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嫉妬

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                    |  今日の満太スペサルのゲイ二ンさんだモナー
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「いや、でも、丘子はかわええよ」

話の流れだった。
ただ、どんな流れでその言葉が出たのか、忘れてしまった。
するりと舌の上を滑るように出てきた言葉を聞いた瞬間、机を挟んで向かいにいる木目方――丘邑は誰の目にも不機嫌そうな顔をして、早々と次の葉書を読み始めた。

それをガラス越しに見ていたラヅオのス夕ッフ達は、「そりゃあ、男が男に『可愛い』なんて言われたらプライド傷つくよなぁ」と一斉に苦笑いをする。

『丘子』とは、二人が持っているレ/ギ/ュ/ラ/ー番組のあるコーナーで丘邑が女装したときの名前だ。

これがもし5年前、いや更に前の出来事だったら、彼らも苦笑では済まさないだろう。
今でこそ目に見えて派手な喧嘩はほとんど皆無といってもよいが、昔の二人は人前でもよく言い争いをしていた。
番組の休憩時間や移動時間、時にはオフにも。さすがに本番中は無かったが。
そういう経過を知っているから、ス夕ッフ達はあえて口を挟まない。

ただ、怒らせた張本人――谷辺は、いつもとは違う空気を感じ取っていた。
こんな風に二人の間に微妙な空気が流れた時、丘邑は決まって谷辺とは目を合わせない。見ようとしないのだ。
それが、ラヅオのC/Mに入った途端、煙草を吹かすのも忘れて椅子に座ったまま、谷辺の方をじっと見ている。
谷辺も、彼が怒っている事、そしてその原因は自分にある事をわかっているので、何も言わない。
寧ろ、自分の方が目を合わせ辛くて、必然的に丘邑の視線を避けてしまっていた。

幸いだったのは、この出来事がラヅオの終盤に起こった事か。

心ここにあらずと言った感じで喋る丘邑に相槌を打ちながら、谷辺は、どうしたものかとその心中を図りかねていた。

「まだ怒ってんの?」
閉まりかけたドアに無理矢理身体を滑り込ませた後の第一声に、丘邑はあからさまに嫌そうな顔をして、再び俯いた。
なぁ、と返答を促すと、一瞬の間の後に棘を含んだ声が聞こえてくる。
「ギリギリのに乗らんでも、次のに乗ったらええやろ」
エレベーター。
問いには答えようとしない丘邑に、余裕を装いながら――しかし内面では少し動揺しながら――谷辺は身を乗り出すようにして相方の前にあるエレベーターのボタンを押す。
「…まぁ、そやけど」
ウイーンという低い音と共に薄暗く狭い空間がゆっくりと下がっていく。その空間には丘邑と谷辺の二人。
勢いで乗り込んでしまったのはいいが、何を話すのかはまったく決めていなかった。
階数が下がっていくことを告げるエレベーターのランプがまるでタイムリミットへのカウントダウンのように思えて、谷辺はますます焦った。

「さっきのこと、怒ってるんなら謝るわ」
しまった、と谷辺は思う。無意識に出た言葉は感情が追いつかずに、どこか無粋な声になった。
「謝ってる態度やないやん」
案の定、丘邑が噛み付いてきた。俯いた顔からは表情を窺う事は出来ないが、その一言だけで充分だった。
「違っ…」
谷辺の言葉を遮るように、エレベーターが到着した事を告げる軽快な音が鳴る。
場違いなその音に憎らしさを覚えつつ、もうこうなったら彼の家までついていってやろうかなどと思い始めたとき、開き掛けたドアが強い反動を受けながら閉まった。
驚きながら備えつけのボタンを見ると添えられているのは丘邑の手。
「丘邑さん」
「…違うんや」
ボタンから外した手を力無く身体の横に垂らして、丘邑は続けた。
「確かにお前には腹が立っとるよ。
 俺は男や。男が『可愛い』って言われても嬉しくないっちゅーねん」
「…それは本当にスマン」
「そやけど!………っ!」
声を荒げた後、ハッとした様子で丘邑は顔を上げ、辺りの様子を窺う。
幸いなことに、二人の後にエレベーターに乗ろうとした者はいないらしく、先程と同じように扉が閉まったまま地下で止まっている。
「大丈夫やで、ここ防音してあるし。そんな滅多に人も来んやろ」
しばらく、耳を澄まして押し黙っていた丘邑は、谷辺の一言でホッとしたような表情を浮かべた。
谷辺自身も、そんな丘邑の姿を見て安心する。自然に顔が綻んだ。

芸/人になり、テ/レ/ビに映るようになり、丘邑貴志の名が広く世に知られてからは、このように外に出る時はいつも周囲を気にしながら行動していたのだろう。
これはあくまで憶測でしかない。が、彼の真面目で少々臆病な性格を考えれば分かる事。
確かに、今はラヅオ局のエレベーターの中に居るとはいえ、れっきとした外だ。
しかし、せめて自分と居る時ぐらいはそんなことは忘れて欲しい。
何も気にせずに、自分だけを見ていればいい。
――そう思うことは我儘なのだろうか。
世間が、丘邑を知るすべての人が、憎い。
丘邑の意識が他のものに注がれる事によって、自分はそれに嫉妬している。
――世の中に嫉妬するなんて、何て無謀なこと。

