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動物のお医者さん

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                    | だいぶ前にドラマ化もされた今も大人気の脱力系獣医漫画
                   |「動/物/のお/医/者さ/ん」の妄想ssだモナ 
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 表向き 公×ニ前提だけどイチャコラ要素皆無です
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 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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さ、寝よう。
そう思って布団に潜り込んだまさにその瞬間、玄関のチャイムが鳴った―――ような気がした。
冷えた布団に包まれた四肢をいまさら動かしたくはないのだが、もし来客なら出ざるを得ないだろう。
とはいえ、今は―――
壁に掛かった時計を見上げた公テルの目に、数字の11を指している短針が映った。
長針のほうは数字の5を指している。つまるところ、今現在の時刻は11時25分。
来客にはいささか非常識な時間帯だ。

公テルは首をめぐらせ、隣で寝ていた千ョビの頭をゆっくりと撫でた。
「誰か来たかな」
一瞬きょとんとした表情を浮かべた後、千ョビは小首をかしげて玄関の方向に目を向けた。
「チャイム聞こえた?」
次いで尋ねられた質問に対し、千ョビが答えようとした直前に再びチャイムが鳴った。
今度ははっきりと聞こえた。
黙って見つめ返す公テルに向かって、千ョビは【聞こえた】と尻尾を振った。
どうやら出ざるを得ないようだ。公テルはしぶしぶながらゆっくりと布団から這い出て、
長い廊下を渡りながら玄関へ向かった。
こんな夜中に裸足で踏む廊下の床は冷たく、一歩一歩に嫌気が差す。

ようやくたどり着いた玄関の扉を開けてみれば、そこに立っていたのはお馴染みの人物だった。
正直言って二度目のチャイムの辺りで来客の正体はうすうす感づいていたのだが、
やっぱり予想通りであった。公テルの後ろについて歩いてきていた千ョビが尻尾を振って、来客を出迎えた。
真っ赤に染まった頬と潤んだ目をして震えていたニ階堂を無表情のまま見つめ返し、
公テルは来客を中に迎え入れるべく道をあけてやった。

「ご、ごめんな。こんな夜中に」
「いや、それは別にいいけど……どうしたんだ」
神妙な面持ちで靴を脱ぐニ階堂にそう尋ねると、ニ階堂はウッと言葉を詰まらせた。
何か言いたくないような事情でもあるのだろうか。
見る間にわなわなと震えだして顔色を白くしたニ階堂を黙って見つめていると、
やがてニ階堂が消え入るような声で呟いた。

「で、出たんだ、アレが」
言うなり、その"アレ"とやらの姿が脳裏によぎったのか、ニ階堂はわっと両手で顔を覆った。
「……アレか」
「こっ、この季節になればもう縁はないと思っていたのに……!」
「……ニ階堂、アレはあったかい時期よりむしろ寒い時期のほうが多いんだぞ。
凍えたのが皆家の中に逃げ込んでくるから」
ニ階堂の青い顔がよりいっそう青くなるのを間近で眺めながら、公テルは冷えた腕を擦った。
「とりあえず、上がれよ。寒いから」
「ウ、ウン。ごめんな、いきなり……迷惑だったろ」
コートを着込んでしっかり厚着のニ階堂と比べて、公テルはパジャマだけである。
冷えた廊下を踏む足が冷たい。すぐ横に並んでついてくる千ョビの頭を撫でながら、公テルは頷いた。
「ちょっとね」

公テルの言葉に素直に落ち込むニ階堂を自分の部屋に通して、公テルは布団の上に座った。
どうやら遠慮しているらしいニ階堂はコートを壁にかけた後、部屋の隅のほうに
ちょこんと正座して事の顛末を話し始めた。わなわなと細かく震えながら。

「……ちょっとジュース飲んでから、寝ようと思ったんだよ。そ、それで台所に
行ったら……ア、アレがさ、三角コーナーに立ってて、目が合ったんだ。
そしたらカサコソって、カサコソって四方八方からカサコソって音が……!
オレを取り囲むようにカサコソと……うわああっ」

