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芸人 オリエンタルラジオ

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄
                    |  耐えてたのが昨日のムゲンダイに萌えてとうとう噴火
                    |  S悟のモノローグ形式で
 ____________  \         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  書いてある内容の半分以上は
 | |                | |            \  ウソッパチだモナー。
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ やや三角関係?ゴルァ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ ) 
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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結成して初めての一人仕事の一日を終え
くたくたになって家にたどり着く。
大勢でシェアするはずの家にはまだおれ一人しかいない。
今夜もすごく寂しく怖い夜になりそうだ。
だけど今夜はちょっと暖かい気分
相方に「今日はなんとか一人でやったよ。心配いらないから早く元気になれよ」ってメールを送った。
返事が返ってくるまで携帯を握りしめてベッドに入る。
眠れない・・・相方は何て返事をしてくるだろう。
メールで「ありがとう。明日は行けそうだ」とか打って来るかな?
それとも電話がかかってくるだろうか?
アイカタの・・・アッチャソの声が聞きたい。
もう24時間以上聞いてない。
こんなこと・・・コンビになってから有っただろうか?
いやムゲン大が始まるまでは1日2日の休みは有ったから
会わない日だって何日か有ったはずなのに
思い出せない・・・一人で一日過ごす日などんなだったか
思い出せない・・・あの声と笑顔がそばに居ない日がどんなだったか
思い出すのはただ、初めて会った日
そして一緒に駆け抜けてきた日々・・・

あいつはスカしたケイ大生だった。
おれが先に入った自動車保険会社の電話受付のバイトで出会ったんだが
無愛想な雰囲気で、挨拶しても怖い感じで何にもしゃべらず
休憩時間にもなんかウォークマンで一人聴いていたりする・・・
おれは沈黙が苦手だし、一緒に仕事する仲間とは仲良くやりたかったんで
努めてあいつに声をかけるようにした。
1日目は「昼食った?何か食べに行かない?」
返事は「いや・・・もう食ったから」
2日目は「何かサークル入ってる?オレテニスサークルにいるんだけど」
返事は「別に・・・興味ないから」
3日目は「・・・何聴いてるの?音楽?」
あいつは・・・昨日と一昨日みたいに一瞬迷惑そうな顔をしたが
その時、急に表情が変わって「プッ」と吹き出したんだ
「何?なんで笑ってるの?」
今度はおれが不機嫌になった。人が気ィ使って話しかけてやってるのに
その小馬鹿にしたような態度は何なの?
「聴くか?」
あいつは耳に付けていたイヤホンを2個ともおれに差し出した
おれはその時初めてみた・・・あいつの、いたずらっ子みたいな目が気になったんで
何かイタズラされるんじゃないかとドキドキしながらそれをつけて耳をすませた。
『・・・だからさあ、おまえシツコイっちゅーねん!』
「なにこれ?ラジオ?」
「あははははははははは!!!」
驚くおれの顔に飛び込んできたのは見たことも無い笑顔だった。
そして止まらない笑い声が響き渡った。

それからおれとあいつの物語が始まった。
あいつはおれに膨大な量の情報とそれに関する考察や意見などを押し付ける
ほとんど『お笑い』に関することばかり。
おれは勉強するときは音楽を聴いていたし、TVのお笑い番組は見ても芸人の名前なんかよく憶えていない
ワリとフツーのチャラい大学生ライフを送っていただけだったのに
みるみるおれはあいつに染められてしまった。
だけどそれが心から楽しかった。
誰も近寄れないような大きな犬を手なずけてしまったような満足感に似ていたけど
気が付くと自分も今までの友達を放ったらかしであいつとつるんでいる。
バイトの時もバイトの無い日も昼夜問わずにバカ話と悪ふざけに明け暮れる
まるで小学校の頃のバカ男子に戻ったような毎日・・・
そして大学4年になり、就職時期が近づいた。
おれは一応単位は取れたが、ハメを外し過ぎたあいつはどうやら来春の卒業はムリだ。
うつむいてため息をついているあいつにおれは言った。
「アッチャン、もう一年頑張りゃ卒業出来るから」
「・・・・・・ツンゴ・・・・お前先に就職・・・しろ・・・な」
おれのリクルートスーツ姿を憂鬱そうに見上げるあいつ。
「え?こないだのあれ、本気じゃなかったの?」
おれはあいつの顔をにらみつけて言った。
「あれって・・・ああ、あれか・・・マジだと思ってたのか?」
「思ってたよ!だっていっぱいネタ考えたじゃない!誰に見せるわけでも無いのに一生懸命練習しただろ?
何度も何度もアッチャンに怒鳴られながら、おれがやっと完璧に出来た時、二人でエヌエスシー行こうって決めたじゃない!?」
「あれは・・・ノリだよ・・・単なる・・・青春の思い出ってヤツ?」
「何言ってんだよ!あれが遊び?あれが思い出作り?何それ、本気で言ってるの!?」
「だってツンゴお前・・・その格好・・・」
あいつの言葉をさえぎるように、おれはカバンから出した白い封筒を突きつけた。
「貰ってきたんだ、入学願書!」
あいつは目を丸くして大口を開け言葉を失くしていた。
「一緒に行こう!おれ決めた!お前についてく!」
それからおれたちは周りじゅうにあきれられながら親を説得し、大学を卒業する条件でエヌエスシー入学を許してもらった。
だけど難関はそこだけじゃあなかったんだ・・・

