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野球 戦力外通告×元ピッチャー

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ナマモノ里予王求 戦力外通告×元ピッチャー

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あいつは、いつも笑っていた。

「忘れ物は、ない?」

「ないっす」

久々に来た寮。
明日は我が身と遠巻きに見ている後輩を尻目に、やっぱり笑っているあいつ。
僕の方が泣きそうだというのに。

「……まだ、時間はあるよね」

「ありますけど?」

「ちょっと、ゆっくり話そうか」

荷物だけ部屋から出し、後輩に玄関まで運ぶよう指示した。

がらんとした部屋。
あの頃を思い出す。

『初めまして!同じピッチャーですんで、仲良くしてくださいね!』

まだあどけない顔をしていた、チームのリリーフエース。
年下なのに、プロとしての自信に満ちあふれていた。

『お立ち台、緊張しましたねー!』

2人で立った、ヒーローインタビュー。
観客の声援を一身に集める快感。

『野手になったら、俺のバックアップよろしくっす!』

野手へのコンバート。
自分だって調子が悪いのに、いつだって励ましてくれた。

そして。

『俺、戦力外になっちゃいました…』

どの場面でも、笑顔しか浮かばなかった。

「これから、どうするの?」

「とりあえず、自分の時間がほしいっすね。その後、ゆっくり考えます」

「……そう」

今なら、誰も見ていない。
もう会えないかもしれないんだから。

「タカさん?」

「何でお前は笑ってられるんだよ…」

いきなり、力強く抱き締められたもんだから、そりゃ驚くよ。
きっと、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてるに違いない。

「何で辛いのに笑えるんだ…?」

「……タカさんに、笑っててほしいから」

プクプクとした手。
僕の頭を撫でるその手は、掌だけがちょっと硬かった。

「泣かないでくださいよ…俺だって、泣きたくなるから…」

「じゃあ泣けよ!悔しいんだろ!?辞めたくないんだろ!?」

「……」

重苦しい、痛い程の沈黙。
傍から見れば、大の大人が何をやってるんだと言われるだろう。

「今、1番辛いのは……1番泣きたいのは、ジョーだろう…?」

「……はい」

嗚咽が号泣に変わるまで、刹那もなかった。
枯れるまで、泣いた。

「タカさん、レギュラーになって、ベストナインとかゴールデングラブとか取ってくださいね!」

「ジョーも、今後のことが決まったら連絡しろよ?」

いつまでも手を振るあいつ。
その顔は、やっぱり笑顔だった。

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□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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