顔を両手で覆って蒼白になるニ階堂の隣に座って、千ョビは慰めるようにニ階堂の手を舐めた。

「四方八方の物音は幻聴だろう」
「違う!確かにこの耳で聞いたんだ。ア、アレが大挙して押し寄せる音を……
あいつが仲間を呼び寄せたに違いないんだ。そ、それでオレを襲おうと……」
公テルはため息をついてニ階堂の青い顔を見つめた。
「ほとぼりが冷めたら帰るから。アレが寝静まった頃に……」
「何時ごろ?」
「え……えっと……あと1時間ぐらいしたら……」
公テルは時計を見上げて、ため息をついた。よほど混乱しているらしい。
それとも、憎むべき対象のことなど何も知っていたくないからだろうか。
それにしても獣医師の卵としてそれは……

「……ニ階堂。ネズミは夜行性だ」
静かに告げられた公テルの言葉に、ニ階堂はいたく衝撃を受けたようだった。
握り締めた拳を膝の上に乗せ、わなわなと震えているニ階堂の顔を千ョビが心配そうに覗き込んでいる。
目を潤ませて顔を上げたニ階堂の次なる懇願を予測して、公テルは立ち上がった。
「じゃあ、今もう一組布団出すから。埃臭くても文句言うなよ」
「す、すまん……迷惑かけて」
恐縮して頭を垂れながら、ニ階堂はほっと胸をなでおろした。
とりあえずは、"アレ"が潜むあの家から避難できる。

目を潤ませて感謝するニ階堂をよそに、公テルはもくもくと布団を敷いた。
「ニ階堂、セーターはともかく、ジーンズじゃ寝苦しくないか」
「え?いや、大丈夫。あ……でも、布団が擦り切れちゃうかな」
公テルに敷いてもらった布団の上に座って、ニ階堂は自分の脚を見下ろした。
ところどころ色落ちしたジーンズの生地は硬く、自分の布団ならともかく人様の布団で寝るのは気が引けた。
「いいよ別に。古い布団だし」
「じゃあ、オレパンツで寝る」
「風邪引くよ。オレのパジャマ貸すから」
ジーンズを脱いで下着姿になったニ階堂に呆れ、公テルは自分のほかのパジャマを取りに箪笥へ向かった。

確かにこの季節にその格好は無謀だった。案の定脚をすり合わせて震えだしたニ階堂は
神妙な面持ちで貸してもらったパジャマを身につけ、布団に入った。
「す、すまん……何から何まで」
「いいよ」
【今日泊まるの?】黒い鼻をひくひくさせてニ階堂の顔を覗き込む千ョビを撫でながら、
ニ階堂は不甲斐ない自分を反省してため息をついた。

「……どうしてオレってこうなんだろうな……自分が情けないよ」
「……まあ、誰にだって一つや二つ苦手なものがある」
「普通の人ならそれでいいだろうけど、オレは獣医学生だぞ。いずれは獣医になるのに……
アレが触れないんじゃ……」
暗い面持ちで天井を見つめるニ階堂をちらりと見て、公テルはしばし黙り込んだ後、口を開いた。
「……まあ、人には向き不向きがある」
―――だからげっ歯類はオレが担当しよう。
そう心中で続けた公テルをよそに、ニ階堂は青い顔をして公テルのほうに目を向けた。
ニ階堂の潤んだ瞳が物言いたげに自分を見つめているのに公テルは気づいたが、
あえて気づかないふりをしようと決めた。
すがるようにこちらを見つめるニ階堂には悪いが、正直言って、とても眠い。
どうしても気になる用事があるのなら、その都度あちらから言ってくるだろう。
公テルは睡魔に身をまかせるまま目を閉じた。
寝返りを打ちながら、「ニ階堂、電気頼む」と言い添えて。