おれは大学時代ずっと付き合っていた彼女にエヌエスシーに行くと言った。
彼女は信じられないというような顔をして言った。
「あの男と?なんで?なんでせっかく大学卒業出来るのにちゃんと就職しないでそんなところ行くの?
本気でお笑い芸人になれるだなんて思ってるの!?」
「思ってるよ・・・本気でなりたいんだ。応援して欲しいんだ・・・」
「変よ!本当にあの男のせいであなたは変になったわ。ばかみたいな夢を見て・・・いい加減目を覚ましなさいよ!」
おれはあいつを家に呼んで彼女に会わせた。あいつの理路整然とした言葉で彼女を納得させて欲しくて・・・
あいつの厳しかった親も、それで説き伏せたというのだから。
しかしあいつはいきなりおれの部屋の壁に正拳突きを食らわせた。
壁に開いた大穴、血まみれになった右手、青ざめる彼女。
「これがオレたちの本気だ。この手で天下をつかむ覚悟なんだ」
彼女はその日「もうあなたにはついて行けない。あの人と一緒にいるあなたとは!」って言って出て行き
それっきりもう会ってくれなくなってしまった。
こうなったのは・・・あいつのせい?いや・・・彼女を説得できずにあいつを連れてきてしまったおれのせいだ。
だけどあんな酷い態度見せ付けられたら・・・正直おれも引いた。
だけどあいつの血だらけの拳を見たら何か熱いものがこみ上げて来て・・・
おれは彼女を追いかけずにあいつの手をつかんでしまった。
オレのためにこんなに痛い思いをしているアイカタを・・・残しておけないから。

その後、おれはけっこう長いこと彼女のことをひきずってしまっていた。
だけど新生活の忙しさと疲れで少しずつだけど傷は癒えていった。
あいつの拳の傷が治っていくように・・・おれはそのまま彼女を忘れられると思った。
だけどある日、おれは自分でもどうしようも無いほど落ち込んで揺れていた。
それというのも、風の便りに彼女がまだ、おれが戻ってくるのを待っていると聞いたから。
新しい男と付き合うこともしないで・・・
おれの脳裏に彼女の面影とあいつの顔が交互に浮かんではおれを苦しめた。

いつだってメチャクチャだ、あいつの人生は。
勉強しまくるためにベッド壊してイスに体縛り付けて勉強して目を回したとか
中学高校と一人も友達が居なくても、必要と思わなかったこととか
高校の頃の一番楽しかった思い出が、町で一番高いビルの屋上に登って見た夕日だとか
わかんない・・・こんな変なヤツと一緒に、この先の人生ずっとやっていけるのか・・・
だから今回はちょっと・・・おれが落ち込んでたっていいじゃあないか。
だってアッチャソにはまだ、彼女がいるんだもの。
アッチャソのせいでおれは別れたってのに、自分だけ彼女がいるなんて・・・ずるい。
そんな言い訳でズルズルとネタ合わせをサボッて家に引きこもっていた夏休みのある日
あいつは血まみれになってうちに来た。
「な!どうしたんだよアッチャソ!交通事故にでも遭ったの!?」
額からポタポタ落ちる血が服にも顔にも付いている
顔面はまるで人体模型のように半分だけ赤くすりむけて血がにじんでいる。
「別れてきた・・・女と」
あいつは玄関先でそれだけ言うとクルリと向きを変えて外に出て行った。
「待って!アッチャソ!どういう事それ!?」
おれは裸足のまま表に飛び出して行った。
どんどん階段を下りていくあいつを必死で追って両肩をつかんだ。
あいつはおれを振り切ろうとしたがおれは離さなかった。

