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ラルアル

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                    |  悪魔土成ドラキュラ ラルフ×アルカード9回目だよ
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  ラルフ自覚編・後編ですyo
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 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ >>389->>398ノツヅキデスゴルァ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
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              ◆

 その晩、ラルフは荒れた。
 普段はほとんど足をむけない遠い街まで行き、最初に目についた酒場に入って、エールとワインを浴びるほど
に呑んだ。あまりの勢いに、店の者が「そろそろやめたほうが」と口出ししてくると、怒鳴りつけて店を出て、
別の店に入ってまた呑み続けた。
 呑めば呑むほど、酔いの霧がかかってくる頭の中に、アルカードの顔だけがはっきりと思い出されてきた。夢の中
でしなやかに弧を描いた白い肢体、涙を浮かべて哀願する瞳、そして昼間の、まるで殴られたように手を胸に当
てて凍りついていた顔。
 ──魔王ドラキュラの子、闇の血を継いだ、実の息子。
 ──ご自分の意志のみで行動できる時期はもはや過ぎ去りました。
 ──ベルモンド家全体と、それによって生活しているすべての生命がかかっている……
「くそっ」
 酒臭い息とともに吐き出して、もう一杯、と手をあげようとしたとき、派手なドレスを着た女がするりと向か
いの席に腰をおろしてきた。
「どうしたの、旦那。ずいぶんご機嫌ななめみたいじゃない。どう、あたしがご機嫌よくしてあげましょう
か?」
 あっちへ行け、と怒鳴りかけて、ふと目がとまった。

 女の髪は、おそらく脱色したものなのだろうが、うす暗い酒場の灯りでごく淡い金色に照り映えていた。アルカー
ドの、月光のような銀の髪にはとてもかなわなかったが、波打つ淡い髪の色は酒精に酔いしれたラルフの、どこか
深いところを刺激した。
「決まりみたいね」
 客の微妙な変化をすばやく読んで、女は意気揚々と言った。
「それじゃ、とりあえず半銀貨。泊まりなら、銀一枚ってことになるけど」
 ラルフは黙ってコインを滑らせた。女は慣れた手つきで金をドレスの開いた胸もとにしまいこむと、立ちあが
って、来て、と手招きした。
「二階に部屋があるの。今夜はあんたが最初だから、ゆっくりしてってちょうだい」

 女を抱くことは、これまでラルフの日常ではあまり優先順位の高くないことだった。
 今より若いころはそれよりも鞭術の腕を磨くほうに忙しかったし、父のあとをついでからはエルンストの鉄の踵の
もとで荘園主としての仕事に精を出さざるを得なかったので、自然、男女のどうこうからは遠ざからざるを
得なかった。
 べつだん女が嫌いなわけでもなく、寝ればそれなりに楽しいしすっきりするが、それはそれだけのことだっ
た。あとから文を送ってきたり、使いを寄こしてまた来てくれと催促する女もままあったが、そんなことに気を
使うのは、正直いって面倒だった。それよりも一人で鍛錬し、強くなってゆく自分を確かめているだけで満足で
きる、自分はそういう人間だし、それ以外に本当の興味を持つことはない、とずっと思っていた。
「誰か、ほかの人のことを考えてたでしょ。あんた」
 終わった後、髪を直しながら女がそう言ったときはいきなり頭を殴られたようだった。

「なぜ判る」
「そりゃ、わかるわよ。あんた、ずっと上の空だったもん、やってる最中」
 女はあっけらかんと言って、けらけら笑った。
「別に気にしなくていいのよ。そういう人、わりと多いから。あんたはその中でもま、ましなほうだわ。まっ最
中に、別の女の名前呼んだりしなかったもんね。仕事とはいえ、あれって、けっこう女としてはむかっとくるも
んよ」
「……すまん」
「だから、謝ることないってば。それよりねえ、その人、きれいなの? 優しいの? あんたのその、想い人っ
て人」
 興味深そうに身を乗りだしてくる。汗にぬれた乳房の谷間に、薄くそばかすがあった。
「ああ」
 寝乱れた脱色の金髪を眺めながら、ラルフは呟いた。「とても、綺麗だ」
「そう、それじゃ、こんなところにいないで早くその人のところに戻ってあげなさいよ。それとも何? 喧嘩、
しちゃったとか? それとも、お家の事情でその人とはいっしょになれないとか? 見たとこ、あんたそれなり
の家の人みたいだし」
「両方、だろうな」
 アルカードの傷ついた顔を思いうかべる。あれはどう考えても、自分が悪い。
 それに、『お家の事情』などという言葉ではとても言い表せない溝が彼との間にあることも、エルネストによ
って否応なく思い出させられてしまった。
 そして何より決定的なのは、あの淫夢によって呼びさまされてしまった、自分の奥にある醜いものだ。
 これまで見ないように、気づかないようにと蓋をし続けてきたものを、あの小魔は一気に解きはなって笑いな
がら消えていった。意趣返しとしては最高だろう。

