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野うさぎの檻

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  | 実在の団体とは何の関係もない擬人化フィクションやよ。老教師のオサーン×没落名家の青年(notエロ)
  | やきゅ総合スレ参照
 | ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/801/1146779328/925-927
 | いろいろ象徴させたワードが入ってますが、基本的には捏造バリバリです。
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    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                               | | |> PLAY.
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          ┌┬―(ゝ○_○)┐ ピッ    .| |
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 長年手がけてきた学校法人を跡継ぎの手に任せたとかで、この春からは県会議員をやっている郷里の
知人が私を訪ねてきたのは、梅雨明けも近い七月なかばの薄曇りの日だった。大時代なインバネスを小
粋に着こなし、こうもり傘を片手に、愛嬌のある眼鏡をちょいと押し上げるなじみの仕草で、この男が玄関
先に立っているのを見た時、私の心はいささか暗くなった。

 ちょうどその頃、私はにっちもさっちもいかなくなった家業の建て直しに追われ、打った手立ては悉くうま
くいかず、金策に心を痛めて、荒んだ生活を送っていた。都合まる二日は寝ておらず、カッと血走った赤い
目を、この昔なじみの教師に見られるのは何とも厭なものだった。
 アポイントメントの時点で断っておけばよかった、と思いつつ、私はつくり笑顔で彼を迎える。案の定彼
は、私の顔を見てわずかに表情を曇らせた。

「貴方のお父様が亡くなられて、もう四年になるのですね」

 そんな奇妙な事から、話を切り出したものだ。私はあいまいな調子で、ええ、と答えた。
「この数年というもの、おかげでバタバタし通しでした」

「確かにお忙しいようです。せっかく上京したついでだからと思ったのですが、ご迷惑でしたね」
「とんでもないですよ。先生、さ、お上がり下さい」

 私は三和土にかがんで、自分でスリッパを揃え、彼の脱いだ外套を受け取った。
 三人ばかりいた下男・女中の類は、かかりが馬鹿にならないので、去年の末に解雇している。家の格式
がどうのと文句を言っていた老母も、面倒を見かねて郊外の養老院にやってしまった。屋敷には、だから
私ひとりきりだ。
 彼は珍しいものを見るような、ちょっと哀しいような目で、昔なら決してする事のなかったような雑務をこ
なす私を見つめていた。下足室を暗く照らす百燭光が、ジジッと湿った音を立てて揺らいだ。

 洋間は、かつて応接室と呼ばれていた事もあった。亡父が手広く全国に事業を展開し、来客がひっきり
なしで、まだ家中が賑やかであった時代には。ユーゲント・シュティール様式のシャンデリアは、何度スイッ
チを入れ直しても電球の一つが点かなかった。
 私がいらいらしている間に、彼はホームバーのカウンターの前まで進んで、手土産のコニャックの壜をと
ん、と置いた。

「ここで、よく貴方のお父様とさしつさされつ飲(や)ったものですよ」

 そしてまた、懐かしげにちょっと微笑みかけるのだ。この笑いはひどく優しかった。お愛想でも上辺だけ
のものでもなく、ただ私を気遣い、しかも直截な同情の色がないから、私のプライドを傷つけさえしないも
のだった。

 このような表情は、長年ひとに ――― 悪童やちんぴら相手にさえ ――― 掛け値なしの慈愛をもって接
してきた者にしか、できるものではない。いつでも火熨斗のきれいにかかった、燕の尾のように裾の長い
ツイードの服を着て、教壇に立っていた几帳面そうな姿を、今でもまぶたの裏に思い浮かべる事ができ
る。古い時代の教師らしく手には短鞭を持っていたが、それを振るった事は一度もなかった。私は若き日
の彼の姿を思い出して、苦く笑い返した。

 つくり笑いはまたたく間にほどけ、後は偽るところも忌憚もない、笑いばかりになった。
 カウンセラーとしても食っていけたに違いない、この話術に長けた男の前で二杯、三杯と強い蒸留酒(ス
ピリッツ)をあおるうちに、張り詰められた虚勢と焦燥は薄れ、私はいつしか、ここ数ヶ月というものご縁の
なかった朗らかな表情で声をあげて笑ったり、心から故郷や昔なじみの友に思いを馳せたりしていた。ま
ったく悪夢のような現実を忘れた。