「ちゃんと話せよ」
そう言ってあいつをこっち向かせようとした時!
「あっ!」
階段を踏み外したのはあいつが先、そしておれも一緒に転がるように落ちて・・・
二人で階段の下に折り重なるように倒れてしまった。
「いて・・・あ、肩外した」
おれはプランと垂れ下がる右腕を左手で支えた。
「マジか?よく外れるな・・・大丈夫か」
あいつが言った。
「そっちこそ・・・そんなケガして・・・どうしたの?いいから手当てしようよ・・・うちで」

互いにケガの手当てをしながらみんな聞いた。
あいつの彼女が合コンに行って、それをコンクリートの壁に激突しながら責めたそうだ。
「なんでそんな事すんの?引くだろ?そんなコトしたら絶対嫌われるだろ?」
あいつはまっすぐとおれの目を見て答えた。
「そうだよ、ハッキリ嫌われるためにやるんだよ」

おれはやっとわかった。あいつのやさしさが。
引きずっていることは、お互いにとって不幸な事だ。
彼女が迷っているなら断ち切ってあげなくちゃ・・・胸の痛みも、キズの痛みも
いつかは必ず消えて無くなるものだから。
おれは・・・それが出来ないからこんなに苦しく、そしてアイカタにも迷惑をかけてしまった。
ごめんアッチャン・・・おれ、もういい格好なんかしてないで、恥かいても嫌われても頑張っていくよ。
そしてお前だけを信じて前に進むよ・・・

ある日、ムゲン大の楽屋でマネージャーが言った。
「ここの日とここの日、空けときます。アール1に出ていただくんでネタ考えといて下さい」
アール-1?そうか、漫才コンビはエム-1に出るんだけど
今度はピンでネタをやるアール-1にみんなバラになって出るんだな・・・
知っている他の芸人たちがこの話題でさざめき立っている。
みんな自分で応募するんだと思ってたけど、事務所の意向というのも有るんだろうな。
「わかりました。考えときます」
おれがそう言おうと思った時、かぶるようにアイカタが言った。
「おれは出ません。すみませんがそういうことでお願いします」
「え?何?」
マネージャーはすごく驚いたみたいで、オロオロした様子で言った。
「あのね・・・君ら、まだ仕事選べる立場とちゃうねんよ。わかる?会社のエライさんがやりーて言うたはるんよ」
急に大阪弁になるマネージャー。情に訴えるときはいつもこうだ。
「いえ、ムリですから。コンビの新作のネタも考えなきゃならないし、毎日の生放送のトークも考えなきゃならないし・・・」
アイカタは強い口調で言う。
「それにおれ、ピンで仕事は考えられませんから。」
おれは驚いた。すました顔であっさりと、しかし強い意志を持って言ってのけたアイカタ。
それに比べ何も考えてないおれ・・・
「困るやけどねそれは・・・ヨシモト的にすごくねえ・・・」
マネージャーは本当に困った顔をしていた。
おれは一瞬アイカタと同じに断ろうとしたが、ある考えがひらめいた。
「おれ、やります。一人で出ます。いいでしょ?アッチャン」
「・・・いいけど」
「おれ、アイカタに比べて時間的に余裕あるから・・・だから・・・」
「わかった。ツンゴだけでも引き受けてくれたら助かるよ」
マネージャーはなんとかそれでオッケーしてくれた。