やるせない感情を胸に抱えたまま小さく溜息を吐くと、丘邑がこちらを一瞥したのに気が付いた。
「そんなに俺と話すのが嫌なんや」
しかし、それは一瞬の事で、少し震えた声は俯いた顔から聞こえてくる。
それが耳に入った瞬間、谷辺は思わず言葉を失った。
「…嫌なんて言ってないやろ」
「なら何でそんな顔すんねん!そんな、鬱陶しそうな顔!」
「それは………!」
言えるはずがなかった。まさか『嫉妬』が理由だなどと。まるで子供ではないか。
それこそ、丘邑に鬱陶しく思われるのが嫌だった。
「違う、丘邑さんに苛ついてるんやなくて」
「わかってんねん!俺だって自分が…嫌や…」
「…え?」
丘邑の突然の言葉に、谷辺は驚きを隠せない。
「嫌やけど、止まらんのや…こんな…こんな子供みたいな感情…」
自分の爪先を見つめながら、まるで憎たらしいものを吐き捨てるように呟いた言葉。

「俺は『丘子』に嫉妬してんねん…!」
「………!」

何も言えない谷辺の様子を感じ取って、丘邑は自嘲したように「馬鹿みたいやろ」と続けた。
「何で自分に嫉妬せなあかんねん。アホらして涙も出んわ」
気丈に明るい声で言ってみせるが、それが妙に浮いていて物悲しい。
「けどな、止まらんねん」
「…もう、ええよ」
「お前が『丘子のこと可愛い』って言ってから、ずっと『丘子』にムカついとる」
「言わんでええって」
「『丘子』は俺やから嫉妬してもどうしようもないけど、つい考えてしまうんや」
「丘邑さん」
「お前は『丘子』の方がええんかなって」
「…丘邑さん!」
言葉の続きを聞きたくなくて、小さな身体を自分の方に抱き寄せる。
しかし、丘邑は顔を上げようとはせず、呟いた言葉ははっきりと谷辺の方にも聞こえた。
「やっぱりお前は俺より『女』の方がええんかなって…」
「…んなわけ…ないやろ!?」
俯いている顔を無理矢理上げさせて、夢中で唇を塞いだ。
丘邑はいきなり侵入してきた舌を押し返そうとするが、有無を言わせぬ力で谷辺が口内を侵す。

エゴだった。
自分が、丘邑の言葉を遮りたかったから。聞きたくなかったから。
不用意な発言で彼を傷つけてしまった自分を認めたくなかったから。

――何と醜悪な感情。自分はこんな人間だったのか。

自分では絡み付いてこない舌を誘うように撫で上げながら、谷辺は自分の正体に愕然とした。

こうして激しく口内を貪っている間も、冷静に考えている自分。
キスで丘邑が慰められるのならそれでいいと思っている自分。
そして、逃げる事を覚えてしまった自分。

――こんな行為だけでは心は繋がり合えないとわかっているのに。

――繋がりたい、のに。

「…っ…は、ぁ」
突然、口を離した谷辺に丘邑は不思議そうな視線を向ける。
「…丘邑さん」
お互いの荒い息を感じられる距離で、谷辺は丘邑から目線を外さない。
両腕を掴んでいた手を外してそっと背中に回すと、丘邑も抵抗せずに谷辺に身体を預ける。

「俺は、丘邑さんが男だとか女だとかそんなん関係ないんや。
 でも、俺は『男の丘邑さん』を好きになったんやで」
「………」

もし、丘邑が女だったら。
やはり今みたいな関係になっていたかもしれないし、もしくは相手にまったく興味が湧かないまま終わっていたかもしれない。
自分たちは今、同性だから、出会って、そして互いに惹かれたのだ。
少なくとも、谷辺はそう思う。

「それに、俺だって嫉妬しとるよ。丘邑さんよりも、埒があかんものに」
「…何に?」
「丘邑さんが気にしているもの、すべてに」
な、どうしようもないやろ、と笑ってみせると、丘邑が少し呆れた表情をしたのがわかった。
これで、いい。彼が呆れようと何だろうと、これが自分の本心だ。
「何やそれ」
「そやから、俺は世の中に嫉妬しとることになるな」
「…壮大やね」
谷辺につられたのか、丘邑も笑う。その後、ふと気付いたように呟いた。
「そしたら、お前も自分自身に一番嫉妬せなあかんな」
「…何で?」
「…それくらい自分で考えろや」

それから数秒後、ようやく意味に気付いた谷辺の口付けを受ける丘邑の姿があった。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧  結局チューが好きな谷でありましたとさ
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )    
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

前々々スレあたりで投下させてもらった者です。
私の拙い文で「この二人に目覚めた!」と言ってくださった姐さん、マジで嬉しかったです。ありがとう。
これにて三部作wすべて投下し終わりました。
読んで下さった皆さま、ありがとうございました。


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