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芸人 フォークダンスDE成子坂

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・;)1年前ニ書イタノガ出テキタノデ、投下サセテクダサイ

あの手を離したのは、俺の意思。
あの居心地のいい場所を失ったのは、俺のせい。

忙しい日々が続いている中、ポッカリとできた休みだった。
急な休みの理由は、聞いたけれど、どうでもいいので忘れた。
どうせ、誰かのワガママのおかげだろう。
溜まった洗濯物を、片っ端から洗濯機に放り込んで、お日様の下に干して。
部屋の隅から隅まで、掃除機かけて。拭き掃除までして。
洗濯物を揺らした風が、窓からそのまま飛び込んできて、ピカピカの部屋に、
五月の空気を送り込んでくる。
ソファの上で寝転がりながら、俺はぼんやりとそれを見ていた。
「あかん…やること無くなってしまった…」
呟くと、余計に、自分の状況が寂しくなってしまった。
休みの日に一人。誘う友達や恋人なんて、パッと思い当たらない。
せめて惰眠でもむさぼろうか、と思って、目を閉じても、眠りはやって来ない。
なら、腹筋でもやって体を鍛えようか、と考えるが、体は動かない。
自然と、目が棚の上に置いてあったトロフィーに目が行った。すぐそらした。
あのトロフィー、貰ってから何年になるんかな。
記憶をたどりかけて、止めた。
掃除中に磨いたので、まだ輝いてはいるけれど、少し色あせてきている。
多分テレビ見ている人の大半は、賞をもらった自分達のことなんて、忘れて
しまっただろう。

携帯電話をいじった。
メールの最終ページを開くと、あの時のメールが残っていた。保護マーク付き。
俺、どんだけ暗いんやろ。
自嘲しながら開くと、あの時のメールが残っていた。

『お前は天才や。一人でもやれる。頑張れよ』

あの時。あいつに解散を持ちかけられた時。
嫌だった。
一緒に東京出てきて、天下とったるって言って、最近仲悪いけれど、お互いは
お互いのことを一番に分かっている仲だと思っていた。
でも、アイツは違っていた。
傷ついた自分を、認めるのが嫌で、俺は解散に同意した。
その夜入ってきた、アイツからのマヌケなメールを見て、俺は声を出して泣いた。
何が天才だ。そんなこと、微塵も思ってないくせに。
お前と一緒だから、俺、頑張ってたんじゃないのか。
もう、そんな思いをぶつけるには、遅かった。俺は、『頑張るわ』と短く返事して、
アイツの携帯のデータ、全て消してやった。
あれからもう7年だ。
この携帯も傷だらけで、そろそろ寿命が来ているのが分かる。

「…携帯、もう変えようかな…」
つぶやいた自分の声が、嫌に空虚に思えて、ちょっと涙が出てきた。
7年間、何度も同じことを考えては、結局壊れるまではいいや、と自分を騙す
自分が、嫌だった。
自分の気持ちに、気づいてしまったから。

解散の時、俺が傷ついたのは、解散を持ち出されたからじゃない。
アイツが、ギターを抱えていたからだ。
俺は、ギターを見ながら、他人事のように、「あぁ、もうお前が抱きたいのは、
俺じゃなくて、ギターなんだな」って思っていた。
そして、そのことに傷ついている自分を、嫌悪した。
相方だったら、隣に立つだけでいいじゃないか。
友達だったら、場所なんてどれでもいいじゃないか。
俺は、何を期待してたんだ。

「変態や」
クッションに、顔をうずめて、つぶやいた言葉を飲み込んでもらった。
5月の爽やかな風が、部屋にふきこんできたのに。
俺は、梅雨が早く来たらいいのに、と思っていた。
じめじめした雨の方が、こんな気分にならずに済むような気がする。
梅雨が明けたら、8年目の夏が来るけれど。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・;)イジョウ、ジサクジエンデシタ! オメヨゴシスマソ


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