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アカギ

「わしもヤキが回ったか…」

市川は夜空を見上げて呟く。
その目は見えなくても、まるで月を愛でているかのようにも見える。
「…まさか、13歳にわしの理論が崩れるとはな…だが、あの少年には何人とたりとも、手が届かぬだろう…わしも潔く…引退するか…」
そう漏らす市川の表情は、決して悲観的なものではなく、むしろ、どこか満足ささえ感じさせるようだった。
…いつか敗北を味わわねばならないなら、あの少年、赤木しげるが相手でよかったと、思っているのかも知れない。

「……この家には金目のものなどないぞ」
市川は、目線を庭先に向けつつ、突然言った。
「……」
返事はない…だが、視力を失っている市川は、常人よりも気配を察する能力に優れている。そこには間違いなく、何者かが潜んでいるのだろう。
「…様子を窺っているようだが、生憎わしは目が見えん。いつまでそうして居たいのか知らんが、隠れていても仕方あるまい…」
市川は見えない影に向かって、静かに続ける。
賊が相手では何も出来ない市川は、抵抗せず静かにしているのが最善の策だと知っていた。

「…無用心だな、市川のじーさん」
闇から響いて来たのは、まだ若い少年の声。思いも寄らない、人物の声だった。
「……赤木くんか?」
冷静な市川も、さすがに微かに動揺を感じさせる声でその名を呼ぶ。
「…ま、これだけ簡単に忍びこめるんだ。ここには本当に何にもねぇんだろうな…」
じゃりじゃりと、敷石を踏み締める音と共に、声が近づく。
「わしはあまり、金銭には執着しないらしく…手元にはなにも置かなくてな…」
小さく笑いながら、市川が呟く。
「…俺と同じだな…」
手を伸ばせば、触れるくらいに、しげるの声が近寄った。
「…ところで赤木くん。どうしてここへ?…わざわざ、嘲笑いにでも来てくれたのかな」
市川は微笑みながら、しげるがいるであろう辺りを見上げる。
「口の減らないじーさんだな…俺がわざわざそんなコトしにくるかよ。
…というか、アンタを笑う気なんてない。どっちが勝っても負けても、おかしくなかったのを…俺は思ってるからな」
ごそごそと何か擦る音がして、木が軋む音が続き、そして畳を踏み締める音に変わった。

「…だが、負けたのはわしだ」
「でも、アンタは俺が知るヤツの中では、やっぱり特別なんだよ。…だからここに来たんだ、もう少し知りたい、アンタのことを…(ぎゅ」
背後から降りかかるよう声とともに、細い腕が市川の身体に巻きつけられた。
「…赤木くんに、見えているとおりのジジイさ…」
身じろぎせず、静かに市川は口元を歪めて笑う。
「だが…それでもよいというのなら、お付き合い願おうか…」
市川は呟きながら手を伸ばし、指先に触れた艶やかな冷たい頬をそっと撫でた。

「どこかきついところはないか…?」
綺麗に浮き出ている鎖骨に歯を立てながら、市川が尋ねた。
「…ぁ…っ…ねぇ‥よ…」
しげるは市川にきつく抱きつきながら、小さく応じる。
「それならもう少し…挿れても大丈夫か…」
市川は呟くと、しげるの体内に細く長い指をさらに差し入れる。
「…!!!っあ…ぁ…ぅ…!!」
大きくなる異物感に、しげるの身体が大きく仰け反る…呼吸することさえ辛そうに見える。
ニヤリと笑う市川の手は絶え間なく動き、しげるを翻弄し続けていた。
「…ぁ…っ…ぁ…いちか…ぁ…んっ…(どさっ」
何かに耐えるように震えていたしげるだったが、とうとう自力では立っていられなくなり膝から崩れ落ちた。
「ふふ、いくら口ではそう言っていても、そろそろ辛いかな…楽にしてやろんこともないが…お願いできるかね…?」
「…ざけたコト…いうな…っ…クソじじ…いっ」
しげるの口調は強気だが、その表情は苦しそうに歪んでいる。
「ふふ、その態度、わしは好きだな」
それでこそ赤木くんらしい…と言いながら、市川はしげるの艶やかな身体を月明かりの下の晒す。
「…はぁっ…はぁっ…」
一糸纏わぬ身体を畳の上に横たえたしげるは、荒い呼吸を整えようと喘ぐ。
「まさかわしが光を失ったことを…今更悔いるとはな…」
市川はゆっくりとしげるの身体を抱きしめて、その耳元で囁く。
「…かんけ…ねぇだろ…そんな…コト…みえなくても…さ…」
しげるは顔を覆っていた腕をゆるりと伸ばし、市川の背中にそっと回した。
「…ふふ、それもそうかもしれんな…」
しげるの言葉に微笑んだ市川は、その細い身体にゆっくりと自分を重ねていくのだった。

改行とかけっこうおかしくなって見難いかも…スマソ。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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