それからオレの戦いが始まった。
生まれて初めて、一人でネタを考えて一人で練習するという経験。
それは想像以上にヘヴィなルーティンワークだった。
いつもこんなに大変なことをアイカタは考えているのか・・・
おれは仕事の合間を見つけては秘密の特訓にいそしんだ。
そしてある日・・・干シャンが居なくなったムゲンダイの楽屋でおれはアイカタに声をかけた。
「今夜ネタ合わせ無いだろ?ちょっとつきあってくれる?」
「・・・いいけど」
二人で来たのはいつも振り付けの練習などに使うTV局の楽屋だった。
「ちょっとお借りしま~す」
収録日では無いので今日は空いている事を確認済み。
おれはバッグから衣装を取り出して着替えた。
真っ赤なレオタードとオレンジのタイツ。
首にはピンクのスカーフを巻いた。
「見てくれ・・・アール-1のネタなんだ」
「ああ、いいよ。見せてくれ」
アイカタは鏡の前に立ったおれから少し離れた所にイスを置いて座った。
「ワンツーワンツー!ハイ!ハイ!ハイ!」
脚を高く上げ両手で拍子を取りながらエアロビクスのリズムで踊るおれ
「ハイ!ポーズ!ハイ!ハイ!ワンツー」
決めポーズの合間にネタを入れながら激しく踊る。
アッチャソは最初この格好を見て笑ったがネタが始まると真剣な顔で見ていた。
が、途中でモーレツにゲラゲラ笑い出した。
「可笑しいよツンゴ!サイコーだよ!このネタ!イケルよ!!」
全てを踊りきって息を切らしながら礼をするおれ
「ありがとう・・・どうだった?」
「スゴイよツンゴ!お前にこんな才能が有ったなんて!これでアール-1は獲れるぞ!間違いない!」
だけどおれは首を横に振って言った。
「いや・・・出ないよ。これはアッチャソに見てもらう為だけにやったんだ」
「・・・?なんだって?」

アイカタは不思議な顔をした。
「・・・おれ、いつもアッチャソだけにネタ作りから振り付けまでやらせちゃって・・・その辛さわかってなかった。
それで今回は一生懸命一人でやってみたんだ。だけど出ない・・・アール-1には」
「なんで?スッゲー面白いのに!」
アイカタは叫んだ。
「だって、おれら二人でお笑いやってくって誓ったもんな。絶対ピンでやったりはしないよおれ!」
おれは笑いながら言い放った。
だが、アイカタは不安な表情で言う。
「だって・・・出るって予定に入ってるんだろ?今更ドタキャンなんて」
「いや、ネタが出来ないうえ一人が怖くてビビッてやめたことにするよ。恥かくし会社やお客さんに迷惑かけるけど」
「でも・・・そこまでして・・・せっかくいいもの作ったのに」
アイカタの目が本当に残念そうだった。おれはそれだけで満足だ。
「いいんだ。おれアッチャソに見せるためだけにこれやったんだ。悔いなんか無いよ」
翌日マネージャーに言ったら、おれのキャンセルはマネージャーへの連絡ミスという話にしておけと言われた。
そしてムゲンダイでさんざん「うっかりミス」「口だけ」「ビビり」などといろいろいじられたが
なんとか騒ぎは鎮火し、おれの「武勇伝」は二人だけの秘密となった。
「お前・・・おれがアール-1断って立場悪くなるのをかばって・・・一人で引き受けた上でドタキャンしたんだろ?」
アイカタはそう聞いてきたけどおれは笑って「そんなワケないじゃん!」と言った。

アイカタが風邪で倒れて、たった一人で生放送の舞台に立ったときは
二人で高さ10mの鉄骨ブランコの橋を渡らされた時より不安だった。
だけどおれはおれのやるべきことをちゃんとやらなきゃ
あいつのために、おれを信頼してここまで連れてきてくれたあいつのために
おれはおれにしか出来ないことだと信じて仕事をやり遂げる。
アイカタの代わりなんか要らない。あいつの代わりなんか居ない。
おれと一緒にこれからに人生を走ってくれるのはあいつだけだ。
あの冷たい目が細くやさしい一本の線に変わった瞬間
もしかしたら、おれは恋をしたのかも知れない。
男とか女とかそんなものを超えた「引力」を感じる。
痛いケツバットも、臭い青汁もなんのその
おれたちはどんどん乗り越えていい眺めの場所に行くんだ。
そのためにはどんなに敵を作ったって平気だ・・・あいつがいれば。
おれは今、アイカタと生きる人生にもう何の迷いも無い。
さあさあ!カメラの前でキスだってするよ。興奮しすぎて鼻水出ちゃったけど
こんなのは乗り越えなければならない山だと思っている。
でも本当は・・・二人きりでしておきたかったな
初キッスくらいは。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) あれだけ萌えをいただいて濡れ場のひとつも描けぬとは
 | |                | |       ◇⊂    ) __ 
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |


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