 俺は、──アルカードが欲しいと思っている。
 それもただ友人としてそばに置くのではなく、この腕に抱きしめ、なめらかな肌と朱い唇を思うさまむさぼっ
て、そのすべてを自分のものにしたいと願っている。
 むろん、許されないことだ。キリスト教の道徳律においては、同性愛は重罪である。軽くて破門、重ければ異
端者扱いで火に投げ込まれてもおかしくない。ラルフにしても、相手がアルカードでなければ、ただ嫌悪と反発を
感じるだけだったろう。
 だが、ひとたびあの美しい月のような姿を思い描いただけで、全身が熱く燃えあがるのをもうどうすることも
できない。
 アルカードはどう思うだろう、とラルフは思った。これまで、そんなことを考えたことなど一度もなかった。
 女との行為は楽しくはあったがただそれだけで、そこに欲望はあっても真剣な気持ちのやりとりはなかった。
だが、アルカードをシーツの上の女に置き換えてみただけで、また下腹に熱がこもってくる。
 そういう自分をアルカードが知ったら、彼はどうするだろう。軽蔑するだろうか。怖れるだろうか。あの澄んだ
蒼氷の瞳が、嫌悪をもってそらされるところを思い描くと、果てしなく心が沈んだ。
「ずいぶん悩んでるみたいね」
 ベッドに腰かけて脚をぶらぶらさせながら、女は言った。
「でも、あんたはとにかく好きなんでしょ、その人のこと? で、その人も、あんたのこと好きなんでしょ?」
「ああ。好きだ」
 と即答して、いささか気弱くなり、
「……少なくとも、俺は、だが。相手のほうは、今ひとつわからん」
「じゃあ、とにかく確かめてみるしかないんじゃない?」
 しごく当然だという顔で女は指を振ってみせた。

「それで、両思いだってわかったら、とりあえず攫っちゃえばいいのよ、男なんだから。誰も手のとどかないく
らい、うーんと遠くへね。だいたいロミオとジュリエットなんて今どき流行んないわよ、どう、あたしだって少しは学が
あるでしょ」
 下の酒場で飲んだくれてる詩人崩れから聞いただけなんだけどね、と言って、また楽しそうに笑った。
「でもまあ、あんたもロミオって柄じゃないわよね、その面構えだと」
「放っとけ」
 むくれた顔のラルフにくすくす笑いで返して、で、と女は言った。
「どうする? 泊まってくの? 戻ってあげなさいなんて言った口であれだけど、これも商売なのよね。お金は
さっきもらった分だけでいけるけど」
「いや、いい。帰る」
 ラルフは立ちあがって、服を着た。
「金はそのまま取っておいてくれ。話を聞いてもらった代金だ。おかげで気が晴れた」
「そ。ありがと」
 女は自分もドレスを着込むと、ラルフのそばに立って、そっと頬に唇をあてた。
「はい、これはおまけ。あんた、いい人みたいだから。その人とうまくいくように祈っといてあげるわ。あたし
のお祈りじゃ、ご利益ないかもしれないけど」
「そんなことはないだろう。感謝する」
 扉を閉めるとき、女はベッドの上で小さく手を振った。まがいものの金髪が、弱い灯りの下で明るい色に
輝いてみえた。

 屋敷に帰りついたときにはもう深夜になっていた。
 門番をたたき起こして鍵を開けさせ、厩へ馬を連れていく。繋いでいる間もまだ酒が少し残っていて、頭が
ふらふらした。
 明日は二日酔いだろうな、と思いながらぶらぶらと中庭を横切っていく。二日酔いなら、明日アルカードに会わ
ないですむ口実になるかもしれない。意気地がないと自分でも思うが、今日のことがあったすぐ次の日に、
アルカードと会って平静でいられる自信がまだラルフにはなかった。
(好きなんでしょ。その人のこと)
(ああ。好きだ)
 何のためらいもなく、そう答えた。
 迷いもなければ嘘もない。自分はアルカードが好きだ。
 おそらくは、ドラキュラ城で初めて出会ったときから、彼の虜になっていた。
 俺はアルカードが好きだ、愛している、これまでその言葉の意味を深く考えたことなど一度もなかった、だがいま
は判る。彼の目を見るたび、唇がほほえむたび、胸を充たした喜びの正体がそこにある。彼のことを考えるた
び、疼くようにわき上がってくる熱も。
 アルカードに触れたい、と痛切に思った。
 抱きしめ、その月光のような髪に指を通して、俺はおまえが好きだと伝えたい。そして昼間の仕打ちを謝りた
い。だが、その勇気が出ない。なにしろ彼が、その言葉をどう受けとめるかまったく予測がつかないのだ。

