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ギャルサー カウボーイ×おまわり

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ギャノレのサークノレの力ウボーイ×おまわし│

「腹が減って……力が出ない……」
俺はどこぞの顔がパンで出来ているヒーローのような台詞を呟いた。
その呟きに呼応するように、腹がぐるると唸る。
「くそう」
ベッドから起きる気力も湧かない。狭い部屋の低いはずの天井も、やけに高く見える。
だが出勤しなければ、となんとか自分を奮い立たせて、俺は起き上がろうと試みた。
俺だって市民のヒーローだぞ。流石に顔がパンで出来てやしないけれども。
顔が……パンで……。
ヤバイ、思い浮かべてしまった。そこでまた腹がうるさくわめきたてる。
もし俺の顔がパンで出来ていたなら、いますぐ俺は自分の顔をちぎってためらいなく食べるだろう。
不毛な妄想を追い払おうと頭を振っていると、
寝起きに見るのはちょっと悲しい、野郎の顔が視界に飛び込んできた。
彼はにっこりと笑うと、図々しくもこう言った。
「おはよう、おまわし│。朝ごはんはまだか?」
そんなん俺が訊きたいよ。
目の前の能天気な力ウボーイに、せっかく振り絞った力が抜ける。
ああ、同居しているのが妙ちきりんな男でなくて、可愛い女の子であったなら。
きっと朝ごはんを用意してくれて、帰ってきたら夕ごはんも出来ていて、
ごはんを食べる? それとも私を食べる? なんて言ってくれたりして……。
あ、泣きたくなってきた。

「どうした? おまわし│。元気がない。貧乏のせいか? 気にするな。貧乏でも、お前、いいヤツ」
見当違いのことを勝手に決め付けて勝手に納得して勝手に慰める彼に、怒鳴って反論する気力も、もはやない。
この力ウボーイと小さな女の子を、なんの因果かうちに泊め続けることになって早数週間。
今までだってそれほど満たされた食生活を送っていたわけではないが、あのころは現状より遥かにましだった。
まさか三食カップラーメン生活が恋しくなる日が来るとは思いもよらなかったぞ。
こちとらお前達のせいでなあ、ここのところまともな食事にありつけてないんだよ!
一人分を三人で分け合って食べている。足りるわけがない。
成人男子が二人に育ち盛りの少女一人だぞ、無理に決まってる!
彼らは獲物を捕えて喰う気満々らしいが、都会のど真ん中でどんな獣がかかるというんだ。
逃げ出したペットか、うかつな人間くらいのものだろう。そして、そのどちらも食べてはいけない。
よって、実質俺一人が、三人の食い扶持を必死に負担しているというわけだ。
あ、本気で泣けそう。
「何か喰いたい……」
我ながら情けない声が出る。
力ウボーイが顔色を変えるくらいだから、よっぽど情けない声なんだ。
彼はなにやら真剣な顔で少女を振り返り、「外に出ていろ」と言った。
イソディアンの少女は素直に頷いて、ぱたぱたと小さな足音を響かせて出て行った。
それを見届けてから、力ウボーイは俺に視線を据えた。
「おまわし│……」
「な、なにっ?」
声が上ずってしまう。何か、彼を怒らすようなまずいことでも言っただろうか?
考えてみるがさっぱりわからない。
しかし、俺には理解不能な文化の中で生きてきたらしい彼は、変なポリシーがあったりするから、
もしかしてそういうのにひっかかったのかもしれない。
薄着の背を、だらだらと汗が流れていく。

よく見れば整った顔立ちをしている彼が、口を開いた。
「喰いたいのか」
ハラショー彼と会話がまともに成立したよおかーさーん!
彼は怖いくらい真っ直ぐな眼差しで、俺に確認した。
「おまわし│、お前、喰いたいのか」
オレは高速で頷いた。
わかってくれてありがとう、などとしなくてもいいはずの感謝すらしてしまう。
この非常識の塊が、やっと俺の腹事情を理解してくれた。
しかし、安心するのは早かったのだ。ずれた男はどこまでもずれていたのだ。
ハゲ親父のカツラなんか目じゃないくらいずれているこの男は、
次の瞬間、俺の肩をがっとつかんで――――
気づけば俺は、せっかく起き上がったはずのベッドに逆戻りしていた。
目を白黒させるしかない俺に圧し掛かって、力ウボーイは言う。
「お前が喰いたいなら、仕方ナイ。オレ、お前に、恩がある。こういうときは、身体で返すのが常識だと聞いた」
お前それ誰に聞いたんだ。またあのギャル連中か。
力ウボーイは大真面目に続ける。
「おまわし│、オレのこと、喰え」
喰えったってなぁ、お前、この状態だと俺が喰われる側だぞ……って違う! 問題はそこじゃなくて!
オレを食べろと、自分を差し出すヒーロー。
だが俺が食べたかったのはパンだ。決して人間じゃない。
ごはんを食べる、それとも私を食べる? なんて妄想もしたが、それだって相手は女の子で、決して男じゃない。
固まったままの俺を急かすように、腹が派手な音で鳴る。
俺の上に乗っかった力ウボーイの顔が近づいてくる。
出勤時間まで、あと37分。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )おまわし│頑張れ


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