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下町

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  モララーのビデオを見るモナ‥‥。
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  詳しくないので設定には自信ないよ
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 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
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シャボン玉とんだ 屋根までとんだ 屋根までとんで…

「や…めえや」
松元が戯れに呟いた童謡を濱田のかすれた声が邪魔をした。
白い壁、白い布に囲まれた部屋は微かに消毒液の匂いが漂う。こじんまりとした病室。
濱田はかりてきた猫のように静かにベッドに横になっている。
その傍らには無表情な松元の姿があった。居心地が悪そうに椅子に腰掛けている。
連日の激務が祟って、とうとう相方の身体はパンクしてしまった。
生放送の最中、濱田は声を発することが出来なくなった。自分を振り向く濱田の顔がスローモーションで困惑に歪む。
松元はそのことを思い出して、背中に冷たい汗が伝うのを感じた。
「縁起の…悪い唄。うたうか?……この状況で」
濱田は困ったように息を漏らすと、突然フラリと病室を訪れた相方を仰いだ。
昼間の穏やかな日差しが降り注ぎ、どこかで子供の笑う声が聞こえてくる。
明日には手術が控えている。そんな午後。
自分のいない生放送をこの男はひとりで頑張っていると後輩から聞いた。
どれだけの迷惑をかけているか…そんなことを思い、濱田は奥歯を強く噛んだ。
なあ……。
言いかけて、その言葉を飲み込む。

「明日か」
松元はボソリと言うと、窓のほうを向いた。
「ああ」
「いつ頃?」
「…多分、夕方くらい…ちゃうかな」
「……まあ…」
頑張り。
呟くように小さな息で言うと、松元は一瞬だけ濱田をみつめ、すぐにまた視線を窓に戻した。
「ああ」
何故か胸が詰まるような心地がして、濱田は頷くしか出来なかった。
松元は明らかに疲弊していた。まるでここ2、3日で何歳も年をとってしまったかのような錯覚を覚えた。
「成功…せんかったら……一生、この声や」
後ろめたさは焦りに姿を変え、濱田はめずらしく弱音をこぼした。
松元は聞いているのか、いないのか。風に揺れる緑の木の葉を見つめたまま、振り向こうとしない。

松元…。
胸のなかで濱田は呼びかける。何故かこちらを向いて欲しかった。
しばらくたって、ふいに松元は振り向いた。大きな二つの目玉が自分を見つめていた。
「なあ…」
感情に突き動かされるように、濱田は口を開いた。
「もし……もし、このまま俺の声が出えへんくなっても…」
俺の相方で、いてくれるか?
言いかけた言葉を盗むように、温かい感触が濱田の唇を掠めていった。
数秒遅れて、さっきのは、松元の唇だったと濱田は気づいた。
不思議と、気持ち悪いという印象はなかった。ただ呆然としていた。
「なんの…真似や」
濱田は先ほどと同じように、顔を窓辺に向けてしまった相方の後頭部に向かって呟いた。
しわがれた自分の声も動揺したように上ずっていた。
「…まじないやん」
「…何を言うとん」
「白雪姫、知らんのか」
「……アホか」
コンビの悲しい性で、松元の言葉の意味を瞬時に理解した濱田は、呆れたように、照れくさそうに吐き捨てた。
俺はお姫さんかい。
しばらくぶりに、濱田は笑ったような気がした。

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