 しかし、同じ屋敷にいるかぎり、いつまでもアルカードと会わずにすますわけにはいかないのも確かだ。何より、
会わずにいれば、数日保たずに自分のほうが我慢できなくなるのはわかりきっている。
 とはいえ、今の気分のままで何日も何週間も過ごせというのは、拷問だ。
(……やれやれ)
 熱を持った頭を冷やすために、庭の一隅にある井戸に立ち寄った。庭園の水やりや、馬の世話に使う井戸だ。
水をくみ上げて、ざっと頭から被る。
 初夏とはいえ、水は冷たい。大型犬のようにぶるっと身震いして水を払ったラルフは、もう一杯汲み上げてまた
被り、さらにもう一杯汲んで、熱い額を水に浸した。ひやりと耳を撫でる水の感触が、冷たい細い指先を思い出
させてぞくりとする。
「──ラルフ……?」
 幻聴かと思った。
 ラルフはざっと水から頭をあげてあたりを見回した。
 夜闇に沈む屋敷のほうから、幻のように白い姿が走ってくる。あわてて立ちあがると同時に、氷のように冷え
切った細いからだが、ぶつかるような勢いで胸に飛びこんできた。
「アルカード」
 しゃにむにしがみついてくるアルカードに、昼間のことは一瞬忘れてラルフは困惑した声を出した。
「いったいどうしたんだ、こんなところで。遅いのに、まだ寝ていなかったのか? おい、そんなにしたらおま
えまで濡れるぞ、聞いてるか、アルカード」
「私は、何かしたか、ラルフ」
 ようやく顔をあげたアルカードの顔には必死の色があった。

 ラルフは言葉を失った。
「私が何か怒らせるようなことをしたなら、謝る。謝るから、怒らないでくれ、ラルフ」
 自分まで濡れるのを気にする様子もなく、アルカードは懸命に両手でラルフの腕をつかんでゆさぶった。
 ラルフはそこに、暗い森で迷いつづける子供の顔がふたたび覗いているのを見た。たった一筋見つけた光をまた
見失ってしまうのかと、絶望しかけている幼い子供。
「私には世間並みのことは何もわからない。私が悪かったなら叱ってくれていい、どが、どうか怒らないでくれ、謝るから、どうか、ラルフ」
 言葉をとぎらせて、肩を震わせながらアルカードはうなだれた。
 とぎれがちなかぼそい声が、かすかに、ラルフの耳朶に届いた。
「……どうか、私から、顔を背けないでくれ……」
 ラルフはふいに、ありったけの力をこめてアルカードを抱きしめた。
「ラ、ラルフ?」
 いきなり抱きしめられたアルカードが驚いた声を出す。
「おまえは何も悪くない、アルカード」
 絞り出すような声でラルフは言った。
「悪いのは、俺だ。昼間は、悪かった。謝らなければならないのは、俺のほうだ。すまなかった、アルカード。酷い
ことをしたな」
「──ラルフ……」
「悪いのは、俺だよ」
 もう一度言って、ラルフはじっとやわらかな銀髪に頬をあてて目を閉じた。

 欠けていたものが、静かに充たされていくようだった。たった半日ほど離れていただけで、どれだけ自分が
餓えていたかをラルフはあらためて思い知った。
 彼が欲しい、と痛切に感じた。アルカードが欲しい。腕の中で震えているこの華奢な身体、その身体も、心も、
アルカードのものであるすべてを手に入れたい。
 その代償になら、あらゆるものを投げだしてもいいと思った。ベルモンドの名も、鞭の遣い手という称号も、身
も、心も、魂の最後のひとかけらまで、全部。
「明日かあさってあたり、しばらく二人で遠乗りに行かないか、アルカード」
 ようやく腕をゆるめて、ラルフは胸の中のアルカードに笑いかけた。
「遠乗り?」
 やっと震えのおさまったアルカードは、眩しげな顔でラルフを見あげた。
「そうだ。おまえだって、たまには外の空気が吸いたいだろう。仕事はまとめて片づけるか、エルンストにやらせて
おくから、四、五日、いっしょに遠出しよう。いい場所を知っているから、そこでしばらく、二人でゆっくり
羽根を伸ばそう、いいか?」
 大きく目を見開いて聞いていたアルカードの唇に、やがて安堵したような微笑みが朝日のようにさしてきた。
「いい考えだと思う」
 そっとアルカードは答えた。
「ぜひ行きたい、ラルフ。楽しみにしている」

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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |

…はみだしてばっかりorz


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