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沈黙する言葉

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

某K事ドラマ。
イタミン&カメ ウキョさんも一応出てます。
放送見逃して悔しかったので、しまい込んでた妄想ネタ引っ張り出してみました。
死にネタなので、嫌いな方はスルーしてください。

 名前を呼ばれ、つつかれた肩を揺すって手から逃れて、起きる気が無い事を
表明しても、呼ぶ声は止まなかった。管内で起きた連続殺人事件。場所も被害者同士に
関係も関連性もないのに、3日置きに起きているそれは、紛れもない同一犯か、
同一グループによる連続殺人としか思えないものだった。
 早急に犯人を挙げるなり、犯人の目星をつけるなりしなければならず、家族を持たない
伊民のような独身の若いK事は、ろくに家という名のねぐらにも帰らず、休憩室で
僅かな睡眠を取り、持ち込んだ着替えで凌ぎ、捜査に時間注ぎ込んでいた。
 一段落などついていないが、眠らなければ倒れるだけ。時間を惜しみながらも脱いだ
ジャケットを布団に、ベンチに体を横たえたのは、何分前か。邪魔される事に半ば
眠っているまま憤りつつも、体を丸め直した耳に届く声は、飄々と名前を呼び続けていて。
「ったく、俺は眠いんだ!起こすなっつってるだろーが!この瓶吉が!!お前らと違って
俺らは暇じゃねーんだよ!!」
 我慢の限界に達し、跳ね起きて怒鳴りつけると、全然伊民の怒りを理解してない様子で、
ベンチの前で身を屈めていた男は、いつもの笑みを見せる。
 飄々とした、明るい笑顔を。
「伊民、伊民。ちょっと来てみろって」
 ちょいちょい、と片手で招くと、背を向けて、休憩室から出て行こうとする。
「なぁにが来いだ!忙しいっつってるだろが」
 怒鳴ったせいで体が睡眠を求めているというのに、すっかり目が覚めてしまい、文句を
言いながらずり落ちたジャケットを取り上げて羽織りながら、伊民は立ち上がる。

 こういった時、たいてい事件に勝手に首を突っ込んで、なんらかの情報を掴んで
いるのだ、あの男は。
 日本K札だというのにも関わらず、どこで買ってくるものやら、※空軍のレプリカ
ジャンパーをいつも着込んだ男は、K事らしからぬ、いたずら坊主のようないつもの笑顔で
振り返って伊民がついてきている事を確認しては、ポケットに両手を突っ込んだまま
軽い足取りで歩いていく。
「おい。どこまで行く気なんだよ!」
 庁舎を出ても歩き続け、あまり見慣れない道にまで進んで、伊民は焦れて前を歩く背中に
走り寄ろうとすると、まるでそのタイミングを知っていたかのように、振り向いて、
人差し指を顔の前に立ててみせる。思わず伊民が足を止めると、その指で、通りの向こうと示す。
「んあ?」
 そこに何があるのかと、伊民が目を眇めると。

 誰かが名前を呼んだ。
「おい、伊民!伊丹!」
 緊迫したその声に伊民は顔を上げる。強面の年近い、確か嫁に逃げられて、その憂さを
捜査にぶつけているともっぱらの噂の同僚が、焦った様子で伊民の顔を覗き込んでいた。
 ずるっと体の上を滑り落ちたものを手で押さえると、それは先程脱いだ、自分のジャケット。
 そうだ。仮眠を取るために休憩室に来ていたのだった。事件が連続して起きて、それで
帰れなくて……。

「早く起きろ!瓶山が……!」
 よく話がわからないままに覆面車に乗せられ、連れて行かれる。いや、行き先は同僚が
話したのかもしれない。だがそれは、伊民の耳を通り抜けていたのだろう。
 車が止まり、伊民も降りたそこ……封鎖された通りには、既にパトカーや、K札車両、
乾式が群れを成していた。
 すり抜けるようにして進んだその先、彼らが群れを成す中心には、覆いを掛けられた
死体を乗せた、担架がひとつ。
 傍らに佇むK部は、いつもの冷静な顔立ちを上気させ、しかも髪を乱しているのを見るのは
初めてではないだろうか。いつもなら、綺麗に撫で付けてあるはずなのに。
 しかも、この通りは。
「まさか僕がいない時にこんなことになるとは思いませんでした。瓶山君には、もっと
よく言って聞かせるべきでした」
 誰かに話しているらしい、その声が聞こえてくる。前を歩いていた同僚が、めくった
覆いの下から現れる青白い顔は、先程まで伊民に笑いかけていたはずの顔で。

 どうやら瓶山は、相棒でもある上司がインフルエンザで休んでいる間に犯人の手がかりを
掴み、単独行動を起こしたらしかった。
 瓶山の死がきっかけで、犯人の捜索範囲が狭まりすぐに事件は解決し、ワイドショーでは
話題が「連続事件を防げない不甲斐ないK札」から「連続殺人犯の異常な半生」に移った。

すぐには来れない家族を霊安室で待つ、冷たい体を置き去りにして。
「僕は、貴方が泣いてるかと思いました」
 不意に背後から掛けられた声は、いつの間に表れたのかK部のもの。薄暗く線香臭い
小部屋で、台に横たえられた瓶山の遺体、整えられたその顔を見つめていた伊民は、ドアが
開く音にも気づかずにいたことに驚く。
「こういう時は、泣いてもいいと思いますよ」
 あの時とは違う、何を考えているのかわからない、いつもの冷静な表情と、淡々とした
口調が、再び伊民に掛けられる。
「だぁれが瓶吉のためなんかに泣いてやるかよ」
 K部から顔を逸らし、応えのあるはずの無い横顔に視線を戻すと、
「そうですか」
静かな声と共に、ドアが閉まる。
 一人残されて、伊民は気づく。
 ああ、泣きたかったのは、あの人もだったのだと。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
 全部で5じゃなくて、4でした…。
 色んな意味ですみませんでした。


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