下生用に更衣室、シャワーと簡易浴場が併設されている。
俺は更衣室に常備してある浴用タオルを腰に巻いて、浴場の曇りガラスの扉に手を掛けた。
「……チカちゃん大丈夫かなあ」
「……ああ」
 手が止まる。水音に交じって中から小さく聞こえてくるのは、蜜国と高志さんの声だ。
しかも話している内容はどうやら俺の事らしくて、何食わぬ顔で入っていくべきかどうか、
俺は一瞬躊躇した。後から思えばこのためらいが命取りだったのだ。
「何かあったのかなあ。いつも先手で攻撃してくる方が好きな子なのにねえ」
「ああ」
「でも今日の動きはすごくいいと思ったんだ。最後で脇の甘さが見えちゃったけど、
そこまでの身のこなしは完璧だったよ!」
「そうだな」
 ………。
 ……まずい、顔がにやけてしまった。蜜国に褒められるのは嫌じゃない。
……少しだけ嬉しいから、対応に困る。
「僕はチカちゃんに何をしてあげられるんだろうねえ……」
 とりあえず俺の視界に入るところで深夜のスペシャルケーキナイトを開催するのは
止めてくれ。それだけで俺の心労は大分軽減される。
「……泰親は泰親なりの強さを模索している時期なのだろう。お前はお前の強さを
信じればいい」
「……ん。そだね」
 ……何となくもっともらしいけど、それでは解決にはならないんです高志さん……。
 何であれ蜜国が俺のことをそれなりには考えているというのは、むず痒いような
恥ずかしいような、居心地の悪い気分にさせられた。
 それきり中の会話は止まってしまって、湯が揺れるようなぽちゃんという音しか
聞こえなくなった。……もう入って行っても大丈夫だろうか。
 そろそろと扉を細く開けて、俺は浴場の中の様子を窺った。
「……!?」

 ヤバイ何だこれなんだこれなんだこれ。
 浴槽の中に蜜国と高志さんがいる。これは別にいいんだが……ちゅうしてる。
間違いなくちゅうしてる。
 俺からは高志さんの背中しか見えないが、どうやら蜜国の方に顔を傾けて、
奴の背に腕を回している。蜜国はこっちが赤面するようなぼんやりした目をしながら
キスに夢中になってる。軽いやつじゃない。ディープだ。もの凄くディープな奴だ。
 そんな関係だったのかあんたらはっつーか俺たちが来るのはわかってんだから
場所を考えろっつーかもう聡志が来る! と俺の頭の中はパニック状態だった。
 ましてや中の二人の挙動がますます怪しくなっていて、手があらぬ所で動き出したり
なんかしていたので俺は悶死寸前だった。
「お、泰親どーした?」
「っ……!!!」
 俺は呪った。もしも呪いが本当にきくのなら、中のバカップルとこの空気の読めない
バカはすぐさま地獄行きにしてくれる。その自信はある。
 俺はバカの口を即座に押さえ、更衣室の隅に引きずって行った。
「何も言うな何も聞くな黙って母屋の風呂にいけ」
「は?」
「それがお前の為だ、聡志」
 ブラコンの聡志には恐らくキツイ現実だ。これは俺のせめてもの……
「理由を言え理由を」
「さ、さわぐなって」
「筋の通らん事に従う筋合いはないっ」
「ちょ、待てっ」
 聡志は俺の気遣いを無にしたあげく、俺を足蹴にして思いっきり威勢よく浴場の扉を開けた。

「……あ、お二人ともいらしたんですね」
「うん。僕たちもう上がるよ~」
 蜜国の声と、ざばーっと湯から上がる音がする。
……ひとまず修羅場は避けられたようだ、と俺は安堵で脱力した。
「泰親ー、早く来いよ」
 後はあれだ。俺が態度にさえ出さなければ、きっと平穏無事におさまる筈だ……。
「チーカちゃん?」
「ひっ」
 耳元で蜜国の声がして、俺は尻餅をついた姿勢のまま後退りかけた。
……いや、ここで負けちゃ駄目だ。俺は絶対負けない、こいつには……。
「な、何だよ」
「覗き見は、めっ、だよ?」
 ごしょごしょと俺に内緒話をして、蜜国はにっこり笑った。……が、奴の目は本気だ。
「泰親ー?」
「い、今行く!」
 俺は転がるようにして風呂場に飛び込んだ。シャンプーで頭を泡だらけにしながら、
聡志は俺を不可解そうに見ている。
「お前今日変だなあ。疲れてるんじゃないか?」
 ……ああ疲れてる、ものすごく疲れてるがその半分くらいは無神経なお前のせいだ。
そう思ったが、キレた俺は黙って聡志に冷水を浴びせることで答えた。
「うわっ、何すんだよ泰親!」
「……お前らみんな俺の前から消えろー!」
「何だか知らんが、人にやつあたりすんなって言ってるだろお前はーっ!!」
「う、や、やめ、いてっ」
 容赦のない聡志の暴力を受けながら、俺は改めて打倒蜜国を誓った。
「絶対倒す!……い、痛い、聡志ごめん……」

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 格闘のあたりはデタラメ…
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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