 忘れた ――― と意識している点において、実は忘れてなどいなかったのだが。

 それでも追憶と懐古には楽しさがあった。彼は驚くべき記憶力で、私と悪友がつるんでやった悪戯の
事、その悪友も今は立派な官吏になって、**省から出向して県庁でよく働いている事、その倅が親父譲
りの悪がきで、町道をすっ飛ばしてスピード違反であげられたのだが、隣に乗っていたマセた小娘が、ま
たクラスメートの誰それの長女で……などと話した。それが一々可笑しかった。

「女の子といえば、そうそう、君はえらくモテましたね。部活が終わって、校門を出て行くところで、いつも隣
町の女子高のお嬢さんがちらほらと…」
「そんな事ありましたっけ? ああ、懐かしいな。今はてんでいけませんよ、もう」

 思うにこの老教師の物語は、あの懐かしい、住み慣れた遠い故郷の精神性(エートス)と交叉しながら、
ひとつのメロディーのように途切れ目なく続いていて、それは私の耳に何とも心地よいのだった。あの頃は
よかった。あの町はよかった。豊かで、数え切れないほどの友達がいて、毎日が麗しく流れ、それが永遠
に続くと信じて疑わず ―――

「……そういえば、貴方の一番のお友達の、ほら関西生まれの、T……君はどうしましたっけ」

 不意に、こめかみがチリッと痛んだ。私は思わず顔を上げた。彼は言葉と同時に、ヒュミドールの中に葉
巻と一緒に眠っている、古い写真立てを目ざとく指さしていた。大学の入学記念に撮ったものだったはず
だ、二人で。

「ああ、あいつは………親父さんが亡くなって、大阪に帰ったはずですよ」
「そうそう、そうでした。何分むこうも不況ですから、一時期はずいぶんと苦労したようですが、今はだいぶ
盛り返したとか」
「ご存知なんですか?」
「いやなに、『便りがないのはよい知らせ』といいますからね、昔から」

 それでは、不義理にも故郷の町に長らく手紙一つ出さなかった私も、この教師の理論ではよい暮らしを
しているという事になるのだろうか。

 実際は、あまりに恥じる事が多く、町出身の名士の家として不面目の連続で、連絡などとうてい取る事が
できなかったのだ。

 ワンマン経営者だった父の急病、意識の戻らないままの死が、全ての失墜のはじまりだった。それはち
ょうど、事業の海外展開のため、過度の出血とも言えるほどの投資が行われた時期と一致しており、しか
も不景気の到来がそれに追い討ちをかけた。大学院で若き商業貴族を気取っていた私は、何もわからぬ
ままに百鬼夜行の商取引の世界に放りこまれた。後はお決まりの転落劇だ。あちこちの部門を縮小した
結果、見かけより体力のなかった会社が、それでも何とか命脈を保ったのは不幸中の幸いと言えるかもし
れない。

 しかし何より私を打ちのめしたのは、経営者としての自らの無力さ、さもなくば無為無策さだった。転機を
狙った投資は悉く裏目に出るか、同業者の妨害を受けた。財界の紳士として誰に恥じるところもない人格
者だと思っていた亡父が、実は何かと恨みをかっていたと知ったのもこの頃だった。恩義をあたえたと信
じてやまなかった連中が、まっさきに自分を裏切るか、影では嘲笑っていた。そして一番の親友だったあ
の男さえも。

「…気分がすぐれないようですね」

 知らず知らず、物思いにふけりこんで暗くなった私の顔の前に、冷たいミネラルウォーターをなみなみ注
いだビヤグラスがさしだされた。私は無言でそれを受け取り、一息にあおる。だが若さに任せて一気飲み
できる齢でもなかった。八分目くらいまで飲んだところで、激しくむせこみ、涙がドッと出た。

「ああ、大丈夫ですか? 大丈夫? ほら、しっかりして…」
「……ッ、すみません、先生」

 私は懐紙で口許をぬぐいながら、せめて嘔吐するようなみっともないところだけは見せずに済むようにと
願った。酔いがまわって頬が熱く、目蓋も熱い。背中に温かな手が触れる。

