真昼の雨
更新日: 2011-04-29 (金) 16:52:54
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| オリジナル。30代、友達同士のリーマン。
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| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| それぞれの車で来て
| | | | \ ランチした後らしい。
| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ランチ?
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
| °° ∞ ≡ ≡ | || (_(__)(_(__). || |
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食べ終わって外へ出たら、これでもかというくらいの雨だった。
「傘、車から出してこればよかったなあ」
呟いた俺の声が聞こえなかったのだろうか。彼は擦り切れた財布をポケットに
挟み込み、代わりに車のキーを取り出して、店の軒下から大雨の中へと
駆けだした。
「濡れるよ!」
言っているそばから、雨は容赦なく彼の全身に降りそそいで、紺色のスーツの
背中を深い藍色へと染め替えていく。けれど彼はこちらを振り返ることなく、
自分の車の中へ滑り込んでいった。
取り残された俺。手の中でキーケースがチャリ、と金属音をたてる。
何も言葉を交わさずに別れるのも変な気がしたので、俺もあとを追って
インプレッサの助手席に乗り込む。ほんの少し、距離にして3メートル程度
だったのに、まるでシャワーをかけられたかのように頭から濡れてしまった。
ドアを閉めて、ハンカチで頭を拭きながら隣を見ると、彼も濡れた眼鏡を
ハンカチで拭いているところだった。
「すごい雨だな」
「うん」
「ねえ」
「うん」
「ちゅーしよか」
「は、なんで」
それには答えず、彼はぐっとこちらに顔を寄せてきた。わあ、とひるんだ俺の
頭を片手でつかんで、あっというまに唇が重なる。
大きな手のひらが俺の湿った後頭部を撫でる。二度、三度と。
ああ。なにしてんだ、俺ら。男同士で。
こいびとでもないのにねえ。
「じゃあな」
自分の車に乗り換える時、また濡れるはめになった。膝から下がびっしょりと
濡れ、スーツが水を含んでいて気持ち悪い。
シートベルトを締めながら彼の車の方を振り返る。じっとこちらを見ているのが
わかったが、ちっともやまない雨がカーテンのようになって、彼がどんな顔を
しているのかはわからない。
再びハンカチを取り出して頭を拭く。
パ、と一回だけクラクション。
顔を上げると、ハザードランプがちかちかと光っていた。
運転席から左手が上がり、そして『バイバイ』と横に振れる。
わあ、うざ。そういうところが奥さんにめんどくさがられたんだよ、きっと。
俺が半笑いになっているあいだに、暗くよどんだ空の下、駐車場からするりと
抜け出した車は濡れたアスファルトを右折してしまい、あっけないほどすぐに
見えなくなった。
あの車のシフトレバーにはまだ、別れた奥さんがつけたストラップがついている。
後部座席には、明日面会する子供へのプレゼントが乗せられている。
俺はエンジンをかけた。フロントガラスをワイパーが撫でていく。一瞬だけ
鮮明になった視界に、彼の車が止まっていたスペースが映る。一面が雨に
浸った駐車場の中で、そこだけゆるい半円のように乾いていて、けれど、
何事もなかったかのように濡れていくところだった。グレーのアスファルトが
すべて黒く変色していくのを見届けてから、俺もその店を出た。
確認しなかったけど、きっと俺の車の止まっていた場所だって切り取られた
みたいに乾いていて、でもすぐに濡れてしまうのだろう。
応じたことに特別な感情はない。ただ、彼がかわいそうで、いとおしかった。
この人にさみしい思いをさせたくない、そう思っただけのことだ。
雨はまだやみそうになかった。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 今日も凄い雷雨だったんで。
| | | | ピッ (・∀・ )
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