一方で、ニ階堂は一人心中穏やかでなかった。
公テルが寝る間際に放った「人には向き不向きがある」という言葉。
それが意味するところは、つまり。

「……オレには、獣医は向いてないって事か……」
両隣の公テル、千ョビの穏やかな寝息が、むしろニ階堂の不安をかきたてた。

確かに、ニ階堂の度を越したネズミ嫌いによって何かしら騒動を起こし、
周囲に迷惑をかけることが今までにも何度かあった。
中でも公テルにはその傾向が強いだろう。
付き合いが長く、行動をともにする時間も長い公テルに、何度面倒をかけたことか。
今現在だってそうだ。
ただでさえ公テルには、それ以外のことでも色々世話になっているのに……。

ニ階堂は公テルの部屋の色褪せた天井をじっと見つめた。
恐らく公テルにかけた面倒の数を数えるより、この天井のシミの数を数えるほうが
はるかに早く、楽な作業に違いない。
―――――「人には向き不向きがある」―――――
ついに、公テルに愛想をつかされた。
天井を見つめながら悶々と考え込んでいたニ階堂は、いてもたってもいられず布団から飛び起きた。

向かう先は決まっている。
先ほどから公テルの部屋の隅に置かれていたけれど、気付かないふり、見ないふりをしていたものだ。
いくら目を背けても、鼓膜にじわじわと忍び入ってくるおぞましい物音からは逃れられなかったけれど。
公テルに気づかれないように、ニ階堂は足音を忍ばせてそっと公テルをまたいだ。
部屋の隅にひっそりと置かれた不気味な水槽。
ふらつく両足をなんとか踏みしめ、意を決して目の前の水槽を覗き込んだニ階堂は、
危うく卒倒する所を何とか踏みとどまった。

うじゃうじゃとのんびりした様子で水槽の中をひしめき合う砂ネズミの大群を、
平常心で見つめる事などニ階堂には到底無理な芸当だった。
(―――目が!目が壊れる~~~っ!)
両眼に叩き込まれた衝撃的な映像に蝕まれ、ニ階堂は身をよじらせて声にならない悲鳴を上げた。
(無理だ!オレには無理だ!絶対に無理だ~~~っ!)

目を覆った両手の指の隙間から、再び水槽の中身をちらと覗き見る。
―――無理だ。
目にするだけでもおぞましいこの生き物に触れるなんて。
同じ空間に存在するだけで失神しそうになるこの生き物を……
鳥肌が浮き上がった腕をさすり、ニ階堂は首を振った。
諦めるしかない。公テルに迷惑はかけられない―――

振り返れば、そこには穏やかな顔で眠る友の寝顔。
いつだって一緒だった―――気づけば同じ学び舎へ進み、同じ道を目指し、
共に様々な困難と戦ってきた―――主に漆腹教授という敵と。
こんなに簡単に諦めていいのか?
実際に挑戦してもみないで、長い間一緒に頑張ってきた仲間を裏切るのか?
ニ階堂はもう一度、水槽の中を覗き込んでみた。
そして、もう一度後ろで眠る公テルを振り返る。
ニ階堂の潤んだ双眸が、さらなる決意に燃えて力強くきらめいた。

頑張るからな、公テル。オレ、頑張るから―――!

絹を裂くような悲鳴に飛び起きた公テルが見たのは、倒れた水槽から次々に飛び出していく
砂ネズミの大群と、そのそばで泡を吹いて倒れるニ階堂の姿だった。
起き抜けに目にした理解しがたい光景にしばし呆然と逃げ行く砂ネズミを見守ったが、
階下で有能なハンターが眠っている事を思い出して布団から這い出た。
三ケが事態に感づく前に何とかしないと。
びっくりして固まっている千ョビを促して、公テルは逃げた砂ネズミを回収するべく部屋を出て行った。

後日猛省しながら事の次第を説明するニ階堂の誤解に公テルは気づいたが、
「げっ歯類はオレが担当しようと思って言った言葉だったんだ。オレがお前を見捨てる筈がないだろう。
人には向き不向きがあるから、お互いに補い合って頑張っていこう」

―――と、いつか機会があれば言ってやろうと思った。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ いつか二人のイチャベタss書いてみたいと目論んでるが
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) この二人のイチャベタはどうしても思い浮かばんのです…
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

  • 原作そのままみたい。萌えた! -- 2013-02-09 (土) 19:04:12

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