 なだめるように優しい触れ方だった。もっと残酷な目的で伸べられる手を、すでに他で知ってしまってい
たから、思わず縋りつきたいような衝動にかられた。事実、彼はいつの間にか私に並んだ姿勢で長椅子
に腰掛け、雛鳥を翼でつつむ母鳥のように、双腕で私を抱き寄せていた。さほど大柄でもないはずの、老
年にさしかかった男の腕が、何と広く力強く思えた事か。

「飲ませすぎたようですね。もうちょっとピッチを考えればよかった。すみません」
「そんな事は……」

 言いかけて、また胸が詰まる。優しい手が、再び背中をよぎった。囁く、慈父のような声。
「いいから」

 私は力を抜いて、上体を彼の両手に凭せかけていた。ずっと先に、子供の頃そうしたように。あの頃の
頑是ない清澄さには、今やどうしたって戻れっこないのだけれど。
 どのくらいそうしていた事だろう?

「――― あの音……」
「え?」

 呟くような声に、私は顔を上げた。そろそろ涙が乾いていてくれるとよいのだが。

「ほら、窓の外から聞こえてきませんか」

 私は黙って耳を澄ませた。いつの間にか雲は晴れ、澄みきった夏の夕空には、白々とまるい月が出て
いるのだった。優しい涼風は、庭師を入れなくなって久しい荒れ果てた私の庭を通って、軒先の風鈴を鳴
らし、遠くさわさわと松籟を運びながら、この沈鬱な仄暗い洋間にも吹きこんできていた。

 その遥か遠方から、また別の音がする。細くかそけく、古めかしい召し太鼓のような、ドーン、ドーンと響
く音。ほどなくビル街のぎさぎさでできた地平線の彼方に、白煙と金色の火の粉がパッとあがった。

「花火ですね……。これはまた気の早い」
「そういえば、隣町の青年団が、河川敷で今夜やるとか言っていたような…」

 自分で言うまで忘れていた事だった。この手の火薬細工に興味を示すどころか、顧みもしないようになっ
てどのくらい経つのだろう。季節はずれの花火は、きらめくように美しく、しかし、もどかしいくらい遠かった。

「遠すぎる…」

 思わず私が呟くと、彼はおおどかな表情のまま、こちらを振り返った。
「うちの町でも、お盆の頃にはやりますよ。覚えているでしょう」

「ええ、もちろん覚えていますよ。先生がはじめたやつですね」

 そうした田舎町には似つかわしくないビッグイベントを、八方に働きかけて実現したのも、この子供好き
の教育者だった。

「あの時は、実はあなたのお父様が多額の援助をして下さいましてね」
「へえ、親父が?」
「そうですよ。出す時ゃパーッと豪儀に出すお方でした。もっとも後々かなり恩に着せられましたが……」
「はは、あの人らしい……かな」

 再び、ドーンと撃ちあがる音。今度は少し近くなった気がした。“気がした”だけだけれど。
 私はあの遠い夏の彩りの中に、ゆっくりと記憶を巡らしていたかった。それは戻れない時間への感傷で
あり、懐古に過ぎないが、あながち無意味でもないように思われた。
 過去が変わらずそこにあるように、未来だってそれなりにあるだろう。太陽とまではいかないが、月あか
りは明々と行く手を照らしている。

「いつでも帰ってこられるのですからね。この夏はきっと、花火を観に戻っておいでなさい」

 そう言って微笑んだ、彼の顔はやはり齢相応にしわ深かった。時の流れを思わせるように。

 ああ、この夏はきっと、あの町に帰るだろう。その前にもう少し、もう少しだけ戦っておかねばならない。
 思うに、悪夢のように見えても、希望はやはり、その戦いの中に芽生えるものなのだから。

  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | 薬√が勝ってたら地上波でお見せできないレイープシーンに続く予定だった
 | つか実際書いたがチィムが力及ばず癒し系EDに分岐した
 | 今は反省しているorz
  \                           | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    エロサクジョ   | | □ STOP.
                ∧_∧         | |
          ┌┬―(ゝ○_○)┐ ピッ    .| |
          | |,,  (    つ◇       | |
          | ||―(_ ┐┐―||        |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |
          | ||   (__)_), ||       |  °°   ∞   ≡ ≡   |

(`・ω・´) つ【連敗阻止おめでとう】


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